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2013年12月

2013年12月31日 (火)

硬貨

大分前からご質問をいただいておりながら、ご回答できておりませんで、申し訳ございませんでした。

いただいておりましたご質問は、

 1円硬貨が大量に発行されるようですね。政府の勘定はどうなるんでしよう。昔記念硬貨で同じ(「収支」は原料安で逆ですが)ことがおこり なるほどね とSNAの体系に「感動した」記憶があるのですが。

です。

非常に面白いご質問をいただきありがとうございました。これは非常に「ニッチ」な分野で、しかも、私も直接担当していた部分ではないですので、すぐには分かりませんし、正しいお答えにならないかもしれませんが、少し、資料を見ながら考えてみようと思います。

まず、national accountsに入る前に、貨幣及び紙幣(日本銀行券)とはどのようなものなのかを考えて見ましょう。そのためには、日本銀行が公表している「日本銀行の機能と業務」の第3章が分かりやすいと思います。

http://www.imes.boj.or.jp/japanese/pf.html

これを見ますと、冒頭に、以下の説明があります。

現金通貨が実際に使われるためには,「お札」や「硬貨」を製造した後,まず,これらを世の中に送り出すことが必要である。「お札」つまり銀行券は,独立行政法人国立印刷局が製造した後,日本銀行が製造費用を支払って引き取る。この段階では,銀行券は「モノ」として取り扱われる。その後,金融機関が日本銀行に保有している当座預金を引き出し,日本銀行の窓口から銀行券を受け取ることによって世の中に送り出され,「お金」として使用されることになる。(中略)発行された銀行券は,日本銀行の貸借対照表(バランス・シート)の負債に計上される。

これを読むと、特徴的なことが分かり、「お札」は、国立印刷局が製造した直後は「印刷した紙」に過ぎず、これを、中央銀行が引き取る段階では、「印刷代金」をお支払いして、あくまで「モノ」として引き取っているということです。では、いつから「お金」になるかというと、市中銀行が、中央銀行から受け取って(これには、何かしらの資産を中央銀行に売却するか、預金を引き出すか(預金も資産ですが。。。)という取引が行われることになります)、その「印刷した紙」が「お金」になるわけです。

最後のところにある、「発行された銀行券は、日本銀行のB/Sの負債側に計上される」ということもポイントになります。つまり、中央銀行は、その気になれば、何かしらの資産を購入しまくって、お金を発行することができるし、市中銀行も、当座預金を思いっきり減らして、銀行券に換えることもできるわけです。

こうしてみてみると、銀行券の価値の担保って、「最後は、その紙幣と同じ価値の資産を日本銀行が持っており、その資産と交換してくれるはず」という信用に基づいているんだということが分かります。

当座預金を減らす場合には、同じく負債間の取引ですから、バランスには問題は出ませんが、何かしらの資産を購入する場合は、資産と負債が両建てで膨らむことになります。ですので、その資産がきちんと発行した銀行券に見合う価値のものかどうか考えて購入しないといけません。なぜなら、その資産価値が下がったときに、日本銀行は債務超過に陥ったりしてしまう可能性もあるわけですから(笑)

話が横にそれてしまいましたが、次回以降本題に戻ります(笑)

2013年12月30日 (月)

「需要側と供給側」の2つの意味(3)

話が長くなってきましたが、いただきましたご質問に戻りましょう。今回のご質問は、GDP(需要側)の推計方法についての「生産側統計」と「需要側統計」のどちらを使っているかという話になります。

今回の記事でも少し触れましたが、かつては、確報では「生産側統計」、QEでは「需要側統計」を使って推計していました。そして、速報と確報で大きく推計値が異なることがありました。ご質問でもありましたとおり、理屈上は、生産側統計を用いようが、需要側統計を用いようが等しくなるはずです。が、現実にはそれは難しいことです。

まず、需要側については、需要側に「あなたは何をどれだけ買いましたか?」と聞くわけですから、そもそも全員に聞くことなど不可能なのでサンプル調査にならざるを得ず、しかも、思い違いということもあるわけです。一方で、生産側は、作った人に「どれだけ作りましたか?」と聞くわけですから、聞く対象者も少ないですし、思い違いの割合も小さそうです。

