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2013年8月

2013年8月11日 (日)

雇用統計等(2)

いただきましたコメントの後半です。

民間にいると、統計の作り方にはあまり関心がなく、発表のタイミングに重きを置かれるという印象でしょうか。たとえば、雇用統計ですと、米国では注目度ナンバー1でして、たとえば、米債などに投資していると、大変気になる統計なのですが、日本だと雇用統計の発表が遅いので、大した注目がされません。こういうところばかりに目が行ってしまうのもどうかな、とおもってしまいます。

全くご指摘の通りで、統計ユーザーの方で、作り方に関心があるという方はそんなに多くないと思いますし、それは自然な事だと思います。統計は、その結果(数字)が、世の中の動きを映し出しているからこそ、多くの人の公共財として有用なのであって、その「作り方」そのものにユーザーの人の関心が向くなどと言うことは不自然だと思います。(ただ、その統計の作り方から遡って、この数字が何を意味していると考えられるかという視点を持つ専門家も、非常にニッチな世界ながら、存在しても良いというのが個人的な感触です。)

ですので、できるだけ早く、「正確」な統計結果を公表することを求めるというのは当然のことかと思います。

なお、蛇足ながら、この「正確」という意味は統計の場合深くて、定められた手続きで「数字」を作るというだけで良いかというのはいろいろな意見があります。例えば、リーマンショックの時に、季節調整値をどのように作るか(大きな落ち込みの結果として、普通に季節調整プログラム(X12)をかけただけでは、季節指数が大きく歪んでしまう)ということで、各国とも苦心していましたし(日本だけでなくアメリカのIPも苦心していました)、例えば東日本大震災で、一部地域のサンプルが取れなかったという事態が発生した時に、どのように対応するかというのは、「正確」性に大きく係わってきます。

こういった事態が発生した時は、ユーザーの方々が「推計方法」に関心をもたれると思うのですが、そうでないときには関心が無いのは当然だと思います。

ということで、話は戻って、やはり、統計は、本来の目的である「分析ツール」としての使い方が、一般的なのだと思います。

そこで、いただいたコメントで思ったのですが、アメリカで雇用統計を重視し、日本ではあまり注目されないのは、それぞれの国における関心の違いと言う面もあるのかと思いました。というのは、まず、具体例として、ホワイト・ハウスのHPから、20132月のオバマ大統領の一般教書演説の冒頭を見てみましょう。

http://www.whitehouse.gov/the-press-office/2013/02/12/president-barack-obamas-state-union-address

Mr. Speaker, Mr. Vice President, Members of Congress, fellow citizens: 

 

Fifty-one years ago, John F. Kennedy declared to this Chamber that “the Constitution makes us not rivals for power but partners for progress…It is my task,” he said, “to report the State of the Union – to improve it is the task of us all.” 

 

Tonight, thanks to the grit and determination of the American people, there is much progress to report.  After a decade of grinding war, our brave men and women in uniform are coming home.  After years of grueling recession, our businesses have created over six million new jobs.  We buy more American cars than we have in five years, and less foreign oil than we have in twenty.  Our housing market is healing, our stock market is rebounding, and consumers, patients, and homeowners enjoy stronger protections than ever before.

 

Together, we have cleared away the rubble of crisis, and can say with renewed confidence that the state of our union is stronger.

 

But we gather here knowing that there are millions of Americans whose hard work and dedication have not yet been rewarded.  Our economy is adding jobs – but too many people still can’t find full-time employment. Corporate profits have rocketed to all-time highs – but for more than a decade, wages and incomes have barely budged

 

It is our generation’s task, then, to reignite the true engine of America’s economic growth – a rising, thriving middle class.

(以下略)

冒頭6パラだけですが、この時点で、雇用確保について2回、賃金上昇について1回、計3回も雇用について触れています。

私の記憶では、大統領選でも、ほとんどの候補者が「○万人の雇用を生み出す」などの公約を掲げていたような気がします。ABCニュースを見ていても、候補者が「私は知事時代に○万人の雇用を生み出した」などと実績をアピールしていたような記憶があります。

では、ほぼ同じ時期に行われた、安倍総理の施政方針演説を見てみましょう。

http://www.kantei.go.jp/jp/96_abe/statement2/20130228siseuhousin.html

真ん中あたりに、以下のようなくだりがあります。

(家計のための経済成長)

