経済・政治・国際

2015年4月21日 (火)

物価指数のバイアス【補足】

 コメントいただきありがとうございました。


ありがとうございます!連鎖指数と固定指数との比較でイメージがかなりはっきりと掴めました。と同時に、CPI
の上方バイアスを考慮する時には常に基準年を考える繊細な注意が必要なことも分かりました。


生活扶助cpi
も、2010年基準で2008-2010の伸びを計算すると、2008年の指数を実態より高く算出してしまっているので、実際より物価下落を大きく見てしまうという問題が確かにありますね(かといって2005年基準が正しいわけでもないので難しい)。東洋経済の記事では、厚労省はこれをパーシェと説明したそうですが。


 私も今になって、
ご指摘の東洋経済の記事を拝見しました。コメントでいただきましたとおり、この記事では「ラスパイレス方式とパーシェ方式の混合」と書いてありますが、その点は誤りのように思えます。実際には「2010年基準のラスパイレス方式」で統一しただけのように見えます。なぜなら「パーシェ方式」を作るためには、すべての年において、その年の購入数ウェートで計算する必要がありますが、この記事で書いてある計算では常に2010年のウェートで作成しているように見えるためです。


 ですので、今回の話は、「ラスパイレス方式とパーシェ方式の混合」という話ではなく、「2010年基準のラスパイレス指数でみた2008-10年の指数」と、「2005年基準のラスパイレス指数でみた2008-10年の指数」の比較ということになります。そして、前述のとおり2005年基準で見た2008-10年は基準年より後ですので伸び率が連鎖よりも高く、2010年基準で見た2008-10年は基準年より前ですので伸び率が連鎖よりも低くなります。そして、どちらが正しいということではなく、統計上はどちらも正しい数値ですので、どちらを採用するかという決めの問題となるような気がします。(なお、2005年基準の指数を採用するのであれば、2011年も2005年基準で作成するべきという意見もあると思います。)


 連鎖方式を採用していれば、伸び率については基準年を何年にしても影響は出ないですから、このようなバイアスの議論をする必要もないのですが。。。


(注)以下はさらに補足です。この厚生労働省が言ったと記事に書いてある「パーシェ方式」の話ですが、私個人としては以下のような意味なのかなと思いました。


 まず、準備として、
2005年基準で見た2008年、2010年のラスパイレス指数はそれぞれ、

12

となります。


つづいて、パーシェ指数は、

34
となります。


また、
2010年基準で見た2008年のラスパイレス指数、パーシェ指数はそれぞれ、

56
となります。

ちなみに、2010年基準で見た2010年の指数は当然ラスパイレス、パーシェともに1です。


ここで、2005年基準でみたラスパイレス指数の2008年~2010年の伸び率を見ると、

7となり、また、2010年基準でみたパーシェ指数の2008年~2010年の伸び率を見ると、8となり、伸び率でも一致するようには思えません。


ただし、これが基準年同士、すなわち
2005年から2010年の伸び率になると、いずれも9となり一致します。


ラスパイレス方式とパーシェ方式の混同という話は、この基準年についての話をいっているだけのように思えるのですがいかがでしょうか?

2015年4月14日 (火)

物価指数のバイアス

ご質問をいただいておりました。


ラスパイレス物価指数では、安くなったものへの買い替えなどバスケット変更を捉えられないので、基準年から離れるほど最適なバスケット(欲しいものを出来るだけ安く変えるようなバスケット)から乖離して物価指数を高く見積もってしまうということは分かります。


この、最適バスケットからの乖離は過去に対してはどうなのでしょうか。たとえば現在の2010年基準のCPIを見た時、2005年の物価指数に使われる2010年のバスケットは最適なものと乖離しているはずです。すると、2005年の物価指数は実態より高くなっている(2005年から2010年までの物価指数上昇率は実態より低くなっている)ということになるのでしょうか。つまり上方バイアスは基準年以降についてであって過去については下方バイアスになったりするのでしょうか(GDPの個人消費デフレーターとの関係からするとどこか間違っている気がしますが)。


より具体的に申しますと、厚生労働省が生活保護費の物価調整のために算出している、生活扶助cpiに対して、2010年基準にすると2008年から2010年までの物価上昇率を実態より小さく見てしまう(物価下落率を実態より大きく見てしまう)という批判がありますが、それは妥当なのでしょうか、という疑問になります。今週号(2015411日号)の週刊東洋経済にあった批判です。



