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2013年2月

2013年2月26日 (火)

経常収支赤字(3)

③日本企業が、タイに子会社を作るため、手持ち現金100万ドルで直接投資をした。

この場合、どのように記録されるかというのが、今回の問題です。

この場合、まず、海外に対する日本の資産が100万ドル増えます。すなわち、資本流出です。具体的には、「資本収支」の中で、「直接投資」という項目の(海外)資産が増えます。

同時に、今まで持っていた手持ち現金100万ドルが減ります。これは、具体的には、「資本収支」の中で、「その他資産」という項目の(海外)資産が減ります。

これをまとめるとどうなるかというと、

経常収支+資本収支(+100万ドル100万ドル+外貨準備増+誤差脱漏  0

ということで、そもそも、経常収支も資本収支も変わらないのです。

さらっと書いてしまいましたが、この事実、『資本収支のバランスは、経常収支のバランスが変わるような取引(貿易や配当金など)のときだけ変わり、海外投資などの資本収支だけしか変わらない取引では変わらない』ということが意外に理解されていない気がします。

(日本では有名な某「国際経済の教科書」にも間違って書いてあったくらいですし、実はIMFBPM6でも、このことははっきりとは書かれていませんで、非常に紛らわしいです。但し、有名なG.マンキュー先生の英語のテキストにははっきりと正しいことが書かれています!!

これを見ると、「資本収支の大きなマイナスは、日本がたくさん海外に投資しているからだ!」という主張はちょっと首を傾げてしまいます。というのは、「日本がたくさん海外に投資している」という行為は、前述のとおり、統計上は「資本収支のバランスを変化させない」からです。

逆に、「日本が貿易黒字がなくなったので、海外資産の増である資本流出額が減った」というのはストレートな説明になります。

ただ、一点注意しなければいけないのは、「日本がたくさん海外に投資することで、日本円より外貨の需要が増え、円安が進み、貿易黒字が増え、経常収支も黒字化し、資本収支赤字が増える」という流れはありえます。実際に、BPM6でも、「資本収支」⇒「経常収支」の流れについてはこのような書き方しかしていません。しかし、多くの人は、「日本がたくさん海外に投資すれば、資本収支赤字が増える(ように統計上も記録されているはず)」と思い込んでいるように見えて仕方ありません。

というわけで、私が見る限り、ものすごく誤解されているのではないかという件でした。

最後に、前述のBPM6の抜粋を以下のとおり書いておきます。

BPM6の記述についても、いわゆる経済学でよく出てくるISバランスの話に寄り過ぎていて、統計がどういうことを意味しているのかを直接的に書いておらず、私個人的には「いかがなものか?」と思っています(笑)

それでも、よく見ると下線のように「直接投資、銀行借り入れなどの結果として、資金流入は、固定資本形成の増加と直接的にリンクする「かもしれない(may be)」」としか書かれておらず、まだ、良識の人が中にいたのだろうと想像します(笑))

 D. Financing a Current Account Deficit

 14.25 This section examines the financing of a current account deficit by means of net financial inflows and changes in reserve assets, and some of the economic policy issues involved. For such an analysis, it would be helpful to use identity (12), and to assume that initially S = I (i.e., that the current account is in balance and that net capital and financial account and reserve asset transactions are also zero). From this initial situation, it is instructive to trace the effects, on the current account and the financial account, of an autonomous increase in investment (capital formation), which is generated by a rise in the productivity of capital. If this additional investment is not matched by a corresponding rise in saving, interest rates will tend to rise as long as the monetary authorities do not controlthe rates. The excess of investment over saving will be reflected in a current account deficit, which may be financed by a net financial inflow.

 14.26 Whether there is spontaneous financing of a current account deficitthat is, whether the gap between saving and investment is met from autonomous flowsdepends on a number of considerations. The functional categories of the international accounts, as well as additional breakdowns (e.g., domestic sector, partner economy, currency of denomination), can be crucial to assess the determinants of such financing, and therefore the appropriate policy measures to foster the most appropriate and sustainable financing sources. In particular, direct investment is frequently characterized by stable and long-lasting economic links, as well as the provision of technology and management. The financial inflow may be directly related to increased capital formation as a result of direct investment, loans obtained from foreign banks, or bonds issued in international financial markets. The foreign financing can be for the purchase of imported goods and services required for an investment project and for the purchase of domestic inputs. Alternatively, additional investment may be financed domestically by means of bank loans or issues of equities and bonds. In this case, there is no direct link between increased domestic expenditures and foreign financing. However, the tendency for domestic interest rates to rise (in comparison with rates abroad) because of the increased investment will provide an incentive for funds to flow into the economy. Whether or not funds do so depends largely on how investors view the economic prospects of the economy. The prevalence of stable economic and political conditionsparticularly if it is not likely that the higher interest rate will be offset by a continuing depreciation of the exchange rate of the economywill increase the spontaneous movement of funds into the economy.

