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2015年2月 7日 (土)

三面等価

追加でご質問をいただいていました。


ありがとうございます。

できるだけシンプルに理解したいので、ここから先は、輸出と輸入を除いて書かせて下さい。


例えば、実際に消費者が自動車を購入する場合、その自動車が完成し、販売されるまでには様々な工場や機械設備などが使用されていて、その工場や機械設備などの減価償却費が、完成した自動車の価格には含まれているのではないかと思うのです。

つまり、GDPの定義にある総固定資本形成の企業の支出分は、実際には消費者が最終消費財を買う時点で、その総資本形成の分も消費者が最終的には支払っている、ということになるのではないでしょうか?


もしかしたら、消費者が今買っている最終消費財に含まれている減価償却費は、過去に作られた機械設備に対する支払いであって、一方、企業が今支出している総固定資本形成は、現在建設中の機械設備に対する支払い、ということなのでしょうか。


分かりにくいご説明となっていたようで申し訳ございません。


ご質問を拝見して思ったのですが、GDP(生産側)、GDP(支出側)、GDP(分配側)の意味していることを誤解しておられるように感じました。GDPとはあくまで「一定期間でどれだけ付加価値が生み出されたか」を測る指標(GDP(生産側))でして、GDP(支出側)はその付加価値がどのように使用されたかを示しており、GDP(分配側)はその付加価値がどのように配分されているかを示しているだけです。別に、GDP(分配側)で配分された一定期間に作られた付加価値でもって、同期間に生産されたGDP(生産側)の付加価値を購入しないといけないわけではありません。それは、GDP(支出側)の項目に在庫品増加が入っていることを思い返していただければお分かりいただけると思います。(総資本形成とは、総固定資本形成と在庫品増加を足したものです。)


GDPの三面等価とは、GDPの本来の定義である「一定期間における付加価値の増分」が、どのように等しくなるかを示しているだけですので、実際の消費活動とは別の話です。


以上を前提として、ご質問を少し考えてみようと思います。


まず、「例えば、実際に消費者が自動車を購入する場合、その自動車が完成し、販売されるまでには様々な工場や機械設備などが使用されていて、その工場や機械設備などの減価償却費が、完成した自動車の価格には含まれているのではないかと思うのです。」についてです。「価格に含まれる」という言い方の前提には企業が自由に価格を決められるということがあると思いますが、この点はいろいろ議論があると思います。その点は置いておくとして、ひとつだけ言える事は、『企業は設備投資を行うに当たって、その設備投資を行った期間でその設備投資にかかった費用を償還する必要は無い』ということです。ですので、その生産に必要となった経費を支払い、複数年で見てその設備投資にかかった費用を賄え、従業者に給与を支払い、税金もきちんと支払い、企業の営業余剰を確保できるだけの価格を生産物に設定しようとするでしょう。(それができない商品は価格を下げることを余儀なくされ、赤字に
つながるわけです。)これって正しくGDP(分配側)の話ですよね。(正確にはGDP(分配側)+中間投入=生産ですが。)


続いて「
まり、GDPの定義にある総固定資本形成の企業の支出分は、実際には消費者が最終消費財を買う時点で、その総資本形成の分も消費者が最終的には支払っている」というご質問ですが、総資本形成は総固定資本形成の意味と考えてご回答しますと、超長期的にみて最終的にはそうかもしれません。(ずっと総固定資本形成にしか使われない製品を使って総固定資本形成にしか使われない製品を作り続けるというケースもまれにあるのかもしれませんが、通常はサービスも含めて最終的には最終消費支出に使われる商品に回っていくのだと思います。)


ただ、同一期間で生み出された付加価値を配分しただけのGDP(分配側)で得た同期間の所得で、それをすべて買わないといけない、というわけではありません。繰り返しますが、
GDP(支出側)は一定期間における最終消費支出と総資本形成と輸出から輸入を引いたものに等しくなりますGDP(分配側)は一定期間における雇用者報酬と営業余剰と税金と減耗に分けられます、と言っているだけのところに「総資本形成の分も消費者が最終的には支払っている」という議論をしても、この式とは関係がありませんとしか申し上げられないと思います。


また、「消費者が今買っている最終消費財に含まれている減価償却費は、過去に作られた機械設備に対する支払いであって、一方、企業が今支出している総固定資本形成は、現在建設中の機械設備に対する支払い、ということなのでしょうか。」という記述はその通りでして、減価償却というものは、設備投資を複数年にわたって費用計上しましょうというものですから、当年度の減価償却分以外はすべて過去に行った設備投資に対するものです。


固定資本減耗も同じようなもので、基本的にある時点においてそれまでに形成されてきた固定資本がどれくらい利用されて減っていくのかを計上するものです。


相当長くなってしまいましたので、次回に続きます。

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コメント

この記事の直接の質問でなくてすみません。

https://www.boj.or.jp/research/wps_rev/wps_2016/wp16j09.htm/

上記の、日本銀行による分配側からのGDP推計が一部で話題ですが、生産側GDP推計の確報においてこの論文で指摘されるような『相応数の「消費税抜き」データが混入している可能性がある』ことについて、実際にあり得る、特に大きな影響を及ぼす規模であり得るものなのでしょうか?確報の話なので基本的に供給側統計の全数調査が基ですから、個人的にはそういう問題は入りづらいしっかりしたもののイメージがあるのですが、現場経験者の感覚からするとどうなのでしょうか。

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