 なぜ、私たちは、世界一を目指し、経済を成長させなければならないのか。

それは、働く意欲のある人たちに仕事を創り、頑張る人たちの手取りを増やすために他なりません。

このため、私自身、可能な限り報酬の引上げを行ってほしいと、産業界に直接要請しました。政府も、税制で、利益を従業員に還元する企業を応援します。

既に、この方針に御賛同いただき、従業員の報酬引上げを宣言する企業も現れています。うれしいことです。

家計のやりくりは、大変な御苦労です。日々の暮らしを少しでも良くするために、私たちは、「強い経済」を取り戻します。

誤解を生じないように、補足させていただきますと、安倍総理は雇用問題に関心が低い総理ではありません。平成18年の第1次内閣発足の時から、常に雇用問題には重点的に取り組んでおられましたし、少なくとも先陣を切って「最低賃金引上げ」のために企業側と交渉する総理は、私は他にみたことはありません。そして、安倍総理のブレインと言われる経済学者の先生方を見ても、雇用確保・雇用者への所得配分が重要であるという認識を持っていることは間違いないと思います。

しかし、その安倍総理でも、施政方針演説の冒頭で、オバマ大統領のように「600万人の雇用を生み出した」、「しかしまだあまりに多くの人たちがフルタイムの雇用を見つけることができていません。」とは言わないわけです。

これはやはり、社会的な背景が影響しているのだろうと思います。というのは、雇用の流動性が高いアメリカでは、失業率は景気の動向を瞬時に表します。瞬時に失業するからこそ、政府でも、雇用確保が主要な課題として取り上げられるわけです。一方で、日本は終身雇用制度は大分崩壊したとは言え、依然として雇用の流動性は低く、失業率もそれほど大きく変化するわけではありません。

私個人的には、労働力調査、毎月勤労統計などの雇用統計は重要な統計だと思いますが、それでも速報値としてアメリカほど注目されないのは、やはりこういった背景があるからなのではないかと思うのですが、いかがでしょうか?

2013年8月10日 (土)

雇用統計等

しばらく更新しておりませんでした間に、コメントをいただいておりました。

ご回答もしておらず、失礼しました。

大変勉強になりました。

国際比較という観点で、有益だと思われる書籍・論文等はご存知でしょうか。

CPIGDPなどの比較一つとっても、結構国際比較は難しいです。日本がわかっても比較する海外のことは知らないことが多いですからね。。

全くご指摘の通りです。国際比較は難しいですよね。

例えば、national accountsだけで考えても、各国、作り方どころか、公表している項目が違うことすらあります。

例えば、良く比較されるアメリカを取ってみても、アメリカでは「Government Consumption Expenditures and Gross Investment」というくくりで、政府の「Consumption Expenditures(消費支出)」と「Gross Investment(総資本形成)」を公表しています。一方で、我が国の場合はご存知の通り、「政府最終消費支出」、「公的固定資本形成」及び「公的在庫品増加」というくくりで公表しています。この「公的固定資本形成」は、「一般政府固定資本形成」と「公的企業固定資本形成(含む公的住宅)」に分けられるのですが、QE段階では分割することができません。

というのも、日本の場合は、公的固定資本形成の推計に、QE段階では建設総合統計の「公的・居住以外」を使っており、公的企業も一般政府も同じ伸び率で延長しているのでこのような表章になっているのですが、アメリカの場合は、品目ごとに、実際のデータがある場合はそれを使って推計し、ない場合は「トレンド」で推計して、「Government Consumption Expenditures and Gross Investment」として公表しているようです。

というと、アメリカがちゃんとやっているように見えるのですが、実はnational accountsマニュアル上は、普通は「gross fixed capital formation(総固定資本形成)」として公表する方が普通ですから、これに関しては、アメリカの方が変な気がします。

そして、これらのことが分かる資料と言うと、どうしても当該国の推計担当機関が公表しているマニュアルということになります。比較対象として主要な国と考えられる、アメリカの場合は、BEA(Bureau of Economic Analysis)のHPに解説書が書いてあります。

http://www.bea.gov/methodologies/index.htm#national_meth

また、EUはEurostatがこのあたりのマニュアル(ESA)を出しており、各国ともこれに従って推計しています。(しかもご丁寧に、23カ国語で作っています。)もちろん、具体的にどの基礎統計を使っているかというのは、各国の推計機関のHPを調べないと行けないのですが。。。

http://eur-lex.europa.eu/LexUriServ/LexUriServ.do?uri=CELEX:32013R0549:EN:NOT

このあたりの主要どころであればまだ良いのですが、そうでない国の比較となると、推計解説書を自国語でしか出していない国も多く、(例えば、こんなヤツです。http://www.gks.ru/free_doc/new_site/vvp/met-regl.doc)なんだか知ったかぶりをして書いていますが、実は私自信お手上げ状態だったりします。。。

ですので、国際比較をしている時も、実際は少し範囲の異なるものを比較している不安がぬぐえません。国際機関のデータだと比較も簡単なのですが、恐らくまとめている国際機関も各国でどのようにして作っているかまでは分かっていないのだろうと思います。。。

というわけで、あまりお答えになっていないのですが、分析していて気になる場合に、個別にその国のマニュアルを読みながら検討していくという、非常に非効率な方法しか思い浮かびません。。。

本当に申し訳ありません。

続きのコメントについては、次回に。

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