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2013年12月30日 (月)

「需要側と供給側」の2つの意味(3)

話が長くなってきましたが、いただきましたご質問に戻りましょう。今回のご質問は、GDP(需要側)の推計方法についての「生産側統計」と「需要側統計」のどちらを使っているかという話になります。

今回の記事でも少し触れましたが、かつては、確報では「生産側統計」、QEでは「需要側統計」を使って推計していました。そして、速報と確報で大きく推計値が異なることがありました。ご質問でもありましたとおり、理屈上は、生産側統計を用いようが、需要側統計を用いようが等しくなるはずです。が、現実にはそれは難しいことです。

まず、需要側については、需要側に「あなたは何をどれだけ買いましたか?」と聞くわけですから、そもそも全員に聞くことなど不可能なのでサンプル調査にならざるを得ず、しかも、思い違いということもあるわけです。一方で、生産側は、作った人に「どれだけ作りましたか?」と聞くわけですから、聞く対象者も少ないですし、思い違いの割合も小さそうです。

ただし、生産側については、産業連関表の配分比率は5年に1度しか分かりませんし、特に速報値推計(四半期データ)では、全数調査である工業統計表は使えないため、サンプル調査である生産動態統計等を使っており、年次推計よりもデータ数(把握できる品目の細かさ)が荒くなるといった問題もあります。何より、例え生産した人に聞いたとしても、全部の人に聞いているわけではないです(工業統計でも3人以下の事業所は対象外ですし、回収率100%ということもありえません)から、標本誤差や非標本誤差は残ります。

そのため、現在のQE推計では、この両者を統合する方法を用いて推計しているわけです。そして、その統合比率は、需要側、供給側それぞれの推計値の標準誤差を元に、偏りが無く、バラつきを最小にする(つまり、最良不偏推計量とする)統合比率としています。但し、母集団数、サンプル数変われば標本誤差は変わりますし、そうすると、そのたびに統合比率を変えるべきという意見もあるかもしれません。しかし、統合比率を毎回変えてしまうと、それが原因で系列が繋がらない(よく断層ができると言います)とか、季節パターンが変わってしまうという影響がでてくる可能性もあります。

また、このような統計理論から求めるのではなく、過去の経験則から、年次推計の結果値に最も近くなるような統合比率とするべきという意見もあるかもしれません。但し、このやり方でやっても、過去は確報の結果と近かったけど、来年は全く異なる可能性もあるわけです。

そういったわけで、この部分は、非常に悩ましい部分だと思います。そして、一部の人が言うように、単純に「「需要側統計」よりも「供給側統計」が誤差が少ないのだから、需要側統計を使うのはやめるべき」と言い切れる話でもないと思います。というのは、供給側統計の方が誤差が少ない(だろう)という一般論はあるにしても、毎回毎回最新の配分比率を情報として入手できるわけでもありません。また、何より、実際に買った人から「いくら買いました」と聞いた統計である、需要側統計の説得力も(ブレは大きいかもしれませんが)捨てがたいものがあります。

というわけで、やや長くなりましたが、需要側統計と供給側統計について、なかなか悩ましい話ですというお話でした。

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経済・政治・国際」カテゴリの記事

コメント

大変よくわかりました。この部分は、あまり書籍に記載されていない印象なので、大変勉強になりました。

ちなみに、GDP統計はあくまで加工統計ですから、他の一次統計から組み合わせて作成されることになります。需要側だと、家計調査など、明らかに速報性の高いデータを取り込むことができます。一方、簡易コモディティフロー表はどの程度、速報性を含んだ情報(たとえば月次ベースで公表されるデータ)を取り込めているのでしょうか。この点が十分でないと、供給側を取り込むことの意味合いが薄れてしまう印象もある気がいたします。 

下記をみると、そのあたりが、今ひとつピンとくる形で記載されていない章です。
http://www.esri.cao.go.jp/jp/sna/data/reference1/h17/pdf/kaisetsu20130730.pdf

すいません。。

「1) 確報推計のコモ法における91 品目分類の出荷額暦年値の定義に合わせ、月次又
は四半期値の基礎統計から四半期別出荷額の動向を表す補助系列を作成する。」(P1)
http://www.esri.cao.go.jp/jp/sna/data/reference1/h17/pdf/kaisetsu20130730.pdf

という書きぶりをみると、月次あるいは四半期ベースで取得できるデータにしぼり、推計しているように思われますね。この文章だけだと、簡易版のコモディティーフロー法の推計を再現することは不可能に思われますね。もう少しわかりやすい&詳細な解説があれば、と思うのですが。。

http://taro-sna.cocolog-nifty.com/blog/2011/01/post-3d2f.html
コモディティフロー法については、上記に説明がありますが、おそらくネット上でコモ法を説明しているなかで、これが一番外観しやすい説明になっていますね。

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