物価指数の上方(下方)バイアスについてのご質問です。ご質問でも触れておられます通り、固定式のラスパイレス物価指数(CPI)では上方バイアスが、固定式のパーシェ物価指数(GDPデフレーター)では下方バイアスがある可能性が高いです。それは、計算式を見ればよくわかります。


固定式ラスパイレス物価指数については、

1


固定式パーシェ物価指数については、

2


と計算できます。


ラスパイレス指数の計算式の分子の部分、3
は、基準年の購入数ウェートでt年の価格を集計したものとみることができます。この時、t年の価格体系で実際にモノを購入するとした場合、本来購入数ウェートは異なるはずで、具体的には安くなったものの購入ウェートが増え、高くなったものの購入ウェートが減るはずです。しかし、実際にはそうなっていない、すなわちこの集計式が示しているものは「高いものをたくさん買い、安いものを少なく買う」という状況のはずです。この状況は、何かしらの理想となるはずの集計数よりも数値が高くなっているということを意味しているはずです。


そして、ラスパイレス指数の場合は、その集計数が「分子」にあるので、基準年からずれるほど上方バイアスが生じてしまう可能性が高いわけです。


同じことはパーシェ指数の分母の部分、4
にも言えて、そしてパーシェ指数の場合はこの集計数が分母に来るので、下方バイアスが生じてしまう可能性が高くなります。


(注)今の議論でお分かりいただけたと思いますが、「値段が安いものをたくさん買う」という通常の経済行動を行わない主体の場合は、この議論は成立しません。事実、非市場財を購入している、政府最終消費支出や非営利団体最終消費支出などでは、あまり明確にバイアスが生じないことが起こってもおかしくないと思います。


そしてご質問の基準年から過去についてですが、これも上記の議論でお分かりいただけます通り、ラスパイレス指数なら基準年から過去に向かって離れても「上方バイアス」が、パーシェ指数なら基準年から過去に向かって離れても「下方バイアス」が生じる可能性が高くなります。


これを明確に示すためには、バイアスの発生が抑えられる連鎖指数と比較すると分かりやすいのですが、残念ながら消費者物価指数は「基準年より過去の連鎖指数」を公表していないようです。ですので、ご質問の趣旨とは外れますが、基準年より過去のデータも公表している「GDPデフレーター」のグラフを見てみましょう。


※2005年基準GDPデフレーター(連鎖及び固定)の推移

5


これを見ると、基準年及びその翌年以外は、固定指数について見事に下方バイアスがあることが分かります。GDPデフレーターはパーシェ指数なので下方バイアスになりますが、CPIはラスパイレス指数なのでこの逆に上方バイアスが見て取れることになります。


これは指数そのものについてですが、伸び率について言うなら、パーシェ指数については基準年より前は固定指数が連鎖指数より伸び率が高く、基準年の2年後からは固定指数が連鎖指数より伸び率が低くなります。ラスパイレス指数については逆のことがいえます。


ということでお答えになっているでしょうか?

2015年3月13日 (金)

在庫等々

ご質問をいただいていましたが、しばらく回答できておらず申し訳ありませんでした。


  こんにちは。

いつも大変丁寧な説明をしていただき、大変感謝しています。

ところで、今回頂いていた回答の中に、GDP支出面の 「在庫品増加」 という項目が少しでてきたのですが、在庫品増加は 「物の売れ残り」 のことだと思うのですが、「サービスの売れ残り」 の場合は、GDPではどのように考えたらよいのでしょうか?


企業はモノが欲しいと言われたときにすぐ売りたいでしょうからそのために「意図的に在庫を積んでおく」ということをするでしょうし、また、作りかけの商品の在庫もありますから、すべてが「物の売れ残り」とは限りませんが、在庫は作ったもののまだ売っていないものという理解で良いと思います。サービスは作った瞬間に売るものですので、サービスに在庫はありません。サービスを提供するために人が待機して、中間投入も行ったのに、サービスが提供できなければ、そのサービスは生産できなかったという記録になります。(その分営業余剰が減ることになると思います。)


書き込みが前後してしまいましたが、前回の固定資本減耗に関する質問では、最終的に以下のような疑問に達していました。

GDPには2つの固定資本減耗がでてくるように思える。 一つは企業・生産者が設備投資に支払う固定資本減耗。 もう一つは消費者が購入する消費財に含まれている固定資本減耗。」

