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2011年10月

2011年10月31日 (月)

季節調整系列

またまた質問ネタです。

(今回は半分笑い話に近い話です。)

質問の内容は、『なぜ、季節調整系列は4倍して表示しているのか?』というものです。

言われてみると、そういえばそうだなぁという感じで。確かに4倍表示する意味が分かりません(笑)

ここで良く書いてきた93SNAマニュアルでは、あまり四半期速報(以下Q-SNA)について書いてある部分は無いのですが、IMFが四半期速報のマニュアル(こちらではQuarterly National AccountsQNA))がありますので、そちらを見てみます。

http://www.imf.org/external/pubs/ft/qna/2000/textbook/index.htm

このマニュアルのⅧ章が季節調整について書いてあるのですが、ここを細かく読んでみました。

中に、表章についての記述があります。

8.63. The mode of presentation also varies substantially. Seasonally adjusted and trend-cycle data can be presented as charts; as tables with the actual data, either in money values or as index series; and as tables with derived measures of quarter-to-quarter rates of change. The last may be presented as the actual rates of change or as annualized rates (see Box 8.4).

まず、下線のとおり、前期比の成長率については、実際の変化率と年率のどちらも表章されうるというような書きぶりになっています。そもそも、表章方法はバリエーションがあると言われてますから(笑)

そして、年率にする理由として、

8.64. The rates of change are sometimes annualized to make it easier for the layman to interpret the data. Most users have a feel for the size of annual growth rates but not for monthly or quarterly rates. Annualizing growth rates, however, also means that the irregular effects are compounded. Irrespectively of whether the actual or annualized quarterly rates of change are presented, it is important to indicate clearly what the data represent.

『大半の利用者は、年率の成長率には馴染んでいるものの、月次や四半期の成長率には相場観が無いから』ということです。最近、年率だろうが四半期だろうがゼロ成長の日本の場合は本当に当てはまるのかなぁ?と思ってしまいますが(笑)

しかも、後半で「irregular effects are compounded」と不規則要因が増幅されて見えると、悪い面すら書かれていますし。。。

そして、本題の実額の4倍計算については、もっとネガティブなことが書かれています。

8.66. Some countries also present the level of quarterly current and constant price data at annualized levels by multiplying the actual data by four. This seems artificial, does not make the data easier to interpret, and may be confusing because annual flow data in monetary terms no longer can be derived as the sum of the quarters. Users not familiar with the practice of annualizing levels of current and constant price data by multiplying the actual data by four may confuse annualized levels with forecast annual data. For these reasons, this practice is not recommended.

本題部分なので細かく書いてみると、まず、「いくつかの国では、実数値を4倍して、実額(注)を年の水準で表示している国もある」と言っています。そのうえで、下線部分ですが、これは「データーの理解を助けることになっていない」と言っています、本当かどうかわかりませんが(笑)

それで、この後、「四半期を足しても年になるわけじゃない」とか、「慣れてない人はかえって混同する」とかいって、最後の下線の「この方法は推奨されない」ということでした。

というわけで、我が国は推奨されない方法をとっているようです(笑)

(注)本文では「current and constant price data」で意味は異なりますが簡略化のため。

といって、推奨されていない方法を我が国は採用しています、という結論で終わるわけにもいきませんので、もう少し考えてみるに、私の認識では、少なくともアメリカは、季節調整値については年額(4倍計算)で表示しているのですよね(というか、季節調整値しか出してない。。。)。

そして、カナダについては月次も出しているのですが、月次も四半期も年額になっているようです。(少なくとも水準は同じくらいです。)

一方、イギリスを見ると、季節調整値はについては、そのまま使っており、年の値の1/4くらいの数字になっています。そして、ドイツも見ている限りそのまま使っています。(フランスは、あまりに英語版が充実していないのでよく分かりませんでした(笑))

こうしてみると、4倍計算するかどうかは、ヨーロッパ系とアメリカ大陸系で分かれているのではないかという気がしていきます。このマニュアルは、IMFとはいえ、SNA自体がややヨーロッパから出ている体系ですから、どうしてもこういう記述になってしまうのかんぁ、と思うところもあります。(前にも書きましたが、そもそもアメリカは、NIPAという自分のルールで突っ走っており、「SNA?それが何?」というところがありますから、やむを得ないのかもしれません。)

