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2011年8月

2011年8月29日 (月)

実質GDI(4)

最後に、私が考えた説明ではないので、こういうところに書くことは気が引けるのですが、冒頭の質問の話に戻ります。何を聞かれたかというと、

 「輸入価格が上がった場合と、輸入数量が上がった場合で、実質GDIに対する影響はことなるのか?」

というものです。

これも冒頭の、

実質GDI= 実質最終消費支出 + 実質総資本形成

             +『(名目輸出-名目輸入)/ニューメレール・デフレーター』

ニューメレール・デフレーター=(名目輸出+名目輸入)/(実質輸出+実質輸入)

に戻ってみると一目瞭然です。

価格が上がっても、数量が増えても、「名目輸入」が増えることには変わりません。しかし、価格が上がった場合は、ニューメレール・デフレーターが上昇します。これはどういうことかというと、輸入価格が上がったうち、「絶対価格が上がった部分」については、「所得」を実質化する際に価格変動とみなされ取り除かれてしまうということです。つまり、数量が増えたときより、価格が上がったときの方が、ニューメレール・デフレーターにより割り分かれる分だけ影響は小さくなります。

これは、輸出のときも同じで、価格が変化した場合の方が、実質GDIに与える影響は小さくなります。

というわけで、実質GDIと交易利得についてでした。

2011年8月27日 (土)

実質GDI(3)

更に続きです。

前回は、貿易の「絶対価格」の変動の影響のみを取り除くため、ニューメレール・デフレーターというものを用いているというところまで話が進みました。

これについてはいろいろ意見があるようで、たとえば、「輸入価格指数のみ」を使うとか、逆に「輸出価格指数のみ」を使うとか、外国との貿易と一切関連がない価格指数(たとえば内需デフレーターとか)を使うとか、いろいろあるようなのです。

本質的に、輸出と輸入を、それぞれ別のデフレーターで実質化してしまうと、輸出の価格変化と輸入の価格変化の相対価格のそれぞれの変化の影響を取り除いてしまうので、いずれにしても、「輸出と輸入を『同じ』デフレーターで実質化する」というところが満たされれば良いわけです。

で、いろいろ意見がある中で、我が国のSNAでは「輸出と輸入すべてあわせた価格の変化」ということで、両者の加重平均を用いています。

つまり、

ニューメレール・デフレーター=(名目輸出+名目輸入)/(実質輸出+実質輸入)

ということです。

ここまでで、実質GDIについての説明はすべて終わりました。

実質GDIは、

実質GDI= 実質最終消費支出 + 実質総資本形成

             +『(名目輸出-名目輸入)/ニューメレール・デフレーター』

ニューメレール・デフレーター=(名目輸出+名目輸入)/(実質輸出+実質輸入)

となるわけです。

このとき、実質GDI-実質GDPを計算してみると、

実質GDI- 実質GDP = 実質最終消費支出 + 実質総資本形成

          +『(名目輸出-名目輸入)/ニューメレール・デフレーター』

          -実質最終消費支出 - 実質総資本形成 

          -(実質輸出 - 実質輸入)

         = 『(名目輸出-名目輸入)/ニューメレール・デフレーター』

          -(実質輸出 - 実質輸入)

となります。これって、交易利得の計算式そのままですよね。

2011年8月25日 (木)

実質GDI(2)

前回の続きです。

実質GDIの計算式が、なぜ、

実質GDI= 実質最終消費支出 + 実質総資本形成

                    +『(名目輸出-名目輸入)/デフレーター』

となるかというお話です。そこで、こう考えてみましょう。

所得というのは、結局、国内の人たちに配分されるわけです。そして、その国内の人たちからみた、当該所得の価値を見るのが実質のGDIになります。このとき、実質輸出と実質輸入の差額の実質純輸出は、「国内での価格変化」と「国外での価格変化」をそれぞれ別に取り除いた差額です。つまり、輸入している財、例えば原油の価格が下がったとすると、その原油の価格下落の影響も取り除くことになります。逆に、輸出している自動車の価格が上がったことによる影響も取り除くことになります。

