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2014年2月16日 (日)

推計手順

ご質問をいただいておりました。


 
大変勉強になりました。ありがとうございました。

 もし時間があったらでよいのですが、GDPを推計していく行程の具体的な記載をいただけないでしょうか。たとえば、どの程度分業しているとか、どういう時間軸で進んでいくのか、といったことは、外からはまったくみえません。海外に比べ日所に少数でやっているという声もききますし、また、いわゆる国2の方が支えている部分も少なくないともききました。


ありがとうございます。確かに、どのように推計しているのかというのは分かりにくいかもしれませんね。。。


大まかな考え方をみるために、一番分かりやすいのは、年次推計の推計マニュアルだと思います。

http://www.esri.cao.go.jp/jp/sna/data/reference1/h17/pdf/chap_1_2012.pdf


これのP1に図1-1があるのですが、これが一番分かりやすいかと思います。


今回はGDPというご質問でしたので、具体的に関わってくるのは、四角で囲われた「コモディディー・フロー法」というところと「付加価値法」というところ、それに、「国内総生産(支出側名目)」とあるところ及びその左に3つほど「対家計民間非営利推計」、「財政推計」、「海外推計」というところも関係があります。更に、実質化という意味では、右上にある「基本単位デフレーター」と書いている部分は、正しくデフレーターを作成するという意味で関係があります。


そして、どのように分担しているかと言うと、この「コモディディー・フロー法」、「付加価値法」でそれぞれのユニットとなります。この2つのユニットは、現在は同じ課になっていますが、昔は別の課であったこともあり、体制と言う意味では別のユニットとみた方が良いかと思います。(もちろん、相互調整は必要ですが。)


そして、この「コモディティー・フロー法」による推計値を元に、GDP(支出側)を仕上げていくためのユニットが一つあります。ここに、コスト積み上げでないと推計できないため、財務諸表等から推計していく部門(「対家計民間非営利部門」及び「政府部門」)
(注)とBOPの組み換え等が必要な「海外部門」も加わって一つのユニットになります。このコスト積み上げの部分は、当然、「コモディティー・フロー法」、「付加価値法」の推計にも必要ですから、この両ユニットに反映するとともに、自らのユニット内で作るGDP(支出側)の推計にも使います。


(注)コスト積み上げについて


例えば、政府部門は、市場価格が存在しないため産出額を測定するために、


政府の算出 = 雇用者報酬+中間投入+固定資本減耗+生産・輸入品にかかる税


として推計します。こうして生み出された政府の産出額は、誰も消費支出してくれませんから、政府自らが消費したものと計算します。これに、「他の部門が生産したものを政府が消費支出した部分(現物社会給付)」を加え、「政府が戦災したものを他の部門が消費支出した部分(商品・非商品販売)」を除いたものが政府最終消費支出になります。


この辺りの詳細は、
http://taro-sna.cocolog-nifty.com/blog/2011/12/post-c4a1.htmlをご覧ください。


そして、GDP(生産側)は、「付加価値推法」推計のユニットで作成されます。

こうして出来上がった、GDPの名目値を実質化するために使う、デフレーターを作るためのユニットが必要になります。


というわけで、大体「①コモディティー・フロー法ユニット」、「②付加価値法ユニット」、「③GDP支出側統合ユニット(含:「対家計民間非営利部門」及び「政府部門」)」、「④デフレーター作成ユニット」の4ユニットに分かれて分業しているという感じかと思います。そして、流れとしては、まず、③のユニットから、「対家計民間非営利部門」及び「政府部門」に関する情報を、①と②のユニットそれぞれに提供し、①、②がそれぞれの推計をします。②のユニットにより、付加価値法推計によるGDP(生産側)はこうして完成し、①のユニットによるコモディティー・フロー法推計の値を使い、「対家計民間非営利部門」、「政府部門」及び「海外部門」の推計値を統合し、GDP(支出側)ができるという感じです。更に、④のユニットが作成したデフレーターを用いて、GDP(生産側)、GDP(支出側)の実質値が推計されます。


現状はこの体制で推計しています。


が、これがベストなのかと言うと必ずしもそうではないという異論もあると思います。私個人も、①のユニットと、③のGDP支出側推計値統合ユニット、は一緒に仕事をしてしまった方が良いのではないかと思っています。ただ、③のうちの、「対家計民間非営利部門」及び「政府部門」はまた別のユニットとして切り離した方が良いかなとも思います。この部分は、政府の個別の制度を良く理解している必要がありますし、少し①とは異なる専門性が必要な気もしますので。(もちろん、これはあくまで私の個人的な意見なので、いろいろ異論はあると思います。)


また、人員数についていうと、おそらく少ないと思います。アメリカの主席統計担当官経験者の話を聞いたことがあるのですが、アメリカでは連邦政府だけで統計に携わる人は6000人いて、これでも減らされており足りないと言っていました。当然、これはnational accountsだけでないので単純に比較はできませんが、日本は数十人ですから、もっと苦しい状況にあると思います。また、人員のタイプについても、いろいろな職種の方、他省庁や民間企業から出向等でいらしていただいている方と、たくさんいらっしゃいます。本当に職人芸の世界なので、職種等に関係なく優秀な方のお力で何とか推計できているという感じだと思います。


前述のとおり、職人芸の世界ですので、できれば、national accounts推計の職人と言うような専門家がたくさん出てくればいいとは思うのですが、この面でもいろいろと難しい問題があります。なぜなら、「national accounts」という世界が、非常にニッチな世界なので、この世界の専門家(しかも推計面で)になったからと言って、それほどメリットが無いのです(笑)。ですので、この分野の専門家になろうという意欲を持たれる方も非常に少ないのが現状なのではないかと思います。


何とかこの現状を改善するために、まず、national accountsの有用性、こんな分析ができますよ、といったメリットを広めて、それによって、推計担当者にとっても魅力的な仕事になるようにできればと考えております。。。

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