というわけで、日本は、どちらかというとこの点は、アメリカに近いのかなと思っております。。。

2011年10月29日 (土)

CPI基準改定の影響試算(3)

続いて下方改定(今回の試算は234-6月期についてですので、あくまで同期の前期比でみての話を書きます。以下すべて同じです。)品目です。

まずは、宿泊料です。

3

これは、各期で上方改定になったり、下方改定になったりとばらついていますが、足元の2011Q2については下方改定になっていることが見て取れます。

これは、総務省の公表資料では書かれていないので分からないので、22年基準改定の解説を見てみましょう。

http://www.stat.go.jp/data/cpi/2010/kaisetsu/index.htm

CPIは、結構細かく各基準改定ごとに推計方法を解説してくれていて便利なのですが、この付2というところに、モデル式で計算している品目の一覧が出ています。そして、宿泊料もこの中に入っています。

http://www.stat.go.jp/data/cpi/2010/kaisetsu/pdf/fu2.pdf

参考までに同じ資料の17年基準のものをみると、ここには宿泊料が入っていません。ですので、いろいろガタガタ改定しているのは、モデル式を導入したからなのかなという気がします。

http://www.stat.go.jp/data/cpi/2005/kaisetsu/10.htm

http://www.stat.go.jp/data/cpi/2005/kaisetsu/pdf/f-2.pdf

そして、もう一つ下方改定品目としては、生鮮野菜があります。

4

これもいろいろガタついていますが、足元の2011Q2に関しては下方改定となっています。生鮮野菜はモデル式だとかこれといった大きな原因は無いように思うのですが、一品目追加されていたりとかもするので、そういったマイナーチェンジの影響なのでしょうか???

いずれにしても、一貫して変わるというよりも、上方改定したり下方改定したりという感じで改定しています。

というわけで、こういった品目が相まって、QEではほとんど変わらないという形になりました。

(注)前回も書きましたが、計数の出所と加工方法を以下に記しておきます。

 データーは、統計局が公表している17年基準と22年基準の個別指数を月次でもってきています。そのうえで、17年基準について、22暦年平均の指数が100になるよう水準調整を行い、そのうえで、小数点1ケタまでで四捨五入(エクセル式のRaund)をしています。

 そして、そのようにして作った月次データーを、単純3か月平均して四半期の計数を作っています。この3か月平均については四捨五入をしていません。

2011年10月27日 (木)

CPI基準改定の影響試算(2)

CPIの基準改定での個別品目についてです。

前回は、QEの改定要因としては、パーシェ効果は影響せず、CPIの個別品目レベルの改定が影響していると書きました。そして、QEの影響試算をしてみた結果、個別品目レベルでは、上方改定品目も下方改定品目もいずれもあり、それが相まっているという感じでした。

そこで、CPIの個別の品目レベルの指数で、面白い動きを示していた品目をいくつか。。。

まず、上方改定(今回の試算は234-6月期についてですので、あくまで同期の前期比でみての話を書きます。以下すべて同じです。)の品目からです。はじめは携帯電話機(17年基準では移動電話機)です。

なんだか、2010年中はガタガタと動いていますが、2011年に入って、22年基準では大きく上方改定になっていることが見て取れます。原因はよく分からないのですが、以下にURLを記した統計局公表の資料では、「17年基準は大手1社の電話機の価格のみで指数を作成していましたが、22年基準は大手3社の電話機の価格を用いて指数を作成しています。」と書いてありまして、これが原因なのではないかと思います。(おそらく某D社一社しか聞いていなかったところ、某A社と某S社も追加したという感じなのではないかと(笑))

http://www.stat.go.jp/data/cpi/2010/pdf/def17-22.pdf

実際に資料でも、個別品目の前年同期比レベルでは上方改定になっています。(が、ウェートが17年基準と22年基準で大きく異なるので、CPIでは下方改定要因になっていますが。。。前述のとおり、QEではこの後者の影響は出てきません。)

続いて、持ち家の帰属家賃です。

(この項目は統合項目でQEでは統合項目を直接使っているわけではないのですが、個別項目を見てもわかりにくいので、傾向を見るために統合項目を比較しています)

