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2013年11月12日 (火)

季節調整

季節調整についてのご質問をいただきました。

GDP統計において季節調整は極めて重要ですが、季節調整のかけ方(なぜこのような次数を選んだのか等)は公表されていますでしょうか。

貴重なご指摘ありがとうございます。本当に、季節調整は、かけ方(特にダミー変数の入れ方)によって、結果がかなり変わってしまいますから、数字の解釈においては非常に大きい影響がありますよね。私も、今は「メーカー」から「ユーザー」に変わってしまいましたので、「ユーザー」として、季節調整の重要性をより感じる今日この頃です(笑)

日本はまだ季節調整について頑張って真面目にやっている方だと個人的には思うのです(特に、今回ご指摘のGDP統計や、日銀の統計などは頑張っている印象があります)が、海外では、季節調整は統計作成者の本来業務ではない、という意識があるのではないかと思うほどひどい結果だったりします。そもそも、途上国では季節調整結果すら出していないし、某先進国(D国)は、代々季節調整があまり得意では無い様で、X12の独自改良バージョンを使っていたりと、いろいろなことがあります。

最近では、他国の統計の季節調整結果があまりに結果が信用できないので、自分でモデル選定・ダミーの選定までやって、自分で季節調整を行おうかと考えているくらいです。ただ、季節調整は、確かに、やる気になれば分析する側で、「自分が適切と思う」季節調整を行うこともできるので、上記の各国が「季節調整は統計作成者の本来業務か?」というスタンスでこられてしまっても、「まあ、確かに自分でできるし。。。」と思ってしまう面もあります。

ただ、これは、どこかで書こうと思っているのですが、先日、アメリカの統計作成部局を数多く(アメリカも、日本と同じく、「分散型」の統計作成になっています)渡り歩いてきた専門家の先生の講義を聴く機会がありました。その講義の中で、「これから、統計以外の情報がたくさん入手できるようになり、情報収集(統計調査)の面での困難が高まり、統計作成に対する役割が大きく変わってくる。それでも、統計には「ベンチマーク」としての役割は依然として求められる。」という話があり、私も全く同感でした。

その意味で、やはり、季節調整結果も、ひとつの「ベンチマーク」として、統計作成者が公表する意味は大きいのではないかと思います。(これに対して、統計ユーザー側が、「このような季節調整のあり方の方が適切ではないか」という対案を出し、ユーザーとメーカーが切磋琢磨してよりよい公共財としての「統計」を作り上げていくという形になればすばらしいのですが。。。)

さて、話は戻りまして、わが国のQE(四半期GDP速報)では、季節調整についての説明は、「推計手法解説書(四半期別GDP速報(QE)編)」http://www.esri.cao.go.jp/jp/sna/data/reference1/h17/pdf/kaisetsu20130730.pdf

というものがあるのですが、この中のP33以降に書いてあります。

そして、結果の概要のページに「季節調整用ARIMAモデル設定一覧」という資料を掲載しており、ここに、各系列のモデル・ダミー等の情報が出ています。

一応、ここに一通り書いてあるのですが、考え方としては、

①X12-ARIMAを使っている。

②GDP全体に季節調整をかけているわけではなく、それぞれの項目(耐久財とか、サービスとかいうレベル)で季節調整をかけ、それを積み上げている。

③モデルのうち、階差は基本的に1として、在庫は0とする(在庫自体が、ストック系列の1期階差なので)

④ARとMA部分は、012から選択し、AICを最小化するものを選ぶ

⑤季節調整モデルの見直し等は原則毎年の年次推計の際に行う。ダミー等の追加、変更も基本的にこのときに行う。

という感じです。

Xシリーズは、簡単に言ってしまうと移動平均ですから、新しく1年のデータが追加されたときに、モデル・ダミー等を見直すというのは、理にかなった方法かなと思います。

また、以下は個人的な感想ですが、モデルの変更はそれほど結果に大きな違いは無かったと思います。それよりも、ダミーのほうが影響は大きくて、ダミーについては、そのような異常な値となっている背景が明らかで、ちゃんとそのダミーのt値が十分に大きい場合には入れるようにしていました。このあたりも、以前、このHPでも書きましたように、アメリカのIPで突如行われた、「リーマンショック後の季節調整系列がきれいにでないので、少し特殊なやり方でスムーズにしてみました」みたいなやり方よりも、真面目に頑張っているという印象です(笑)

それに、毎回すべての期間、季節調整をかけなおすというのも、ものすごく真面目なやり方だと思います。新しい結果が出たのに、過去の季節調整値を固定しているというのは、実は毎期の結果を歪めていることになるわけですから。(もちろん、それによって、過去の値が変わってしまうことの煩わしさも、統計ユーザーの立場としては良く分かります。。。)

最後に、何でGDP全体でなく、個別項目から季節調整をかけているのかというご質問(というか、X12なら、ある程度まとめて季節調整をかけたほうが、ブレが少なくてうまくかけられるはず、というご指摘かもしれませんが(笑))があるかもしれません。そのご指摘はそのとおりで、そういった意見もあると思います。が、そうすると、寄与度の積み上げができなくなります。GDPの推計結果の内容分析の利便性と、ある程度ブレが少なくなるように各系列をまとめることを考えると、このくらいの系列で季節調整をかけるというのが「ベンチマーク」としてはありなのではないかという気がしております。(もちろん、いろいろな意見もあると思いますし、将来的には変わっていくこともあると思います。。。)

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コメント

ありがとうございます。大変勉強になりました。
たしかに、日本のQEは毎回季節調整が変わるので、データがコロコロつかい、使いにくいというのは結構耳にします。一方で、直近しか変更しない米国みたいなケースもあるのですが、本質的には日本のほうが悪くない対応をしているという考えには共感するものがあります。

一方で、少し長いスパンでの分析を考えると、季節調整というのはあまり問題にならないケースが多い印象です。回帰分析をするなら、ダミーをいれることなどの対応が可能です。GDPの確報値の四半期データには季節調整のデータがなかったように記憶しておりますが、このこともそれを表しているように思います。

そのように季節調整には一定の問題がある中で、前期比で問題になるGDP統計の季節調整の値がちょっと動いただけで、マーケットが結構反応することもあるので、なんだかな、と思ってしまいます。

あと、QEは支出面から作成しているわけですが、QEの計算方法の詳細は公開されているのでしょうか。すなわち、QEは内閣府にいない人間も、完全に再現できるようなものなのでしょうか。

あと、今、思い出したのですが、季節調整をかけるときに、年率に直してからかけるべきか云々も、議論されていなかったでしたっけ。ここについてもしご意見があれば、拝聴できれば幸いです。

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