« 2011年3月 | トップページ | 2011年5月 »

2011年4月

2011年4月29日 (金)

固定資本形成について(3)

では、現物でない資本移転の場合はどうなるんだろうかということが疑問になってくるのではないかと思いますが、それを整理する前提として、資本調達勘定の金融取引についても考えてみたいと思います。

金融取引は、現金や貸出、借入などの金融面の資産、負債の変動を記録するものでして、具体的には、

(貸方)

現金・預金

貸出

その他の金融資産

(借方)

純貸出(+)/純借入(‐)

借入

その他の負債

となります。

(注)「その他の金融資産」、「その他の負債」はもっと細かく分かれていて、「株式・出資金」や「金融派生商品」などと分けて表章されていますが、ここでは単純化のため、すべて「その他の金融資産」、「その他の負債」にまとめています。

では、前回の

Case1-2 制度部門Aから制度部門Bに、所有しているビル(評価額10億円)を無償で譲渡した。譲渡にかかる費用は1億円。

に戻ってみましょう。この時、譲渡にかかる費用1億円を、制度部門Aはどのように調達したのでしょうか?もし、手持ちの現金・預金を取り崩して、キャッシュで出したとしたら、制度部門Aの金融取引は、

(貸方)

現金・預金        ▲1億円

貸出             0

その他の金融資産       0

(借方)

純貸出(+)/純借入(‐) ▲1億円

借入             0

その他の負債         0

となります。または、銀行などからお金を借りて1億円調達していたとした場合は、同じく制度部門Aの金融取引は、

(貸方)

現金・預金          0

貸出             0

その他の金融資産       0

(借方)

純貸出(+)/純借入(‐) ▲1億円

借入            1億円

その他の負債         0

となります。ここで注目するべきは、前回の実物取引の「純貸出(+)/純借入(‐)」と今回の金融取引の「純貸出(+)/純借入(‐)」が同じ額になっていることです。「この2つは概念的に一致するものである」と言葉で言われるよりも、こうやって実際の取引を計上した方が、一致しているということの実感があるのではないでしょうか。。。

2011年4月28日 (木)

固定資本形成について(2)

まず、いくつかのケースごとに計上方法を考えてみましょう。

その前に、資本調達勘定の実物取引の整理から。

(借方)

総固定資本形成

(控除)固定資本減耗

在庫品増加

土地の純購入

純借入(+)/純貸出(‐)

(貸方)

貯蓄(純)

資本移転(受取)

(控除)資本移転(支払)

です。いろいろと細かいので、単純化のため、「固定資本減耗」、「在庫品増加」、「土地の純購入」は無視して考えましょう。そうすると、

(借方)

総固定資本形成

純借入(+)/純貸出(‐)

(貸方)

貯蓄(純)

資本移転(受取)

(控除)資本移転(支払)

となります。ここで、次のような取引を資本調達勘定の実物取引に計上してみましょう。

Case1 制度部門Aから制度部門Bに、所有しているビル(評価額10億円)を無償で譲渡した。譲渡にかかる費用は単純化のためゼロ円と考える。

この場合は、それほど難しくなく、

制度部門Aの資本調達勘定(実物)

(借方)

総固定資本形成     ▲10億円

純借入(+)/純貸出(‐)  0

(貸方)

貯蓄(純)         0

資本移転(受取)      0

(控除)資本移転(支払) 10億円

制度部門Bの資本調達勘定(実物)

(借方)

総固定資本形成      10億円

純借入(+)/純貸出(‐)  0

(貸方)

貯蓄(純)          0

資本移転(受取)     10億円

(控除)資本移転(支払)   0

となります。つまり、現物の資本移転でうつされた固定資本形成は、「純貸出(+)/純借入(‐)」に影響を及ぼさないことがわかります。

次に先ほどのCase1の応用パターンとして、所有権の移転費用を考えてみましょう。つまり、ただで10億円のビルを譲渡すると言っても、いろいろ手続きが必要でしょう。契約書を書かなければいけないでしょうし、何かしら税金なども支払わなければいけないかもしれません。他にもいろいろありそうです。