こちらは、なんだか一貫して22年基準では下げ幅が小さくなっているように見えます。これも原因が不明なのですが、前述の統計局の公表資料でも前年同期比は上方改定になっています。

同資料では「世帯が転出して空き家になった場合、次の入居があるまでの間、保合処理(当月家賃が調査できなくなった世帯について、前月の家賃を当月のものとして継続する処理)を導入しました。」とあるのですが、保合処理のせいで上振れするとも思えませんので、私には理由が不明です。だれかお詳しい方に教えていただければと(笑)

下方改定の品目についてはまた次回。

(注)計数の出所と加工方法を以下に記しておきます。

 データーは、統計局が公表している17年基準と22年基準の個別指数を月次でもってきています。そのうえで、17年基準について、22暦年平均の指数が100になるよう水準調整を行い、そのうえで、小数点1ケタまでで四捨五入(エクセル式のRaund)をしています。

 そして、そのようにして作った月次データーを、単純3か月平均して四半期の計数を作っています。この3か月平均については四捨五入をしていません。

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2011年10月24日 (月)

CPI基準改定の影響試算

マニアックな話を少し。

QEの推計では、実質化のためのデフレーターの基礎統計としてCPIを使っています。ご存知のとおり、今年の8月にCPI22年基準改定を行い、その影響でCPIの総合が大きな下方改定となりました。

CPIは月単位の統計ですが、6月単月でみると、総合指数で12年基準では前年同期比0.4%だったものが、17年基準で▲0.2%に下方改定となっています。▲0.6%ですから結構な下方改定でした。

ですので、このCPIを使っているQEの家計消費支出デフレーターやその上位項目であるGDPデフレーターでも同じような下方改定の影響が出るのではないかと思われているようでして、実際にどのような影響がでるか、4-6月期の2QEの数字を使って影響度を試算してみました。

結果は

http://www.esri.cao.go.jp/jp/sna/sokuhou/gaiyou/sakusei/siryou/__icsFiles/afieldfile/2011/10/20/announce20111024_2.pdf

のとおりなのですが、前期比、前年比ともにほとんど変わりませんでした。(家計消費デフレーターの前年同期比だけわずか(0.1%未満)に上方改定)

何でこんなに違うのかということはアナウンス紙にも書いてあるのですが、CPIQEでの指数の作り方に違いがあるからです。もっと具体的に言うと、CPIがラスパイレス方式、QEがパーシェ方式というのは仕方ないとして、CPIは固定基準方式、QEは連鎖方式(基準年を毎年切り替える方式)を採用しており、これが大きな相違であるようです。

物価指数については指数の統合の方式によりバイアスが出ることが知られており、パーシェ効果というのですが、ラスパイレス方式では上方バイアスが、パーシェ方式では下方バイアスがあることが知られています。そして、連鎖方式を採用することでこのパーシェ効果が相当程度抑えられることが知られています。

総務省統計局の方で、このパーシェ効果の大きさについての試算(パーシェチェック)をしているのですが、この幅が、17年基準、22年基準と徐々に拡大していることが見て取れるのです。

http://www.stat.go.jp/data/cpi/2010/pdf/p-check.pdf

特に22年基準のパーシェチェックは相当大きいですから、CPI22年基準改定による下方改定の要因は、パーシェ効果が主な原因であったと思われるのです。

一方で、連鎖を採用しているQEでは、これらのパーシェ効果は影響しませんから、ただ単に、個別品目レベルの指数がどのように動いたかが影響してきます。こちらの影響はパーシェ効果ほど大きくなかったようで、その結果QEの家計最終消費支出デフレーターはほとんど変わりませんでした。

とはいっても、個別の品目ではいろいろ動きがありましたので、それについてはまた次回に。

2011年10月23日 (日)

資産・負債

実際に、家計金融資産のうち、現金・預金は、20092期の795.4兆円→3790.0兆円に減っています。

このときは、資産全体も1440.9兆円→1439兆円に減っています。

現預金の約5兆円は、どこに行ったのでしょうか?「家計負債も5兆円少なくなる」でよろしいのでしょうか?

