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2013年9月

2013年9月30日 (月)

金融取引(2)

前回の続きで、national accountsにおける金融取引の話です。

まず、national accountsがどのような体系になっているかからです。正式な名称で書くとややこしくなるので、できるだけわかりやすく。。。

①生産勘定【生産勘定/財貨・サービスの対外勘定】

②所得支出勘定【所得の発生勘定~所得の使用勘定まで】

③資本調達勘定【資本勘定・金融勘定】

④調整勘定【その他の資産量変動勘定~再評価勘定】

⑤貸借対照表

という流れになります。これだけだと分かりにくいので、順を追って細かく書いていきますと、

①生産勘定

 これは、どれだけの額の生産がおこなわれ、その生産のうちどれだけが中間投入されたかということがあらわされます。そして、生産-中間投入が付加価値(GDP(生産側))になります。

②所得支出勘定

 これは、得られた付加価値をどのように配分しているかを示します。まずは、「家計」、「企業」、「政府」に分けるところから始まり、財産所得(利子や配当など)の受取り及び支払いを調整し、更に、所得税、社会負担、社会給付、移転所得(児童手当などの形で、一方的にお金を受け取る取引)などを調整すると、「可処分所得」となります。これが、その年に「使える所得」ということになります。

 この勘定では、更に、この「使える所得」をどれくらい「消費」に使ったかをまで記録します。そして、「可処分所得」のうち、「消費」に使った残りが「貯蓄」となります。

③資本調達勘定

 これは、「貯蓄」のうち、どれだけを実物資産(設備投資などの固定資本形成や、土地、在庫品増加)に使い、どれだけを金融資産に使ったかということまで記録します。粗笨調達勘定は、実物資産の増減を記録した勘定と、金融資産の増減を記録した勘定に分かれます。前者では「総固定資本形成」がどれだけ増え、「在庫品増加」がどれだけあったか、というようなことが示され、「貯蓄」とこれらの差額が「純貸出(+)/純借入(-)」となります。また、後者では、「現金・預金」、「貸出・借入」などの金融資産(負債)の増減が計上され、その合計が「純貸出(+)/純借入(-)」となります。

よく「純貸出(+)/純借入(-)」(昔は「貯蓄投資差額」とも呼ばれていました)が、実物と金融で一致するという言い方がされます。が、これはよく考えると当然な話で、定義上、

貯蓄‐実物資産に使った額=純貸出(+)/純借入(-)

なのですから、手元にあるお金(貯蓄)から、実物投資に使わなかった分は、金融資産として手元に残っている(逆に、手元にあるお金以上に実物投資に使ったら、手元にあった金融資産が減っている)ということを言っている訳です。

④調整勘定

 ここから先は、実物資産、金融資産のストックの話になります。その保有している実物資産、金融資産の価値は、放っておくだけでも増えたり減ったりします。その主な理由が、「資産の再評価」によるものです。例えば、持っていた株式の価値が上昇したとか、大量にレアメタルを持っていたら、希少価値が上昇したとかそんな内容です。もうひとつの増減要因は、例えば災害などでその資産が壊れてしまったなどということが考えられます。こちらは「その他の資産量変動勘定」というところで記録されます。

⑤貸借対照表

 ①~③までの生産活動由来による資産の増減と④の資産そのものの変動(価値の変動又は物理的に無くなってしまったなど)を、前期のストックに加えて作られるものが、当期のストックを示すもの、すなわち貸借対照表になります。

長くなりましたので、続きは次回に。

2013年9月27日 (金)

金融取引

またまた、他の用事(今回は主に私用だったのですが(笑))にかまけて、お返事をしておりませんでした。

いくつかコメントをいただいておりまして、

大局観とか体感した感覚でしか物事を見て来なかったのだと、このブログを見て驚かされるばかりです。

ここまで言葉にシビアな定義があると思って統計資料を見て来なかったと反省させられます。

リーマンショックは本当にイレギュラーで、日本人は今まで極自然にあった現象がそのままアメリカで起きたので、逆にこのイレギュラーさが伝わってないような気がします。ディーラーに取っては極めてポジティブだったようですが。