こういった所有権の移転費用については、93SNAマニュアルでは、

10.55 新規資産の取得は、その実際のあるいは推定された購入者価格に当該資産を取得する単位によって負担されるすべての所有権の移転費用を加えたものによって評価される。(中略)所有権の移転費用には、以下の項目が含まれる

(a) (略)

(b) 資産の所有権移転に関して、新しい所有者により支払われるすべての税

とされています。つまり、この場合の所有権移転費用は、資産の取得に含まれる、すなわち総固定資本形成に含まれることになります。では、これを踏まえて、

Case1-2 制度部門Aから制度部門Bに、所有しているビル(評価額10億円)を無償で譲渡した。譲渡にかかる費用は1億円。

について計上してみますと、

制度部門Aの資本調達勘定(実物)

(借方)

総固定資本形成     ▲10億円

純借入(+)/純貸出(‐)  0

(貸方)

貯蓄(純)         0

資本移転(受取)      0

(控除)資本移転(支払) 10億円

制度部門Bの資本調達勘定(実物)

(借方)

総固定資本形成       11億円

純借入(+)/純貸出(‐) ▲1億円

(貸方)

貯蓄(純)          0

資本移転(受取)     10億円

(控除)資本移転(支払)   0

となります。つまり、AとB合わせて移転費用の1億円だけが総固定資本形成の増加に影響していることがわかります。

2011年4月26日 (火)

固定資本形成について

なんだか、いろいろとSNAのことを偉そうに書いているので、相当詳しそうに見えてしまうかも知れないですが、私自身、実は、まったくわかっていなかったり、まったく間違った理解をしていることがたくさんあります。

※本当は、統計メーカーとしてこんな状況では申し訳ないですし、勉強不足と言われるとその通りで、とっても恥ずかしいことなのですが、SNAの場合、どうしても対象範囲が広くて、すべてを理解するのは大変です。。。

最近も、私自身「まったくわかっていなかった話」に気づき、非常に印象に残っています。内容は、固定資本形成と(現物の)資本移転の関係についてなのですが、純貸出(+)/純借入(‐)の概念にもつながる話で、非常に面白いと思います。そして、なにより、自分自身の理解を高めるためにも、整理してここで紹介させていただければと。。。

まず、93SNAマニュアルに書いてある、総固定資本形成の定義から入ってみます。

10.33. 総固定資本形成(gross fixed capital formation)は、生産者による会計期間中の固定資産の所得マイナス処分の合計額に制度単位の生産活動により実現した非生産資産の価値へのある種の追加を加えたものによって測定される。固定資産(fixed assets)は、生産過程からの産出として生産された有形または無形の資産であり、それ自身が1年を超えて他の生産過程において反復的ないし継続的に使用されるものである。

10.35 (前略)固定資産の取得および処分の様々な構成要素を以下のように示すことができる。

 (a)購入された固定資産の価値

 (b)物々交換により取得された固定資産の価値

 (c)現物資本移転として受け取られた固定資産の価値

 (d)生産者により自己使用のために留保された固定資産の価値。それは自己生産されつつある未完成品もしくは未成熟の固定資産の価値をすべて含む。

 マイナス

 (e)売却された既存固定資産の価値

 (f)物々交換により引き渡された固定資産の価値

 (g)現物資本移転として引き渡された固定資産の価値

 生産者の固定資産の取得マイナス処分の価値は、(a)から(d)までの合計マイナス(e)から(g)までの合計により与えられる。(以下略)

長々と書きましたが、今回の説明において重要なのは以下の2点です。

「総固定資本形成(gross fixed capital formation)は、生産者による会計期間中の固定資産の所得マイナス処分の合計額(中略)によって測定される」という点と、「『固定資産の取得及び処分』には『現物資本移転により受取及び引き渡された固定資産』が含まれる」という点です。

