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2012年4月

2012年4月16日 (月)

アメリカのGNI

しばらく更新できていませんでした。

その間にひとつ面白いお話をいただいていたので、そのネタで少し。

そのお話の内容は、

 NYtimesに米国の成長率の記事がありGDPGDIが言及されていました。その差がずいぶん大きいのでこりゃなんじゃ とBEAを探ってみると 交易条件なんぞではなく統計上の不突合なんですね。生産アプロートでは4.4という高い数値が出、支出アプでは3.0ということです。

ということでした。

確かに、これだけ大きく差があると何が原因なんだろうと思ってしまいます。そこで、アメリカのBEAの公表資料を見てみましょう。

Gross domestic income

Real gross domestic income (GDI), which measures the output of the economy as the costs incurred and the incomes earned in the production of GDP, increased 4.4 percent in the fourth quarter, compared to an increase of 2.6 percent in the third.  For a given quarter, the estimates of GDP and GDI may differ for a variety of reasons, including the incorporation of largely independent source data. However, over longer time spans, the estimates of GDP and GDI tend to follow similar patterns of change.

GDIの部分の説明資料ですが、多くの理由が考えられるが、その中には基礎統計の違いが原因である、と書いていますね。

日本の実情を前提にすると、この文章は非常に分かりにくいかもしれません。というのは、日本では速報値(QE)では、名目値はGDP(支出側)とGDIはイコールです。なぜならIすなわち分配面の推計をしていないのですから。

そして、確報値(年報)では、分配側のGDIGDP(生産側)と等しくなります。ここでも、分配側の推計をしていないというのはQEと変わりがありません。

この事実を前提として、アメリカの文章を見ると、「基礎統計の違いが原因」という言葉は、確かにGDP(生産側)とGDP(支出側)の不突合の問題のようにも見えます。しかし、恐らくBEAの文章が言っているのはそういうことではないと思います。

というのは、アメリカでは確報だけでなく、速報値(と言っても、一番早advanceでは無理で、3回目の改定値(third estimate)で出てくるのですが)の段階でも、分配側の推計をしています。

分配側の推計とは、雇用者報酬、営業余剰、生・輸税、固定資本減耗といった構成要素を直接推計して、それを積み上げているということです。そして、アメリカのGDIとはこういった推計値のことなのだと思います。

なお、アメリカのGDPの推計は非常に日本に似ていて、支出側から推計していますから、民間最終消費支出や民間企業設備投資、在庫品増加などを積み上げたものと、雇用者報酬、営業余剰などを積み上げたもので、ある程度差が出るのはしょうがないような気がします。

というわけで、教えていただいたお話を元に、三面等価のうち、日本ではあまり語られることのない分配側について書いてみました。

※ 実は、当方は、3月いっぱいで日本のSNAの作成業務から異動しました。(その関係で少し更新が遅れてしまったのですが。。。)

  このブログの元々の趣旨は、統計作成者が、統計ユーザに対して、考えていることや統計作成者でしか分からないマニアックな内容を伝えることができればということからはじめたものですので、私が統計作成者でなくなった現在、これ以上私が何か書くのもおかしいですので、今回の記事で一応終了とさせていただきます。

  長い間ご覧いただいた皆様にお礼を申し上げます。本当にありがとうございました。

2012年4月 8日 (日)

GDPとGNI(5)

さて、そもそもの質問です。

今回改めて勘定表を眺めると名目値にはGDP/Nは支出アプローチ&生産アプローチがたっており両者間が統計上の不突合となっていますね。
一方実質値は付表の2に生産アプの実質値(というか指数ですが)があり、これを使ってPGDP(生産アプ)の伸び率が計算できます。

この両者、RGDP(支出アプ)とRGDP(生産アプ)の比較ですが、両者の開差と交易条件(伸び率にして交易利得/損失のほうが良いかもしれません)の間には一定の(理論的な)関係が導けるのではないでしょうか?