ということです。

ご質問の箇所が、実は良く分からなくて(金融資産であれば、変動は資本調達勘定のでしょうし、ストックなら期末貸借対照表ですが、この部分はそれぞれ年度、暦年でしか出ていません。。。)、どのように答えたら良いのかと悩んでしまうのですが、

 ○前年から当年で家計の金融資産が5兆円減る

 かつ

 ○前年から当年で一国全体の金融+非金融を合計した資産が5兆円減る

となったとき、どのようなことが起こっているかを考えてみたいと思います。

まず、考えられるのが、単純に、家計の金融資産が5兆円減って、他の分野はまったく動いていない。ということは、家計の金融資産を使って、何か「消費財」を買ったという可能性です。この場合、家計最終消費支出の増に計上されます。

次に考えられるのは、家計が日本国外に対して、お金を送金ししたという可能性です。この場合、海外への経常移転又は資本移転に計上されます。

以上は、ただ単に、家計の中だけで納まっているケースですが、家計だけでなく他の部門の影響も考えると、無限の可能性が出てきます。例えば、家計は、その金融資産で新築の家を買っており、金融資産の減と同じだけ実物資産が増えており、それ以外に非金融機関が金融資産を取り崩して、中間消費を5兆円行った、というような場合も考えられます。

この例でお分かりいただけますとおり、この「一国全体の金融+非金融を合計した資産が5兆円減る」というのは、各制度部門をあわせた、そして、資産のネットでの変動ですから、その裏では何が起こっているのかと考えると無限の可能性が出てきます。

SNAは、一国全体の経済活動を「マクロで」捉えている統計ですから、それを見るときには、『当該年に、どういう経済活動があったのかを把握し、それが各勘定表にどのように計上されているのか』ということを考えると、より分かりやすいと思います。

2011年10月22日 (土)

生輸税、所得富税

またまた質問ネタです。

所得富税の内容が分からないということでした。

ご存知な方も多いと思うのですが、J-SNAの財政部門は本当に決算書の積み上げです。国の決算だけで1万以上の項があるのですが、このレベルから積み上げています。

ただ、具体的にどの税目が所得富税で、どの税目が生輸税なのかというのが分かりにくいと思いますので、そのあたりも触れてみたいと思います。

その前に、生輸税と所得富税の違いです。

生輸税と書いていますが、正確には、「生産・輸入品に課される税」といいまして、国民経済計算部が出している用語解説では、

 生産・輸入品に課される税とは、(1)財貨・サービスの生産、販売、購入または使用に関して生産者に課せられる租税で、(2)税法上損金算入を認められ、(3)その負担が最終購入者へ転嫁されるものである。これは生産コストの一部を構成するものとみなされる点で所得・富等に課される経常税と区別される。

 例としては、消費税、関税、酒税等の国内消費税、不動産取得税、印紙税等の取引税、事業税、固定資産税、企業の支払う自動車税などがあげられる。住宅(含む土地)に対する固定資産税も、帰属家賃の一部を構成するとみなされ生産・輸入品に課される税として扱われる。また、日本中央競馬会納付金など、特定の公的企業における利益の一部も、財政収入を目的として徴収することから生産・輸入品に課される税に含まれる。(以下略)

と書いてあります。用語解説の中では比較的分かりやすいと思いますが、簡単に言ってしまえば、生産とか輸入とかの生産活動(または生産物自体)にかけられる税で、どちらかというと「間接税」みたいなイメージです。(事実、93SNAの前の68SNAでは、「間接税」といっていました。

代表的な税目は、解説にも書いてあるとおり、消費税とか関税などです。

逆に、所得富税は、「所得・富等に課される経常税」と言いまして、これは所得税とか住民税とかの「直接税」みたいなイメージです。念のため、用語解説も以下に書いておきます。

  所得・富等に課される経常税とは、(1)労働の提供や財産の貸与、資本利得など様々な源泉からの所得に対して、公的機関によって定期的に課される租税及び(2)消費主体としての家計が保有する資産に課される租税、をいう。所得税、法人税、都道府県民税、市町村民税等のほかに家計の負担する自動車関係諸税及び日銀納付金がこれに該当する。