私が理解していなかったのは、「現物の資本移転が総固定資本形成に含まれるということは、『他の制度単位へ現物の固定資産を無償で(対価を受けず)譲渡した場合』、その取引は、資本移転と総固定資本形成の両方に計上されるのか?」ということです。

結論から言うと、両方に計上されるのですが、私は、一瞬、「二重計上になるのではないか?」と疑問に思ってしまいました。

このあたり、実際の勘定表への計上方法も踏まえながら、少し考えてみたいと思います。

2011年4月21日 (木)

連鎖統合における比例デントン(5)

前回までの続きです。

まず、暦年の実質値を要因分解すると、

1

になります。

同じく、四半期重複法による四半期の連鎖実質値は、

2

となりますので、各四半期値の暦年合計値は、

3

ですが、四半期値の性質、というか定義上

  4

ですから、四半期重複法による四半期値の暦年合計値は、

5

となります。

つまり、暦年値は、

6

四半期値の暦年合計値は、

7

ですから、両者の関係については、例えば、四半期値の暦年合計が、暦年値よりも大きい場合は、

8

ですから、少し整理して、

 9

の場合に、このようなことが起こることが分かります。

これは、前暦年において第4四半期の数量が暦年の平均数量よりも多く、前暦年価格が前々暦年価格より低下している場合などが該当します。

ここで冷静に考えてみると、平成21暦年はリーマンショックの回復期で、第4四半期は暦年よりも明らかに高く、また、消費については、21暦年は価格低下の激しい耐久財の消費が伸びていましたから(エコポイントなどもこの年からでしたし)、20暦年より価格は低下しています。つまり、消費については、まさしくこのような事態が発生していたことがいえそうなのです。

というわけで、少しマニアックな話でしたが、テクニカルな要因で、実質値が動いてしまうことがあるということのお話でした。

(注)四半期重複法による、四半期の連鎖実質値は、「前暦年の第4四半期値」からつなぐ形となっていますが、この「前暦年の第4四半期値」についても、四半期重複法により推計されています。しかし、「前暦年の第4四半期値」については、既に比例デントン法によりベンチマークを行っており、(厳密には異なるものの)『四半期重複法によらない』「前暦年の第4四半期値」と近い数字となっているものと考えられます。

  そのため、ここでは、計算の単純化のため「前暦年の第4四半期値」については、『四半期重複によらない』ものとして計算しています。

2011年4月19日 (火)

連鎖統合における比例デントン(4)

さてここまで書きまして、ようやく本題です。

今までの話を要約すると、

 ①四半期重複した連鎖の四半期値では、その合計値が連鎖の暦年値とずれる

 ②そのため、両者を一致させるよう、比例デントン法を用いている

ということです。

ところで、この比例デントン法で調整ができるためには、ある大前提があるということはお気づきになられたでしょうか?

それは、「暦年値が出るまでは、比例デントン法は使えない」ということです。

非常に当たり前で、コロンブスの卵みたいな話なので、ふざけているように聞こえるかもしれませんが、これは大まじめな話です。そもそも「暦年値がないのだから、ずれているのかどうかすら分からない」のですから、本当にどうしようもないのです。

ですから、1-3月期から7-9月期のQEの時点では、比例デントン法は行われておらず、10-12月期に暦年値が入ったときにはじめて行われるわけです。

 (注)なお、比例デントン法を行うまでの期間は、具体的には、比例デントン法をかけた最後の期の値から、第4四半期重複法で作成した四半期値の伸び率で延長しています。

ここまででお分かりいただけたかと思いますが、そういうわけで、第4四半期重複法で作成した四半期値の合計値と、暦年値のズレが大きい場合、この期のQEで実質値の改定が大きくなります。

実際に、この前の10-12月期のQEでは特に消費において、このズレが大きかったようで、比例デントンで結構大きく実質値が動きました。ただ、これは何でだろうとずっと考えていたのですが、自分なりに考えがまとまってきたので、次回にまた少し細かく考えてみようと思います。