この部分が、生産側のGDPと支出側のGDPの実質化の開差と関連があるということは、これまで書いてきたとおり、理屈上は無いと思います。
(もちろん、個別の価格調査の過程で、最終財のデフレーターと中間財のデフレーターが同じ動きを取り切れていないという可能性もあり、何かしらの関係性が出てくることは否定できません。が、これは、あくまで「推計上の技術的な問題」であり、理論的な話ではないと思います。)

公式の値は支出アプの名目値及び支出側からデフレートした実質値になるのというのは精度の関係やSNAガイドライン(多分)を考えると当然の措置かと思います。しかし「実質付加価値」ということを考えると生産アプのほうがストン(なんといって良いか難しいのですが)と理解が進むような気がします。そうするとますます生産アプによるRGDPによって経済の実相を見るほうが良いのではなかろうかと思う次第です(コチラは多分交易利得/損失調整後のRGDPの動きに近いと思います)。

もっともQEの資料にも計算部はRGNIも交易利得も丁寧に掲載されているので、ひとえに使うほうが勝手にRGDPのみに注目するのが「悪い」のですが・・。

この部分は基本的に同感です。というのは、生産側アプローチの方が正しく『付加価値』ですから、腑に落ちるというのは私も同感です。ですから、支出側で分からないときは、生産側の動きと合わせてみるように心がけています。ただ、交易利得調整後のGDIとはまた意味が異なるとは思いますが。。。

というわけで、常々書いていることではあるのですが、「GDPとはあくまで『生産』の指標です」ということを、もっと伝えていく努力が必要なんだろうなということを思いました。

というわけで貴重なご質問、ご意見をいただきありがとうございました。

2012年4月 7日 (土)

GDPとGNI(4)

交易利得について続きです。

以前も引用しましたが、93SNAの以下の記述をみると、興味深い(というか、よく考えると当然の)事実がわかってきます。

16.149. 実質所得を解釈する際には、次の2つの点を銘記する必要がある。

a)実質所得は、ある選ばれた参照年次の価格水準と関連付けることによって測定される。実質値は独立しては存在しえない。それらは参照年次の選択に応じて変化する。

b)実質所得はある選ばれたニュメレールに対する購買力の変化を測定する。かくして、それはニュメレールの選択にも依存する。

a)に書いてあることは、実質所得(したがって交易利得も)ある基準年と比較してどうなったかということを示しているだけのものです、と書いてあるわけです。ということは、交易利得の実額には(すなわちプラス、マイナスも)まったく意味がないわけです(笑)

以前、某大手証券会社のエコノミストの方が、「交易損失の額が○兆円に達しており、これはGDPの○%分の所得が失われている」と書いていましたが、これなど典型的な誤解ですよね(笑)

交易利得の実額をみて、「マイナスだ」と言ってどうするんだと・・・

繰り返しますが、「交易利得は、ある基準時点と比較しての大小関係を見ないと意味がない」というものですので、実額を見ることに意味はありません。

ただし、ある基準時点との比較に意味があるということは、実質で見たGDPGNIの伸び率には影響しますので、そういった見方が必要となるわけです。一応ご注意を。。。

と本題に戻りますが、前回は交易利得の定義まで書いたのですが、一点重要な論点が抜け落ちています。それは

○では、Iについての「純輸出」の実質化のためのデフレーターはどうしたらいいんだろうか?(すなわち、ニュメレールの選択はどうしたらいいんだろうか・・・)

ということでして、93SNAの記述のスタートである「明確なあるいは議論の余地のないニュメレールの選択方法がないことが多いので」というところに戻ってきてしまっているわけです(笑)

ただ、93SNAは、この点でも主に3つの選択肢を示しており、各国はその中から各国事情に合わせてニュメレール・デフレーターを選択することになっています。

93SNAが推奨する選択肢は以下の3つでして、

①貿易収支が負である場合は輸入デフレーター、逆である場合は輸出デフレーターを 採用

②輸出デフレーターと輸入デフレーターの加重平均を採用

③輸出入とは関係しない内需デフレーターを採用

となります。我が国は②を採用しています。

この部分、マニュアルでも決められていませんし、そもそも価値判断があるので難しい論点があるのは理解しております。そして、いろいろな議論の末、我が国のニュメレール・デフレーターとして②を採用しているのでしょうが、私の意見としては、ニュメレール・デフレーターは③とするほうが、その本質にあっているのではないかと思います。

というのは、あくまで所得(I)の実質化なのですし、日本の場合は、得た所得の支出先って、ほとんど国内生産物についてですよね?(大分輸入品も増えてきていますが。)

となると、やっぱり、内需デフレーターを使うことがbetterなのではないかと思うのですが。。。

と、話がずれにずれまくったので、次回質問に戻ってこの記事を終わりにしようと思います。

2012年4月 5日 (木)

GDPとGNI(3)