でも、頂いていた回答:  「減価償却というものは、設備投資を複数年にわたって費用計上しましょうというものですから、当年度の減価償却分以外はすべて過去に行った設備投資に対するものです。」 を読んで、納得することが出来ました。

この2つの固定資本減耗は、それぞれ支払う時期が違う・・・ ということなのですよね。


何度も繰り返しますが、GDPとは、その国がある一定期間で生み出した付加価値の合計額です。それを
生産側のみならず、支出側、分配側で分けてみました、というのがGDPを3面から見るという話、いわゆる三面等価の話ですこれに対して固定資本減耗は、過去から積み重なった固定資本の当該期間における減少分です。ですからその固定資本を作るために行われた支払いを行った期間とGDPを計算している期間では時点が違います。


時点の違うものを無理やり企業・生産者が払っているとか、消費者が払っているなどと、GDPの
内訳だけみて比較することに意味はないと思います。比較するのであれば、やはり所得支出勘定やストック編(貸借対照表)の中で比較するべきでしょう。


続いて別の項目についてコメントをいただいておりました。


  おっしゃることは納得できた気がします。

おそらく多くの場合、実質変数を計算する場合、名目からインフレを控除するということで対処しているとおもいます。たとえば、実質金利の場合、名目金利とインフレをひくことで実質金利を計算します。この背後には、本来、「実質値は目で見えないもの」ということがあるからだとおもいます。理想的には、実質と名目が別々に観測されて、デフレーターが算出されることだとおもいますが、そんなにきれいに実質変数はでてくるのでしょうか?(鉱工業生産指数みたいなイメージでしょうか)

私の知っているケースでは、物価連動国債の場合、実質金利が正確にデータでとられるので、実質と名目が得られて、インフレ率がインプリシットに算出されるイメージになります(いわゆるこれがBEIですね。)


ありがとうございます。やっていることは、個別項目(例えば家計最終消費支出の中の乗用車やテレビなど)の名目値と物価指数を用いて、統合した項目(例えば家計最終消費支出やその内訳項目の耐久財など)について実質値とデフレーターを作るということなので、どちらが先でも別にいいのですが、やっぱりnational accountsとしては不変価格表示の数量指数の方がより必要とされているということなのではないかと思います。


逆に不変数量表示の価格指数は、むしろCPIやCGPIが一義的には使われるのかなという気がしています。(もちろんCPI、CGPI、GDPデフレーターそれぞれに特徴があるので、それぞれその長所、短所を分かった上で分析に使うのが良いと思います。)

2015年2月 9日 (月)

三面等価(3)

以下は蛇足になります。GDP(支出側)の構成項目の一つに総固定資本形成というものがありますが、なぜ「総」がつくかというと、「固定資本減耗」による固定資本の減少分が考慮されていないためです。ですので、当然net(純)でみた固定資本の増加分が資本調達勘定の資産の増加に反映されます。


ただ、これの前述のとおり固定資本減耗を控除するのは資本調達勘定なので、何故か「純固定資本形成」という言葉はあまり聞きません。そうは言っても、具体的に「固定資本」がフロー勘定でみて変化する分は「総固定資本形成」から「固定資本減耗」を引いたものです。(これにストック勘定で、価値変動分とその他の変動分(災害で毀損してしまった等)が加わります。)


ちなみにこのように考えることもできます。GDPは一定期間に国内で生み出された付加価値の合計ですが、付加価値を計算するという観点からすると、生産にかかったコストは中間投入だけでなく、固定資本減耗分もコストであると考えることもできます。ですので、国内総生産(gross domestic product)ではなく、国内純生産(net domestic product)という概念もあり、それは定義上、


NDP = 生産 - 中間投入 - 固定資本減耗


になります。国内純生産に生産側、支出側、分配側という区別はあまり聞かないのですが、便宜的に作ってみると、


NDP(支出側) = 最終消費支出+総資本形成-固定資本減耗+輸出-輸入

NDP(分配側) = 雇用者報酬+営業余剰+生産・輸入品に課される税


となります。


本来こちらが生産物の指標として正しいという意見はあるのですが、やはり固定資本減耗はあくまで目に見えない推計物ですから、これで各国の生産活動を評価する指標が左右されるのは良くないだろうという意見が今のところ一般的で、そのためGDPが一般的に利用されています。