でも、良く考えてみてください。国内で当該所得を使う立場から見て、「原油の価格が下がったことによる、純輸出の増加による所得」だろうが、「自動車の価格が上がったことによる、純輸出の増加による所得」だろうが、まったく関心はないわけです。むしろ、「所得」としてみたときには、こういった、「価格の変化」(正確には「相対価格の変化」)によって増えた所得については、実質であっても影響を取り除いてはいけないわけです。

つまり、価格変化の影響を取り除く際に、その「相対価格の変化」による影響を取り除かれては困るわけです。

ということで、この実質GDI計算式における「デフレーター」というものは、「輸出と輸入の相対価格の変化」の影響は受けておらず、かといって、全体的な貿易の価格変化(以下「絶対価格の変化」ということにします)の影響は受けてもらわなければいけなくなります。

このデフレーターを、SNAでは「ニューメレール・デフレーター」と言い、様々な議論があるのですが、その部分については、また次回に書いてみます。

2011年8月24日 (水)

実質GDI

これも質問ネタなのですが、実は質問を受けたのは私ではありません。ただ、その質問を聞いて考えている過程で、実質GDIについて、何を意味しているのか、そして交易利得とは何なのかということが、おぼろげながら分かってきたような気がしましたので、それについて。

GDIというのは、一国全体の粗所得です。三面等価とか言うまでもなく、一国全体で生み出されたお金は、誰かの懐に入りますから、名目の世界では、GDIGDPです。

ところが、実質は異なるわけで、実質GDPに「交易利得」を加えると実質GDIになる、という解説を普通します。

最近気づいたのは、むしろ逆に考えるべきなのではないか、つまり、

 ○実質GDIから実質GDPを引いたものが「交易利得」である

と考えたほうが分かりやすいのではないか、ということです。

何を言っているのか分からないかもしれませんので、もう少し具体的に書いてみます。

まず、良くご存知の実質GDP(支出側)は、

実質GDP= 実質最終消費支出 + 実質総資本形成 + 実質輸出 - 実質輸入

です。これは、消費とか資本形成とか、すべての項目について基準年との比較で見て、価格の変動分をすべて控除してあげている、と考えればいいわけです。

一方で、実質GDIはどう考えるかというと、

実質GDI= 実質最終消費支出 + 実質総資本形成

                    +『(名目輸出-名目輸入)/デフレーター』

となるわけです。つまり、輸出と輸入をそれぞれ実質化してから純輸出を求めるのではなく、所得の世界では、「名目の純輸出」を何らかのデフレーターで実質化する、という作業を行うのです。

では、なぜ、所得についてそのようなことをするかという疑問が当然出てきます。それについても含めて、次回以降もう少し細かく考えてみようと思います。

2011年8月20日 (土)

4-6月期1次QE(5)

続いて公需です。

今回はまずは公的固定資本形成から。実質で3.0%という、非常に高い伸びとなりました。6四半期ぶりのプラスです。

これは、建設総合統計の出来高が、前年同期比でマイナス幅を縮小したということもありますが、仮設住宅の影響を計上したことも結構効いています。7-9月期以降も、同じくらいの建設が進めば、同じだけ影響が出てくることになります。

続いて、政府最終消費支出ですが、前期比で0.5%となりました。

これを合わせると、公需は前期比0.9%、寄与度では0.2%となりました。

民需と公需を合わせて、内需の寄与度は0.4%ということになりました。ただ、外需の落ち込みが▲0.8%ですから、GDP全体でみても▲0.3%ということになりました。

支出項目についてはこれくらいなのですが、最後にデフレーターについて。

デフレーターは▲1.1%と大きくマイナスになりました。これは、石油価格の上昇による輸入デフレーターの上昇が大きく影響しているのですが、GDPデフレーターと内需デフレーターを比較すると

GDPデフレーター ▲1.1%

内需デフレーター ▲0.4%

ですから、輸入要因だけではありません。

内需の要因としては、前にもふれましたが、民間最終消費支出デフレーターの影響が大きくなります。これは、野菜価格の下落とパソコン、テレビが売れたことの影響です。

それやこれやで、内需デフレーターもマイナスとなっています。

というわけで、今回はこれくらいです。

2011年8月19日 (金)

4-6月期1次QE(4)

続いて民間企業設備です。

実質前期比で0.2%とわずかにプラスとなりました。

民間企業設備だけでなく、公的固定資本形成も含めた総固定資本形成での、品目別内訳を見てみると、特殊産業機器(ブルドーザー、整地機械)などがプラス要因となっています。