さて、前回は、「名目だろうが実質だろうが、GDP(生産側)とGDP(支出側)は等しい」というところを重点的に書いてみました。

今回は引き続き、生産(P)と所得(I)で、実質が異なる部分、すなわち交易利得についての話になります。

実質でのGDPGDIの違いは、右側の支出側で見た時の純輸出について、

GDP ⇒ 実質輸出-実質輸入

GDI ⇒ (名目輸出-名目輸入)/ニュメレール・デフレーター

をそれぞれ使うという違いです。

これを言葉で書いてしまうと、「価格上昇分を輸出、輸入の単独で割り引いたものは、生産(すなわちGDP)を測る指標としてはふさわしいと思われますが、所得(すなわちGDI)を測る指標としては、「原油の価格上昇によって名目の純輸出が減るならば、購買力も減っているはずだ」ということで、名目で純輸出を作り、それを実質化するわけです。」となってしまいますが、よくわからないですよね。。。

というわけで、少しスペースをいただき、「所得の実質化」についてのSNAの考え方に触れてみようと思います。

まず、「所得の実質化」について、93SNAでは以下のように述べています。

16.149. 実質所得を解釈する際には、次の2つの点を銘記する必要がある。

a)実質所得は、ある選ばれた参照年次の価格水準と関連付けることによって測定される。実質値は独立しては存在しえない。それらは参照年次の選択に応じて変化する。

b)実質所得はある選ばれたニュメレールに対する購買力の変化を測定する。かくして、それはニュメレールの選択にも依存する。

16.150. 明確なあるいは議論の余地のないニュメレールの選択方法がないことが多いので、ニュメレールの選択は統計の作成者ではなくて利用者にゆだねられるべきであるという考え方があり、そうした見地から、国民経済計算において実質所得を示すことには常に何がしかの抵抗があった。しかし、大きな価格変化が生じた場合には、統計の作成者は少なくとも実質所得の何らかの測定値を示す義務がある、ということもできる。国民経済計算の利用者のすべてが彼らの要求に最も適した実質所得を計算する機会、意欲あるいは専門的知識を持っているわけではない。さらに、少なくとも経済全体の水準においては、実質所得の多目的測度に対する多くの利用者からの需要がある。この節の目的は、そうした測度をどのように作成するかを示すことにある。

つまり、「所得の実質」ということになると、何かしらの基準となる財(これを経済学的にはニュメレールと言いますが)の購買能力がどれだけ増えたかを見ることになるということまでは、SNAでも認識しています。が、『その基準となる財をどのように設定するかは、一義的には決められないので、統計作成者ではなく利用者が作成するべき』という考えに少なくとも93SNAより前は立っていたということです。

ですが、93SNAではもう少し踏み込んでいて、『そうはいっても、すべての利用者に作れというのは酷だし、少なくとも、「一国全体の所得」については統計作成者が作るように努力するべきでしょう』ということになっているわけです。

もうお分かりいただけると思いますが、こうして93SNAで導入されたのが、まさに「GDI」(または所得の受払を含めた「GNI」)なわけです。

ここから先は私の推測も入るのですが、93SNAの考え方は

 ○一国全体の「所得」の実質化は行おう

 ○その時に、生産(P)と所得(I)の実質での違いは、所得の場合は購買力で見なければいけないので、石油が上がった結果の購買力の減少だろうが、価格が下がっているパソコンの輸出が減ったことによる購買力の減少だろうが、とにかく「名目の純輸出」から考える必要がある。

 ○そして、Pでは、実質輸出-実質輸入で良いが、Iでは名目「純輸出」を直接実質化すればよい!

ということになのかと思います。その結果、実質で見たGDPGDIの違いは、

実質GDP = 最終消費支出Q + 総資本形成Q + 輸出Q - 輸入Q

実質GDI = 最終消費支出Q + 総資本形成Q 

+ (純輸出Q×P/(ニュメレールP

ということになります。

※この式は、GDP(生産側)だろうが、GDP(支出側)だろうが変わらないことは、以前書いた通りです

ところでGDPGDIの実質値の差は「交易利得」なのだから、これまでの説明と矛盾するのではないかという質問を受けそうですが、実は、交易利得の定義は、

 交易利得 = (純輸出Q×P/(ニュメレールP)-(輸出Q - 輸入Q

なのです(笑)

ということで、交易利得についてもう少し続けてみます。

2012年4月 1日 (日)

GDPとGNI(2)

今回改めて勘定表を眺めると名目値にはNGDPは支出アプローチ&生産アプローチがたっており両者間が統計上の不突合となっていますね。

一方実質値は付表の2に生産アプの実質値(というか指数ですが)があり、これを使ってPGDP(生産アプ)の伸び率が計算できます。

この両者、RGDP(支出アプ)とRGDP(生産アプ)の比較ですが、両者の開差と交易条件(伸び率にして交易利得/損失のほうが良いかもしれません)の間には一定の(理論的な)関係が導けるのではないでしょうか?