ちなみにこうしてみると、GDPNDPも、あくまで「ある一定期間に増えた付加価値の増加分」であって、それが生産面からみた直接的な定義であり、使用側は「その増えた付加価値がどのように使われているか」、分配側は「その増えた付加価値がどのように配分されているか」ということを概念的に見ているものだということが分かります。

2015年2月 8日 (日)

三面等価(2)

では、ご質問にありましたように、生み出された生産物がどのように使用され、それが所得との関係でどのようなバランスにあるのかを分析するのは、前述のとおり、所得支出勘定や資本調達勘定などの別の勘定を見るのが適切なのではないかと思います。


というのは、家計を例として考えても、家計が最終消費支出を行うために使うお金は、その期間に得た雇用者報酬「だけ」から支出しているわけでは無いと思います。家計は貯金などから利子を得ているでしょうし、株式を保有していれば配当も得ることができます。また年金などの社会給付もあると思います。その反対に借り入れをしていればローンの金利も返済するでしょうし、社会保障の負担金支払いもあります。もそう言ったものをすべて加除した「可処分所得」がまずは家計最終消費支出を行う原資になると思います。


さらに言えば、当該期の「可処分所得」だけですべての最終消費支出を行う必要はないわけです。つまり、当該期は借金をしているけれども、後の期でその借金を返済するというようなこともできるわけです。
National Accountsでは、その概念が「貯蓄」でして、可処分所得-最終消費支出=貯蓄になります。つまり、当該期の可処分所得より多く使ってしまえばマイナスの貯蓄になり、逆であれば貯蓄が増えるということになります。


ここまでの分析をするための勘定が「所得支出勘定」になります。


更にこの貯蓄と比較して、どれだけ資本形成をしたかを比較するのが「資本調達勘定」です。この時に通常では、「総固定資本形成」から「固定資本減耗」を控除した「純固定資本形成」と「貯蓄」(こちらも「固定資本減耗」を控除した「純貯蓄」)を比較したものが有名な「純貸出(+)/純借入(-)」です。これは、「貯蓄」-「総固定資本形成」ですから、「純貸出(+)/純借入(-)」がプラスということは、設備投資までおこなった上で当該期にお金が余ったか、足りなかったかを示したものです。


資本調達勘定には実物取引と金融取引があるのですが、前述は実物取引の話でして、前述のとおり実物面で「純貸出(+)/純借入(-)」がプラスになれば、当該期にお金が余ったので、金融勘定でも「純貸出(+)/純借入(-)(資金過不足)」はプラスになっているはずです。(プラスであれば、その残りは現金で残るなり、預金で残るなり、資産が増えているので当然です。)


という形で、national accountsでは所得と使用、そして設備投資を含めた資本の増減と貯蓄の比較は別の勘定で分析できるようになっています。その話をGDPだけの三面等価に絡めて行おうというのは無理がありますし、少し筋が違うように思いますがいかがでしょうか?


次回に蛇足の話を。

2015年2月 7日 (土)

三面等価

追加でご質問をいただいていました。


ありがとうございます。

できるだけシンプルに理解したいので、ここから先は、輸出と輸入を除いて書かせて下さい。


例えば、実際に消費者が自動車を購入する場合、その自動車が完成し、販売されるまでには様々な工場や機械設備などが使用されていて、その工場や機械設備などの減価償却費が、完成した自動車の価格には含まれているのではないかと思うのです。

つまり、GDPの定義にある総固定資本形成の企業の支出分は、実際には消費者が最終消費財を買う時点で、その総資本形成の分も消費者が最終的には支払っている、ということになるのではないでしょうか?


もしかしたら、消費者が今買っている最終消費財に含まれている減価償却費は、過去に作られた機械設備に対する支払いであって、一方、企業が今支出している総固定資本形成は、現在建設中の機械設備に対する支払い、ということなのでしょうか。


分かりにくいご説明となっていたようで申し訳ございません。


ご質問を拝見して思ったのですが、GDP(生産側)、GDP(支出側)、GDP(分配側)の意味していることを誤解しておられるように感じました。GDPとはあくまで「一定期間でどれだけ付加価値が生み出されたか」を測る指標(GDP(生産側))でして、GDP(支出側)はその付加価値がどのように使用されたかを示しており、GDP(分配側)はその付加価値がどのように配分されているかを示しているだけです。別に、GDP(分配側)で配分された一定期間に作られた付加価値でもって、同期間に生産されたGDP(生産側)の付加価値を購入しないといけないわけではありません。それは、GDP(支出側)の項目に在庫品増加が入っていることを思い返していただければお分かりいただけると思います。(総資本形成とは、総固定資本形成と在庫品増加を足したものです。)


