« 分配と固定資本減耗 | トップページ | 分配と固定資本減耗(3) »

2015年2月 4日 (水)

分配と固定資本減耗(2)

前回の続きです。


さて、この時「もしそうだとした場合、次に、国内総生産の中の 「固定資本減耗」 は、私達個人の所得になるのでしょうか?」ですが、ここで分かりやすく考えるために「固定資本減耗」は企業の「減価償却」のようなものと考えてください。(もちろん、national accountsでは、「固定資本減耗」は「減価償却」とは異なる概念だと強く言っていますので、厳密には異なりますが、概念的にはそのようなものと考えると良いと思います。)


GDP(生産側)は付加価値の合計額で、それと等しい額の
GDP(分配側)は生産により得られた付加価値がどのように分配されるかを見るものといえます。そして、そのうち「私達個人」に回る分は「雇用者報酬」になります。これ以外に「利払い」や「投資収益」などの所得分配後に「私達個人」に配分されるものが「可処分所得」などの所得となりますので、このGDPだけを見ている段階では「雇用者報酬」が「私達個人の所得」の一部となる、としか言えません。また、一部例外はあるのですが、固定資本減耗は固定資本形成を行う企業又は政府等にしか発生しません。


ですので、個人の所得には入りませんが、国内総所得(GDI)には固定資本減耗は含まれます。


では、続きまして「私達は、私達の得る国民純所得で、私達の作った国内総生産のすべてを買い取ることはできない。」という点については、「買い取る」といういい方は別として、「国内純所得(NDI)」と「国内総生産(GDP)」では固定資本減耗の分だけ額が違いますから当然一致しません。


なお、この「買い取る」という表現から想像するに、ひょっとしたらGDP(生産側)が実際の国内に出回る供給額で、GDP(分配側)が所得として比較することを考えておられるのかもしれません。しかし、そのように所得と実際に支出した額を比較する勘定は
national accountsでは別にあります。得た所得(可処分所得)と最終消費支出を比較するのが「所得支出勘定」(うち「所得の使用勘定」)、可処分所得-最終消費支出=貯蓄なのですが、その貯蓄と総資本形成を比較するのが「資本調達勘定」になります。なお、この「可処分所得」にも「貯蓄」にも(純)と(総)、すなわち固定資本減耗を含むものと含まないものがあります。


ここで、冒頭に「固定資本減耗」は「減価償却」のようなものと思ってくださいと申し上げたことに戻ります。企業会計でも「減価償却」って、会計上の処理であって、実際
のキャッシュフローには影響を与えませんよね?


具体的には、例えば10億円の設備を購入して、今後10年間1億円ずつ「減価償却」を計上する場合を考えると、2年目以降は会計処理上「1億円」の費用が出ますが、キャッシュフロー上では、現金はまったく減りません。(そのかわり、1年目に10億円減っていますが。。。)


これと同じように、このGDPの中の「固定資本減耗」は帳簿上の「費用」ですから実際に設備投資に使われる費用とは全く異なります。


実際に最終消費や設備投資に使われる原資という意味で言えば、本来は国内総所得(GDI)ではなく、海外からの所得の受け払いを調整した
国民総所得(GNI、さらに海外との移転取引を含めた可処分所得の方がフィットするようにも思えます。ただ、この可処分所得の中にも「雇用主が支払う社会保険料」などのように実際には家計の手元に入るわけでない費用もありますし、また、GDP(支出側)の中にも、「医療給付のうち保険負担分」(政府最終消費支出に含まれます)のように自分で支払っているわけでないものもありますから、どうしても実感とかずれてくると思います。


そして、前述のとおり、
これらの所得概念にも(純)と(総)があり、この違いも「固定資本減耗」を控除したかどうかになります。


次回に続きます。

« 分配と固定資本減耗 | トップページ | 分配と固定資本減耗(3) »

経済・政治・国際」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く

(ウェブ上には掲載しません)

トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/559179/61082267

この記事へのトラックバック一覧です: 分配と固定資本減耗(2):

« 分配と固定資本減耗 | トップページ | 分配と固定資本減耗(3) »

無料ブログはココログ
2016年8月
  1 2 3 4 5 6
7 8 9 10 11 12 13
14 15 16 17 18 19 20
21 22 23 24 25 26 27
28 29 30 31