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2013年12月12日 (木)

公的固定資本形成

まだ、硬貨のご質問についてお答えしていないのですが、ひとつ、時事的なご質問をいただきましたので、少しそのことについて触れさせていただきます。

いつも勉強させて頂いています。

さて、ここでいいのか分かりませんが一つ質問よろしいでしょうか。

本日、2012年の確報値が発表となりましたが、公共投資が速報から大きく鈍化しました。

http://www.nikkei.com/article/DGXNASFS0900U_Z01C13A2EB1000/

速報と確報で使っている系列が違うのはわかりますが、これほどずれる理由としてどのようなものが考えられますか?また、予算はつけたが最終的には何らかの要因、たとえば人員不足で執行できなかったといった解釈をしてよいものなのでしょうか?

まだまだ足りないとはいえ、震災復興のための公共事業がここまで少かったとはちょっと思えませんが、どういった可能性があるでしょうか。

お時間のある時にでも教えてもらえれば幸いです。確報はあまり分析しなれていないので他にも何か留意点があればそれもお願いできると嬉しいです。

ご質問いただきありがとうございます。

私は、今は担当部局を外れてしまいましたので、今回起こったことについては良く分かりません。が、私が担当部局にいたときの経験及び一般論ということで書かせてください。

まず、速報と確報では、そもそも推計方法も異なりますし、使っている基礎統計が大きく異なりますので、確報推計値になって改定幅が大きくなることはたまにあります。改定というと、民間企業設備や民間在庫品増加などの民需が話題になることが多いのですが、実は、政府部門も大きな悩みのタネだったというのが、私が担当していたころの記憶です。

政府部門の速報値推計について何が問題かというと、「日本においては、政府の支出状況をタイムリーに把握できる情報(統計)が存在しない」ということなのです。日本においては、中央政府の支出状況が分かる情報は、年度終了後から約1年半後に公表される決算情報まで分かりませんし、地方政府については、さらにその後に公表される地方財政統計年報が出るまでは、全体像が分かりません。

確報推計は、これらの決算・統計情報を用いて積み上げて作っていますから、政府の活動については適切に把握できているのではないかと思います。そこで、速報推計はどのように推計しているか見るために、四半期別GDP速報の推計マニュアルを見てみましょう。

http://www.esri.cao.go.jp/jp/sna/data/reference1/h17/pdf/kaisetsu20130730.pdf

そこには、

公的固定資本形成(受注ソフトウェア分以外)を公的住宅、それ以外に分け、『建設総合統計』(出来高ベース・公共)の居住用、それ以外の対前年度値比で延長推計した値に、供給側統計を使用して推計した受注ソフトウェア総額の公的分按分値を加算して推計する。

と書いてあります。つまり、公的固定資本形成は、速報値段階では、「建設総合統計」の公共部門の値で延長推計しているということです。そこで、24年について、建設総合統計の公共の伸び率と、速報、確報の伸び率を比較してみましょう。(注:実際のQEの推計では、「居住用」と「それ以外(非居住と土木)」で分けて伸ばしているので、実際の推計方法とは厳密には異なります。)

      建設総合統計    速報(79①)   確報 

24年度    12.4%       14.9%      1.3

ということで、見事に、速報値は建設総合統計の伸び率に近いことが分かります。しかし、決算を積み上げてみたら、結果が異なっていたということになります。こういった、基礎データのズレの要因は、本当に分からなくて、2次統計(加工統計)作成者にとっては悩みどころです。

建設総合統計は、建築着工統計や建設工事受注動態統計の受注額を元に、進捗転換しているものです。建築着工統計は、すべての建築物について対象としています(建築工事の場合は届出が法定義務ですから、すべて把握することができます)から、この部分で実際の予算執行額と大きくずれてくるとは考えにくいのではないかと思います。ですので、サンプル調査である建設工事受注動態統計か、進捗転換の部分で、実際の決算額とズレが出ているのかもしれませんが、正直私にも良く分かりません。。。

ということで、あまり根本的なお答えにはなっていないのですが、速報値と確報値の推計方法(基礎データ)の違いについてでした。

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コメント

ありがとうございます。速報は色々と苦労しながら作っている様子がうかがえます。使う側もその限界を理解した上で使わないとならないのですね。

GDPの供給と需要側の統合の質問についての追記です。中村洋一「新しいSNA」に下記のような記載がありました。

**


支出側の情報は支出行動の変化を直接的にとらえるというメリットがあるが、反面でサンプル調査を中心とするために異常値などのノイズを含む場合もある。これに比べると、供給側のカヴァレッジが広く速報性にも優れる場合が合うなどの長所がある。...供給、支出の両面からの推計を組み合わせるのは、2つの推計方法の端緒を補うことを目的としている。


**

やはり支出面だけだと、推定が荒いというのは理由なのですね。ただ、一方で、支出面と生産面の値に大きなギャップがあり、その調整の側面もある、という声を聞いたこともあります(記憶の間違いかもしれませんが)。

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