« 2012年1月 | トップページ | 2012年3月 »

2012年2月

2012年2月29日 (水)

財政部分

昨年末~今年にかけて公表した、22年度確報について、関心がある方も多いと思われる財政部門について少し触れてみます。

今回の基準改定では、財政関係について大きく分けて2つの変更が行われています。一つ目は、「公的部門の格付け変更」でして、既にふれたのですが、「公的部門」に格付けする基準(政府支配の有無)をより国際基準に近くなるように変更するということと、公的部門の中でも「政府」に分類する基準(市場性の有無の基準)を変更したということなどが主な変更点になります。

公的部門になるかどうかというのは、政府の支配があるかどうかが基準となるのですが、これを、「株式等の所有による支配」と「役員の任命権を保有することによる支配」の2つでみていきましょう、というように変更しました。

以前も書きましたが、この部分の考え方は、結局経営方針の決定権限(通常は役員や役員で構成される合議体(取締役会)が有しています)を政府が操作できるかどうか、という点がクリティカルに効いてきます。ですので、黄金株を持っている場合なども考えられるのですが、SNAはあくまで幅広い国に適用できるように、「ふわっ」としか基準を書いていませんので、その適用方法は各国にゆだねられています。

そして、17年基準改定後において、我が国では、その基準について、「株主総会の議決権(基本的には株式保有割合)を支配している場合」と「それ以外で役員の任免権を有している場合」の2つの場合を採用したということになります。ちなみに、前者の場合は、役員の任免権は株主総会にありますから、株主総会で過半数議決権があれば、役員の任免権を有することになりますから、考え方としては実は一貫しているわけです。このあたり、会社法の「親会社」と「子会社」規定とも整合的な考え方になったと思います。

(以前の基準では、「議決権を支配している」ことに加えて、それ以外で「役員の任免権を有している場合」となっていて、実は何を目的としていたのかよく分かりませんでした(笑))

そして、「政府」になるかどうかは、市場性があるかどうかが基準となるのですが(これは、実際には民間と非営利の関係にも当てはまります)、これについてSNAマニュアルでは「経済的に意味のある価格であるか」というふわっとした書き方しかしていません。

この基準では意味が分かりませんので、各国ともいろいろな基準でやっていました。日本は、今までは、

①民間事業所に同種の活動がある。…民間との間で競争が行われている可能性がある。

②価格あるいは料金が供給する量・質に比例している。…供給活動について外部から

の制約を受けない。

③自由意思による購入ができる。…消費活動について外部から制約を受けない。

http://www5.cao.go.jp/statistics/sna/zaisei_2/sankou_2.pdf より抜粋しています≫

という独自の基準でやっていたのですが、今回eurostatの基準である、「売上高が生産費用の50%以上か否か」という基準に変更しました。

こういった基準の変更で、公的部門の範囲が少し変わっているのですが、大所としてはNTTJRのうち国が株式を持っている法人について、公的企業になったことなどなのですが、確かにその分だけ公的固定資本形成が増え、民間企業設備が減る形となっているのですが、一国全体の付加価値でみると変わりませんでした。また、一般政府のISバランス、プライマリーバランスについても、実際それほど影響はなかったような気がします。

ただ、ISバランス、プライマリーバランスについては、従来中央政府だった「日本高速道路保有・債務返済機構」が公的企業に格付け変更となったことにより平成17年度の「土地の購入(純)」に大きな変化が出るなどの、局所的な影響は出ています。が、総じてみて、それほど大きな変化はありませんでした。

2012年2月26日 (日)

10-12月期1次QE(6)

今回は2010暦年が出ましたので、最後にそちらについても。

2010暦年は、実質▲0.9%2008暦年依頼再びマイナスとなりました。名目でも▲2.8%と同じくマイナスです。

マイナス要因は外需でして、寄与度で▲0.8%です。内訳は、輸出0.0%、輸入▲0.8%ですから、輸入の増が引っ張ったと見えなくもないですが、ちょっと違いそうです。