ただ、わずかなプラスですし、2次で法季が入りますので、最後、どうなるかはまだわかりません。

民間住宅は、▲1.9%4四半期ぶりにマイナスになりました。これも、着工が落ち込んできていましたので、それが遅れて影響しているという感じです。

続いて、民間在庫品増加です。実質寄与度は0.3%でした。

1-3月期の2QEで、仕掛品と原材料について、ARIMA予測で0.1%というアナウンスを出していたのですが、実は、これが今回異なっています。というのは、ARIAM予測の結果自体はそれほど変わらないのですが、法季の確報を反映したことで、仕掛品と原材料在庫の13月期が上方改定しています。その結果前期比寄与度でみると、このARIMA予測部分は寄与度はほぼ0.0%程度でした。

それ以外の、製品在庫、仕掛品在庫で積みあがったということになるのですが、まあ、これもそれほど違和感はないのではないかと思います。

具体的な品目でみると、飲料や自動車などがプラス要因です。飲料などは、13月期に大きく取り崩していましたから、そのあとに積み増したというのはなんとなく納得できるのではないかと。

というわけで、結果として、民需は0.3%のプラス、寄与度では0.2%のプラスとなりました。

2011年8月18日 (木)

4-6月期1次QE(3)

続いて内需です。

民間最終消費支出については、実質季節調整済前期比は▲0.1%でした。寄与度では▲0.0%でした。

民間最終消費支出については、一点ふれなければいけないことがありまして、名目季節調整済前期比は▲0.6%と実質に比べ大きな落ち込みとなりました。

この原因は、大きく2つありまして、品目で言うと、「野菜」と「パソコン」及び「テレビ」です。

野菜価格は農業物価指数などでみると、トマトなどの果菜系、キャベツなどの葉っぱ系など、多くの品目で価格が大きく下落しています。ですので、名目ではそれほど高くないように見えても、実質では大きなプラス要因だったりします。

そして、もう一つは、今季、「パソコン」や「テレビ」がものすごく伸びているのです。ご存知のとおり、このあたりの財は、CPIがヘドニックを採用していることからもわかるとおり、品質改善が激しく、価格下落が恐ろしく進む品目です。こういった品目が伸びるときは、デフレーターが大きく下落します。

というわけで、名実の差が大きくなる(デフレーターが下落する)ということになりました。

引き続き、消費の4形態別を見てみると、

耐久財   6.1%

半耐久財  3.8%

非耐久財 ▲2.4%

サービス ▲0.4%

という形で、耐久財、半耐久財は伸びたものの、非耐久財、サービスがマイナスという形で、トータルでマイナスという形です。

具体的な品目でみると、最も落ち込んでいたのは電気料金です。続いて自動車、以下、たばこ、パン及び穀物(カップめんなど)の順です。自動車、たばこは、工場の被災で商品不足になってましたからなんとくなく納得できますし、パン及び穀物は前期の反動でしょうか。。。そして、電気料金は言うまでもなく、という感じです。

一方、プラス要因は、パソコン、テレビ、スポーツ観戦料などのレクレーションサービス、衣服、野菜といった感じです。このうち、レクレーションサービスは前期の反動という感じがします。

耐久財は、プラス品目とマイナス品目が混在していますが、自動車とパソコン、テレビでは、価格の下落状況が違います。するとどうなるかというと、「実質」は6.1%なのに、「名目」では0.3%となってしまいます。。。

というところで、消費まででした。

2011年8月17日 (水)

4-6月期1次QE(2)

今回はまずは外需から。

輸出は4.9%、輸入は0.1%ということで、どちらもマイナス要因でしたが、輸出が圧倒的ですね。寄与度でみると、輸出は▲0.8%、輸入は▲0.0%ですから、輸出の落ち込みがけん引したという形です。

その輸出の内訳をみると、財貨が▲4.1%、サービスが▲9.9%ということで、いずれも大きく落ち込んでいます。全般的に輸出が効いています。

個別品目を見ると、落ち込んだ品目は、自動車、電子・通信機器などでして、これもなんとなく想像できる感じです。サービスでみると、貿易関係の手数料や業務外の旅行、つまり、海外からの観光旅行などなのですが、こういったものも落ち込んでいます。これも、また、なんとなく想像できる感じです。