2013年2月25日 (月)

経常収支赤字(2)

まず経常収支とは何かということを考えてみます。一番分かりやすいのは、財やサービスの貿易かと思います。

例えば、

日本の自動車メーカーが200万円の自動車を、アメリカに輸出したとします。このとき、経常収支は、200万円黒字になります。この部分を「貿易収支」とかサービスも含めて「貿易・サービス収支」なんて言ったりします。

この他にも、例えば、

日本がタイの企業に投資していた(例えば100%子会社を持っていた)として、そのタイの企業からの配当が100万円入ってきたとします。すると、これも経常収支が100万円黒字になります。この部分を「所得収支」と言います。

これは、あくまで「財を輸出した」とか、「投資したら利益があった」などの事実を見ているだけです。では、この裏で何が行われているかというと、①の輸出の例では、200万円分のお金(一般的には外貨)が増えているわけです。同じく、②の投資の例では100万円分のお金(同じく一般的には外貨)が増えているわけです。この事実は統計(具体的には国際収支統計)上ではどのように扱われているのでしょうか?

これが扱われているのが、「資本収支」という項目でして、この部分ではお金の動きが記録されます。上記の①については、「外貨の200万円分の増」、②については「外貨の100万円分の増」として記録されます。そして、「外貨の増」というものは、「海外資産の取得」=「資本流出」として記録されますから、①の例では、

 経常収支(+200万円+資本収支(-200万円+外貨準備増+誤差脱漏  0

となりますし、②の例では、

 経常収支(+100万円+資本収支(-100万円+外貨準備増+誤差脱漏  0

となります。

ここまでは、それほど難しくなく分かると思うのですが、問題は次のような場合です。

③日本企業が、タイに子会社を作るため、手持ち現金100万ドルで直接投資をした。

この場合、どのように記録されるのでしょうか?

続きは次回に。

2013年2月23日 (土)

経常収支赤字

2012暦年の日本の経常収支が、1985年以降で過去最少の経常収支黒字となっただとか、2013年1月の貿易赤字が過去最大となったなど、いろいろと国際収支統計、貿易統計などについて書かれている記事を目にする機会があります。

こういった記事を見ると、「経常収支が赤字になったら、資本収支が黒字になる」というようなことが書いてあり、国際収支統計上の有名な式である

 経常収支 + 資本収支 + 外貨準備増 + 誤差脱漏  0 

について触れています。

これはつまり、経常収支と資本収支(広義で見ると「外貨準備増」も含む)は、同じもの実物面と金融面の2つの面からみているだけということを意味しているのですが、これの説明って分かりにくいなぁという印象があります。

良く書かれている説明は、

①経常収支黒字なら、その余っているお金を海外投資しているはずだ。

とか

②国内金利が(相対的に)高ければ、資本流入が起こり、自国通貨が高くなり、輸出が減ることで経常収支赤字になるはずだ。

とか言う説明が多く、分かりにくいなぁと思って見ています。

そして、「統計の仕組み」として、なぜこのような形になるのか、解説しているものは、ほぼ皆無だったと記憶しています。(先ほど見たら、何かの質問に対するベストアンサーが、そのことまで触れてばっちり書いてくれていましたが、私が知る限りこれが唯一の例なのではないかと思います。)

そこで、今回は、「統計の仕組み」から言って、なんで上記の式が成り立つのか、順を追って考えてみようと思います。

2013年2月22日 (金)

「現物社会給付等」と「現物社会移転」(3)

続きです。

 そうしますと、 現実最終消費=調整可処分所得(純)-貯蓄(純)の関係にありますので、そこからさらに固定資本減耗を除くということは、貯蓄(総)=貯蓄(純)+固定資本減耗ですから、計算上は「調整可処分所得(純)-貯蓄(総)」に相当する、という認識で宜しいのでしょうか?

