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2012年4月 5日 (木)

GDPとGNI(3)

さて、前回は、「名目だろうが実質だろうが、GDP(生産側)とGDP(支出側)は等しい」というところを重点的に書いてみました。

今回は引き続き、生産(P)と所得(I)で、実質が異なる部分、すなわち交易利得についての話になります。

実質でのGDPGDIの違いは、右側の支出側で見た時の純輸出について、

GDP ⇒ 実質輸出-実質輸入

GDI ⇒ (名目輸出-名目輸入)/ニュメレール・デフレーター

をそれぞれ使うという違いです。

これを言葉で書いてしまうと、「価格上昇分を輸出、輸入の単独で割り引いたものは、生産(すなわちGDP)を測る指標としてはふさわしいと思われますが、所得(すなわちGDI)を測る指標としては、「原油の価格上昇によって名目の純輸出が減るならば、購買力も減っているはずだ」ということで、名目で純輸出を作り、それを実質化するわけです。」となってしまいますが、よくわからないですよね。。。

というわけで、少しスペースをいただき、「所得の実質化」についてのSNAの考え方に触れてみようと思います。

まず、「所得の実質化」について、93SNAでは以下のように述べています。

16.149. 実質所得を解釈する際には、次の2つの点を銘記する必要がある。

a)実質所得は、ある選ばれた参照年次の価格水準と関連付けることによって測定される。実質値は独立しては存在しえない。それらは参照年次の選択に応じて変化する。

b)実質所得はある選ばれたニュメレールに対する購買力の変化を測定する。かくして、それはニュメレールの選択にも依存する。

16.150. 明確なあるいは議論の余地のないニュメレールの選択方法がないことが多いので、ニュメレールの選択は統計の作成者ではなくて利用者にゆだねられるべきであるという考え方があり、そうした見地から、国民経済計算において実質所得を示すことには常に何がしかの抵抗があった。しかし、大きな価格変化が生じた場合には、統計の作成者は少なくとも実質所得の何らかの測定値を示す義務がある、ということもできる。国民経済計算の利用者のすべてが彼らの要求に最も適した実質所得を計算する機会、意欲あるいは専門的知識を持っているわけではない。さらに、少なくとも経済全体の水準においては、実質所得の多目的測度に対する多くの利用者からの需要がある。この節の目的は、そうした測度をどのように作成するかを示すことにある。

つまり、「所得の実質」ということになると、何かしらの基準となる財(これを経済学的にはニュメレールと言いますが)の購買能力がどれだけ増えたかを見ることになるということまでは、SNAでも認識しています。が、『その基準となる財をどのように設定するかは、一義的には決められないので、統計作成者ではなく利用者が作成するべき』という考えに少なくとも93SNAより前は立っていたということです。

ですが、93SNAではもう少し踏み込んでいて、『そうはいっても、すべての利用者に作れというのは酷だし、少なくとも、「一国全体の所得」については統計作成者が作るように努力するべきでしょう』ということになっているわけです。

もうお分かりいただけると思いますが、こうして93SNAで導入されたのが、まさに「GDI」(または所得の受払を含めた「GNI」)なわけです。

ここから先は私の推測も入るのですが、93SNAの考え方は

 ○一国全体の「所得」の実質化は行おう

 ○その時に、生産(P)と所得(I)の実質での違いは、所得の場合は購買力で見なければいけないので、石油が上がった結果の購買力の減少だろうが、価格が下がっているパソコンの輸出が減ったことによる購買力の減少だろうが、とにかく「名目の純輸出」から考える必要がある。

 ○そして、Pでは、実質輸出-実質輸入で良いが、Iでは名目「純輸出」を直接実質化すればよい!

ということになのかと思います。その結果、実質で見たGDPGDIの違いは、

実質GDP = 最終消費支出Q + 総資本形成Q + 輸出Q - 輸入Q

実質GDI = 最終消費支出Q + 総資本形成Q 

+ (純輸出Q×P/(ニュメレールP

ということになります。

※この式は、GDP(生産側)だろうが、GDP(支出側)だろうが変わらないことは、以前書いた通りです

ところでGDPGDIの実質値の差は「交易利得」なのだから、これまでの説明と矛盾するのではないかという質問を受けそうですが、実は、交易利得の定義は、

 交易利得 = (純輸出Q×P/(ニュメレールP)-(輸出Q - 輸入Q

なのです(笑)

ということで、交易利得についてもう少し続けてみます。

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