そのため、2009暦年と寄与度を比較してみると、

     外需寄与度   輸出   輸入

2009暦年  1.7%  3.1%   ▲1.4%

2010暦年 ▲0.8%  0.0%   ▲0.8%

という感じです。これを見ると、輸入というより、輸出の落ち込みが外需のマイナスに効いたということがよく分かります。

確かに震災の影響でサプライチェーンが寸断したというのがありましたから、暦年で見たら輸出が減るのは当然という感じがします。

なお、暦年デフレーターでみると▲2.0%1998年以来で、14年連続の名実逆転です。SNAの統計表の紙媒体は、13年間を載せることとしているのですが、ついにそれで収まりきれないくらいになってしまいました(笑)

というわけで、今回のQEはこれくらいです。

2012年2月25日 (土)

10-12月期1次QE(5)

続いて公需です。

今回はまずは公的固定資本形成から。実質で2.5%とマイナスとなりました。これは、総合統計もそれほど強くはないのですが、これに加えて、仮設住宅の建設の額が前期と比べて減っていますので、これが大きく効いています。

4-6月期以降、仮設住宅の動きだけで、IGの方向が決まってしまうというような感じになっていますね。前払い金統計などを見ると、「受注」では、10-12月期に東北の受注が増えていますから、本格的に工事ができるようになってくれば、復興需要も増えてくるのかもしれません。

続いて、政府最終消費支出ですが、前期比で0.3%となりました。

ですが、IGのマイナス幅の方が大きかったですので、公需は前期比▲0.2%、寄与度では▲0.1%となりました。

民需と公需を合わせて、内需の寄与度は0.1%ということになりました。

続いてデフレーターです。

デフレーターは、前期比で▲0.2%となりました。ついに12四半期連続、すなわち丸3年間ずっとマイナスという感じです。

2012年2月18日 (土)

10-12月期1次QE(4)

続いてそれ以外の民需について。

民間企業設備です。

実質前期比で1.9%とプラスとなりました。

IIPで見ても、国内向けの資本財はプラスでしたから、プラスというのはあまり違和感がないかと思います。

民間企業設備だけでなく、公的固定資本形成も含めた総固定資本形成での、品目別内訳を見てみると、自動車、続いて特殊産業機器(ブルドーザー)などがプラス要因となっています。

いつもの通り、2次で法季が入りますので、どうなるのでしょうか???

ここ2四半期連続で、法季がマイナスとなっていますので、3度目の正直で、それを打ち破ってほしいのですが。。。

民間住宅は、0.8%マイナスですフラット35の利下げ拡大の期限が9月末までだったなど、政策効果がありましたので、その反動でしょうか???実際、7-9月期は4.5%でしたから、その反動があってもおかしくはありません。

続いて、民間在庫品増加は、実質寄与度で▲0.3%でした。

これは、仕掛品と原材料在庫のARIAM予測は変わっていないのですが、製品在庫、流通在庫がマイナスに効いてしまいました。商販が結構下がっているので、その影響でしょうか。(IIPも下がっていますが。。。)

というわけで、結果として、民需は0.2%のプラス、寄与度では0.1%のプラスとなりました。

2012年2月17日 (金)

10-12月期1次QE(3)

続いて民需です。

民間最終消費支出については、実質季節調整済前期比は0.3%でした。寄与度では0.2%でした。名目の前期比は▲0.1%でしたので、引き続きデフレではありますが、その差は徐々に小さくなってきているようです。

それほど価格下落が大きくないということだと、想像の通り、テレビが大きく落ち込んでいます。また、パソコンも落ち込んでいました。ですので、価格下落の圧力は結構弱まっています。

一方で、石油価格の上昇幅は小さくなっていますから、こちらはデフレ方向に効いてきます。

こういったものを合わせてみると、季節調整済デフレーターの前期比でみると▲0.3%とマイナスになっています。

引き続き、形態別で、実質季節調整済み前期比を見てみましょう。カッコ内は寄与度になります。

耐久財  ▲1.9%  (0.1%)

半耐久財 ▲0.2%  (0.0%)

非耐久財  0.9%  ( 0.1%)

サービス  0.6%  ( 0.2%)

という形でした。今回のプラスは、サービスと非耐久財が引っ張っているということが分かります。

サービスで引っ張っているのは飲食サービスなどです。年末商戦も良かったとか聞きますし、その関係で外食が増えたのでしょうか???

