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2011年5月 5日 (木)

固定資本形成について(5)

前回は、現物の資本移転と、現金の資本移転で、『移転元』(前回の例でいうと、制度部門A)の「純貸出(+)/純借入(‐)」に違いが出てくることまで考えました。今回は、その理由を考えてみようと思います。

まず、原点に立ち返って、「純貸出(+)/純借入(‐)」とは何だったか考えてみましょう。

我が国の国民経済計算の解説を見てみますと、

純貸出(+)/純借入(-)Net Lending / Net Borrowing

  実物面において、投資と貯蓄は経済全体をとれば一致するが、部門別に見ると一致しないのが普通である(例えば、家計は貯蓄超過主体である等)。このような投資と貯蓄の差は、一般にISバランスと呼ばれる。これに資本移転の受払を加えたものが「純貸出(+)/純借入(-)」であり、資本蓄積の原資と非金融資産の取得とのバランスを表している。

(以下略)

とあります。このうち、下線の部分にご注目ください。つまり、『資本蓄積の原資』と『非金融資産の取得』との関係を示すのが、「純貸出(+)/純借入(‐)」と言っているわけです。現物の資本移転だったCase1と現金の資本移転だったCase2-2では、何が違うかというと、「もともと存在していた固定資産を移転しただけで、新たな固定資本形成は行われていない」という点と「資本移転先で新たな固定資本形成が行われた」という点です。

こうやって考えると、固定資本形成が行われていないCase1において、「『資本蓄積の原資』と『非金融資産の取得』との関係」を示す「純貸出(+)/純借入(‐)」が動かないのは当然と言えば当然です。

逆に、当初私が誤解していたように「二重計上だから、資本移転を計上しないで良い」ということになると、Case1の資本調達勘定(実物)は、

制度部門Aの資本調達勘定(実物)

(借方)

総固定資本形成     ▲10億円

純借入(+)/純貸出(‐)▲10億円

(貸方)

貯蓄(純)         0

資本移転(受取)      0

(控除)資本移転(支払)    0

制度部門Bの資本調達勘定(実物)

(借方)

総固定資本形成      10億円

純借入(+)/純貸出(‐) 10億円

(貸方)

貯蓄(純)          0

資本移転(受取)        0

(控除)資本移転(支払)   0

となってしまい、移転をしただけで、「純貸出(+)/純借入(‐)」が動くとともに、金融取引と「純貸出(+)/純借入(‐)」が異なってしまいます。こういうわけで、現物移転の場合は、総固定資本形成にも資本移転にも両方計上するのであって、何も二重計上でもなんでもないわけです。

本スジについては以上なのですが、ここまで書いていて少し個人的に思ったことを1点だけ。

総固定資本形成は、「GDP(支出側)」の構成項目の一つです。そうすると、制度部門間で、一方的に既存の固定資産を移転しまくると、移転先の部門の「GDP(支出側)」が増え、移転元の部門の「GDP(支出側)」が減ってしまいかねません。でも、GDPって、生み出した付加価値ですよね?そんな現物資本移転の有無で、付加価値の大小が変わるのなんて絶対におかしいです。

だから、制度部門別の「GDP(支出側)」というものは存在しなくて、産業別のGDPというのは生産側でしか作られないんだなと、妙に納得したわけです。

この辺も、何度も書いていますが「日本は支出側がメインすぎる」ということの弊害なんだろうなと思ってしまいます。

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