の部分ですが、前述のとおり、私の考え方では、「個別的非市場財、サービスの移転」の部分は引く必要はないと思っていますので、少し違います。

この部分を引く必要がないと考える理由は、この部分は「コスト積み上げ」なのですから、「政府サービス生産のための支出」と考えてもおかしくないと思うからなのです。そのため、「調整可処分所得」などとは異なる話だと思います。

なお、私が前のコメントで書いたとおり「現物社会給付」よりも「社会給付」はより広い概念で、要は「現物」ではなく「現金」で政府が家計にあげるものなどが入ってくるわけでして、年金なんかが入ってきます。

社会負担及び社会給付(Social Contribution and Benefits

 社会給付とは、93SNAでは「病気・失業・退職・住宅・教育あるいは家 族の経済的境遇のような一定の出来事あるいは状況から生じるニーズに対する備えとなることを意図して家計に支払われる経常移転」と定義されている。わが国の93SNAにおいては、(1)老齢年金などの「現金による社会保障給付」、(2)適格退職年金などの「年金基金による社会給付」、(3)生活保護などの「社会扶助給付」、(4)退職一時金などの「無基金雇用者社会給付」、(5)医療保険給付及び介護保険給付からなる「現物社会移転」、の五つに分類している。

 社会負担とは、93SNAでは「社会給付が支払われることに備えて社会保険制度に対して行う現実または帰属の支払」と定義されている。我が国の 93SNAでは、(1)社会保障基金への負担金のうち雇主負担分である「雇主の強制的現実社会負担」、(2)雇用者負担分である「雇用者の強制的社会負担」、(3)年金基金への負担金のうち雇主負担分である「雇主の自発的現実社会負担」、(4)雇用者負担分である「雇用者の自発的社会負担」、(5)無基金制度への負担金である「帰属社会負担」、の五つに分類している。

政府最終消費支出ではこれが入ってこないというのが、私の突っ込みの2つ目です。(厳密には、退職金などの「無基金雇用者社会給付」を入れて良いのかという問題点がありますね。。。前に書いたときは、ここまで頭が回っていませんでしたが、改めて考えると、これは結構大きな問題かもしれません。ちなみに、前回書いた、IMFが主導して各国整備を進めさせている「政府財政統計(government fiscal statisticsGFS)」では、この部分は基本的に含めない形で計上することになっているようでして、その意味でも、やはりSNAとは違う概念なんだと思います。)

つづいて、もうひとつの質問についての私の考えです。

また、政府最終消費には生産・輸入品に課される税も含まれていますが、税は結局のところ政府の収入なので、それもコストからは除外するという考え方もあるように思われますが、その点はいかがでしょうか?

これも、考え方としては、有りだと思います。ご指摘のとおり、政府が払っている分も政府の収入ですから。

ただ、その場合は、税収から政府の支払い分を引かないと、整合性が取れないのではないかと思います。ですが、税収の分析は別のデーターから取ってきそうですよね。その場合は当該処理が面倒くさいし、かえって分かりにくくなるような気がします。

また、たとえ税金とはいえ、「政府がサービスのために支払っているお金」ということでは変わりは無いわけですから、入れておいてもいいかなという気がするのですが、いかがでしょうか???(政府と言っても、J-SNAでは一部の独立行政法人などが含まれるわけですから、その活動において、普通に税金を払うことはあってもおかしくは無いでしょうし。。。)

2013年2月20日 (水)

「現物社会給付等」と「現物社会移転」(2)

「現物給付」と、「個別的非市場財・サービスの移転」の区別についてです。再び、内閣府HPを引用させていただくと、

現物社会給付(Social Benefits in Kind

 93SNAにおいては、一般政府から家計への医療保険給付分及び介護保険給付分は現物社会移転の一項目である「現物社会給付」として記録している。また、現物社会給付は、社会保障基金が家計に対して払い戻しを行う形での「払い戻しによる社会保障給付」と、関連するサービスを直接受給者(家計)に支給する形での「その他の現物社会保障給付」に細分化して記録している。