輸入はわずかなプラスなのですが、プラスとなった品目には、たばこが入っています。たばこは、国内工場が稼動できず、品切れになっているという話もありましたので、その代替として、輸入たばこが増えたという想像ができます。

というわけで、外需全体では、寄与度で▲0.8%という形でした。

ちなみに、ここまで大きく輸出入が落ちるのも珍しい(リーマンショック以来)ですので、季節調整で過去が結構変わりました。今のタイミングでのダミー処理は難しいのですが、また、期間が長くなったときに、ダミーの検討をしなければいけないかもしれません。(といっても、7-9月期以降に、どのような動きをするかにかかってくるのですが。。。)

2011年8月15日 (月)

4-6月期1次QE(1)

本日1次QEを公表しました。

http://www.esri.cao.go.jp/jp/sna/sokuhou/sokuhou_top.html

4-6月期の実質季節調整済前期比は▲0.3%と3四半期連続のマイナスになりました。

ところが、内訳を見てみると特徴的で、内需が0.4%、外需が▲0.8%ということで、内需はプラスになったものの、外需のマイナスが大きくて、実質GDPでもマイナスという形です。

マイナスが大きかった外需の内訳をみると、輸出が▲4.9%(寄与度▲0.8%)、輸入が0.1%(寄与度▲0.0%)という形でして、圧倒的に輸出の落ち込みが効いています。

一方で、内需を見てみると、民間在庫品増加が寄与度0.3%で、公的固定資本形成が3.0%、政府最終消費支出が0.5%といったところが主なプラス要因です。ウェートが大きい、民間最終消費支出、民間企業設備は、ともに動きが小さかったです。(民間最終消費支出はマイナス要因、民間企業設備はプラス要因)

GDPデフレーターは前期比で▲1.1%と大きくマイナスです。これについては後程また触れようと思いますが、輸入デフレーターの上昇と、民間最終消費支出デフレーターの下落が主な要因です。

GDPデフレーターが大きなマイナスということは、名目GDPは▲1.4%と大きく下がったということになります。

3期連続マイナスというのは、多くのエコノミストも予測していたようですね。なので、あまり大きな取り上げられ方はしていないようです。内需などはプラスですから、逆にプラス要因と思われる方もいるのかもしれませんね、このあたりはエコノミストの方々に判断を委ねたいと思います。

また、7-9月期は、民間のエコノミストの間ではプラスだろうという予測になっているようですが、実際のところはどうなるんでしょうか?(というか、そもそも、まだ9月も始まってないのに、7-9月期を予測しなければいけないなんて、大変ですよね。。。)

というわけで、次回以降に、4-6月期の内容をもう少し詳細に見ていこうと思います。

2011年8月14日 (日)

ファイナンシャル・リースとオペレーティング・リース(2)

前回は、ファイナンシャル・リースとオペレーティング・リースの違いを書きましたが、結局、だれがそのリース資産を持っていることになるのかということですので、設備投資及びストックとの関係で考えると、

 ファイナンシャル・リース ⇒ リース先の設備投資及び有形固定資産として記録

 オペレーティング・リース ⇒ リース元(リース会社)の設備投資及び有形固定資産として記録

ということになります。

では、これで解決かというと、もう少し複雑な経緯があります。というのは、我が国では、93SNAの当該部分を採用していなくて、原則としてすべてオペレーティング・リースとして扱っています。(これは、93SNAの前の68SNAの扱いと同じです。)

※マニアックな補足としては、この「原則として」の例外としては、2つほどあり、一つが所有権が移転してしまう契約のオペレーティング・リースと、ほぼそれと近いのですが、日本高速道路債務返済機構から各道路株式会社に対する高速道路資産のリース契約でして、これらはファイナンシャル・リースとして扱っています。後者の議論については、もしご興味がありましたらこちらをご参照ください。なお、『本当に』マニアックなので、『本当に』興味のある人だけお読みください(笑)

http://www.esri.cao.go.jp/jp/sna/sankou/kakogiji/toukei/070314/koutekigiji.html

http://www.esri.cao.go.jp/jp/sna/sankou/kakogiji/toukei/070621/koutekigiji.html

これは、93SNA導入の時に検討したようなのですが、やはり、データが取れないということが原因だったようです。当時は、日本の会計基準自体が、リース資産はリース会社の資産として計上するようになっていましたので、確かにすべてオペレーティング・リースとして扱うしか方法はなかったのだと思います。