ご丁寧にご感想をいただきありがとうございます。

言葉の定義にこだわるのは、役人の悪い性の影響が大きいかもしれません。。。(笑)

ただ、特に統計の数字は、使い方次第で相手を意図的に誤解させることが簡単にできる分野ですので、定義やその数値の使い方が妥当かどうかについては、本来は丁寧に検証することが必要なのだろうとは思います。ただ、これもなかなか難しいのですが。。。

そして、このリーマンショックと金融部門の話については、national accounts上でどのような記録がなされているのか、以下で少し考えてみたいと思っています。

続いて、

GDPという言葉は学校の先生が教える古くさい単語という印象しかないです。

マクロの専門家らしい先生のお話だと昔はお金→物→お金の流れだったらしいです。

個人的にグローバル化って厳密にはお金だけの話だと思ってるのですが、基本的に自分が経済追う時代には完全にお金→お金の時代でした。

なので、あまり疑問も無く必要に追われて、あまりにすんなりGDPと言う単語を捨てました。

この記事を読んでも、やはりGDPと言う単語に未練はないなと言う印象ですが、GNIと言う単語がどう評価されるのか凄く楽しみです。

全くご指摘の通りで、世界中の金融市場がつながり、「マネー」は365日、24時間世界中で取引されています。この金融取引とnational accountsの関係について、上記のリーマンショックとも絡めて、少し書ければと思っています。

最後に、

教科書に載せたいくらい丁寧で分かり易かったです!

ありがとうございます。

大変励みになります。。。

というわけで、ご質問をいただいた、

リーマンショックは本当にイレギュラーで、日本人は今まで極自然にあった現象がそのままアメリカで起きたので、逆にこのイレギュラーさが伝わってないような気がします。ディーラーに取っては極めてポジティブだったようですが。

マクロの専門家らしい先生のお話だと昔はお金→物→お金の流れだったらしいです。

個人的にグローバル化って厳密にはお金だけの話だと思ってるのですが、基本的に自分が経済追う時代には完全にお金→お金の時代でした。

なので、あまり疑問も無く必要に追われて、あまりにすんなりGDPと言う単語を捨てました。

に絡めて、次回以降、少しnational accountsにおける金融取引のとらえ方について考えてみようと思います。

2013年9月12日 (木)

直接投資(2)

前回に続きまして、本題の③です。

③日本が他国に対して行う直接投資は、日本のGNIに影響を与えるのか。

GNIは、GDP=GDIに、「海外からの所得の受取」を加え、「海外に対する所得の支払」を控除したものです。

そして、それぞれの「所得の受取」又は「所得の支払」には、「財産所得」が含まれます。財産所得とは、金融資産の取引で投資した先から得る「利子」や「配当」などのことです。したがって、海外へ行った直接投資は、その時点ではGNIには影響を与えませんが、その投資の結果として得る「配当」、「利子」の受け取りという形で、後の時点のGNIを増やすことになります。

というわけで、あくまで間接的な影響ばかりです。最近、GNIが注目されることが多く、そのときに、「日本が行った海外への投資が反映される」というようなことが言われるのですが、それは「直接投資」の額が直接GNIに加算されるということではなく、投資の結果としてのリターン(利子や配当など)が、投資を行ったタイミングよりも後に発生するということになります。

なお、投資先の資産の価格変動(いわゆるキャピタル・ゲイン、キャピタル・ロス)については、この「海外からの所得の受取」、「海外に対する所得の支払」には含まれません。これらの資産価値の変動は、あくまで資産ストックの話ですから、今回のように、生産(GDP)や所得(GNI)などのフローの動きには影響しないというのはわかりやすい話ではないかと思います。

というわけで、最後、雑駁な話になってしまいましたが、直接投資がGDPやGNIにどのように影響してくるのかということについてでした。

2013年9月11日 (水)