個別的非市場財・サービスの移転(Transfers of Individual Non-market Goods and Services

 「個別的非市場財・サービスの移転」は、「現物社会給付」とともに「現物社会移転」を構成する項目であり、家計に対して、無料または経済的に意味のない価格で、一般政府または対家計民間非営利団体といった非市場生産者が行う財・サービスの提供をいう。具体的には、一般政府から家計に移転される(一般政府から家計向けサービスの費用として支出される)、児童保護費等負担金(公立保育園分)や、対家計民間非営利団体から家計に移転される(対家計民間非営利団体が、サービスの費用の一部もしくは全額を家計に負担させず、補助金や寄付金などの収入により賄って行うサービス)私立保育園の経営費、美術館や動物園の運営費などが含まれる。 なお、この移転のうち、一般政府から家計への移転額は一般政府の個別消費支出に計上される。また対家計民間非営利団体から家計への移転額は、対家計民間非営利団体最終消費支出に等しい。

とこれは分かりにくいですね(笑)ですので、93SNAマニュアルにおけるこの両者の違いを大雑把に書いてしまうと、

 現物社会給付:政府が、他の民間セクターから(より正確にいうと「市場財」)を購入し、それをそのまま家計に(ただで)あげるもの。

 個別的非市場財・サービスの移転:政府が、自ら(より正確にいうと「非市場財」)を生産し、それを家計にあげるもの。

ということになります。「政府が自ら生産したものか」、「政府が他の市場財・サービス生産セクターから購入したものか」ということが最大の違いです。

(注)なお、08SNAマニュアルでは、ここの部分が少し変わっています。政府が他のセクターから購入した財・サービスを移転する場合でも、「個別的非市場財・サービスの移転」に入る可能性があるのです。実は、「等」についても、この話に関係してきます。

  前述のとおり、政府が、自ら生産したものでなく、他のセクターが生産したものを購入し、それをただで再配分する場合は、93SNAマニュアルではそれはすべて「現物社会給付」に入るとされています。

  一方で、93SNAマニュアルでは、「社会保障給付」のうち、社会保障基金が給付するものでないものを「社会扶助給付」というのですが、これは「基本的に社会保障」関係のもののみとされています。

  この場合、「じゃ、社会保障基金じゃない政府が他の民間セクターから『社会保障関係でない財・サービス』を購入して、それをそのまま家計にあげていた場合はどうなるんだよ?」という疑問が出てきます。それがJ-SNAでは「等」として現れているわけでして、この扱いについては、いろいろな観点から整理するべき論点があるのですが、マニアックなのでここでは省略します。

  なお、08SNAマニュアルでは、この矛盾が少し解消した記述になっており、政府が他のセクターから購入した財・サービスを移転する場合でも、「個別的非市場財・サービスの移転」に入る可能性があるのです。ただ、そうはいっても、まだ細かい部分でいろいろと難しい部分があり、最終的にどのように計上するのがbestかという点で、依然として論点が残っていることは事実なのです。

  というわけで、完全な蛇足でした。参考までに、マニュアルの関係部分を以下に記しておきます。

93SNAマニュアル

9.79. 政府単位および対家計非営利団体は、また、市場生産者が生産する消費財・サービスであり、かつ直接家計に対して提供されるものを購入する。政府単位または対家計非営利団体の役割は、その財貨またはサービスの支払いを行なうこと、およびそれが現物社会移転として家計に対して分配されることを保証することに限定される。政府単位または対家計非営利団体は、そのような財貨・サービスのそれ以上の加工には関係しない。また、その支出は、中間消費ではなく最終的なものとして取り扱われる。また、この方法で分配された財貨またはサービスの価額は、現物社会扶助給付を含めて現物社会給付として記録される。

8.83. 社会扶助給付は、社会保険制度によって普通は対象範囲とはされない事象または状況に応じて支払われる経常移転を含まない。したがって、社会扶助給付は干ばつ、洪水または地震のような自然災害に応じてなされる現金または現物による移転は対象としない。そのような移転は別にその他の経常移転として記録される。

長くなりましたので、続きは次回に。

2013年2月19日 (火)

「現物社会給付等」と「現物社会移転」

先日、「政府最終消費支出」についての(かなりどうでもいい(笑))コメントを投稿したところ、非常に面白い(SNAに詳しいと思われる方からの)質問をいただいてしまいました。