また、調べてみると、産業連関表でも、H2年表から、リースの計上については、すべて「所有者主義」と『あえて』変更しています。

その資料を引用してみると、

ケ 平成2年表

  (略)

   物品賃貸業については従来の原則「使用者主義」による推計を、すべて「所有者主義」による推計に改めるとともに、自家活動部門の見直しを行った。

となっています。

※出展:「平成2年(1990年)産業連関表(-総合解説編-)」のP125

http://www.stat.go.jp/data/io/990index.htm

http://www.stat.go.jp/data/io/pdf/io90pa36.pdf

こういうことを考えると、確かに、オペレーティング・リースという扱いにしているのも納得できます。が、実は、もう一つ問題があります。というのは、最近(と言っても二年ほど前ですが)、リース会計に関する基準が変更となり、原則として「使用者主義」による計上となってしまったのです。その基準が有名な「リース取引に関する会計基準」というものです。

https://www.asb.or.jp/asb/asb_j/documents/docs/Lease_55/Lease_55.pdf

そして、「使用者主義」に完全に統一されていればまだ使いやすいのですが、適用除外企業も多数あり、実際上は、「使用者主義」と「所有者主義」が混在する形となってしまっています。

現状では、基本的に「所有者主義」となるよう推計しているのですが、今のままでいいのかということは、今後の課題だと思います。そして、同じく、産業連関表も、今後の推計でどうするのかというのは、結構大きな課題なのではないかという気がしています。

ということで、質問に対するご回答は、これで尽きているのですが、まとめると、

 オペレーティング・リースは貸し手側の設備投資に、ファイナンシャル・リースは借り手側の設備投資に計上される。

ということになります。

2011年8月13日 (土)

ファイナンシャル・リースとオペレーティング・リース

久々の質問ネタです。

外部の方から、次のような面白い質問をいただきました。

国民経済計算における、ファイナンシャル・リース契約の取扱い(設備投資とされるのか、遡及改訂を行うのか)について教えてください。

これだけだと、何が面白いのか分からない人も多いかと思うのですが、リースの話は、いろいろな面白い話があり、この質問をされた方は、おそらくご自身でSNA関係に関わられたことがある、お詳しい方なのではないかと思ってしまいます。

というわけで、今回は、リースについてです。

93SNAでは、リースについて、ファイナンシャル・リースとオペレーティング・リースの2形態に分けて考えます。というか、実際の会計基準上、リースはこの2つに分けられています。

この両者の違いは、簡単に言ってしまうと、リース物品の所有者が、貸し手側と借り手側のどちらにあるかということなのですが、そのためのメルクマールとしては、

 ○リース資産の維持管理責任はどちらにあるのか

 ○リース期間終了後のリース資産の所有権移動はあるか(≒支払ったリース代金で当該リース資産が取得できるか)

というようなことになっているようです。

そして、93SNA上の扱いはどうなるかと言いますと、ファイナンシャル・リースは、ただの金融サービス、つまり、お金を融資して、そのお金でリース先が勝手にリース資産を購入したとみなされます。一方で、オペレーティング・リースは、リース会社がリース資産を購入し、「そのリース資産を賃貸するという『サービス』」をリース先が購入しているという整理になります。

一応、その部分の記述を。(過去にもPFIの時に引用していますが。。。)

6.115. その機械あるいは設備の全予想耐用年数よりも短い特定期間について、機械や設備を賃貸する活動をオペレーティング・リースという。それは所有者あるいは賃貸者(レッサー)が使用者あるいは賃借者(レッシー)にあるサービスを提供するという生産の一形態であり、その産出は賃借者が賃貸者に支払う賃貸サービス料によって評価される。オペレーティング・リースはファイナンシャル・リースとはっきり区別されなければならない。実際、後者は生産過程ではなくて固定資産の取得に金融をつけるひとつの方法である。