2011年4月17日 (日)

連鎖統合における比例デントン(3)

前回は、四半期重複した四半期値は、合計が暦年値に一致しなくなると書きました。強引にt暦年の水準を調整しているわけですから、これは当たり前の話です。ですが、これでは困ります。そこで、どのように調整しているかというと、タイトルに出てくる、「比例デントン法」を用いて、調整しているのです。

比例デントン法とは、t年の暦年実質値は、

 1

ですが、これと、四半期重複した四半期実質値を用いて、前期との動きを可能な限り保存したまま、四半期の合計が暦年値と一致するように調整するものです。

具体的な計算式は、どこかでご覧いただいたことがあるかと思うのですが、

2

 3

となります。ここで、4 は補助系列のことで、具体的には、四半期重複法による連鎖の四半期値である、

 5

を用います。ただ、意図的に4_2と書いたのは、ここでのtは各期が連続(つまり2暦年の第1四半期はt=5ということ)するように書いているということをご注意ください。

そして、8 は暦年値のことで、具体的には、連鎖の暦年値である

 7

です。これらを用いて、比例デントン法を用いることで、

 ①基準年が変わることの断層を解消する

 ②四半期の合計と暦年値が一致する

という性質を確保しているわけです。

さて長々と書かせていただきましたが、現状このようなことをやっているのというのが、今回の話の前提となります。

2011年4月15日 (金)

連鎖統合における比例デントン(2)

前回、基準年のズレが、毎10-12月期と1-3月期に出ないようにしていると書きました。具体的には、四半期重複法という方法で、このズレが出ないように接続しています。

といっても、考え方は簡単で、

 ①前歴年の第4四半期について、当年基準で作ってしまおう

 ②その当年基準で作ってしまった前歴年の第4四半期と、実際の前歴年の第4四半期の比率を、当年の各4半期に乗じてみよう

というだけです。

実際に計算してみると、前歴年の第4四半期は、

 1

でした。そして、これを、当年基準にしたものをXとしてみると、容易に、

 2

となることが分かります。そこで、当暦年の各四半期値

 3

に、6  を乗じてみると、

 4_2

となります。つまり、この

 5

が四半期重複法による、四半期の連鎖実質値になります。

問題はこれで解決かと思いきや、この四半期重複法による連鎖実質値にも問題があります。それは、四半期重複してしまったがゆえに、各四半期の合計値が当年の暦年値と一致しなくなってしまうという点です。

(参考)四半期重複法の解説及び計算方法については、公式にはこちらに書いてありました。

 www.esri.cao.go.jp/jp/sna/041019-k/shiryou3.pdf

2011年4月14日 (木)

連鎖統合における比例デントン

最近忙しくて更新をサボっていました。

これからもっと忙しくなると思うのですが、時期的に、1-3月期のQEの前にぜひ書いておきたいことがあるので、少し触れてみようと思います。

内容は連鎖に関する件です。

良く書いている記述の中でも、連鎖については数式の羅列となってしまい、非常に評判が悪いのですが、私の中では、連鎖は計算式で書かないと何をやっているかわけがわからなくなってしまうような気がしてしまい、どうしても式が多くなってしまいます。

という言い訳をさせていただきまして、具体的な内容に入りたいと思います。

この前、10-12月期のQEを出したときに、連鎖統合の作業で、実質値が結構動いたことがあったのです。そこで、どういう理屈でこのようなことが起こったのか考えてみたところ、非常に興味深いことが分かったので、不評かもしれないですが、あえて書いてみようと思います。

さて、まずは、現状の四半期値の連鎖では何をやっているかというところからです。いきなり計算式なのですが、四半期の連鎖実質値は、

 1

となります。tが暦年、kが四半期です。これをご覧いただくと、四半期の連鎖実質値は、前歴年値をベースとして求められていることがお分かりいただけると思います。

さて、ここで、前歴年をベースとしているところはよいのですが、第4四半期から翌年の第1四半期にかけては、

 2  (第4四半期)