直接投資

前回の続きでして、直接投資について良く聞かれる、以下の3つについて考えてみようと思います。

 ①他国から日本への直接投資は、日本のGDPにどのように影響するのか。

 ②日本が他国に対して行う直接投資は、日本のGDPに影響を与えるのか。

  ③日本が他国に対して行う直接投資は、日本のGNIに影響を与えるのか。

まず①です。直接投資というのは、持ち分が10%を超える親会社(個人でも良いです)からの出資や貸付などです。これは、ただ単に、持っていた金融資産(恐らく金融資産でしょう。実物もあり得ますが、可能性は低いでしょう。)をどのように取引したかというものです。ですので、何かしらの生産活動には直につながってきません。

一方で、GDP(生産側)は、

 GDP = 生産 - 中間消費

ですから、金融資産をどのように取引したところで、それだけでは、生産にも中間消費にも影響はありませんから、GDPに対する影響はありません。またGDP(支出側)は、

 GDP = 最終消費支出 + 総資本形成 + 輸出 - 輸入

ですから、受け取った直接投資のお金を使って、設備投資を行えば、総資本形成が増えるように見えます。しかし、ここからが問題でして、その設備投資が輸入品(又はサービス)を使った設備投資であれば、同額だけ輸入が増えますので、結局GDPは変化しません。

一方で、国内生産(された財、サービス)を使った設備投資であれば、GDPは増えます。でも、その時は、恐らくGDP(生産側)で見ても、生産が同額だけ増えているはずですので、GDP(生産側)=GDP(支出側)は一致します。(もちろん、新たに生産された財ではなく、在庫品を使った場合は、在庫がその分減って、GDPは変わりません。)

というわけで、「直接投資は、そのお金を使って、(新規生産した国内生産品を使った設備投資などに)支出をすれば増える」ことになります。

続いて、②についてですが、これは①と同じで、

 GDP(生産側) = 生産 - 中間消費

 GDP(支出側) = 最終消費支出 + 総資本形成 + 輸出 - 輸入

のいずれも(通常は)変化しませんので、日本のGDPは変化しません。

但し、直接投資と同時に、そのお金を使って、日本の財により設備投資を行った場合は、生産側ではその分生産が増えるでしょうし、支出側では輸出が増えるでしょうから、その場合はGDPが増えることになります。

というわけで、①、②ともに「直接投資」と名前の付く金融資産の取引だけでは、GDPは変化しません。

本題ともいえる③については次回に。

2013年9月 8日 (日)

回答及びお礼

たくさんのコメントをいただいておりました。

少しこの場をお借りしてコメントについてのお返事とお礼を

順番は異なりますが、まずはこのコメントから。

アメリカは雇用=景気と言う大前提があります。アメリカの個人所得は不景気であろうが好景気であろうが首尾一貫して増えてます。

つまり、アメリカは基本的に企業の業績が下がれば、日本のようにリストラと言うなの給与を下げるよりも直接首を切るのです。

なのでアメリカが雇用統計に命をかけるのは至極当然なのです。そこの誤解が解ければ納得して頂けるのでは無いでしょうか?日本とアメリカは雇用の数字の重みがまるで違います。

貴重なご教示をいただきどうもありがとうございます。本当にその通りですよね。これだけ頻繁に解雇が行われる国であれば、雇用統計が重要な経済指標になるとのご指摘、その通りですよね。

4

参考までに、アメリカのpersonal incomeの推移をグラフにしてみましたが、アメリカの統計って1940年代からあるんですよね。。。

恐らく、このpersonal incomeというのは、national accountsで言うと、制度部門別の家計の可処分所得のようなものだと思いますので、一人あたり賃金×就業者数(+α)というイメージなのかなと勝手に思っています。

BEANIPAマニュアル

http://www.bea.gov/methodologies/index.htm#national_meth

を見ると、以下のように経常移転の受払を含めるように書いてあるので、可処分所得と同じ概念のように思えます。)

Personal income is the income that persons receive in return for their provision of labor, land, and capital used in current production and the net current transfer payments that they receive from business and from government.25 Personal income is equal to national income minus corporate profits with inventory valuation and capital consumption adjustments, taxes on production and imports less subsidies, contributions for government social insurance, net interest and miscellaneous payments on assets, business current transfer payments (net), current surplus of government enterprises, and wage accruals less disbursements, plus personal income receipts on assets and personal current transfer receipts.