ただし、生産側については、産業連関表の配分比率は5年に1度しか分かりませんし、特に速報値推計(四半期データ)では、全数調査である工業統計表は使えないため、サンプル調査である生産動態統計等を使っており、年次推計よりもデータ数(把握できる品目の細かさ)が荒くなるといった問題もあります。何より、例え生産した人に聞いたとしても、全部の人に聞いているわけではないです(工業統計でも3人以下の事業所は対象外ですし、回収率100%ということもありえません)から、標本誤差や非標本誤差は残ります。

そのため、現在のQE推計では、この両者を統合する方法を用いて推計しているわけです。そして、その統合比率は、需要側、供給側それぞれの推計値の標準誤差を元に、偏りが無く、バラつきを最小にする(つまり、最良不偏推計量とする)統合比率としています。但し、母集団数、サンプル数変われば標本誤差は変わりますし、そうすると、そのたびに統合比率を変えるべきという意見もあるかもしれません。しかし、統合比率を毎回変えてしまうと、それが原因で系列が繋がらない(よく断層ができると言います)とか、季節パターンが変わってしまうという影響がでてくる可能性もあります。

また、このような統計理論から求めるのではなく、過去の経験則から、年次推計の結果値に最も近くなるような統合比率とするべきという意見もあるかもしれません。但し、このやり方でやっても、過去は確報の結果と近かったけど、来年は全く異なる可能性もあるわけです。

そういったわけで、この部分は、非常に悩ましい部分だと思います。そして、一部の人が言うように、単純に「「需要側統計」よりも「供給側統計」が誤差が少ないのだから、需要側統計を使うのはやめるべき」と言い切れる話でもないと思います。というのは、供給側統計の方が誤差が少ない(だろう)という一般論はあるにしても、毎回毎回最新の配分比率を情報として入手できるわけでもありません。また、何より、実際に買った人から「いくら買いました」と聞いた統計である、需要側統計の説得力も(ブレは大きいかもしれませんが)捨てがたいものがあります。

というわけで、やや長くなりましたが、需要側統計と供給側統計について、なかなか悩ましい話ですというお話でした。

2013年12月28日 (土)

「需要側と供給側」の2つの意味(2)

前回の続きです。

続いて、GDP(支出側)を見てみましょう。このGDP(支出側)には大きく分けて2つの推計方法が考えられます。ひとつは、

生産+輸入=国内総供給=最終消費支出+中間消費+総資本形成+輸出

という関係式が成り立ち、しかも、そのうち生産は前述の工業統計表を用いれば分かりますし、輸出と輸入は国際収支統計で把握できます。後は、最終消費支出、中間消費、総資本形成への配分比率は、これも産業連関表で把握することができます。

この式を少し変えてあげれば、

生産-中間消費=GDP=最終消費支出+総資本形成+輸出-輸入

となります。こうしてGDP(需要側)を推計することができます。

このとき、使っている主な統計は工業統計表という「生産側の統計」ですから、この推計方法は生産側統計を用いたGDP(需要側)の推計と言えると思います。この推計方法がコモディティー・フロー法と言って、わが国では主に年次推計(確報推計)で使われているもので、また、national accountsの体系で推奨され、各国で利用されている最も基本的な推計方法になります。

一方で、GDP(需要側)の推計方法については、別の推計方法も考えられます。それは、

GDP(需要側)=最終消費支出+総資本形成+輸出-輸入

ですから、家計調査や政府の決算書から最終消費支出を、また、法人企業統計やこれも政府の決算書から総資本形成、国際収支統計から輸出や輸入をそれぞれ推計することもできます。このとき、家計調査や法人企業統計は、「あなたはどれだけモノを買いましたか?」とか「あなたの企業は、どれだけ設備投資をしましたか?」というように、生産者でなく、需要側にどれだけモノを使ったかを聞く統計です。つまり「需要側統計」です。

このような推計が、いわゆる「需要側」と呼ばれている推計で、こちらは需要側統計を用いたGDP(需要側)の推計と言えると思います。そして、この推計方法は、かつての速報値(QE)の推計方法でした。