 3  (第1四半期)

と第2項、第3項の計算式が大きく異なっていることが分かります。これは、つまり、連鎖は前歴年を基準としているのですが、年をまたいでしまうことにより、基準年が異なってしまうことを意味しているわけです。

ただ、基準年のズレが、10-12月期と1-3月期の間に毎回出てしまっては困ります。そのため、実際の連鎖方法では、この部分についてきちんと調整して計算しています。

2011年4月 9日 (土)

政府サービス生産者(2)

前回は、付表2を見ながら、生産活動している「産業」、「政府サービス生産者」、「対家計民間非営利サービス生産者」の3つの主体があるというところまで整理してきました。「政府サービス生産者」と「対家計民間非営利サービス生産者」は同じようなものなので、まずは、「政府サービス生産者」に集中して整理してみます。

今日は、この「産業」と「政府サービス生産者」の違いについてです。

「産業」は、皆さんが普通に想像される、メーカーや銀行などの会社のことだと考えていただいて良いと思います。(個人事業主も入りますが。。。)一方で、政府も、財やサービスを販売したりはしていませんが、警察とか学校教育とか、ちゃんと政府としてのサービスを生産しています。実際にお金のやり取りは無いので気づかないのですが、これらのサービスを生み出して、しかも、それが一国全体でみれば、何かの役に立っている(はず)と思います。。。

こういった政府が生産している、警察とか学校教育とかのサービスを「政府サービス」と呼んでおりまして、また、これらを生産している主体としての政府を、生産者の立場からは「政府サービス生産者」と呼んでいます。

(政府サービス生産者については、こちらに詳しく書いてあります。http://taro-sna.cocolog-nifty.com/blog/2011/04/post-7e7e.html

「対家計民間非営利サービス生産者」については、この生産の主体が、「政府」ではなく、「対家計民間非営利団体」になっただけで、この中には、社会福祉法人、私立学校、NPOなどの非営利活動による生産が含まれるわけです。

ここまで来るともうお分かりかと思いますが、

「1.(10)」のサービスは、普通の株式会社などの「産業」のなかで、サービス業を行っている業種の産出やGDPなどが出ているということです。

「2.(2)」のサービスは、政府が算出したものの中で、「サービス業」に分類されるものになります。生産者としての政府である政府サービス生産者は「電気・ガス・水道業」と「サービス業」と「公務」の3つに分かれます。そして、「電気・ガス・水道業」は文字通りでして、政府が行った下水道や廃棄物処理の業務の産出を、「サービス業」は教育や学術研究機関の業務の産出を、それ以外の業務(一番想像しやすい典型的な公務員の仕事かと思います)の産出は「公務」、という具合に分かれています。

最後に「3.」は「(1)」しかなくて、対家計民間非営利団体の産出は、すべてサービス業に整理しています。

というわけで、3つ「サービス業」が出てきていますが、それぞれ、(民間の)「産業」、(政府の)「政府サービス生産者」、「対家計民間非営利サービス生産者」の内訳のうちのサービス業であって、別物であるということがお分かりいただけたのではないかと。。。

2011年4月 8日 (金)

政府サービス生産者

政府サービスの関係でついでにもうひとつ。

実は昔から結構質問があるのですが、付表2の経済活動の分類のところで、次のような記載になっています。

1

※付表2のURLは以下の通り。

http://www.esri.cao.go.jp/jp/sna/h21-kaku/21s2n_jp.xls

この中で、「1.(10)」と「2.(2)」と「3.(1)」に3回も「サービス業」が出てきます。これは、何かの間違いじゃないか?という問い合わせが結構あります。

確かに誤解を招きやすい標記かもしれませんが、決して間違いだとか難しいという話ではないので、この部分について、特に、「産業」と「政府サービス生産者」等の違いについて、少しまとめてみたいと思います。