ちなみに、自動車は好調だったのですが、テレビやパソコンが落ち込んでいたので、耐久財全体ではマイナスとなっています。

ということで、民間最終消費支出は、全体で0.3%となりました。

2012年2月15日 (水)

10-12月期1次QE(2)

今回は、まずは外需から

輸出は3.1%、輸入は1.0%ということで、いずれもマイナスに寄与しています。

ただ、寄与度でみると、輸出は▲0.5%、輸入は▲0.2%ということで、輸出の落ち込みの方が効いているようです。純輸出でみると、寄与度は▲0.6%ということになりました。

輸出の内訳をみると、財貨が4.0%、サービスが3.9%ということで、財の輸出が落ち込んだという形です財のマイナスに寄与したのは、半導体などの電子通信機器でした。前期が高かったのでその反動ということもあるかもしれません。前期高かった自動車もマイナスとなっています。

一方で、輸入の内訳は、財貨が1.2%、サービスが0.1%ということで財貨が増えていますこちらは、鉄鋼製品や電子通信機器のなかでも携帯電話機などが増えていました。スマホなど輸入したんでしょうかね???

なお、外需のうち、輸出に含まれる「非居住者家計の国内での直接購入」の季節調整については、ダミー(TC2011.2)を新たに追加しました。

これは、大震災の影響で、2011年の4-6月期の海外から日本への旅行者が大幅に減り、翌期の7-9月期では急速に復活しましたので、4-6月期にダミーが検出されてしまったということです。

確かに、ダミーを入れる前は、前年の2010年の4-6月期が押し上げられた形となっていましたので、ダミーを入れた結果、より適切な計数になっているように思います。

(ただ、直接購入は計数が小さいですからほとんど影響してこないのですが。。。)

というわけで、そんなこんなで、外需は▲0.6%と、今期のマイナスの最大要因となりました。

2012年2月13日 (月)

10-12月期1次QE(1)

本日1次QEを公表しました。

http://www.esri.cao.go.jp/jp/sna/sokuhou/sokuhou_top.html

10-12月期の実質季節調整済前期比は▲0.6%4-6月期以来、再びマイナスに逆戻りしてしまいました。7-9月期は1.7%と高い水準ですので、その反動もあるのかもしれませんが、要因は後述しますが、ほとんど外需です。

外需については、輸出の減と、輸入の増がどちらも効いていますが、輸出の減の影響の方が大きかったです。やはり、欧州危機などが影響しているのでしょうか。

一方で、内需は0.1%とプラスでしたので、今回のマイナス成長は、本当に外需要因という感じです。4-6月期と同じような構図ですね。。。

内需の内訳をみると、民間企業設備が1.9%、民間最終消費支出が0.3%となっていまして、一方で民間在庫品増加が寄与度で▲0.3%でした。こういったものが相殺して、民需では少しプラスでした。

公需は、政府最終消費支出は0.3%とプラスながらも、公的固定資本形成が▲2.5%とマイナスとなり、公需はマイナスです。

これを合わせて、内需は0.1%とプラスになりました。

そして、今回のマイナスの主要因である、外需の内訳は、輸出が▲3.1%(寄与度▲0.5%)、輸入が1.0%(寄与度▲0.2%)という形でして、合計して外需は▲0.6%という形でした。

GDPデフレーターは前期比で▲0.2%とマイナスです。一方で前年同期比では、▲1.6%と、7-9月期の▲2.1%よりは減少幅を縮小しています。これは輸入デフレーターの上昇幅が縮小していることが効いているのですが、これ以外にも、民間消費でテレビなど価格下落の激しい耐久財が落ち込んでいることも影響しています。(さらに言うと、前年の10-12月期に、テレビの駆け込み需要があった関係で、『前年10-12月期のデフレーター』が相対的に低いため、前年同期比でみると高めに見えてしまうということもあるかもしれません。)

