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2011年7月26日 (火)

自己生産(3)

前回までは、どちらかと言えば事例を交えて自己生産について考えてきたのですが、最後に、少し93SNAマニュアルの記述にも踏まえながら、もう少し丁寧に見てみたいと思います。

まず、93SNAマニュアルでは、

6.14.(前略)生産の一般的定義をまず与え、続いてこの「体系」において用いられる、若干より限定された定義が与えられる。

としています。「体系」とは93SNAの体系のことでして、一般的定義よりも、93SNAの生産の定義は限定されているとしています。

そして「一般的な生産の境界」として、以下のように記しています。

6.15. 経済的生産は、労働、資本、および財貨・サービスの投入を用いて財貨・サービスの産出を生産する制度単位の管理と責任のもとで行われる活動として定義される。その過程の責任を負い、産出として生産した財貨を所有したり、提供したサービスに対して支払いを受けるか、何らかの報酬を受ける資格を有する制度単位が存在しなければならない。人間の係わりや管理のない純粋に自然的な過程は経済的な意味での生産ではない。たとえば、国債水域における管理されていない魚類ストックの成長は生産ではないが、養魚場の活動は生産である。

6.16. 財貨を生産する生産過程は難なく特定することができるが、サービスの生産を重要かつ有益なその他の活動から区別することは常にそれほど容易とは限らない。経済的な意味で生産的でない活動には、飲食、睡眠、運動等のような、他の人に代わりにやってもらうことができないような基本的な人間活動が含まれる。誰かを雇って、代わりに運動してもらうことは健康を保つ方法ではない。他方、洗濯、食事の支度、子どもの世話、老人や病人の介護のような活動は、すべて他の単位によっても提供されうる活動であり、したがって、一般的な生産の境界の中にある。多くの家計が彼らのためにこのような活動を行う有給の家事使用人を雇用している。

少し長いですけど、全文を引用しました。ポイントは以下のとおりだと思います。

 ①人間のかかわりのない(人間が設立した組織のかかわりでも可)純粋に自然的な過程は、生産ではない。つまり、生産は人間の係わりや関与があるものをいう。

 ②サービスの生産については、他の人に代わりにやってもらうことができないような活動は、生産ではない。つまり、サービスの生産は、他の人に代わりにやってもらうことができるものに限られる。

ということです。

しかし、これは、あくまで「一般的な生産の境界」です。この上に、93SNAでは「93SNA体系における生産の境界」についても記述しています。

6.17. 「体系」における生産の境界は一般的な生産の境界よりもより限定されている。以下で説明する理由のために、有給の家事使用人を雇用することによって生産されるサービスを除いて、同じ家計内で自己最終消費のために家事サービスあるいは個人サービスを生産する家計の活動については、生産勘定は作成されない。それ以外では、「体系」の生産の境界は前節に示した、より一般的なものと同じである。

つまり、ここで、前回書きましたとおり、「自己消費向けの財」については生産の境界内ながらも、「自己消費向けのサービス」については、一部の例外(家政婦さんなどのこと)を除いて、生産の境界外である、と書いているわけです。

ただし、「自己消費向けの財」とはいっても、前回書きましたように、その影響度が小さければ推計しなくともよいし、逆に影響が大きければ推計してもよいというように、ある程度各国に判断がゆだねられている部分もあります。

そして、この生産の境界の話としては、特に一点だけ注意すべき例外があります。それは、以前に書いたことがあるのですが、「持ち家住宅サービス」についてです。これについては、「自己消費向けのサービス」でありながら、生産の境界内に含むこととされています。この点については、こうかかれています。

 6.29.持家居住者による自己最終消費のための住宅サービスの生産は常に国民経済計算における生産の境界の中に含まれてきたが、そのことは自己勘定サービス生産を一般的に除外することの例外となっている。賃貸住宅に対する持家住宅の比率は各国間で、さらにひとつの国の中でも短期間についてさえ大きく異なることがあり、したがって、住宅サービスの生産と消費の国際比較および時間比較は、自己勘定住宅サービスの価額について帰属が行われないならば、ゆがめられたものとなる。このような生産によって生ずる所得の帰属価額には一部の国では課税が行われている。

つまり、

 ①国によっては、みんなアパートにすんでいるような国と、日本のように一軒家を持ちたがる国とがあ

 ②同じ国でも、時代によって、みんながアパートに住んでいる時期と、一軒家を持っているような時期と異なる場合があ

わけですから、いずれの場合でも、アパートの家賃支払いは家計消費にいれるものの、持家については何も計算しないという取り扱いにしてしまうと、アパート住人が多い場合の方が、家計消費が増えてしまいます。そうしてしまうと、①の場合の国際比較が、②の場合の経年比較がまともにできなくなってしまいます

そこで、持家についても、同じ住居の同じ地域の家賃と同額を、「自らが自らに支払っていると『擬制』」して、比較ができるようにしているということです。ただし、これは、あくまで比較のための例外ということになります。

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