« 2013年2月 | トップページ | 2013年6月 »

2013年3月

2013年3月18日 (月)

経常収支赤字【補足】(2)

続きのご質問です。

  それではこの説明の仕方では大丈夫ですか?「経常収支の黒字は結果として、その金額分の外貨が増えた事を意味し、外貨が増えた事は資本の流出超となるので、資本収支赤字として示されるか、もしくは外貨準備が増える(マイナスの符号)事を示している。」日本銀行が出している入門国際収支の32ページ「事後的には経常収支黒字に見合う額の資本が海外に流出するか外貨準備の増加になることを示す」をちょっと変えた表現なんですけど。

ほぼその通りなのですが、「外貨」と言いきってしまうのはやや厳密性を欠くかと思います。というのは、この場合得る資産は、「外貨」に限らず、例えば「売掛金」という形で得た「海外への貸付」とか、逆に、今まで海外におっていた借金(それこそ「買掛金」など)を相殺するということもあり得ます。ですので、厳密に書くとしたら、

「経常収支の黒字は、その対価として、同額だけ『海外に対する純資産』が増えたことを意味し、これは、資本収支赤字もしくは外貨準備増として示される。」

という言い方が正確かなと思います。この「純資産」というのもポイントで、つまり「資産が増えること」と「負債が減ること」は、どちらも「純資産」を増やす方向に働くからです。

最後に、分かりやすく、アカウントの形で、これらの取引を計上してみましょう。(かえって分かりにくくなるかもしれませんが。。。)

(1)日本の自動車メーカーが200万円の自動車を、アメリカに輸出したとし、その対価は現金(200万円分のドル)で受け取った

1

これはそのまま、車の輸出分だけ、経常収支が増え、同じく現金としてその他資本収支が増えるので、経常収支の黒字、資本収支の赤字になります。

(2)日本企業が、タイに子会社を作るため、手持ち現金100万ドルで直接投資をした。

2

直接投資とその他資本収支(現金)が同額だけそれぞれ増減するので、資本収支は変わりません。当然、経常収支も変わりません。

(3)日本政府が、100万ドル分の円売り介入をした。

3

円売り介入で得た外貨100万ドルが、外貨準備増(具体的には、日本の外為特会などを念頭に置いてください)の勘定に計上され、(国内から買ったとしたら)その外貨を売った分、その他資本収支が減少。(ちなみに、(海外から買ったとしたら)その分、海外が保有する邦価が増えるため同じくその他資本収支が減少。)

ということになります。

2013年3月17日 (日)

経常収支赤字【補足】

しばらく見ておらず、ご質問をいただいていたことに気づきませんでした、申し訳ございません。いただいたご質問は、

いつも参考にさせて頂いてます。すばらしい解説力でいつも感服しております。今回の資本収支の誤解、私もずっと疑問でした。確かに「経常収支と資本収支は表裏一体」「資本収支の赤字はそれだけ経常黒字で稼いだお金を海外に投資しているからだ」という文言が頭から離れずにいました。となれば・・・2003年に資本収支も経常収支も黒字だったのは?となりますよね。それは外貨準備の増加で説明されるようなのですが。

それではこの説明の仕方では大丈夫ですか?「経常収支の黒字は結果として、その金額分の外貨が増えた事を意味し、外貨が増えた事は資本の流出超となるので、資本収支赤字として示されるか、もしくは外貨準備が増える(マイナスの符号)事を示している。」日本銀行が出している入門国際収支の32ページ「事後的には経常収支黒字に見合う額の資本が海外に流出するか外貨準備の増加になることを示す」をちょっと変えた表現なんですけど。

です。このようなマニアックな内容(しかも半分以上私の趣味。。。)を読んでいただき、そのような事を言っていただけるなど非常に恐縮です。。。。

さてさて、ご質問の中身ですが、

確かに「経常収支と資本収支は表裏一体」「資本収支の赤字はそれだけ経常黒字で稼いだお金を海外に投資しているからだ」という文言が頭から離れずにいました。となれば・・・2003年に資本収支も経常収支も黒字だったのは?となりますよね。それは外貨準備の増加で説明されるようなのですが。

全く、ご指摘の通りのご質問です。前回は、確かに意図的に「外貨準備増」について触れておりませんでした。というのも、これを言いだすと分かりにくくなるので。。。

正確に言うと、日本銀行(や財務省)が公表している国際収支統計の中の「資本収支」という項目は、厳密には「資本収支(除く外貨準備増)」というべきものです。ですので、経常収支の黒字分は、必ず「資本収支」と「外貨準備増」に回ることになります。(金融が詳しい方には「ファイナンスされている」というような言い方が分かりやすいかもしれません)

具体的に、2003年、2004年を見てみましょう。

2003年

 経常収支    15.8兆円

 資本収支    7.7兆円

 外貨準備増  -21.5兆円

 誤差脱漏   -2.0兆円

2004年

 経常収支    18.6兆円

 資本収支    1.7兆円

 外貨準備増  -17.3兆円

 誤差脱漏   -3.1兆円

というわけで、合計するとちゃんとゼロになるようになっています。ちなみに、「外貨準備増」と「資本収支」はそれが増えるときに「-」で計上されるようになっています。(このあたりの計上方法、実は国際収支統計特有の計上方法で、SNAの方に慣れてしまうと、一瞬分かりにくくなったりするんですよね。。。)

ですので、2003年と、2004年は、それぞれ20兆円、17兆円だけ、外貨準備が増えたということになります。外貨準備が増えたということは、円売り介入をしたというわけで、円安に持って行こうとしたわけです。

この年に何があったかというと、テイラー・溝口介入」と後になって名づけられた、合計35兆円と言われる大型介入があった年です。

完全に蛇足ですが、私の記憶では、この介入は非不胎化介入だったので、「為替介入と言いつつ金融緩和の側面も持っていたよな~」、とか当時思ったような気がしています。確か、「介入時のFB(政府短期証券)は日銀引き受けだから金融緩和だけど、その借り換えの時は日銀引き受けになるのか?」とかいうマニアックな議論をした記憶もあります。

さてさて、話を元に戻しまして、資本収支の「-」は、外貨などの海外に対する民間の資産が増える場合に、「-」が増えるものです。この点は前に触れたとおりでして、だからこそ「貿易で黒字が出ると、その対価を得るので、資本収支の「-」が同額だけ増える」という形になるのです

さて、ここで、政府(含む日銀)が「円売り介入」をした場合どうなるでしょうか?この場合、国内外から外貨を購入することになりますよね。国内の民間部門から外貨を購入すれば、これは、「海外に対する民間の資産が減る」わけですから、資本収支は「+」方向になります。また、国外から外貨を吸収する場合も、海外に対して「円」を渡すわけで、「海外部門が有する日本資産が増える」ということになります。これもまた、資本収支が「+」方向に動きます。

というわけで、介入により、外貨準備増が大きく動くと(具体的には自国通貨安介入により外貨準備が増えると)、「経常収支」と「資本収支」がいずれもプラスになるというおかしな動きをすることになります。

長くなりましたので、続きは次回に。

« 2013年2月 | トップページ | 2013年6月 »

無料ブログはココログ
2016年8月
  1 2 3 4 5 6
7 8 9 10 11 12 13
14 15 16 17 18 19 20
21 22 23 24 25 26 27
28 29 30 31