GDPの三面等価とは、GDPの本来の定義である「一定期間における付加価値の増分」が、どのように等しくなるかを示しているだけですので、実際の消費活動とは別の話です。


以上を前提として、ご質問を少し考えてみようと思います。


まず、「例えば、実際に消費者が自動車を購入する場合、その自動車が完成し、販売されるまでには様々な工場や機械設備などが使用されていて、その工場や機械設備などの減価償却費が、完成した自動車の価格には含まれているのではないかと思うのです。」についてです。「価格に含まれる」という言い方の前提には企業が自由に価格を決められるということがあると思いますが、この点はいろいろ議論があると思います。その点は置いておくとして、ひとつだけ言える事は、『企業は設備投資を行うに当たって、その設備投資を行った期間でその設備投資にかかった費用を償還する必要は無い』ということです。ですので、その生産に必要となった経費を支払い、複数年で見てその設備投資にかかった費用を賄え、従業者に給与を支払い、税金もきちんと支払い、企業の営業余剰を確保できるだけの価格を生産物に設定しようとするでしょう。(それができない商品は価格を下げることを余儀なくされ、赤字に
つながるわけです。)これって正しくGDP(分配側)の話ですよね。(正確にはGDP(分配側)+中間投入=生産ですが。)


続いて「
まり、GDPの定義にある総固定資本形成の企業の支出分は、実際には消費者が最終消費財を買う時点で、その総資本形成の分も消費者が最終的には支払っている」というご質問ですが、総資本形成は総固定資本形成の意味と考えてご回答しますと、超長期的にみて最終的にはそうかもしれません。(ずっと総固定資本形成にしか使われない製品を使って総固定資本形成にしか使われない製品を作り続けるというケースもまれにあるのかもしれませんが、通常はサービスも含めて最終的には最終消費支出に使われる商品に回っていくのだと思います。)


ただ、同一期間で生み出された付加価値を配分しただけのGDP(分配側)で得た同期間の所得で、それをすべて買わないといけない、というわけではありません。繰り返しますが、
GDP(支出側)は一定期間における最終消費支出と総資本形成と輸出から輸入を引いたものに等しくなりますGDP(分配側)は一定期間における雇用者報酬と営業余剰と税金と減耗に分けられます、と言っているだけのところに「総資本形成の分も消費者が最終的には支払っている」という議論をしても、この式とは関係がありませんとしか申し上げられないと思います。


また、「消費者が今買っている最終消費財に含まれている減価償却費は、過去に作られた機械設備に対する支払いであって、一方、企業が今支出している総固定資本形成は、現在建設中の機械設備に対する支払い、ということなのでしょうか。」という記述はその通りでして、減価償却というものは、設備投資を複数年にわたって費用計上しましょうというものですから、当年度の減価償却分以外はすべて過去に行った設備投資に対するものです。


固定資本減耗も同じようなもので、基本的にある時点においてそれまでに形成されてきた固定資本がどれくらい利用されて減っていくのかを計上するものです。


相当長くなってしまいましたので、次回に続きます。

2015年2月 5日 (木)

分配と固定資本減耗(3)

2回の内容を踏まえて2つ目のご質問を見てみますと。


1.国内総生産の金額は、最終生産物であるテレビや自動車やパン等の合計金額である。


最終消費支出や総資本形成等の最終需要に使われるものの一定期間の生産分です。ただし、ここには政府最終消費支出などのように、実際に明示的に取引が行われていないものも含まれます。


2.私達個人が実際に得る所得は、国民総所得から固定資本減耗を引いた、「国民純所得」 である。


個人が
得る所得には、国民総所得の中の「雇用者報酬」が含まれます。これに財産所得などの各種所得、移転を加除した可処分所得が実際に得る所得、という概念に近いと思います。

企業の利益である「営業余剰」や、政府の収入に含まれる「生産・輸入品に課される税」なども「国民総所得」及び「国民純所得」には含まれます。

個人だけでなく一国全体で得る所得という意味であれば、本来は一国全体の「可処分所得(総)」なのですが、これは現在の日本では「国民総所得」と非常に近い値になります。そして、前述のとおり「固定資本減耗」は実際のキャッシュフローとは異なりますから、実際のキャッシュフローに近いものとしては「固定資本減耗」を含む「国民総生産」の方が「国民純生産」より実感に近いと思います。ただし、「国民総所得」も実際に「所得」や「企業利益」として実感する金額とは少し異なると思います。


