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2014年4月

2014年4月27日 (日)

CPI

しばらく見ておりませんで、長い間、いただいていたご質問にお答えしておりませんでした。

申し訳ありません。


内閣府の人から見て、消費者物価指数というのはどういう風に見えているでしょうか。


ご質問をいただきありがとうございました。


「内閣府の人」とまとめて言われると、内閣府を代表してお答えする立場にもありませんので、なかなかお答えしにくいので、「昔、統計作成
の場にかかわっていた人間の個人的な意見」としてお答えできればと思います。


まず、CPI(消費者物価指数)は、ILOの国際基準に基づき各国で作られており、作成方法についての深い研究がなされており、かつ、各国との比較可能性が高い、非常に重要かつ有用性の高い統計と思っています。


今回のご質問をいただくまでは、実は見たこともなかったのですが、ILOの国際基準現物は、以下のURLにあるのですが、個人的に関心があった「9章 指数の計算(集計?)方法」と「11章 エラー及びバイアス」のところだけ、ななめ読みしただけですが、しっかりと専門的な議論が書かれている気がします。

http://www.ilo.org/public/english/bureau/stat/guides/cpi/index.htm#manual


特に、エラーとバイアスのところでは、標本誤差と非標本誤差から始まり、バイアスの話などいろいろ出てきます。national accountsというサンプリング調査が無い加工統計の推計に関わっていた身からすると、このようなサンプリング誤差(標本誤差)の内容がマニュアルに入ってくることなど非常に新鮮でした。また、バイアスの話も、主にボスキンレポート関係のようなのですが、よく知っていたラスパイレス指数の上方バイアスの話だけでなく、品質変化バイアスや新製品バイアス、あと、当方の能力では十分理解できなかった基礎集計(elementary aggregate)バイアスなども書いてあり、非常に勉強になりました。品質変化の話は、ヘドニックにつながってくるんだろうなと思います。


個人的に日本のCPIで気になることは、やっぱり、Laspeyres指数の上方バイアスと、ヘドニックになります。毎回、CPIの基準改定のたびに、CPIの前年同月比が結構大きく下落するという印象があり、昔は単純に「せめて連鎖を入れれば良いのに」と思っていました。今回マニュアルを読んで、そんな単純な話でなく、最良指数(superlative index)の導入の可能性とかそこまで議論しているんですね。最良指数(私は単純にFisherというくらいのイメージで書いています。本当はもっと複雑な議論があるのだと思いますが。。。)の導入可能性とかそんな話にもなっているのですね。CPIFisherを入れるとなると、national accountsでも計算は結構大変なことになると思います。(というか、本当に作成者の一部とコアな専門家しか理解できない世界になってしまうと思います。今のPaasche連鎖の価格指数は、公表資料だけからでもある程度の再現性はあると思うのですが、Fisher連鎖の価格指数になったらほぼ不可能なのではないかと思います。)


CPIの基準改定が大きな話題になった平成12年基準改定(私が統計作成部局にいた時に行われた22年基準改定の2回前の改定です)の時は、最良指数について、「比較時のバスケットが分からないと計算できないため、速報性が要請される公式の指数に用いることは困難である。」と書かれています。(
http://www.stat.go.jp/data/cpi/pdf/siryou2.pdf

(この時は、中間年のウェート調整を導入するという結論に持っていこうとしていました。)


ただ、今や、参考値として
Laspeyres連鎖指数を公表しているわけですから、実はFisherもやろうと思えばできてしまうのかもしれません。ということで、Laspeyresの連鎖の話に戻しますと、前年分の家計調査の集計が終わらないと前年分のウェートが作れないので、確か年初3か月くらいは全前年のウェートを使った暫定値として公表して、家計調査が出た後に改定していたと記憶しています。そのため、連鎖指数は「参考値」としか公表できないということなのかと思っています。そう考えると、Fisherで公表しても同じことで、後は、ユーザーが、固定指数と連鎖指数を見比べながら判断するしかないのかなという気もしています。


なお、今、平成27年基準改定の議論が進められていることも今回勉強してわかったのですが、その中で連鎖指数で「CPI総合」や「生鮮食品」も公表する話が進んでいるんですね。それに、現在の月別指数は、最終月(すなわち12月)価格でリンクする形で作っているようなのですが、生鮮食品のみは前年平均価格でリンクするみたいですね。確かに、季節性の高い生鮮食品について、毎年12月の価格でリンクしていいのかというのは、一理あるような気がします。これが原因で、月別の「生鮮食品」や「CPI総合」を出していなかったみたいですが、コア指数のみならず、生鮮食品だって立派な物価ですから、これが連鎖で月次で公表されるのは良いことだと思います。


JSNAでも第4四半期でリンクする形で連鎖指数を作っているのですが、
JSNAでは実数値を作成する必要があるため、最終的には各四半期を暦年値に一致するように調整するのでこの点では問題はないように思えます。が、暦年値が出るまでは、各四半期は第4四半期の数量でリンクしていますから、年後半に大幅に実質値が増えたとかいうことになると、暦年値に調整するときに大きな改定になります。(詳細は、こちらをご覧ください。

http://taro-sna.cocolog-nifty.com/blog/2011/04/post-95cd.html


そう考えると、生鮮食品について、毎年12月の価格でリンクすることが嫌だという気持ちは非常によくわかります。


最後にヘドニックについてなのですが、パソコンの価格下落については本当に悩みました(笑)ただ、これは、パソコンの品質向上が激しすぎるので、特性をちゃんととらえようとすればするほど(特性パラメーターを増やすほど)、価格が下がってしまうという統計メーカーの悩みもなんとなくわかるのですが。。。

この分野については、これ以上突っ込む知識もないので、とりあえずこれくらいにしておきます。


なお、以下は完全に蛇足なのですが、今回の内容を書くに際して、いろいろな人の論文などを見させていただきましたが、その際、CPIを推計している統計局及び専門の先生のみならず、日銀のスタッフがかなりの研究をされていることが印象に残りました。多くの分野についての専門のスタッフ(もちろん個人的な分析として研究されているのだと思いますが)を持てる中央銀行はやっぱりうらやましいと感じました(笑)


というわけで、CPIに対する個人的な感想でした。

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