  なお、所得・富等に課される経常税と生産・輸入品に課される税の区別はそれが所得から支払われるか、生産コストの一部とみなされるかによって区別される。従って、自動車税のような租税は、生産者が支払う場合には生産コストを構成するものとして生産・輸入品に課される税とみなされるが、家計が支払う場合 には生産活動との結びつきがないため所得・富等に課される経常税に分類される。

生輸税と所得富税の税目の分類については、こちらの資料に詳しく書いてあります。(P5~6のところです。蛇足ですが、この資料は93SNAにわが国が移行したときの解説書なのですが、結構細かいことが書いてあって重宝しています(笑))

http://www.esri.cao.go.jp/jp/sna/sankou/kouhou/001115/93sna_14.pdf

この項目に沿って、国税については国の決算書から、地方については総務省が出している地方財政統計年報をただひたすら積み上げています(笑)

ただ、国税については、財務省が毎年度「租税及び印紙収入決算額調」というものを出してくれていますが、これと同じ額ですので、こちらを見てもらっても大丈夫かと思います。

http://www.mof.go.jp/tax_policy/reference/account/data.htm

というわけで、税についてでした。

2011年10月18日 (火)

質問に対する回答(2)

追加質問の

(2)ご説明のその後です。家計が現金資産50億円を預金から降ろし、その50億円分の「新築住宅」を購入したとします。

①この場合、GDPのフローは50億円増加するのでしょうか?

②この場合、ご説明のストックは、どのように動くのでしょうか?

です。

この場合、資本調達勘定の実物取引を考えなければいけないので、実は生産から定義しなければいけないのですが、長くなるので、資本調達勘定の実物のスタート地点である「貯蓄」はゼロとします。また、資本移転もゼロとします。また、実物の資産もゼロだったとします。それ以外は、前回の仮設例と同じです。

ここで、家計が現金資産を50億円預金から降ろし、その50億円分を「新築住宅」に当てたとします。

すると、

〔ストック(期首貸借対照表)〕

家計

実物資産      0億円

金融資産     100億円

 ・現金・預金   50億円

 ・貸出      50億円

金融負債      50億円

 ・借入      50億円

〔フロー(資本調達勘定(実物取引))〕

家計

資産の変動            0億円

・総固定資本形成        50億円

・純貸出(+)/純借入(‐) ▲50億円

負債の変動            0億円

 ・貯蓄             0億円

〔フロー(資本調達勘定(金融取引))〕

家計

金融資産                  ▲50億円

 ・現金・預金               ▲50億円

金融負債                  ▲50億円

・純貸出(+)/純借入(‐)(資金過不足) ▲50億円

〔ストック(期末貸借対照表)〕

家計

実物資産      50億円

 ・有形固定資産  50億円

金融資産      50億円

 ・現金・預金   0億円

 ・貸出      50億円

金融負債      50億円

 ・借入      50億円

となります。

これをみていただきお分かりいただけますとおり、今回の場合は、金融資産から実物資産に資産が移っていることが分かります。その代り、「純貸出(+)/純借入(‐)」がマイナスになります。

ということがご質問(2)の②です。

そして、①については、また別の話でして、当該新築住宅を、国内の生産者が生産している場合は、GDPを増やす方向に動きます。この場合は、需要側でいうと民間住宅投資に入ることになると思います。

一方で、当該新築住宅を海外の生産者が生産している場合は、GDPは変わらないことになります。需要側でいうと民間住宅投資に入るとともに、控除項目である輸入に入ることになると思います。

※何度か書いたことがあるのですが、GDPは生産側の概念ですから、こういう話の時は、生産側から見た方が分かりやすいのですが。。。

2011年10月17日 (月)

質問に対する回答

追加質問をいただきました。

(1)この結果から、家計金融資産(1400兆円~1500兆円)が増減していますが、例えば、50兆円減る場合は、家計資産⇔家計負債で、ご説明と同じように動くと考えてよろしいでしょうか。

(2)ご説明のその後です。家計が現金資産50億円を預金から降ろし、その50億円分の「新築住宅」を購入したとします。

①この場合、GDPのフローは50億円増加するのでしょうか?

②この場合、ご説明のストックは、どのように動くのでしょうか?