3.私達は、私達の得る国民純所得で、私達の作った国内総生産のすべてを買い取ることはできない。 (国内総生産の金額に含まれる、固定資本減耗の分が足りない。)


前述のとおり、NDIGDPでは固定資本減耗の分だけ額が異なりますから、当然一致しません。
そして、固定資本減耗はあくまで帳簿上の話ですから、実際のキャッシュフローの動きには影響してきません。


最後に、


  私たち 「消費者」 が、実際に購入している 「最終消費財」 の金額を合計したものは、

【国内総生産】 になるのでしょうか?


国内総生産(支出側)は、最終消費支出+総資本形成+輸出-輸入ですので、消費者が支出した額であろう「家計最終消費支出」だけでは国内総生産とは一致しません。
一国の所得額と消費額を比較するのは「所得支出勘定」のうち「所得の使用勘定」で見るほうが正確ですし、そうしてあまった貯蓄と設備投資額を比較するのは「資本調達勘定」で行うほうが正確だと思います。そうして余った(又は足りない)金額が、有名な「純貸出(+)/順借入(-)」になります。


ということになります。

2015年2月 4日 (水)

分配と固定資本減耗(2)

前回の続きです。


さて、この時「もしそうだとした場合、次に、国内総生産の中の 「固定資本減耗」 は、私達個人の所得になるのでしょうか?」ですが、ここで分かりやすく考えるために「固定資本減耗」は企業の「減価償却」のようなものと考えてください。(もちろん、national accountsでは、「固定資本減耗」は「減価償却」とは異なる概念だと強く言っていますので、厳密には異なりますが、概念的にはそのようなものと考えると良いと思います。)


GDP(生産側)は付加価値の合計額で、それと等しい額の
GDP(分配側)は生産により得られた付加価値がどのように分配されるかを見るものといえます。そして、そのうち「私達個人」に回る分は「雇用者報酬」になります。これ以外に「利払い」や「投資収益」などの所得分配後に「私達個人」に配分されるものが「可処分所得」などの所得となりますので、このGDPだけを見ている段階では「雇用者報酬」が「私達個人の所得」の一部となる、としか言えません。また、一部例外はあるのですが、固定資本減耗は固定資本形成を行う企業又は政府等にしか発生しません。


ですので、個人の所得には入りませんが、国内総所得(GDI)には固定資本減耗は含まれます。


では、続きまして「私達は、私達の得る国民純所得で、私達の作った国内総生産のすべてを買い取ることはできない。」という点については、「買い取る」といういい方は別として、「国内純所得(NDI)」と「国内総生産(GDP)」では固定資本減耗の分だけ額が違いますから当然一致しません。


なお、この「買い取る」という表現から想像するに、ひょっとしたらGDP(生産側)が実際の国内に出回る供給額で、GDP(分配側)が所得として比較することを考えておられるのかもしれません。しかし、そのように所得と実際に支出した額を比較する勘定は
national accountsでは別にあります。得た所得(可処分所得)と最終消費支出を比較するのが「所得支出勘定」(うち「所得の使用勘定」)、可処分所得-最終消費支出=貯蓄なのですが、その貯蓄と総資本形成を比較するのが「資本調達勘定」になります。なお、この「可処分所得」にも「貯蓄」にも(純)と(総)、すなわち固定資本減耗を含むものと含まないものがあります。


ここで、冒頭に「固定資本減耗」は「減価償却」のようなものと思ってくださいと申し上げたことに戻ります。企業会計でも「減価償却」って、会計上の処理であって、実際
のキャッシュフローには影響を与えませんよね?


具体的には、例えば10億円の設備を購入して、今後10年間1億円ずつ「減価償却」を計上する場合を考えると、2年目以降は会計処理上「1億円」の費用が出ますが、キャッシュフロー上では、現金はまったく減りません。(そのかわり、1年目に10億円減っていますが。。。)


これと同じように、このGDPの中の「固定資本減耗」は帳簿上の「費用」ですから実際に設備投資に使われる費用とは全く異なります。


実際に最終消費や設備投資に使われる原資という意味で言えば、本来は国内総所得(GDI)ではなく、海外からの所得の受け払いを調整した
国民総所得(GNI、さらに海外との移転取引を含めた可処分所得の方がフィットするようにも思えます。ただ、この可処分所得の中にも「雇用主が支払う社会保険料」などのように実際には家計の手元に入るわけでない費用もありますし、また、GDP(支出側)の中にも、「医療給付のうち保険負担分」(政府最終消費支出に含まれます)のように自分で支払っているわけでないものもありますから、どうしても実感とかずれてくると思います。