これまでの話で、GDP(生産側)とGDP(需要側)があり、さらに、GDP(需要側)については、「生産側統計を用いた推計」と「需要側統計を用いた推計」があることがお分かりいただけたのではないかと思います。需要側、供給側といったときに、このうちどれの話をしているのかによって、議論が全く異なってきます。著名エコノミストのレポートの中でも、この両者を混同した議論がたまに見受けられ、議論をややこしくしている印象があります。

続きは次回に。

2013年12月27日 (金)

「需要側と供給側」の2つの意味

ご質問をいただいておりながら、お返事ができておりませんでした。

 供給側統計と需要側統計を統合する際、下記では、0.5271というウェイトを使うようですが、これはどのように定めているのでしょうか。

 http://www.esri.cao.go.jp/jp/sna/data/reference1/h17/pdf/kaisetsu20130730.pdf

 理屈上、支出面=生産面が成立するはずなので、速報値は支出面だけでOKな気がしますが(支出データは月次でとられるものが多いので)、あえて供給側と統合させている理由がよくわからないです。支出面だけでやると、供給と一致しないから、そこのつじつまを合わせているのでしょうか。あるいは、支出面だけでGDPを出すと、過小評価させることが明らかなのでしょうか。

また、その追記として、

 GDPの供給と需要側の統合の質問についての追記です。中村洋一「新しいSNA」に下記のような記載がありました。

 **

 支出側の情報は支出行動の変化を直接的にとらえるというメリットがあるが、反面でサンプル調査を中心とするために異常値などのノイズを含む場合もある。これに比べると、供給側のカヴァレッジが広く速報性にも優れる場合が合うなどの長所がある。...供給、支出の両面からの推計を組み合わせるのは、2つの推計方法の端緒を補うことを目的としている。

 **

 やはり支出面だけだと、推定が荒いというのは理由なのですね。ただ、一方で、支出面と生産面の値に大きなギャップがあり、その調整の側面もある、という声を聞いたこともあります(記憶の間違いかもしれませんが)。

ご質問いただきありがとうございました。

需要側、供給側と言ったときに、異なる意味のことを混同して使う例が多々見受けられます。今回いただいたご質問は、その違いを考えるのに非常に良いご質問だと思いますので、その内容から考えてみようと思います。

まず、GDP(支出側)、GDP(生産側)というような言い方をしますが、このGDP(支出側)をもって需要側、GDP(生産側)をもって供給側と呼ぶような例があります。

このGDP(支出側)、GDP(生産側)というのは、何度もこのブログで書いておりますとおり、

GDP(支出側)= 最終消費支出 + 総資本形成 + 輸出 - 輸入

GDP(生産側)= 産出 - 中間投入

というGDPの三面等価のうちの2つのことを示しているわけです。

(ちなみに、もうひとつの三面等価は、GDP(分配側)=雇用者報酬+営業余剰+生産・輸入品に課される税のことです。)

このGDP(生産側)の推計方法は、産出は工業統計表で分かりますし、中間投入は産業連関表で中間投入比率が5年毎とはいえ産業ごとに分かりますから、これを用いれば推計することができます。

このとき工業統計表は、各財をどれだけ生産しているか把握するというまさしく「生産側」の統計ですから、このGDP(生産側)は、統計も「生産側」を用いているわけです。

長くなりそうなので、「GDP(支出側)」については次回以降に。

2013年12月12日 (木)

公的固定資本形成

まだ、硬貨のご質問についてお答えしていないのですが、ひとつ、時事的なご質問をいただきましたので、少しそのことについて触れさせていただきます。

いつも勉強させて頂いています。

さて、ここでいいのか分かりませんが一つ質問よろしいでしょうか。

本日、2012年の確報値が発表となりましたが、公共投資が速報から大きく鈍化しました。

http://www.nikkei.com/article/DGXNASFS0900U_Z01C13A2EB1000/

速報と確報で使っている系列が違うのはわかりますが、これほどずれる理由としてどのようなものが考えられますか?また、予算はつけたが最終的には何らかの要因、たとえば人員不足で執行できなかったといった解釈をしてよいものなのでしょうか?