内容は、以下のとおりです。

いつも勉強させていただいております。今回のシリーズも大変興味深く拝見させていただきましたが、SNAの概念の整理として少し確認させていただくコメントします。

「現物社会給付等」と「現物社会移転」の区別が良く分かっていないのですが、もし両者をイコールと考えて良いならば、政府最終消費支出から現物社会給付等を除く、ということは、現物社会移転=個別消費支出ですので、即ち現実最終消費(現実集合消費)を対象にする、というお考えだと捉えて宜しいのでしょうか? そうしますと、 現実最終消費=調整可処分所得(純)-貯蓄(純)の関係にありますので、そこからさらに固定資本減耗を除くということは、貯蓄(総)=貯蓄(純)+固定資本減耗ですから、計算上は「調整可処分所得(純)-貯蓄(総)」に相当する、という認識で宜しいのでしょうか?

また、政府最終消費には生産・輸入品に課される税も含まれていますが、税は結局のところ政府の収入なので、それもコストからは除外するという考え方もあるように思われますが、その点はいかがでしょうか?

以上、突然の不躾な質問で恐縮ですが、どうぞよろしくお願いします。

非常にお詳しい方からの質問で、しかも、「現実最終消費」など、分かりにくい概念まで勉強しておられて、そんな方に見ていただいているなんて、非常にうれしいかぎりです。私の理解の範囲で、以下、順番に私なりのお答えを書いてみようと思います。

まず、

「現物社会給付等」と「現物社会移転」の区別が良く分かっていないのですが、もし両者をイコールと考えて良いならば、政府最終消費支出から現物社会給付等を除く、ということは、現物社会移転=個別消費支出ですので、即ち現実最終消費(現実集合消費)を対象にする、というお考えだと捉えて宜しいのでしょうか?

の部分です。分かりにくいながらも、内閣府のHPから持ってきましょう。

現物社会移転(Social Transfers in Kind

 一般政府及び対家計民間非営利団体が、個々の家計に対して財貨及びサービスを、現物による社会移転として支給することであり、当該財貨及びサービスは、一般政府及び対家計民間非営利団体が市場で購入したかあるいはその非市場産出として生産したものである。 現物社会移転は、現物社会給付と個別的非市場財、サービスの移転から構成される。

今回は珍しく(笑)分かり易く書いてあり、

 現物社会移転 = 現物社会給付 + 個別的非市場財、サービスの移転

という関係式が書かれています。つまり、現物社会給付は、現物社会移転よりも狭い概念です。

といっても、これだけでは、「現物給付」と、「個別的非市場財・サービスの移転」の区別が分かりませんよね。

長くなりそうなので、次回に続きます。

2013年2月15日 (金)

政府最終消費支出(5)

長々と書いてきましたが、さて、はじめに戻りましょう。問題は「政府最終消費支出」を「行政サービスのコスト」と見てしまって良いかという点でした。

ここまで長々とご覧いただいた方は、「政府サービス生産のコスト」なんだから、むしろ「政府サービスの生産額」をそのまま使ったほうが良いのではないか?という突っ込みを期待していたとしたら残念(笑)ですが、私の突っ込みはそこではありません。というのは、「政府サービス」の生産コストから、授業料等で受け取っている対価を引くというのは、「まあ、かかったコストの一部は自ら賄っているんだから、引くというのは考えとしては有り得るよね!」って私は思います。

問題はそこでは無くて、一つ目の突っ込みは「政府サービス」の生産コストとして入っている「固定資本減耗」ってモノが入って良いのか?というところです。固定資本減耗とは、減価償却費のようなものと考えていただければ分かりやすいと思いますが、「過去の固定資本形成を現在使ったものとしてみなす分」です。これを入れてしまって、本当に「『現在の』行政サービスのコスト」って言ってしまって良いでしょうか???