そして、前述のとおり、
これらの所得概念にも(純)と(総)があり、この違いも「固定資本減耗」を控除したかどうかになります。


次回に続きます。

2015年2月 3日 (火)

分配と固定資本減耗

何度もご質問をいただいていたにも関わらず、お返事できておらず申し訳ございません。


こんにちは。

国内総生産と、固定資本減耗、そして私達が得る所得の合計金額について、分からないことがあります。


まず、国内総生産とは、中間生産物を除いた、「最終生産物の合計金額」 と、理解しても良いでしょうか?


もしそうだとした場合、次に、国内総生産の中の 「固定資本減耗」 は、私達個人の所得になるのでしょうか?


もし固定資本減耗が私達個人の所得にならない場合、国内総生産の金額よりも、私達個人の所得合計の方が少ないことになるので、「作られた商品やサービスが売れ残る」 ということにならないでしょうか?


続きまして、


  すみません。。。

少し分かりにくい質問になってしまったかもしれないので、補足させて下さい。

次の文章で、間違っている所を指摘して下さい。


  1.国内総生産の金額は、最終生産物であるテレビや自動車やパン等の合計金額である。

2.私達個人が実際に得る所得は、国民総所得から固定資本減耗を引いた、「国民純所得」 である。

3.私達は、私達の得る国民純所得で、私達の作った国内総生産のすべてを買い取ることはできない。 (国内総生産の金額に含まれる、固定資本減耗の分が足りない。)


最後に、


  こんにちは。

何度もすみません。。。


  こちらの記事のタイトルが、【 国内「純」生産 】 でしたので、この概念から、もう少しシンプルに質問させてください。


  私たち 「消費者」 が、実際に購入している 「最終消費財」 の金額を合計したものは、

【国内総生産】 になるのでしょうか?

それとも、

【国内純生産】 になるのでしょうか?


ご質問いただいていたことに気付かず、ご回答が遅くなってしまい申し訳ございませんでした。


さて、本件について考えるために、GDPを生産側と分配側に分けて考えてみましょう。


GDP(生産側)= 生産
  中間投入

GDP(分配側)= 雇用者報酬 + 生産・輸入品に課される税 - 補助金

+ 営業余剰 + 固定資本減耗


このうち、生産側を見ると、一定期間内に一国全体で生産した金額から、その生産に使った金額を控除したものがGDP(生産側)であることが分かります。それが、一つ目のご質問にある「国内総生産とは、中間生産物を除いた、「最終生産物の合計金額」 と、理解しても良いでしょうか?」という文章になります。


基本的にこの文章は正しいと考えて良いと思います。なお、厳密には非常に細かい点で「中間投入」と「中間生産物」は異なるのですが、今回の話にはほとんど影響がないので、その点は無視してください。(関心をお持ちの方は、以下(注)をご参照ください。)


長くなりますので次回に続きます。


(注)厳密に
言うと異なるというのは、「中間投入」には「輸入品による中間投入」もある一方、「中間生産物」にも「海外で投入として使われる輸出品」もあるという点です。ただ、この点も、


国内総供給=産出+輸入(含:中間投入分)-輸出(含:中間消費分)

国内総需要=最終消費支出(含:海外生産分)+総固定資本形成(含:海外生産分)

+在庫品増加(含:海外生産分)+中間消費(含:海外生産分)


ですから、国内総供給=国内総需要で、


産出-中間消費(含:海外生産分)

 =最終消費支出(含:海外生産分)+総固定資本形成(含:海外生産分)

+在庫品増加(含:海外生産分)+輸出(含:中間消費分)-輸入(中間投入分)


となりまして、中間消費(含:海外生産分)と中間投入は等しいので、GDP(生産側)

GDP(支出側)は等しくなります。

2015年1月17日 (土)

原油価格の下落

2つもご質問をいただいていたのにしばらくご回答できておりませんでした。


景気動向指数の構成項目はどのような基準に基づき選定しているのでしょうか?(この点については開示されていますでしょうか)?なんとなく、この変数は一致しているだろう、という決め方はしていないはずですが。