まだまだ足りないとはいえ、震災復興のための公共事業がここまで少かったとはちょっと思えませんが、どういった可能性があるでしょうか。

お時間のある時にでも教えてもらえれば幸いです。確報はあまり分析しなれていないので他にも何か留意点があればそれもお願いできると嬉しいです。

ご質問いただきありがとうございます。

私は、今は担当部局を外れてしまいましたので、今回起こったことについては良く分かりません。が、私が担当部局にいたときの経験及び一般論ということで書かせてください。

まず、速報と確報では、そもそも推計方法も異なりますし、使っている基礎統計が大きく異なりますので、確報推計値になって改定幅が大きくなることはたまにあります。改定というと、民間企業設備や民間在庫品増加などの民需が話題になることが多いのですが、実は、政府部門も大きな悩みのタネだったというのが、私が担当していたころの記憶です。

政府部門の速報値推計について何が問題かというと、「日本においては、政府の支出状況をタイムリーに把握できる情報(統計)が存在しない」ということなのです。日本においては、中央政府の支出状況が分かる情報は、年度終了後から約1年半後に公表される決算情報まで分かりませんし、地方政府については、さらにその後に公表される地方財政統計年報が出るまでは、全体像が分かりません。

確報推計は、これらの決算・統計情報を用いて積み上げて作っていますから、政府の活動については適切に把握できているのではないかと思います。そこで、速報推計はどのように推計しているか見るために、四半期別GDP速報の推計マニュアルを見てみましょう。

http://www.esri.cao.go.jp/jp/sna/data/reference1/h17/pdf/kaisetsu20130730.pdf

そこには、

公的固定資本形成(受注ソフトウェア分以外)を公的住宅、それ以外に分け、『建設総合統計』(出来高ベース・公共)の居住用、それ以外の対前年度値比で延長推計した値に、供給側統計を使用して推計した受注ソフトウェア総額の公的分按分値を加算して推計する。

と書いてあります。つまり、公的固定資本形成は、速報値段階では、「建設総合統計」の公共部門の値で延長推計しているということです。そこで、24年について、建設総合統計の公共の伸び率と、速報、確報の伸び率を比較してみましょう。(注:実際のQEの推計では、「居住用」と「それ以外(非居住と土木)」で分けて伸ばしているので、実際の推計方法とは厳密には異なります。)

      建設総合統計    速報(79①)   確報 

24年度    12.4%       14.9%      1.3

ということで、見事に、速報値は建設総合統計の伸び率に近いことが分かります。しかし、決算を積み上げてみたら、結果が異なっていたということになります。こういった、基礎データのズレの要因は、本当に分からなくて、2次統計(加工統計)作成者にとっては悩みどころです。

建設総合統計は、建築着工統計や建設工事受注動態統計の受注額を元に、進捗転換しているものです。建築着工統計は、すべての建築物について対象としています(建築工事の場合は届出が法定義務ですから、すべて把握することができます)から、この部分で実際の予算執行額と大きくずれてくるとは考えにくいのではないかと思います。ですので、サンプル調査である建設工事受注動態統計か、進捗転換の部分で、実際の決算額とズレが出ているのかもしれませんが、正直私にも良く分かりません。。。

ということで、あまり根本的なお答えにはなっていないのですが、速報値と確報値の推計方法(基礎データ)の違いについてでした。

2013年12月10日 (火)

資本調達勘定(2)

前回の続きです。

ご質問の本題である、貸借対照表と資本調達勘定、調整勘定の関係ですが、これについては、

 期首(前期末)貸借対照表 + 資本調達勘定 + その他の資産量変動勘定

+ 再評価勘定 = 期末貸借対照表

となります。

ここで、その他の資産量変動勘定は、火事などでその資産がなくなってしまったなどということを記録するものであり、再評価勘定は、正しく当該資産の価値変動を記録します。

そして、資本調達勘定では、当該期における資産・負債の取引による変動が計上されますが、この取引は、実際に行われた取引価格(すなわち「時価」。ただし、物々交換の場合は、購入時点価格とせざるを得ないと思いますが。。。)ですから、厳密に言えば、再評価勘定は「取引が行われていない資産・負債についての価値変動分」ということができるかと思います。