外需要因によるマイナスというのは予想通りだったようで、あまり大きな反響は出ていないようですね。あとは、いつものことですが、法人企業統計の結果が出るのを待つばかりという感じです。。。

詳細については、次回以降に。

2012年2月11日 (土)

産業連関表

以下のような質問をいただきました。

ところで、国民経済計算は支出側、県民経済計算は生産側で推計上の不突合分を表彰していますよね。

国民経済計算は支出側は暦年、年度とそれぞれ統計表があるのに生産側は暦年だけです。

どうして年度側は作成されていないのでしょうか?

必要とされていないのでしょうか?

国と都道府県を比較する際に生産側の年度別推計があるといいのになぁと感じる今日この頃です。

産業ごとの総生産を国と都道府県を比較させたい場合に何か良い方法があれば教えてください。

ご指摘のとおり、県民経済計算では、「生産側」が正しいとしていますので、統計上の不突合は支出側に出てくることになります。

http://www.esri.cao.go.jp/jp/sna/sonota/kenmin/tyuui.pdf

の「5.」の最後をご確認ください。)

それは良いとして、国民経済計算では、生産側の年度が無いのはなぜかという質問です。

これは、国民経済計算の推計方法にも由来するのですが、まず、生産側、支出側ともに、基礎となる統計は産業連関表です。そして、産業連関表が暦年なので、いずれの計数ともに「暦年」で作成することになります。

そして、その「暦年」値を四半期分割して、四半期値を作成し、それを1期ずらして合計すると「年度値」になります。

国民経済計算では、県民経済計算と違って「支出側」が正しいとしていますので、支出側は四半期値も作成します。が、現状、「生産側」は四半期値を作成していませんので、「年度値」も存在していません。

この点、「必要とされていないか?」と聞かれると、たぶん必要とはされていると思います。が、そこまでできていないということだと思います。

ちなみに、生産側が正しい、としている国も多々あります。(イギリスなど代表例です。)そういった国は、当然、四半期速報値(いわゆるQE)の段階で、生産側の四半期値が存在します。

ということで、この年度値問題は、結局「四半期値」をどうするかにかかってくるのですが、現状ではそこまでできていないということです。

そして、これに関連して、日本の産業連関表について、気になることがあります。

日本の産業連関表は「暦年」ということになっています。そして、産業連関表の作成にあたって大きなウェートを占めている(製品についての生産等を把握できる)統計である、「工業統計調査」も暦年ということになっています。

ここで気になるのですが、工業統計調査は、企業に対するヒアリング調査なのですが、企業の側って、生産額とか暦年で把握してるんでしょうか???大きな企業などは四半期決算があるかもしれないので、記入するときに「めんどくさいなぁ」と思いながらも、変換できるかもしれませんが、小さな企業にそのようなことが十分可能なのでしょうかね???

ちなみに、政府部分は年度決算で動いていますので、それを無理やり四半期分割し、暦年転換して作っていますが、四半期分割の情報は十分とは言えません。

こういったことを考えると、産業連関表って、暦年で作る必要があるのだろうか?という疑問が私にはあるわけです。そして、その基礎統計となる、企業へのヒアリング調査にしても、年度で聞いた方がより正しい結果が出てくるのではないかと思うわけです。

年度になると国際比較ができないとか意見もあると思いますが、SNAの世界では少なくともオーストラリアやニュージーランドはFYで突っ走ってますし、それで何か文句を言う人を見たことはありません。それに、暦年値については、四半期分割して統計メーカーの方で加工するということにすればいいのではないかと思うのです。

その場合、暦年値の制度が低くなるという意見はありますが、今のように、元となる暦年値も怪しく、それを加工した年度値も怪しいというくらいなら、年度値をしっかり固めてから、その参考値として暦年値を作るという方が良いのではないでしょうか?