6.116.  オペレーティング・リースは、次のような特徴によって識別される。

(a) 賃貸者、あるいは、機械や設備の所有者は、使用者による請求があり次第あるいは短い期間の事前通知で貸し出すことができるように設備のストックを良好な作動状態に維持している。

(b) 設備は様々な期間に対して賃貸される。賃借者は期間が満期になると賃貸サービス料を更新し、使用者は何回かにわたって同じ種類の設備を賃借することができる。しかし、使用者は、その設備の予想耐用年数の全体にわたってその設備を賃借しようとはしない。

(c) 賃貸者は彼が賃借者に提供するサービスの一部としてしばしば設備の維持と修理の責任を負う。賃貸者は一般にその設備の操作の専門家でなければならず、このような要素はコンピュータのような極めて複雑な設備の場合には重要である。このような場合には、賃借者やその雇用者はその設備を自らで適切に保守していくために必要な専門的知識や手段をもっていない。賃貸者は重大なあるいは長期の故障の際には設備を全面的に入れ替える責任を負っている場合もある。

6.118. オペレーティング・リースに対して、ファイナンシャル・リースはそれ自身としては生産過程ではない。それは機械や設備の購入の融資方法として、貸付に代わる1つの方法である。(中略)賃借者は賃貸者が契約期間を通じて利子を含むその費用のすべてあるいは事実上すべてをカバーすることができるような賃借料(レンタル)を支払う。ファイナンシャル・リースは、所有のリスクと報酬とがその財貨の法的所有者、すなわち、賃貸者からその財貨の使用者、すなわち、賃借者に事実上すべて移転されるという点で識別することができるであろう。そのような取り決めの経済的現実を捉えるためには、法的にはリースの対象となる財貨は賃貸者の財産でありつづけるわけではあるが、少なくとも、リース期間の終了時点(通常、法的所有権が賃借者へ移動する)まで、賃貸者から賃借者へ所有権の移転があったとみなす。賃貸者は賃借者に対する貸付を行っているように取り扱い、賃借者はそれによって当該設備をファイナンスすることができるものとみなす。そして、賃貸借料は借入金の返済と利払いをカバーするものとして扱う。

2011年8月 9日 (火)

連鎖指数について

少し前に、GDPデフレーターの話のついでに、連鎖と固定の比較について書いたのですが、それと関連して。

先月末に、総務省統計局のHPで、CPIの担当室長さんが、CPIの基準改定について書いておられました。

http://www.stat.go.jp/info/today/040.htm

CPIの基準改定の内容についての解説、たとえば、「物価変動以外の要素をできるだけ排して、純粋な物価変動を捉える上で優れています」や「昨今は、その差が段々と拡大するようにも見えます(下表1参照)。これは、消費、流通面の移り変わりがスピードアップしていること、物価変動の大きさが相対的に小さくなってきていることが影響していると思われます」など、なるほどなぁ、と思うことが書いてあると同時に、連鎖との比較の話も書いてありました。

CPIの場合も、やはり、固定と連鎖で比較してバイアス(ラスパイレス指数なので上方バイアス)が出ているようですね。

統計局のHPの連鎖指数の解説(http://www.stat.go.jp/data/cpi/pdf/3-5.pdf#page=7)でもちゃんと書いてあるように、ドリフトなど、いろいろ問題もあるのは確かです。ただ、近年のように、絶対的な価格変動よりは、財ごとの相対的な価格変動(たとえば、ブランド品とディスカウント品との区別が明確になっている)の方が大きくなっている今では、パーシェ、ラスパイレスのバイアスは、どうしても大きくなってしまうのかなぁという気もしております。

なお、GDPデフレーターの場合はパーシェ連鎖ですが、連鎖を導入している統計メーカーの印象として、連鎖でユーザーが最も困惑しているのは、ドリフトではなく、むしろ、「加法整合性がない」や「開差が存在する」という点なのではないかという気がしています。

(「加法整合性」と「開差」は同じ話ですが。。。)

とはいっても、実は「加法整合性」の問題は、実質GDPでは実額を計算しているから発生する問題でして、もともと指数化している統計ではそんなに問題はないのではないかと思います。