(1)についてです。まず、金融資産のフローとストックの話を分けて考える必要があります。所得支出勘定というのは、フローの勘定です。フローなのですから『当該期において、どれだけその計数が動いた(増えた又は減った)か』を示すものです。そしてその結果がストックで、こちらは「期末貸借対照表」に計上されます。

家計の金融資産は、今回の取引では動いていません。というのは、もともと、「貸出」という資産でもっていたものを、「現金」に代えただけですから、資産総額では変わらないわけです。

したがって、ストック(期末貸借対照表)でも、家計の資産額は変わっていません。

一方で、企業の方は、今回の取引では、「現金」という資産を取り崩して、「借入」という負債を減らすことに当ててるわけですので、資産、負債ともに両建てで、同額だけ減少しています。

したがって、ストック(期末貸借対照表)では、企業の資産、負債ともに総額が同額(この場合50億円)だけ減っています。

(2)についてです。この場合、金融だけで閉じず、実物の資本調達勘定を見ないと整理できません。少し長くなるかもしれませんので、次回以降にまとめてみます。

2011年10月12日 (水)

貸し方、借り方

これもまた質問ネタなのですが、所得支出勘定(この前触れました付表6も出ますが)のバランス項目である「純貸出(+)/順借入(-)」についてです。

具体的には、なぜこのような名前になるのかということで、簿記などでは左側に「貸し方」、右側に「借り方」があるから、それが由来なのだろうか?というような質問でした。

私もとっさに分からなくていろいろ考えてみました。まず、「純貸出(+)/順借入(-)」は。93SNAマニュアルの「net lending(+)/net borrowing(-)」の直訳です。ですので、この貸出、借入という言葉に、J-SNAならではの意味はありません。

簿記で左側の貸し方は、資産の増加(純資産の減少))を意味しますし、右側の借り方は資産の減少(負債の増加、純資産の増加)を意味します。「純貸出(+)/順借入(-)」とは、定義から言うと、

 「純貸出(+)/順借入(-)

               =  貯蓄

                + 資本移転の純受取り

                - 総固定資本形成

                - 在庫品増加

                - 土地の純購入

です。この意味を考えてみると、ある期において生産活動で生み出された付加価値や再配分された付加価値のうち、消費支出に使ったもの以外の部分について、金融資産以外の資産として次期まで保有したのか、それとも金融資産として保有したのかを見る指標です。

(貯蓄とは、その期に得た所得から消費支出に使った金額を引いたものです。)

そう考えると、「純貸出(+)/順借入(-)」がプラスということは、貯蓄(+資本移転)よりも総固定資本形成や在庫品増加の方が小さいわけですから、残りの部分は金融資産として保有しているはずです。

さて、このとき制度部門別で考えて見ましょう。ある部門(例えば家計)が「純貸出(+)/順借入(-)」がプラスだったとします。すると、貯蓄(+資本移転)よりも総固定資本形成や在庫品増加の方が小さいわけですから、残りの部分は金融資産として保有、すなわち、他の部門に「貸出し」しているはずです。

逆にある部門(例えば非金融法人)が「純貸出(+)/順借入(-)」がマイナスだったとします。すると、貯蓄(+資本移転)よりも総固定資本形成や在庫品増加の方が大きい、すなわち使えるお金以上に投資を行っているわけですから、残りの部分は金融負債として、他の部門から「借入れ」しているはずです。

私は、これが「純貸出(+)/順借入(-)」の名称の由来なのではないかなと思うようになりました。

というのは、SNAは勘定体系だと常々書いているのですが、所得支出勘定の左側はuses、左側はresourcesですから、使途と源泉です。必ずしも貸し方、借り方ではないです。そもそも、簿記で言う貸し方、借り方は、たぶんcreditdebitですから、その意味でもlendingborrowingとも異なりそうです。

(なお、資本調達勘定の右側、左側のJ-SNAの表記が、マニュアルと異なっていて、その理由が私にも分かりません(笑)この点はもう少し探ってみます。さらに、所得支出勘定の和訳も変ですねぇ。。。)

ただ、最後に改めて考えてみると、本来の資本調達勘定の左側は「資産の変動」、右側は「負債、自己資本の変動」です。そう考えると、簿記の貸し方、借り方と定義は一致しているんです。その上で、バランス項目として、「net lending(+)/net borrowing(-)」を左側に持ってきているということになると、何か深い意図があるのでは???という気もしてくるわけです。