実際に、資金循環表の解説でも、

http://www.boj.or.jp/statistics/outline/exp/data/exsj01.pdf

資金循環統計では、経済の実態を表示するために、評価(測定)方法は時価主義、記録(認識)時点は発生主義という考え方を採っている。こうした考え方は、基本的には、93SNA、IMFマニュアルの考え方と同じであるが、貸出債権の扱いについては、資金循環統計は、これら国際基準よりも時価主義を徹底させている。

と書いてあり、取引時点の時価評価で計上しているはずです。ですから、その残りの再評価勘定については、「それ以外」の価値変動が計上されていると考えると分かりやすいのではないでしょうか?(この部分、私も直接担当したことは無いため、各勘定を見ながら考えてみましたが、本職の方、もし間違っておりましたらご指摘ください。)

なお、もうひとつご質問いただいております、「貨幣」の話は、かなりややこしい話なので、私も今勉強中です(笑)もうしばしお待ちください!!

2013年12月 9日 (月)

資本調達勘定

いろいろとご質問をいただいているのですが、いずれも難しくてなかなかお答えできておりませんで申し訳ありません。

まずは、こちらのご質問から。

資本調達勘定は、フロー編は国内金融取引を相殺して計上しているのに対し、ストック編は期末貸借対照表に合わせて国内金融取引を相殺せず、金融資産・負債の変動分を計上していると思うのですが、資本調達勘定は基本的には取引時点の取得価格で計上されているのにも関わらず、どうして変動分のみ統合勘定で計上することができるのですか?

資産負債の期首残高と期末残高の変動分が資本調達勘定と調整勘定に計上されていることは、理解できるのですが、もし取得価格で資産負債にそれぞれ計上してしまった場合、取引時点の取得価格は、購入価格+変動分となり、期末貸借対照表に加算した時に2重勘定になってしまうような気がします。

土地購入(純)は購入額-売却額なので変動分が明らかなのはわかりますが、株式等の金融資産はSNAの概念上、どのように計上しているのか、教えていただきたいです。

私が直接担当していた部分ではないので、ご質問の趣旨に沿ってちゃんとお答えできるか自信が無いのですが、順を追って、考えてみたいと思います。

まず、国民経済計算部のHPから、「統計の見方」というマニアックな内容を見てみましょう。

http://www.esri.cao.go.jp/jp/sna/data/data_list/kakuhou/files/h22/sankou/pdf/usage.pdf

これを見ると、フロー編については、

3)資本調達勘定

③ 金融取引勘定においては、海外との取引のみが、対外資産の変動、対外負債の変動として計上され、海外に対する債権の変動がバランス項目となっている。これは、国内の金融取引は統合されることにより相殺され、海外との取引のみが残ることによるものである。

ストック編については、

金融資産・負債残高は、現金・預金、貸出・借入、株式・出資金、株式以外の証券等を対象として、各制度部門との関連を明らかにするため、制度部門間の取引を相殺しない結合方式によって計上しており、制度部門別勘定の合計が統合勘定と一致し、制度部門別勘定の「金融資産・負債残高の差額」の合計が、対外純資産に一致する。

とあります。つまり、フロー編では、関心事項が「各制度部門における資産・負債の動き」が見たいだけですので、その統合版である統合勘定でも、海外との取引による資産・負債の動きだけ、分かりやすく計上しているということかと思います。

なお、この国内の「金融取引は統合されることにより相殺」というのは、国内の各部門の「資産」だけの増減を合計すれば海外との取引以外は消えるということではありません。

それを分かりやすく記するために、ひとつ例を挙げてみようと思います。

国内の各部門間の取引において、ある部門が株式を購入し、その代金のために借入をしたとします。この場合、その部門では、資産・負債が両建てで増えています。一方で、当該株式を売った部門は、株式という資産が減ると共に、現金という資産が同額増えています。(その背景にある貸し出しについては、貸出をした部門は、債権という資産が増えると同時に、現金という資産が減っています。)これは、一国全体で資産-負債のバランスは変化させませんが、資産、負債ともに増えています。