それであれば、リーマンショック時期(2009年ごろ)に大きな落ち込みが出るのも理解できます。失業者増か、賃金カットのどちらもマイナスに効いてきますので。。。

(ちなみに、2008-09年でもアメリカはCPIコアコアは前年比マイナスにはなってないのですよね。ですので、名目のpersonal incomeがマイナスになるって、雇用面でも相当な影響があったと想像できます。。。)

続いては、もう少し別の観点からのコメントを2つ続けて。

大変勉強になります。願わくば、GDPの推計について官側がどのように作成しているか、いつものように解説していただければ、甚大です。長く読まれるエントリーになるかと存じます。

本当にありがとうございます。次のコメントも関連するので、続けてもう一つ。

引き続きご健筆、頑張ってください。

余談のような話ですが昔SNAはいったいどういう仕組みなのだろうと思いテキストを読んだのですがもう一つよくわからない。ままよ、まずは現場と、表をにらんでいるうちに統計上の不突合というケッタイナものを見つけ&あちこちにこれが出現することを見つけ、あちらの不突合とこちらの不突合はいったいどういうつながりなのかと年報をひっくり返しているうちにSNAの構造を知る手っ取り早い方法はこれだと閃いたことがあります。季報なんぞにとっつきやすい記事を載せる時などのご参考まで。

 ところで、せっかくこれだけの情報を提供しているのですから、これをいかに使ってもらうのか、使うといかに便利か、を研究所はPRすべきです。人的にも厳しいでしょうがPRしないといかにももったいない&他国にごして改良していく資源の確保が難しくなりますね。

本当にありがとうございます。いずれもこのようにコメントをいただき大変励みになります。

日本では、統計について、作成者(メーカー)の側と利用者(ユーザー)の側で、コミュニケーションが上手くいっていないのではないかという個人的な印象から、差し出がましいとは思いながらも、少しでもこれを改善できないかと思ってこのブログを始めた経緯がございますので、このようなコメントをいただけるのは非常にうれしい限りです。

以前もここで申しました通り、私は既に統計作成の現場から異動してしまいましたので、公表した統計結果について何か書くことは差し控えることとしています(事実、それだけの情報も何も持っていないです。。。)。ただ、「この統計はどのような構造になっているのか」、「(一般的に)どのように作られているのか」ということについては、少しくらいは書くことができるかもしれませんので、引き続き、何か書いていければと思っております。

また、

ところで、せっかくこれだけの情報を提供しているのですから、これをいかに使ってもらうのか、使うといかに便利か、を研究所はPRすべきです。

というご意見も全く同感です。以前、他の省庁の方から「SNAは公共財だと思っている。この公共財を改善するためにも、いろいろと気付いたことがあったら質問させていただくし、また、それを受けて改善に役立てていただければ。」というようなことを言われたことがあり、非常に感銘を受けるとともに、共感を覚えたことがあります。

これだけの情報が、(微妙に違いがあるとはいえ)各国で同一の形式で公表されているという極めて有用性の高い統計ですから、正しく公共財だと思います。この公共財の有用性をPRするとともに、ユーザーからの意見も踏まえ、より良いものにしていくことが、メーカーの使命なのだと思っております。

それでは、このようなコメントもいただいたこともあり、また、ちょっとしたことから直接投資について考える機会があったことから、次回、それについて少し書いてみようと思います。SNA(及びBOP)の作り方に少しは関係してくるかと思います。

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