また、7か月前との比較をするのにも特別意味があるのでしょうか。3か月後方移動平均や6か月後方移動平均というとなんとなくわかるのです(これはこれで突っ込めるのですが)、あえて7か月を使ってコメントするのはなぜだろうとおもいます。

Http://www.esri.cao.go.jp/jp/stat/di/201410Psummary.pdf


申し訳ないです、この分野は私も担当したことが無くてお答えするだけの知識がありません。


HPを探してみましたところ、「景気動向指数の利用の手引」というものがあり、そこで「統計の作成方法」も書いてありましたので、以下にURLを付けておきます。

http://www.esri.cao.go.jp/jp/stat/di/di3.html#link005


続いてもう一つのご質問です。


現在原油価格がすごく落ちています。これが実質GDPに与える影響について質問があります。


もともと原油の輸入が20兆円あり、ここで原油価格が半分になったとすると、それだけで名目GDP10兆円押し上げられる(名目GDP500兆円とすると2%押し上げられる)ことになると思います。まず、この理解は正しいでしょうか?

次に実質GDPについても、原油価格の半減そのもので同じくほぼ2%の押し上げがあると考えてよいのでしょうか?


  お手すきの時にでも教えて頂けると幸いです。


原油価格、本当にすごく下落してますね。これは経済的には非常に大きいことだと思っており、いろいろなところで影響が出てきそうです。それとは別に、あくまで統計の作り上GDPにどのような影響が出るかという点を考えてみましょう。


まずGDPを支出側、生産側両方から見てみましょう。


GDP(支出側) = 最終消費支出 + 総資本形成 + 輸出 - 輸入

GDP(生産側) = 生産 - 中間投入


となります。


以下の影響では、輸入数量は不変とします。原油を直接最終消費する人はなかなかいないと思いますので、すべて中間投入だったとしましょう。また、ガソリン、灯油などの最終消費となる財の輸入もわずかではあり、これらの価格も下がっているはずなので、厳密にはこちらの影響もあるのですが、ここでは原油以外のものは考えないことにしましょう。


まずは名目です。価格と数量に分ける必要が無いので、10兆円単純に減ったとすると、


GDP(支出側) =最終消費支出 +総資本形成 +輸出 -輸入(10兆円)

GDP(生産側) =生産 -中間投入(10兆円)


となり、支出側、生産側ともに10兆円増えることになります。


ただ一点注意しなければいけないのは、原油をそのまま使って終わりという経済主体って存在しなくて、どの経済主体もその原油を使って何か最終財を製造しているはずです。例えば一番わかりやすい例で言えば、原油を精製してガソリンや灯油を作っているはずです。この時、この経済主体はこれらの製品の価格を低下させないでしょうか?


もし、中間投入が10兆円低下し、その中間投入を使って作っている最終消費財(必ずしも最終消費財となるわけでは無いのですが、ここでは話を単純化してそう考えましょう)の販売価格をすべて10兆円低下させたらどうなるでしょうか?その場合、


GDP(支出側) =最終消費支出(10兆円) +総資本形成 +輸出 -輸入(10兆円)

GDP(生産側) =生産(10兆円) -中間投入(10兆円)


となり、支出側、生産側ともに変化はありません。


続いて、実質で考えるとどうなるかですが、この場合、それぞれの項目を「価格×数量」に分解しないといけません。


GDP(支出側) =最終消費支出(価格×数量) +総資本形成(価格×数量)

+輸出(価格×数量) -輸入(価格×数量)

GDP(生産側) =生産(価格×数量) -中間投入(価格×数量)


となります。ここで輸入の価格部分が10兆円だけ変化する場合は、


GDP(支出側) =最終消費支出(価格×数量) +総資本形成(価格×数量)

+輸出(価格×数量) -輸入(価格(10兆円)×数量)

GDP(生産側) =生産(価格×数量) -中間投入(価格(10兆円)×数量)


となり、この実質値は、


GDP(支出側) =最終消費支出(数量) +総資本形成(数量)

+輸出(数量) -輸入(数量)

GDP(生産側) =生産(数量) -中間投入(数量)


となり、変化はありません。


ちなみに、この時のデフレータを見てみると、輸入価格が下落して、最終消費財に転嫁しない場合は、GDPデフレータは上昇することになります。このあたりの話は何度か「ホームメードインフレ」の話の中でふれたとおりですが、そこでは「輸入価格が上がった時」の議論でしたが、今回の油価下落の時はその逆の動きになります。

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