特に、これって近いうちに達成するべき目標として使うわけで、それが「過去の政府の固定資本形成の額」によって決まってしまって良いのかという疑問があります。そもそも、「現在の政府の固定資本形成の額」は別途加えられていますよね。ということは、二重計上では???という突っ込みすらできてしまいます(笑)。

というわけで、この表は各国比較なので、全部の国に同じ処理をすれば、恐らく結果は大して変わらないと思われますので(笑)、本当に議論の本質には関係ないのですが、統計の観点からは思わず突っ込みを入れてしまいました(笑)

さらに、もうひとつ突っ込みがあります。それはは、「政府最終消費支出」だと、「年金」とか「生活保護」などのお金の給付(「現物社会移転以外の社会給付」)や、少し前にあった「エコカー補助金」のような移転費用って、全く含まれていないのですよね。これって入れないで良いのかなという面もあります。

ただ、この現金給付や移転費用とかは、「政府サービスのコスト」というよりは、ただ単にお金が流れているだけ、という感じもしますし(特に、「年金」などの場合は、「年金保険料」から「年金給付」にまわしているだけですし)、移転費用などをどこまで入れるか考えてもややこしくなるだけなので、入れないという考え方はあると思います。ただ、それなら、同じように保険料で賄っている部分がたくさんあり、実際には代金を払っているだけの医療や介護の現物給付も入れてしまって良いのか?という疑問は出てきます。

そう考えると、私はこの「政府サービスのコスト」として使うとしたら、

①政府最終消費支出から、固定資本減耗を除き、また、現物社会給付等も除いてします。

 (これはすなわち、「純粋に政府サービス」にかかるコストを評価し、移転経費などのただ単にお金を配るというものは含めないという考え方。)

②政府のすべての支出額を計算し、そこから固定資本減耗を除く。

のいずれかなのかな、という気がしています。

ちなみに、②の考え方は、IMFが主導して各国整備を進めさせている「政府財政統計(government fiscal statisticsGFS)」の考え方で、そちらの統計を見ると、この「政府のすべての支出額」取ることができます。

なお、日本の「国民経済計算」でも、あくまで「GFSの区分」にそろえて表を公表しています(付表6-2))。そして、その額を見ると、2011年度で、政府最終消費支出は「967740億円」、②の政府の支出は「2662533億円」と結構な差があります。

というわけで、完全な「本質とは外れた」突っ込みですが、SNAの考え方が分かりやすい例と思って、突っ込んでみました。

(注)この日本の国民経済計算の中のGFS区分に揃えたという表も、厳密なGFSではなく、SNAならではの帰属計算や固定資本減耗が含まれており、IMFが求める「実際に政府が支出している額はいくらなんだよ!」というものとは微妙に違いますので、ご注意を。これはあくまで、SNAであって、それを組み替えただけですので。。。

 

2013年2月14日 (木)

政府最終消費支出(4)

前回は、「政府最終消費支出」とは、「政府サービス」の生産額のうち、対価(先ほどの授業料など)で賄えない部分は、「政府自らが消費している」というように「擬制計算」しましょう」という概念だというところまで進みました。

さて、「擬制計算」しようにも、一点問題が出てきます。そもそも、「政府サービス」は、売ってないので、「いくら」と計算したら良いか分からないのです。そして、この解決方法として、SNAはどのようにしているかというと、「政府サービスは、「いくらか分からない」ので、かかった費用だけ生産されたということにします」というのが答えです。

したがって、生産側では、「政府サービス」は「政府サービスを生むためにいくらかかったかを積みましょう」ということになり、支出側では「政府サービス」を、民間の人が使っている分(商品・非商品販売(授業料など))と政府自らが使っている(と擬制する)分に分けられるわけです。

ただ、政府が消費するのは、「自ら作った分」だけでなく、「民間企業が作った財・サービス」も一部あるはずだと考えます。同考えるかというと、「民間が作ったものに、全く手を加えず、そのまま家計に再配分するもの」は政府が消費したとみなし、具体的には、医療や介護の自己負担分以外(医療は7割分、介護は9割分)の部分になります。これが「現物社会給付等」になります。(「等」は日本の国民経済計算特有のもので、長くなるので省略します。)

こうして、

政府最終消費支出 = 「政府サービス」の生産額

          - 商品・非商品販売 + 現物社会給付等

となります。

ここまで来て、ようやく、私の突っ込みの準備ができました(笑)

次回に、ようやく突っ込みの本題に入ります。

2013年2月13日 (水)

政府最終消費支出(3)

前回の続きです。

政府サービス生産者(Producer of Government Services

 国民経済計算では政府は単なる消費主体としてだけではなく、生産主体としても格付けられており、この場合に政府は政府サービス生産者と呼ばれる。

 政府が購入する財貨・サービスは、政府サービス生産のための中間投入として計上される。政府サービスの産出額はこの中間投入に雇用者報酬、固定資本減耗、生産・輸入品に課される税を加算したものである。生産された政府サービスの一部は家計等に販売されるが、大半は自らが消費し、政府最終消費支出として計上される。