ということで、とりとめもなくて申し訳ないのですが、お詳しいかたがいらっしゃったら、ぜひご教示いただけますと。。。

2011年10月10日 (月)

ストック編

またまた質問をいただきました。

ストックフロー論です。考えてみました。

家計が、50兆円貯蓄を 取り崩した場合のことです

企業フロー レベルから債務返済された場合

債権    債務

家計100兆円   50兆円

企業300兆円  350兆円

政府50兆円   50兆円

 450兆円   450兆円

       

       

債権    債務

家計 50兆円   50兆円

企業300兆円  300兆円

政府50兆円   50兆円

 400兆円   400兆円

         

フロー50兆円 フロー50兆円

ということです。用語の混乱があるのでわかりにくいので、

 「家計が企業に対して保有している貸出(企業から見たら借入)を、企業が返済した場合、どのように計上されるのか」

という話だと理解して、以下解説します。ですので、債権、債務というのも、金融資産、負債として考えます。

(貯蓄というフローの概念と、資産の話が混同されているように見えます。)

まず、この話はすべて金融のストックとフローの話になります。

家計と企業の金融ストックが以下のようであったと考えましょう。

家計

金融資産 100億円

金融負債  50億円

企業

金融資産 300億円

金融負債 350億円

この時、資産と負債ともに、現金と貸出、借入のみだったとしましょう。

家計

金融資産     100億円

 ・現金・預金   50億円

 ・貸出      50億円

金融負債      50億円

 ・借入      50億円

企業

金融資産     300億円

 ・現金・預金  150億円

 ・貸出     150億円

金融負債     350億円

 ・借入     350億円

となります。

ここで、企業が借入50億円を家計に返済したとすると、フローでは、

家計

金融資産      0億円

 ・現金・預金   50億円

 ・貸出     ▲50億円

金融負債       0億円

 ・借入       0億円

純貸出(+)/純借入(‐)(資金過不足) 0億円

企業

金融資産     ▲50億円

 ・現金・預金  ▲50億円

 ・貸出       0億円

金融負債        ▲50億円

 ・借入     ▲50億円

純貸出(+)/純借入(‐)(資金過不足) 0億円

ストックでは、

家計

金融資産     100億円

 ・現金・預金  100億円

 ・貸出       0億円

金融負債      50億円

 ・借入      50億円

企業

金融資産     250億円

 ・現金・預金  100億円

 ・貸出     150億円

金融負債     300億円

 ・借入     300億円

となります。

質問は、

(1)上の図はあっていますか?

(2)これで、GDP50兆円増になるのですか?

でしたので、(1)は、説明の通りです。(2)はGDPとは関係ありません。ということになります。

2011年10月 6日 (木)

付表6の見方【補足】

付表6の金融勘定についても、書いておいた方が良いかと思い、追加です。

28.~41までです。

1

ここは、前回までの実物の計上と違って、金融資産、負債の動きを計上しています。ですので、左側は資産の変動、右側は負債の変動、という形にしています。

この上で、金融資産としては、まず、現金・預金がありますし、他にも貸出しているお金も入ります。それ以外に、社債などの債権、株式、デリバティブなどの金融資産も入っています。これらの資産部分の増減と、負債(この場合は借入になります)部分の増減が記録されます。

さて、改めて考えてみると、持っている金融資産の変動分と金融負債の変動分の差は何でしょうか???資産の変動分と負債の変動分の差は、「純貸出(+)/純借入(‐)(資金過不足)」ですが、これは、まさしく金融資産として計上される富の蓄積の増分です。

一方で、実物面でお金として蓄積したものが「純貸出(+)/純借入(‐)」でしたから、「純貸出(+)/純借入(‐)(資金過不足)」は概念的に等しくなります。

というわけで、付表6の金融部分でした。

2011年10月 2日 (日)

付表6の見方(2)

