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2013年7月25日 (木)

国際比較(2)

さてさて前回の続きです。

もう数カ月前の話なのですが、ちょっとしたきっかけで、現部署(national accountsとは全く関係ありません)の仕事として、統計の国際会議に出席してきました。それは某国際機関(国際金融関係です)が主催した会議なのですが、各国(先進国から新興国まで)の統計作成部局の代表や、その他の国際機関(national accountsのマニュアルを伝統的に作ってきた某国際機関や、金持ちクラブと言われる国際機関、国際機関と言えるか微妙ですが西ヨーロッパあたりにある地域統合組織)のエコノミストも来ていました。

その統計の中身の一部がnational accountsに係わるものでして、非常に楽しく話を聞くことができました。会議の冒頭でchairman(この人は某国際機関のエコノミストでした)から、「national accountsは外から見たらブラックボックスだから、説明はブラックボックスにせずに分かりやすくね。」とか冗談を言うくらいで、どの国でもnational accountsはマニアの世界であることが良く分かりました(笑)

ですが、国際機関を中心として、専門家及び各国統計作成者の間で、かなり密接な情報共有の場が設けられていることも感じられ、非常に刺激になりました。

national accountsは本来国際比較のために作られた基準なのはそうなのですが、そうはいっても、各国ごとに制度や情報入手可能性が異なりますから、微妙に異なる部分が出てきます。そもそも推計主体からして各国バラバラです。例えば、会議のプレゼンであったのですが、南アフリカでは、GDP(生産側)の推計を統計庁が、GDP(支出側)の推計を中央銀行が行っているようで、この不突号をどうやって小さくするかが課題となっているというような話をしていました。

これは少し極端な股裂き事例ですが、海外部門と金融部門を中央銀行が作成するというのは、各国良く見られる傾向だと思います。一方で、国内の実物部門(GDPなどの推計)を、中央銀行がやるのか、統計作成部局が行うのかという形で分かれているような印象があります(アメリカはどちらも統計作成部局がやっているようですが。。。)。

日本も、national accountsの作成、公表は内閣府の国民経済計算部がまとめてやっていますが、その基礎統計である(実質上一部を構成している)、海外部分の「国際収支統計」や金融部分の「資金循環統計」は日本銀行が作成しています。

また、話が少しずれますが、アメリカのプレゼンで、「net lending(+)/net borrowing(-)の実物部門(capital account)と金融部門(Financial accounts)の不突号が2008年だけ激しくなっている。(他の都市では概ね2000億ドル程度なのですが、2008年だけ1兆ドルも差があります。)」というものがありました。

私は、「これはリーマンショックの年なので、金融部門でキャピタルロスの影響が出てしまっているのではないか(注:資産価格の変動は、net lending(+)/net borrowing(-)などのフローの変数に影響を与えてならず、それはストック(貸借対照表など)の統計に表れるべきものです)」と聞いたのですが、アメリカの推計担当者の答えは、「そうかもしれないね。でも、この不突号は我々推計担当者にとって幸運なものなのです。何故なら、恐らくどこかに問題があるに違いなく、それに気づくきっかけを与えてくれたのだから。」というお答えで、この大らかさはカルチャーショックでした(笑)

日本では、このような不突号が出たら大騒ぎになると思うのですが、それを全く問題視せず、むしろ「次につながるからありがたい」と言い切れるアメリカの統計作成部門のドライな感覚はすごいところだなと思った記憶があります(笑)

と、再び基準年の話ですが、確かに、今の先進国であれば、ほとんどの国は「連鎖方式」を導入していますから、参照年(名目と実質が等しくなる年)の調整はあり得るのではないかという気もします。

(連鎖方式では、参照年を変更しても伸び率は変わりません。ちなみに、固定基準方式では、「基準年」を変更すると伸び率が異なります。そのため、「参照年」と「基準年」と言い方を区別しています。)

ただ、国によっては、年度で実質化しているところもある(確か、オーストラリア、ニュージーランドがそうだったと思います)ので、それを「暦年」で参照年を作るようにというのは難しいのかもしれません。。。

このように、「本来国際比較できるための統計」として作られているnational accountsですが、そうはいっても、各国で事情が異なりますから単純な比較ができない場合もあります。ただ、これって、例えば金融規制などの専門性の高い分野でも同じだと思っており、単純に一つの指標の数字を見て、すべてを判断するのは難しいのだと思います。

では、このような専門性の高い分野では何が起こっているかというと、その分野で高い知識・経験を有している専門家グループが形成されており、その人たちが、専門的な内容をフォローしているのではないかと思うのです。それであれば、その分野に余り専門性が無い人が分析しようとした時に、それらの人にアドバイスをもらうとか、それらの人が書いた著作を勉強することも可能なのだと思うのです。

冒頭の会議では、国際機関のエコノミストの人たちも「ブラックボックス」と笑って言っていた例を取り上げましたが、やはり、national accountsは、いろいろな学問(経済学、会計学、統計学等)が合わさった分かりにくい統計ですし、その数字が何を意味しているのか理解するのは、なかなか大変です。ですので、内容を理解している専門家グループがもう少し大きな規模で存在できるような学問分野だとは思うのです。ですが、少なくとも日本国内では、これまでそのような認識が余りされておらず、学問分野としての魅力が高められてこなかったというのは非常に残念なことで、私自身も在任中、この面での取り組みが十分できていたかというと自信は無く、反省しなければならない部分だと思っております。各国の「専門家グループ」と意見交換することで、そのことを改めて感じることができ、有意義な会議でした。

ということで、最後は少し話がずれてしまいましたが、国際比較とその専門性について取り留めもなく書いてしまいました。。。

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コメント

大変勉強になりました。
国際比較という観点で、有益だと思われる書籍・論文等はご存知でしょうか。
CPIやGDPなどの比較一つとっても、結構国際比較は難しいです。日本がわかっても比較する海外のことは知らないことが多いですからね。。

民間にいると、統計の作り方にはあまり関心がなく、発表のタイミングに重きを置かれるという印象でしょうか。たとえば、雇用統計ですと、米国では注目度ナンバー1でして、たとえば、米債などに投資していると、大変気になる統計なのですが、日本だと雇用統計の発表が遅いので、大した注目がされません。こういうところばかりに目が行ってしまうのもどうかな、とおもってしまいます。

引き続きご健筆、頑張ってください。
余談のような話ですが昔SNAはいったいどういう仕組みなのだろうと思いテキストを読んだのですがもう一つよくわからない。ままよ、まずは現場と、表をにらんでいるうちに統計上の不突合というケッタイナものを見つけ&あちこちにこれが出現することを見つけ、あちらの不突合とこちらの不突合はいったいどういうつながりなのかと年報をひっくり返しているうちにSNAの構造を知る手っ取り早い方法はこれだと閃いたことがあります。季報なんぞにとっつきやすい記事を載せる時などのご参考まで。

 ところで、せっかくこれだけの情報を提供しているのですから、これをいかに使ってもらうのか、使うといかに便利か、を研究所はPRすべきです。人的にも厳しいでしょうがPRしないといかにももったいない&他国にごして改良していく資源の確保が難しくなりますね。

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