 なお、家計に販売された政府サービス(国公立学校の授業料のように、家計が政府から直接購入したサービス)については家計最終消費支出として計上される。

の内容です。

まず、「国民経済計算では政府は単なる消費主体としてだけではなく、生産主体としても格付けられており」の部分に注目です。これは、何度もこのHPで書いてきたのですが、GDPって何ですか?ということにつながります。

GDPは生産側GDPと支出側GDPの2つの観点から推計することができます。(正確には分配側GDPも含めた3つですが、ここでは分配面は考える必要はないので、生産、消費の2つだけ考えます。)

 GDP(生産側)= 生産 - 中間投入

というのが、定義になります。GDPは日本語訳すると、国内総生産ですから、やっぱり、どれだけ生産したかという指標なわけです。そのうち、「生産に使うために生産したものを含んだら、あんまり意味ないよね?」ということで、生産に使った財・サービスを引くわけです。これが、「中間投入」です。

一方で、生産したもの(+輸入品)って、誰かが使っているわけです。誰が使っているか考えると、

生産 + 輸入 = 最終消費支出 (使い果たしてしまうもの)

         +総固定資本形成 (設備投資など複数年にわたって使うもの)

         +在庫品増加 (作ったけど売れないなどで、ただ残っているもの)

         +輸出 (海外に出て行くもの)

         +中間消費 (何かの生産のために使われているもの)

となるわけです。蛇足ですが、何度も繰り返すように、一国全体で見れば、「中間消費=中間投入」ですから、

生産 - 中間消費(=中間投入)

        = GDP(支出側)= 最終消費支出 + 総固定資本形成

                  + 在庫品増加 + 輸出 - 輸入

となります。

ここで、内閣府HPの解説に戻りましょう。「国民経済計算では政府は単なる消費主体としてだけではなく、生産主体としても格付けられており」ということは、「生産」の中に、政府が生産した何かが入っているはずです。そしてわが国のGDPでは、それを「政府サービス」としています。

すると、支出側に目を向けてみると、この「政府サービス」を誰かが使っていなければいけません。政府サービスのうち、一部は家計が使っているでしょう。例えば、公立学校の教育サービスなどです。これには、「授業料」としてお金を払っています。が、この教育サービスにしても、授業料として政府はお金は受け取ってますが、それ以上のコストは掛けてますよね?ですが、「政府のサービス」という生産物を、この授業料だけで計ってしまって良いものでしょうか?もっと言ってしまえば、例えば「国防」、「警察」などって、「政府のサービス」ですが、誰もお金を払っていませんよね?では、この「政府サービス」の生産は「0円」としてしまって良いでしょうか???

これを解決するための方法が、「政府最終消費支出」という考え方で、「お金はもらってないけど、何かしらの「政府サービス」は存在しており、誰かが使わなければいけない。そこで、「政府サービス」の生産額のうち、対価(先ほどの授業料など)で賄えない部分は、「政府自らが消費している」というように「擬制計算」しましょう」というのが、政府最終消費支出の考え方です。

長くなりましたので、続きは次回に。

2013年2月12日 (火)

政府最終消費支出(2)

前回の続きです。

そもそも、「政府最終消費支出」ってなんでしょう?という話でした。

というわけで、久々に、内閣府HPの用語解説を見てみましょう。

 政府最終消費支出(Final Consumption Expenditure of Government

 一般政府の財貨・サービスに対する経常的支出である政府サービス生産者の産出額(中間投入+雇用者報酬+固定資本減耗+生産・輸入品に課される税)から、他部門に販売した額(商品・非商品販売額)を差し引いたものに現物社会給付等(医療保険及び介護保険による給付分等)を加えたものを一般政府の最終消費支出として計上している。

相変わらず分かりにくいですが、これを見ると、

一般政府の最終消費支出 = 中間投入 + 雇用者報酬 + 固定資本減耗

             + 生産・輸入品に課される税 - 商品・非商品販売

             + 現物社会給付等

という関係にあることだけは分かります。が、「なぜ、このような構成要素になっているのか?」ということまで遡って考えないと、私の突っ込みの意味が分からないと思います。そこで、この説明文にある、「政府サービス生産者」という言葉の解説を、同じく内閣府のHPから見てみましょう。

