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2015年4月

2015年4月21日 (火)

物価指数のバイアス【補足】

 コメントいただきありがとうございました。


ありがとうございます!連鎖指数と固定指数との比較でイメージがかなりはっきりと掴めました。と同時に、CPI
の上方バイアスを考慮する時には常に基準年を考える繊細な注意が必要なことも分かりました。


生活扶助cpi
も、2010年基準で2008-2010の伸びを計算すると、2008年の指数を実態より高く算出してしまっているので、実際より物価下落を大きく見てしまうという問題が確かにありますね(かといって2005年基準が正しいわけでもないので難しい)。東洋経済の記事では、厚労省はこれをパーシェと説明したそうですが。


 私も今になって、
ご指摘の東洋経済の記事を拝見しました。コメントでいただきましたとおり、この記事では「ラスパイレス方式とパーシェ方式の混合」と書いてありますが、その点は誤りのように思えます。実際には「2010年基準のラスパイレス方式」で統一しただけのように見えます。なぜなら「パーシェ方式」を作るためには、すべての年において、その年の購入数ウェートで計算する必要がありますが、この記事で書いてある計算では常に2010年のウェートで作成しているように見えるためです。


 ですので、今回の話は、「ラスパイレス方式とパーシェ方式の混合」という話ではなく、「2010年基準のラスパイレス指数でみた2008-10年の指数」と、「2005年基準のラスパイレス指数でみた2008-10年の指数」の比較ということになります。そして、前述のとおり2005年基準で見た2008-10年は基準年より後ですので伸び率が連鎖よりも高く、2010年基準で見た2008-10年は基準年より前ですので伸び率が連鎖よりも低くなります。そして、どちらが正しいということではなく、統計上はどちらも正しい数値ですので、どちらを採用するかという決めの問題となるような気がします。(なお、2005年基準の指数を採用するのであれば、2011年も2005年基準で作成するべきという意見もあると思います。)


 連鎖方式を採用していれば、伸び率については基準年を何年にしても影響は出ないですから、このようなバイアスの議論をする必要もないのですが。。。


(注)以下はさらに補足です。この厚生労働省が言ったと記事に書いてある「パーシェ方式」の話ですが、私個人としては以下のような意味なのかなと思いました。


 まず、準備として、
2005年基準で見た2008年、2010年のラスパイレス指数はそれぞれ、

12

となります。


つづいて、パーシェ指数は、

34
となります。


また、
2010年基準で見た2008年のラスパイレス指数、パーシェ指数はそれぞれ、

56
となります。

ちなみに、2010年基準で見た2010年の指数は当然ラスパイレス、パーシェともに1です。


ここで、2005年基準でみたラスパイレス指数の2008年~2010年の伸び率を見ると、

7となり、また、2010年基準でみたパーシェ指数の2008年~2010年の伸び率を見ると、8となり、伸び率でも一致するようには思えません。


ただし、これが基準年同士、すなわち
2005年から2010年の伸び率になると、いずれも9となり一致します。


ラスパイレス方式とパーシェ方式の混同という話は、この基準年についての話をいっているだけのように思えるのですがいかがでしょうか?

2015年4月14日 (火)

物価指数のバイアス

ご質問をいただいておりました。


ラスパイレス物価指数では、安くなったものへの買い替えなどバスケット変更を捉えられないので、基準年から離れるほど最適なバスケット(欲しいものを出来るだけ安く変えるようなバスケット)から乖離して物価指数を高く見積もってしまうということは分かります。


この、最適バスケットからの乖離は過去に対してはどうなのでしょうか。たとえば現在の2010年基準のCPIを見た時、2005年の物価指数に使われる2010年のバスケットは最適なものと乖離しているはずです。すると、2005年の物価指数は実態より高くなっている(2005年から2010年までの物価指数上昇率は実態より低くなっている)ということになるのでしょうか。つまり上方バイアスは基準年以降についてであって過去については下方バイアスになったりするのでしょうか(GDPの個人消費デフレーターとの関係からするとどこか間違っている気がしますが)。


より具体的に申しますと、厚生労働省が生活保護費の物価調整のために算出している、生活扶助cpiに対して、2010年基準にすると2008年から2010年までの物価上昇率を実態より小さく見てしまう(物価下落率を実態より大きく見てしまう)という批判がありますが、それは妥当なのでしょうか、という疑問になります。今週号(2015411日号)の週刊東洋経済にあった批判です。



物価指数の上方(下方)バイアスについてのご質問です。ご質問でも触れておられます通り、固定式のラスパイレス物価指数(CPI)では上方バイアスが、固定式のパーシェ物価指数(GDPデフレーター)では下方バイアスがある可能性が高いです。それは、計算式を見ればよくわかります。


固定式ラスパイレス物価指数については、

1


固定式パーシェ物価指数については、

2


と計算できます。


ラスパイレス指数の計算式の分子の部分、3
は、基準年の購入数ウェートでt年の価格を集計したものとみることができます。この時、t年の価格体系で実際にモノを購入するとした場合、本来購入数ウェートは異なるはずで、具体的には安くなったものの購入ウェートが増え、高くなったものの購入ウェートが減るはずです。しかし、実際にはそうなっていない、すなわちこの集計式が示しているものは「高いものをたくさん買い、安いものを少なく買う」という状況のはずです。この状況は、何かしらの理想となるはずの集計数よりも数値が高くなっているということを意味しているはずです。


そして、ラスパイレス指数の場合は、その集計数が「分子」にあるので、基準年からずれるほど上方バイアスが生じてしまう可能性が高いわけです。


同じことはパーシェ指数の分母の部分、4
にも言えて、そしてパーシェ指数の場合はこの集計数が分母に来るので、下方バイアスが生じてしまう可能性が高くなります。


(注)今の議論でお分かりいただけたと思いますが、「値段が安いものをたくさん買う」という通常の経済行動を行わない主体の場合は、この議論は成立しません。事実、非市場財を購入している、政府最終消費支出や非営利団体最終消費支出などでは、あまり明確にバイアスが生じないことが起こってもおかしくないと思います。


そしてご質問の基準年から過去についてですが、これも上記の議論でお分かりいただけます通り、ラスパイレス指数なら基準年から過去に向かって離れても「上方バイアス」が、パーシェ指数なら基準年から過去に向かって離れても「下方バイアス」が生じる可能性が高くなります。


これを明確に示すためには、バイアスの発生が抑えられる連鎖指数と比較すると分かりやすいのですが、残念ながら消費者物価指数は「基準年より過去の連鎖指数」を公表していないようです。ですので、ご質問の趣旨とは外れますが、基準年より過去のデータも公表している「GDPデフレーター」のグラフを見てみましょう。


※2005年基準GDPデフレーター(連鎖及び固定)の推移

5


これを見ると、基準年及びその翌年以外は、固定指数について見事に下方バイアスがあることが分かります。GDPデフレーターはパーシェ指数なので下方バイアスになりますが、CPIはラスパイレス指数なのでこの逆に上方バイアスが見て取れることになります。


これは指数そのものについてですが、伸び率について言うなら、パーシェ指数については基準年より前は固定指数が連鎖指数より伸び率が高く、基準年の2年後からは固定指数が連鎖指数より伸び率が低くなります。ラスパイレス指数については逆のことがいえます。


ということでお答えになっているでしょうか?

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