しかし、実額を出している実質GDPでは問題はもう少し深刻で、以前このHPでも書きましたが、簡易的にPYPを計算してみれば、加法整合性は(ほとんど)成り立つということも説明したのですが(http://taro-sna.cocolog-nifty.com/blog/2011/01/post-fe3c.html)、私の周りのユーザーからは「そんなこと説明されてもわかるか!」という感じでした。う~ん、そもそも、連鎖の場合、もはや実額にはほとんど意味がないのに。。。

一応繰り返しになりますが、PYPというのは、簡単に言うと、「ラスパイレス型数量指数の場合、『基準年』と『その翌年』だけは加法整合性が成り立つ」という性質を利用して、「一旦、前歴年基準に直してしまう」ということなのですが、やっぱりわかりにくいですよね。。。

統計メーカーとしては「理解してくださいよ~」と思うんですが、そうはいっても、こんな複雑怪奇な計算など、「意味も分からない」し「やってられない」というのはおっしゃる通りだとも思うんですよね。

加法整合性及び開差問題については、何とかしたいとは思っており、アイディアがまったくないわけでもないので、もし、何かうまく改善できそうな場合はまたこの場でもご報告させていただきます。

というわけで、またまた評判の悪い連鎖のお話でした。

なお、完全に蛇足ですが、統計局のように、実際の統計発表とは別に、このようなHPで、統計メーカーが意見を書く場があるというのは良いですよね。

統計メーカーの立場としても、いろいろ意見はあるのに、実際の公表資料には反映できない話などいっぱいあると思うのですが、そういうのを公表できる、半分フォーマル、半分アカデミックみないな場というのは重要だと思います

それと、過去に一番執筆しているのが統計局長というのも良いですよね。トップ自ら本当に統計の内容がわかっておられて、しかも、統計を大切にしているというのがよく分かります(笑)

2011年8月 7日 (日)

アメリカの制度部門(2)

いろいろと調べてみたところ(私が調べたというより、調べてもらったのですが)、BEAのハンドブックでは「Government consumption expenditures and gross investment」については、以下のように書いてありました。

Government gross investment. Expenditures consisting of government purchases of structures, equipment, and own-account production of structures and software. It includes investment expenditures by both general government agencies and government enterprises.

これを見ると、Government gross investment」については、一般政府と「government enterprises」の設備投資が含まれることになります。

そして、「government enterprises」の定義としては、ハンドブックでは以下のように書いてあります。

Government enterprises: This legal form consists of government agencies that cover a substantial proportion of their operating costs by selling goods and services to the public and that maintain their own separate accounts. For example, the U.S. Postal Service is a federal government enterprise and public water and sewage agencies are local government enterprises.

これを見ると、政府のうち、自らのコストを賄うための財やサービスを販売している部分を、勘定を切り分けて、企業のように計上しているようです。そして、その例示として、連邦の郵便サービスや、水道などが含まれるようです。それなら、この「government enterprises」が公的企業かというと、必ずしもそうとは言えないようなのです。

というのは、同じくBEAの用語解説集では、

Business sector. All corporate and noncorporate private entities organized for profit and certain other entities that are treated as businesses in the national income and product accounts (NIPAs), including mutual financial institutions, private noninsured pension funds, cooperatives, nonprofit organizations that primarily serve businesses, Federal Reserve banks, federally sponsored credit agencies, and government enterprises. Related terms: general government sector, households and institutions sector.

となっています。つまり、Business sector(「産業」という感じでしょうか?)には、相互銀行?や民間非営利なんかも含まれるようなのですが、注目すべきは、「FRB」(中央銀行)が特だしされているというところです。

SNAマニュアルでは、中央銀行は「公的金融機関」に格付けされることになっています。産業には当然公的企業も含まれますから、これ自体が問題なのではなく、上記の文章では、「FRB」と「government enterprises」が分かれており、「government enterprises」には「FRB」が含まれていないことは明らかです。つまり、「government enterprises」が公的企業とは言えないわけです。

不思議に思い、支出系列以外のアメリカの「by sector」という勘定表(部門分類別ということ)を見てみました。すると、資本移転(Capital Transfers)のところでは、