政府サービス生産者(Producer of Government Services

 国民経済計算では政府は単なる消費主体としてだけではなく、生産主体としても格付けられており、この場合に政府は政府サービス生産者と呼ばれる。

 政府が購入する財貨・サービスは、政府サービス生産のための中間投入として計上される。政府サービスの産出額はこの中間投入に雇用者報酬、固定資本減耗、生産・輸入品に課される税を加算したものである。生産された政府サービスの一部は家計等に販売されるが、大半は自らが消費し、政府最終消費支出として計上される。

 なお、家計に販売された政府サービス(国公立学校の授業料のように、家計が政府から直接購入したサービス)については家計最終消費支出として計上される。

これを見るとますます分からなくなりそうですが(笑)、次回以降、順を追って考えていきましょう。

2013年2月11日 (月)

政府最終消費支出

最近、いろいろなことに疎くて、もう半月も前の123に行われた「第1回産業競争力会議」の資料について、今更ながら突っ込みを入れたくなってしまいました。

http://www.kantei.go.jp/jp/singi/keizaisaisei/skkkaigi/dai1/siryou.html

 

具体的に突っ込みを入れたいのは、「資料6-9 三木谷議員提出資料」の中の一箇所についてです。

http://www.kantei.go.jp/jp/singi/keizaisaisei/skkkaigi/dai1/siryou6-9.pdf

なお、先にこれだけは強調しておきます!!

この突っ込みは、あくまで「元統計作成者」が「統計」という観点から、非常にチマチマしたことについて突っ込んでいるだけでして、決して三木谷議員のご意見について突っ込んでいるわけではありません!!

(なお、このブログは純粋に、統計のことを書いているので、こういった意見の中身に触れることは極力避けていますが、私の『個人的』な意見としては、三木谷議員の「行政サービスコスト」を削減するという意見には、大賛成です。あんなくだらない事業に、何で予算を付けなきゃいけないんだ!とか、あのバカ公務員どもの自己満足のために何でこんな高額の支出をしなきゃいけないんだ、・・・(中略)・・・、と思うことは沢山あります。これをもっと効率化すれば、本当に役に立つ仕事に回す予算もできるだろうし、国の借金だって少しは減るだろうに、公務員の給料を下げなくても済むんじゃないか(笑)、などと日々、思っています。が、その点はここで触れるのは本題ではないので、軽く流しておいてください。)

さて中身に戻ります。

今回突っ込みを入れたいのは、「行政サービス年間コストのGDPに占める割合」の部分です。この資料のP10を見ると、当該指標としてバックデーターとして、「政府最終消費支出」、「一般政府総固定資本形成」の合計値を用いています。この点について、突っ込みです!!

「政府最終消費支出って、行政サービスの年間コスト」と言っちゃっていいんでしょうか???そもそも、「政府最終消費支出」ってなんでしょう?

ということで、次回に続きます。

P.S.

更新を怠っている間に、コメントを2つもいただいておりました。

そのお返事を以下に。。。

①「一般政府の勘定表」についてのコメントは、こんなマニアックで、分かりにくいページを見ていただいてありがとうございます。分かりにくければ、是非お申し付けください。

ネット環境が変わってしまい、なんだかUPしても見難いページになっているという自覚があります。

また、「③医療・ヘルスサービスは政府が行っている市場生産として整理する」の説明文については、自分でもちょっと違うのではないかと思っている部分があります。つまり、政府が生産しているのであれば、それは、雇用者報酬、中間消費などに含まれ、この文章の論点から見ると「①医療・ヘルスケアサービスは非市場生産としてしまう」と大して変わらないのでは無いかと思っています。(本質には変わりはありませんが(笑))

②再編成及び出版についてのコメントは、本当にありがとうございます。

この内容を書くのは、自分にとっても勉強という部分があり、このような私の個人的な趣味にお付き合いいただき、しかも、ここまで喜んでいただけるというのは、非常に光栄です。

自分の考えの整理のためにも、しかもそれで喜んでいただけるということですと、再編成したりというのは、是非やってみたいのですが、私自身出版社との付き合いも無く、なかなかその機会がないというのが本音です。

もし、ご興味がある出版社の方がいらっしゃったら、是非ご連絡ください(笑)

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