続いて、15.~18.までです。

1

ここは、得た所得をどのように使ったかということを示す勘定で、消費に使った以外は、当たり前と言ったら当たり前ですが、貯蓄として計上されます。

 ※少し触れました、現物社会移転は、政府の最終消費支出に含まれます。これは、お金を払った人、支出者に着目した計上方法です。したがって、ここの記述を「最終消費『支出』」と書きます。一方で、これらの現物社会移転は使っているのは家計ですから、使用者に着目した計上方法もあります。この場合、それぞれが「現実最終消費」、「調整可処分所得」となり、現物社会移転は「政府」でなく「家計」の方に入ることになります。

最後に、18.~16.までです。

2

ここは、前回まででたまった貯蓄を、どのような形で保存(蓄積)しているのかを示す勘定です。

受取をはじめに見てもらうと、貯蓄に、資本形成のためのお金のやり取りや、現物で建物をあげたりもらったりということが、資本移転として加除されます。こうして得たものが、「貯蓄・資本移転による正味資産の変動」というものですが、要は、政府が資産という形で蓄積できる原資です。

この原資は、建物、橋、道路などの有形固定資産に行く場合もあるでしょうから、それは総固定資本形成になります。また、一部は在庫品として積まれることもあるでしょうから、これは在庫品増加になります。また、土地も買うでしょうから、そのnetでの土地の購入額も入ります。これ以外は、おそらく現金や預金をはじめとした、金融資産として保有するでしょうから、この金融資産として保有する額というのが「純貸出(+)/純借入(‐)」となります。

おまけとして、プライマリーバランスは、「純貸出(+)/純借入(‐)」から、「受取利子」を引いて、「支払利子」を加えたものです。なお、一点だけ念を押しておきたいのは、プライマリーバランスは、SNAの勘定体系で存在しない指標です。単に参考指標として出しているということです。ですので、「SNAのマニュアルを見ても、プライマリーバランスが出てこない」という疑問を持たれた方もいるかと思いますが、それは、J-SNAの方が勝手に参考として出しているだけだからです。

というわけで、付表6の現物の部分について、何が書いているのか、わかりやすく書いてみたつもりです。

なお、最後に。

ちなみに、twitterはやらないのでしょうか?

ということですが、やり方が分からなくて。。。

あと、内容的に、即座に反応することが必要なものでもないですし、逆に、即座に直感で書いてしまうと怖い(笑)という立場上の話もありますので、しばらくはこのページで淡々とやらせていただけますうれしいです(笑)。

2011年10月 1日 (土)

付表6の見方

付表6について、いくつかの勘定に分けてわかりやすく書いてみます。

はじめにフローからです。会計原則で言うPLです。

会計原則と同じく、左側が費用(つまりお金の支出)、右側が収入(つまりお金の受取)にします。

まずは、1.~7.までです。

1

ここは、おおざっぱにいって、「生産によって得るお金」及び「運用によってえるお金」の受け取りと支払いを記録するところです。ですので、政府の立場では、現在は生輸税と言っている、生産、販売するときに課される、消費税などの間接税と、財産所得(利子や配当など)を受け取ります。一方で、同じく財産所得を支払います。この差額が「第1次所得バランス」と言いますが、おおざっぱに言って、生産活動と財産運用によって得ることができた所得だと考えていただいて良いかと思います。

続いて、7.~15.までです。

2

ここはおおざっぱに言って、生産活動と財産運用によって得ることができた所得である、「7.第1次所得バランス」をスタートとして、生産活動以外で所得を再配分しているのですが、その再配分を記録する勘定です。

まずは、政府から見て受け取りとしては、所得・富等に課される経常税と言われていますが、所得税などの直接税がここに入ります。

さらに、医療や介護、年金などの社会保険のための負担金も政府には入ってきますのでこれを受け取ります。一方で、政府は社会保険のための経費を家計等に配分しています。そのうち、現金によるもの(主に年金の支払など)が、現物社会移転以外の社会給付としてここで支払われます。

 ※現物社会移転とは、医療や介護の実際のサービスになるのですが、この記述は、この再配分勘定と次の所得の使用勘定で記録されますが、少し細かくなるので、今回は省略します。

最後に、これ以外に定額給付金など、直接的にお金を政府が払ったり、逆に、政府に寄付金のような形でお金を受け取ったりします。これがその他の経常移転として記録されます。

この残差部分が、政府が実際に使える所得ですから、有名な「可処分所得」になります。

長くなったので、続きは次回に。

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