By private business

By government

By persons

・・・

純貸出(+)/純借入(‐)(いわゆるISバランス)のところでは、

Private

Government

部門別の付加価値のところでは、

Business

Households and institutions

General government

・・・

となっており、一定しておりません。まあ、移転、ISバランスと付加価値では、異なる分類というのもある程度はわかるのですが、なんとなく一定していない上に、sub-sectorである、公的、民間の区別もしていないようで、SNAマニュアルに従っているようにも見えません。

アメリカの場合は、NIPAという自分のルールで突っ走っているところがあり、必ずしもSNAにしっかり合わせているわけでもないのかなと思いました。

というわけで、各国とも、必ずしも統一的な表章になっているわけでもないのかなという気づきでした。

※実は、BEAHPは一部記述が切れていたりしたので、N政策調査員に、わざわざBEAに聞いていただきました。本当にご協力ありがとうございました。

2011年8月 5日 (金)

アメリカの制度部門

前回に続いて、制度部門分類についてです。

ちょっとした関係で、日米比較をしていた時に気になったことです。以前も書いたことがあるのですが、アメリカのQ-SNAでは、支出側項目について、Government consumption expenditures and gross investment」となっており、政府最終消費支出と総資本形成が合わさって掲載されています。

http://taro-sna.cocolog-nifty.com/blog/2011/07/post-61de.html

支出側系列で考えると、最終消費支出は、「家計」、「政府」、「非営利」だけなのですが(このうち、「家計」と「政府」、「非営利」は大きく意味が異なるのですが)、総資本形成については、すべての制度部門分を計上する必要があります。

以下、固定資本形成についてのみ考えると(在庫品増加は同じですので)、日本の場合は、「公的固定資本形成」として、政府と公的企業の固定資本形成を掲載しており、それ以外は、民間企業設備と民間住宅投資として計上しています。

アメリカの場合は、「Gross private domestic investment」と「Government consumption expenditures and gross investment」の2つしか総固定資本形成に関する項目がなく、公的企業の総固定資本形成はどちらに入るんだろうと疑問に思っていました。

そしてそれを調べているうちに、そもそも、「アメリカの公的企業って、どのように扱われているんだろうか?」ということが疑問になってきました。

ちなみに、SNAマニュアルでは、制度部門(sector)は、「非金融法人」、「金融機関」、「一般政府」、「対家計民間非営利団体」、「家計」の5つに分けられ、そのうち、「非金融法人」と「金融機関」は内訳部門(sub-sector)として、「公的非金融法人」、「公的金融機関」というものを含むこととなっています。

ですので、「公的企業」について、どのように扱っているのだろうかという疑問につながってきたわけです。

2011年8月 3日 (水)

制度部門と産業分類

日本のSNA(以下J-SNAでは、制度部門と産業分類の関係が妙に厳密すぎる部分があるという印象が常々あり、疑問に思っていたのですが、別の関係で93SNAマニュアルを見て、この疑問が解決しました。

今まで持っていた疑問は、J-SNAでは、制度部門で政府に格付けされた組織はすべて産業分類では「政府サービス生産者」に、対家計民間非営利団体に格付けされた組織はすべて産業分類では「対家計民間非営利サービス生産者」に分類されてしまいます。ここは厳密に一対一対応です。

そのため、処理が悩ましいと思うことがたまにあり、諸外国はどうしているんだろうかと思ったりしていました。そこで、93SNAマニュアルを見たところ、次のような勘定表があったのです。

6.1.勘定Ⅰ:生産勘定(一部抜粋)

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私が気になったのは、太字の部分です。なんと「一般政府と対家計非営利団体に『市場産出』がある!」のです。

つまり、93SNAマニュアルでは、この制度部門と産業分類の対応は決して厳密ではなく、「一般政府や非営利団体が市場産出をしてもよい」という整理になっているのです。

ただ、これを見るともう一つ疑問が出てきます。それは、「では、一般政府や対家計非営利団体が市場産出をした場合、それはどこの産業に位置付けられるんだろうか?」という疑問です。93SNAマニュアルをよく見ると、これについてもちゃんと書かれていました。

15.107.(前略)産業と部門の関係と内容を明らかにするために、「体系」は、付加価値とその構成項目(可能ならば、産出と中間消費も)の産業別と部門別のクロス分類を要求している。

つまり、部門分類と産業のクロス表の作成をも念頭においてマニュアルが書かれているわけです。

いや、ほんとに奥が深い世界です。。。

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