一方で、こういった取引の動きを、各資産ごとに見てみようと考えると、ストック編のように相殺しない方法とせざるを得ないと思います。

長くなってきましたので、続きは次回に。

2013年12月 5日 (木)

供給側と需要側

いつもコメントをいただきありがとうございます。

今回も、コメントをいただいておりました。

 ありがとうございます。勉強になりました。

 これから、この推計方法を熟読しますが、すごい手間がかかりそうですね。。

 そういえば、以前GDP統計の推計ミスがあってGDP推計をするためのメンバーが増強された、という報道があった気がします。今は100人くらいの体制で計算しているのでしょうか。

あ、私の言い方が悪かったです。ゼロからJ-SNAを作るためには、(新規立ち上げ投資という意味も含め)100人くらいは必要かなと書いたつもりでした。私も今は部署を外れてしまったのですが、実際に推計している部署は100人はいないと思いますが、数十人(というと幅がありますが、その後半くらい)で推計しているのだと思います。正直、これでも各国と比べると圧倒的に少ないと思いますが。。。

 ちなみに、民間におけるGDP予想推計の人数のイメージですが、2-3人でやっているという印象です。外資だと、1人+若手/アシスタントくらいでやっているのでは、と思います。私自身、推定を当然したことはないので、印象の領域をでないのですが、簡単な何十本もある単純な回帰式を回して推定しているような印象です。

はい。民間シンクタンクの体制については、実際の担当者からお話を伺ったこともあるので、ある程度承知しております。以前、某シンクタンクの推計担当の方とお話をしたときに「IIP、貿易統計、CPI、労調のすべての結果を公表日の午前中にまとめ(それも英語も作り)、逆にアメリカの雇用統計やIPなども、即座に日本国内向けにレポートでまとめる必要がある。しかも、本社のトレーダー部門からは、ひっきりなしに意見を求められ、すべてに回答(必要に応じて英語で)する必要がある。これを一人でやっており、QEの予測もやっているが、正直手が回らない。」と言っておられました。今、自分の似たような立場にあるので、本当にお気持ちは良く分かります。

これはずうずうしいですが、QEの推定について簡単でよいので(また時間があるときでよいので)御解説いただければ幸いです。

もうひとつご質問をいただいておりましたので、それも含めて少しイメージを書かせていただければと。。。

QEは、基本的には、Y=C+I+G+CAで計算するが、供給側を簡単なコモディティーフロー法で算出して、消費などは需要側と統合して、算出するという方法をとっているのですね。輸出入のように、国際収支統計をそのまま使ってしまう部分もあるのですね。

はい。基本的にそのとおりです。ですが、一点、皆さんが誤解しているのではないかと思われる部分がありますので、その部分だけ補足を。。。

まず、コモディティー・フロー法のことを「供給側」と思っておられる方が多いかと思うのですが、これは厳密にいうとちょっと違います。コモディティー・フロー法は、「供給側の基礎統計を用いた需要側推計」と考えていただくといいと思います。

一方で、「供給側推計」というのは、付加価値法、すなわち、

「付加価値=GDP(供給側)= 生産 - 中間投入」

のことです。

一方で、コモディティー・フロー法は、

生産+輸入=国内総供給=最終消費支出+総資本形成+輸出

として推計するものでして、この「最終消費支出」のうち、政府最終消費支出や輸出、輸入などは、直接決算データや国際収支統計などから持ってきています。また、民間最終消費支出などは、QEでは、家計調査などから推計した「需要側推計値」と、上記の『簡易』コモディティー・フロー法で推計した「供給側推計値」を統合して作っています。

この「需要側推計値」と「供給側推計値」という言葉が紛らわしいのですが、

○「供給側」⇒ 付加価値法

○「需要側」⇒ コモディティー・フロー法(QEでは、「需要側推計値」と「供給側推計値」を統合)

というイメージで見ていただく分かりやすいかと思います。

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