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2013年10月 5日 (土)

金融取引(6)

長々と続いてきましたが、最後に、national accountsにおける金融サービスの計測方法について触れようと思います。

我々が銀行からお金を引き出したり、送金したりするときに、手数料を支払っていると思います。この手数料は、典型的な「金融機関の生産したサービス」の代金です。ですので、金融機関がこれらのサービスを生み出していると考えることは分かりやすいことだと思います。

一方で、金融機関が生み出しているサービスは、これだけと考えていいでしょうか?例えば、銀行は、我々から預金を預かり、それを原資として企業に融資しています。そして、そのタイミングと金利差で利益を上げている訳です。この「金融仲介サービス」を計測しましょうという試みがnational accountsの中にはちゃんとあります。それが、「間接的に計測される金融仲介サービス(FISIM)」というものです。

FISIMの概念を単純に言うと、貸出利子率(企業などに融資する際の利子率)と調達利子率(我々が預金する際の利子率)の差に銀行の持っている預金(及び貸出)残高を掛けたものです。

(厳密には、貸出利子率と調達利子率の間に、参照利子率というものがあり、貸出利子率と参照利子率の差に貸出残高を掛けたもの+参照利子率と調達利子率の差に預金残高を掛けたものです。詳細は、

http://www.esri.cao.go.jp/jp/sna/data/data_list/kakuhou/files/h21/pdf/fisim.pdf

をご参照ください。)

こう考えると、金融機関の生み出しているサービスは、「自分のリスク(及び調達及び貸出期間のズレを補うこと)で生み出した、資金の融通サービス」であり、その対価は「貸出利率と調達利率の差」である、と言えると思います。ですので、金融機関の生み出したサービスは、手数料+上記の「貸出利率と調達利率の差」で計測されることになります。

この考え方自体は、私はものすごく自然だと思いますし、例えばヘッジファンドが預かったお金を運用して10倍にしたとしても、それ自体は何も生産していない訳ですから、GDPに含まれないというのも自然だと思います。(もちろん、ヘッジファンドが得た手数料は、金融機関の生産に含まれることになるでしょう。)

私自身は、ヘッジファンドの存在は、市場の歪みを早期に是正してくれる価値を持つ(市場の歪みを放置する方が、いろいろな面で悪影響が大きいと思います。)と思っており、決して「悪玉」と思っている訳ではありませんが、それでも、ただ単にキャピタル・ゲインを得ただけで、それが生産概念に入るのはちょっと意味が異なるということはお分かりいただけるのではないかと思います。

そして、同じことは、利子や配当のような財産所得にも言えると思います。良く、GNIであれば、利子や配当が含まれるから、日本のような資本輸出国の経済状況を表す良い指標だという声を聞きます。GNIは国民総所得ですから、国民全体でそれだけの所得を得ているということを表しているのは事実です。しかし、あくまで所得ですから、この額だけ生産している訳ではないのです。

生産活動と所得というのは、やはり違いがあり、生産を行っている場所では雇用が創出されます。こういった側面を無視して、GNIとかGDPとか一つの指標だけを見て、何かを判断するのは困難なことなのではないかと思います。言うは易しで、実行するのはなかなか難しいことではあるのですが、少なくとも、経済の分析を専門とする立場の人は、こういった指標それぞれの持つ意味を良く考えて、冷静に分析することが必要なのではないかと思っています。

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コメント

一般政府(中央政府+地方政府+社会保障基金)というのは、SNAの用語のようですね。もしご存知であればでよいのですが、①SNAということは、各国の政府は一般政府で比較すべきなのか(してよいのか)、②なぜ国の大きさを一般政府という範囲で考えているのか、という点についてご意見いただければ幸いです。

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