この点、いろいろな方の意見があると思いますし、私も産業連関表はあまり詳しくないので、間違っているかもしれません。が、こういう意見もあっておかしくないのではないか、と思ってしまいます。

2012年2月 7日 (火)

人口減少(3)

生産側については、

①労働投入の減は、少なくともGDPの減少につながりそう

②ただし、資本との代替(機械化)や、技術革新によって、GDPの減少を少なくする効果もある

③②の効果が大きければ、生産年齢人口一人当たりのGDPで見た時は、どちらに転ぶかわからない

となります。さて②として、GDPの減少が少なくなる場合はどうなるでしょうか?

 GDP(支出側)=最終消費支出+総固定資本形成+輸出-輸入+在庫品増加

ですから、生産側でみると、人口が減るにも関わらず、最終消費支出がそれほど減らないようにするか、総固定資本形成を増やしていくしかありません。

在庫品増加というのもありますが、これって、ただ単に売れ残ったものが積み重なっているだけですから、常に在庫品を積み増し続けるなんでことは構造的に不可能です。

それとも、輸出に依存して、どんどん海外に売り出していきましょうか。といっても、製品については韓国、中国などの追い上げが激しく(もう追い抜かれていますか?)、しかも、これだけ人件費が高く、「細部まで作り込まないと納得しない」日本製品が、今以上に海外でシェアを増やすことは考えにくくないでしょうか。それくらいなら、企業も現地生産に入っていくでしょうから、日本生産の生産物の輸出がそれほど増えるとは思えません。

となると、最終消費支出か総固定資本形成しかありません。

ここで分配面に戻ってもらいたいのですが、先ほどの

GDP(分配側)= 雇用者報酬 + 営業余剰 + 固定資本減耗 + 生・輸税

から見ると、雇用者の絶対数が減ると、一人当たりの賃金を増やさない限り営業余剰に回ります。ですので、内部留保として積み増しておけば、総固定資本形成の原資は増えると思います。

が、このような構造、長続きしますかね?通常、固定資本形成、将来の生産のための投資ですよね?それが、将来生産するのは将来の設備投資のための生産がメインです、なんて、なんだかねずみ講みたいです(笑)

もう一つ考えられるのは、最終消費支出と総固定資本形成の中に出てくる、「政府部門」の存在です。ここで、政府の最終消費支出と総固定資本形成(すなわち設備投資)を増やすとうことが考えられます。が、そのためには分配面で出てきた、生・輸税を増やして政府が使うということを増やさないといけません。つまり、一生懸命政府が、設備投資をしたり、社会保障費で使ったり、さらに言えば公務員の人件費などに使うわけです。

こんな世の中にしたいですか???私は嫌です。(笑)

といっても、社会保障費はこれから増えるでしょうから、ある程度は政府による最終消費支出は増えてきます。この中で生・輸税の増加を最低限にするためには、他の経費、公務員の人件費や政府による固定資本形成などについて、メリハリをつけて削減をする必要があるでしょう。

さて、選択肢の一つではある政府部門の増大という方法を取りたくなければ、最終消費支出のうち、民間部門に頑張ってもらうしかありません。ですか、雇用者報酬の総額は減るわけですから、その財源がありません。

そこで、営業余剰として企業に入ったお金が、配当として家計に回る部分を考えてみましょう。この人たちが、今後たくさん消費してくれるということなら、生産側でバンバン技術革新や機械化を進めて、生産を増大させてくれてもバランスが取れます。

が、この配当として所得を得ている人はどういう人でしょうか。おそらく、ある程度の資産を持っている富裕層でしょう。

少し前に話題になった藻谷さんの本では、「この富裕層の多くは生産年齢人口ではなく、それより上の世代で、この人たちはまったく消費しない」としています。この文章の前半については私も賛成なのですが、後半の「まったく消費しない」というのが、今後も引き続き同じなのかという点は、私にはまだ疑問です。そんなに、高齢者が消費していないか、そしてこれからの高齢者が消費しないものかどうか、というのは、一度専門的な調査が必要なのではないかと思います。