この点については少し誤解があるような気がします。というのは、支出側アプローチは、

GDP(支出側)= 最終消費支出 + 総資本形成 +輸出 - 輸入

の個別の項目で実質化しており、

GDP(生産側)= 生産 - 中間投入

でもって実質化しているだけだからです。両者の開差に交易利得/損失の関連性があるということになると、何かしら輸出や輸入のデフレーターの動きが、GDP(生産側)の動きとあっていないということになりますが、それは少なくとも『理論上は』あり得ないのではないかと思います。

というのは、

生産(=産出額(output))+ 輸入- 輸出

= 国内総供給

= 最終消費支出+ 総資本形成+ 中間消費(=中間投入)

ですから、

生産 - 中間消費(=中間投入)= 最終消費支出+ 総資本形成+ 輸出- 輸入

となり、これが正しくGDP(生産側)とGDP(支出側)が一致するという理由になります。

さて、これを実質化することを考えると、

名目GDP(生産側) = 生産Q×P - 中間投入Q×P

名目GDP(支出側) = 最終消費支出Q×P + 総資本形成Q×P

 + 輸出Q×P - 輸入Q×P

となりますので、それぞれの項目のPを取ってあげたものが実質値となります。

が、特に輸入がわかりにくいようなので、そこを特出しして考えてみましょう。

名目GDP(生産側) = 生産Q×P - 国内生産物の中間投入Q×P

 - 輸入生産物の中間投入Q×P

というのはわかりやすいと思います。ここで、支出側を出す前に、国際総供給から考えてみましょう。

生産+ 輸入- 輸出 = 国内総供給

= 最終消費支出+ 総資本形成+ 中間消費(=中間投入)

  = 国内生産物に対する最終消費支出 + 輸入生産物に対する最終消費支出

   +国内生産物に対する総資本形成 + 輸入生産物に対する総資本形成

   +国内生産物に対する中間消費(の中間投入) + 輸入生産物に対する中間消費(の中間投入)

ということになります。そうすると、

名目GDP(支出側) = 国内生産物に対する最終消費支出Q×P

 + 輸入生産物に対する最終消費支出Q×P

            + 国内生産物に対する総資本形成Q×P

+ 輸入生産物に対する総資本形成Q×P

+ 輸出Q×P - 輸入Q×P

です。ここで、輸入については、最終消費支出に対するもの、総資本形成に対するもの、中間投入に対するものに分けることができますから、

名目GDP(支出側) = 国内生産物に対する最終消費支出Q×P

           + 輸入生産物に対する最終消費支出Q×P

            + 国内生産物に対する総資本形成Q×P

+ 輸入生産物に対する総資本形成Q×P

+ 輸出Q×P

- 輸入生産物に対する最終消費支出Q×P

- 輸入生産物に対する総資本形成Q×P

- 輸入生産物の中間投入Q×P

          = 国内生産物に対する最終消費支出Q×P

           + 国内生産物に対する総資本形成Q×P

+ 輸出Q×P

- 輸入生産物の中間投入Q×P

となります。これを生産側GDPと比較してみると、

名目GDP(生産側) = 生産Q×P - 国内生産物の中間投入Q×P

           - 輸入生産物の中間投入Q×P

です。ここで、生産から中間投入を引いたものは、最終需要(すなわち、最終消費支出と総資本形成と輸出)に等しいわけで、この両者って同じことを言っているにすぎません。

念のため実質を見ると、

実質GDP(生産側) = 生産Q - 国内生産物の中間投入Q

 - 輸入生産物の中間投入Q

実質GDP(支出側) = 国内生産物に対する最終消費支出Q

           + 国内生産物に対する総資本形成Q

+ 輸出Q

- 輸入生産物の中間投入Q

と、どちらも変わらないことがよくわかります。交易利得に入る前に、この「名目だろうが実質だろうが、GDP(生産側)とGDP(支出側)は等しい」ということを理解していただけると話が分かりやすいと思いますので、長々と書いてしまいました。

というわけでまた次回に続きます。

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