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2013年1月 6日 (日)

一般政府の勘定表についての回答

ずいぶん昔の記事についてコメントをいただいてしまいました。

http://taro-sna.cocolog-nifty.com/blog/2012/01/post-4175.html

その内容は、

この記事は不思議な感じがします。
割合は少なくても、大きな政府なので結局金額としては社会保障関連の給付は多くなっている、などといったことではないのでしょうか。
また「その他」に含まれるもので社会保障的に作用するものがあるのではないでしょうか。

とのことで、確かに違和感がある統計ですよね。

ということで私も少しこの原因を考えてみました。

(といっても、ほぼ一年前の記事ですので、思い出すのに時間がかかりましたが(笑))

まず、私が疑ったのは、これらの北欧の国においては「雇用者報酬」の支払いが多すぎる、ということです。すなわち、「雇用者報酬」の中に、医療やヘルスケアなどの福祉のための費用が入っているのではないかという疑いです。(厳密には、当然、「中間投入」等の中にも入っています。)

そこで、すべては調べられないのですが、スウェーデンについて厚生労働白書と思われる文書の記述を見てみました。

http://www.mhlw.go.jp/wp/hakusyo/kaigai/08/dl/25.pdf#search='%E3%82%B9%E3%82%A6%E3%82%A7%E3%83%BC%E3%83%87%E3%83%B3+%E7%A4%BE%E4%BC%9A%E4%BF%9D%E9%9A%9C%E5%88%B6%E5%BA%A6'

保健・医療サービスは、ランスティング(日本の県に相当する広域自治体)等が供給主体となっている。

と書いてあるところがポイントです。これを見ると、保険、医療サービスについては、「地方自治体の直営」であるように見えます。私は北欧の社会保障制度に詳しいわけではないので、もし間違っていたらご指摘いただけるとありがたいのですが、以下は、少なくとも「医療・ヘルスケアについて、スウェーデンでは「政府が直営」でサービス提供している」ということを仮定して考えてみようと思います。(ご専門の方。間違っている場合は、是非ご指摘ください!)

この場合、national accounts上は、以下のような整理の仕方が考えられます。

①医療・ヘルスケアサービスは非市場生産としてしまう

 ②医療・ヘルスケアサービスは、国営であっても、市場生産をしているものとして、「政府」から切り離してしまう

③医療・ヘルスサービスは政府が行っている市場生産として整理する

このうち②は日本の方式です。

なぜ、この記述方法にこだわるかというと、私がこの分析で「社会保障費」と書いたものは、「Social benefits other than social transfers in kind(現物社会移転以外の社会給付)」と「Social transfers in kind (via market producers)(市場生産者に対する現物社会移転)」の合計だからです。前者は単純にほぼ「年金」と考えていただいてよいと思います。では後者は何かというと、「病院やヘルスケア施設など(市場生産者)に対するサービスの政府の支払い分」ということになります。つまり、日本の場合は医療費は3割が自己負担ですから、残りの7割がここに含まれることになります。

では、もしスウェーデンが①であった場合どうなるかというと、実は医療・ヘルスケアなどへの支出がお医者さんやヘルパーさんへの給料は「雇用者報酬」に、必要経費は「中間投入」に、といった形で別の項目に入ってしまい、「社会保障費」に入ってこないことになります。

また、③であったとするのも微妙です。政府が市場生産をしていたとする場合、厳密には、産出はコスト積み上げと市場生産による収入の合計となるのですが、市場生産による収入は「Market output and output for own final use」という項目に含まれるのですが、これは今回の項目では「その他の収入」になります。が、ここで問題なのは、スウェーデンの「その他の収入」のGDP比はわずか34%程度で、これをすべて社会保障費に入れてもGDP2324%程度とそれほど大きな比率にならない点です。

そう考えると、やはりスウェーデンについてはある程度医療・ヘルスケアサービスについて、非市場生産としてコスト積み上げにしてしまっている部分があるのではないかと思います。

念のため、スウェーデンSNAの推計方法の説明書(http://www.scb.se/Pages/Standard____306032.aspx)を調べてみると、P27あたりに、

 3.2.14 Section N, Health and Social Work

PG

Description

CrtP

Index

Method

85130

Dental practice activities

7766

Index various measures

B

85140

Other human health activities

3960

Wage index SNI851

C

851A

Hospital activities

9061

Wage index SNI851

C

851B

Medical practice activities

9188

Wage index SNI851

C

85200

Veterinary activities

979

Wage index SNI852

C

853A

Child care

3735

Wage index SNI853

C

853B

Care of the elderly and disabled

7198

Wage index SNI853

C

853C

Pers. assistant

1057

Hourly rate

B

853D

Individual and family welfare

2788

Wage index SNI853

C

851OPEA             

Health care

99 608

Cost calculation

C

853OPEA             

Welfare

93334

Cost calculation

C

と書いてあります。これはボリューム・インデックスとプライス・インデックスの推計方法についての記述ですが、明らかにヘルスケアはコスト積上げ(=非市場生産)となっております。医療は違う可能性がありますが、これを見る限り、少なくとも一部についてはコスト積上げで生産している可能性が高そうです。

なお、補足すると、同じマニュアルに、

The methods are classified as "A", "B" or "C" in accordance with Eurostat's guidelines for deflators and volume indicators.

A = Best method

B = Acceptable method

C = Unacceptable method

と書いてあり、Cを付けている以上自分でも良くないとは自覚しながら、でも仕方なくやっているのではないかと思います。

というわけで、私の考えとしては、「これら北欧の国では、社会保障サービスの一部が非市場サービスとして政府自らが生産していると整理されているため、雇用者報酬などに含まれてしまっている」という可能性があるのではないかと思います。

長くなりましたが、誤りなどご指摘をいただけますと助かります。。。

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コメント

回答いただいていたのですね。ありがとうございますm(_ _)m。
サイトには毎週のように来ているのに気づきませんでした。f^_^;)
たいへん興味のあるところなのでじっくり読んで考えたいと思います。
また感想書きます。

改めてこのブログを読み替えてしていますが、非常にわかりやすいです。もう少し体系的かつストーリーちっくにして、ぜひ新書か何かで「SNAから見た日本経済」という本をだしてもらえませんか?既存のSNAの書籍はそれなりにそろっているものの、ここまで直観的にわかりやすいものではありません。書籍化することにより、SNAユーザーにかなりの貢献をできるのではないでしょうか。ぜひご検討ください。

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