というのは、「生産を増やした時に、同じだけ国内需要がついてくるようにする」ためには、

①雇用者報酬を受け取る生産年齢世代

②配当所得を受け取る富裕層

のどちらなのか、ということが分からないと対策が立てられないわけです。

①が消費をするということでしたら、営業余剰を通じて②の人にお金が流れる構造を変える政策を考える必要がありますし、②ということでしたら、企業が内部留保を抱えず、配当として支払うということを促進する政策にすればいいわけです。

藻谷さんは①の立場に立っているということで、論理は一貫していると思います。が、その前段階の「どっちにお金を渡した方が使ってくれるのだろうか?」という分析が実は必要なのではないかという気がしております。

そしてもう一つ、増税をして政府の支出が増える(大きな政府化)ということも、(一人当たり)GDPを増やすという目的の達成ためにはあり得えるシナリオです。実際に、北欧などはこのパターンなのだと思います。

こういったものを含め、まず、今後の日本がどの方向に進みたいのか、という骨太の議論が必要とされているのではないかという気がしております。

※ 本件の質問について、H主任研究員からアイディアをいただきました。非常に面白い質問をいただきましたH主任研究員にお礼を申し上げます。ありがとうございました。なお、本文中の意見にかかる部分は私の個人的な意見であることを補足しておきます。

2012年2月 4日 (土)

人口減少(2)

さて、支出側を見る前に、今回は一度分配側を介してみようと思います。

前出のとおり、1565歳ということですから生産年齢人口です。この人たちは働いて雇用者報酬を受け取るわけです。ただ、この人たちの絶対数が減るわけですから、ひとり頭の雇用者報酬を引き上げない限り、どうやっても雇用者報酬の総額は減っていきます。

では、分配面のGDPを見てみましょう。

GDP(分配側)= 雇用者報酬 + 営業余剰 + 固定資本減耗 + 生・輸税

一国全体で生み出された付加価値は、雇用者報酬を通じて、雇用者に、営業余剰を通じて企業に、税金を通じて政府に、いずれかに配分されます。固定資本減耗は、過去の設備投資の償却分ですから、とりあえず、ここはほとんど動かないと考えてよいと思います。

さて、雇用者の絶対数が減ったら、どこに回るでしょうか?まさか政府が増税するとも思えませんから(ある程度はするでしょうが(笑))、残差としては営業余剰を通じて企業に回ります。

企業がそれを内部留保し、新たな設備投資に回す(すなわち機械化の原資となる)のか、配当を通じて、投資家(家計)に回ることになります。

支出側を考える際に、是非、この分配側の関係を頭に入れておいていただきたいと思います。

では、支出側です。GDP(支出側)は、

 GDP(支出側)=最終消費支出+総固定資本形成+輸出-輸入+在庫品増加

です。

この時、GDP(生産側)は生産年齢人口の減少によって減ります。すると、国内での最終消費支出か総固定資本形成、在庫品増加が減少してバランスします。輸出入はさすがに生産年齢人口とは関係しないでしょうから(といっても、供給制約から輸出が減り、輸入がふえるというシナリオもあり得るのですが、その点はとりあえず無視します。)

先ほどの分配側を考えると、雇用者報酬の減を通じて最終消費支出は減少しそうです。ただ、総固定資本形成は機械化が進めば増えるかもしれませんね。とはいえ、最終消費支出のうち家計消費支出はGDP6割ですから、この部分の減り方を設備投資だけで補うことはできないでしょう。

すると、やはりGDP(支出側)も減ることになりそうです。

さて、ここからが本題です。GDP(生産側)について考えた時に、

①労働投入の減は、少なくともGDPの減少につながりそう

②ただし、資本との代替(機械化)や、技術革新によって、GDPの減少を少なくする効果もある

③②の効果が大きければ、生産年齢人口一人当たりのGDPで見た時は、どちらに転ぶかわからない

と書きました。この②と③が生産側で発生するとき、支出側はどのように動くのでしょうか。非常に興味深い議論ですね。次回以降これについてもう少し考えてみます。

« 2012年1月 | トップページ | 2012年3月 »

無料ブログはココログ
2016年8月
  1 2 3 4 5 6
7 8 9 10 11 12 13
14 15 16 17 18 19 20
21 22 23 24 25 26 27
28 29 30 31