まず、この表は何かというところからです。この付表2は、「経済活動別の国内総生産・要素所得」といいまして、このブログで何度か書いています「生産側のGDP」の推計手順が示されている表と考えていただいて良いと思います。

生産側のGDPは、何度も書いている通り、

GDP(生産側) = 産出 - 中間投入

です。そして、これが産業別に出せるわけです。つまり、「製造業のGDP(生産側)」とか「サービス業のGDP(生産側)」とかそういう数字なわけです。

そうすると、この表の左側の「経済活動の種類」というのは、上記の製造業、とかサービス業とかの、何かしらものを生産している活動主体を示している、ということが分かるかと思います。

つまり、「経済活動の種類」欄が「農林水産業」のところで「産出」とみてみると、この産出額は「農林水産業」のその年の産出額を表しているわけです。そして、隣の「中間投入」を引くと、その隣の「国内総生産」となるわけです。

というわけで、一番左の欄が、何かしら生産活動をしている活動主体を示しているというところまで、ご説明できました。

では、その欄に、「産業」、「政府サービス生産者」、「対家計民間非営利サービス生産者」という大くくりで言うと3つの区分があるのですが、これは何を意味しているのでしょうか?

2011年4月 5日 (火)

生産側と支出側(政府サービス生産者)(3)

さて、ようやく本題まで来ました。

政府サービス生産者の生産した、「政府サービス」について、生産側では、

 GDP(生産側)の構成項目 : 産出 - 中間投入 = 付加価値

 GDP(支出側)の構成項目 : 産出 - 中間消費 = 最終消費支出

となりました。ここでいう、「中間投入」と「中間消費」がそれぞれどこに当たるか、もう一度図を見ながら考えて見ましょう。

5

まず、GDP(生産側)の「中間投入」とは、青い点線で囲った部分です。つまり、政府サービス生産者が、政府サービスを生産するために使った「中間投入」です。

一方で、GDP(支出側)の「中間消費」とは、赤い点線で囲った部分でして、「商品・非商品販売」のうち、産業に対するものになります。これは、政府サービス生産者が生産した、政府サービスのうち、他の産業の「中間投入」として使われたものになります。

この両者は、当然まったく異なる概念ですから、政府サービス生産者の活動『だけ』をみてGDP(生産側)とGDP(支出側)を比べても、当然異なってきます。つまり、政府サービス生産者の付加価値(GDP(生産側))と政府最終消費支出(GDP(支出側)の構成項目)はまったく異なるものになります。

 ※本当は、商品・非商品販売のうち、家計に対するものは、「民間最終消費支出」に含まれますが、煩雑なので、ここでは省略しています。

ただし、この青い点線の部分と赤い点線の部分は、『すべての産業を合計した、一国全体』を見た場合は、一致しますから、一国全体ではGDP(生産側)=GDP(支出側)となることに注意が必要です。

さて、一番最初の質問に戻りまして、

 ○政府最終消費支出は、雇用者報酬、中間投入などのコスト積み上げで計算されている。一方で、GDP(=付加価値)は「産出-中間投入」なのに、なぜ政府最終消費支出だけ中間投入が含まれるのか?二重計上ではないか?

について答えてみましょう。

すると、「産出-中間投入」については、GDP(生産側)の話でして、生産側で見たときは、当然中間投入が含まれています。

一方で、GDP(支出側)を見るときは、引くべき項目は「中間消費」でして、これは、商品・非商品販売のうち産業分として、きちんと引かれています。

ですから、二重計上ということは決してなく、ただ、見る側面が違うというだけのことなのです。

ということで、自分の中では非常に分かりやすくまとまったと思っています(笑)

2011年4月 3日 (日)

生産側と支出側(政府サービス生産者)(2)

政府最終消費支出に含まれる「中間投入」について考えることが本題でした。そこで、次のようなフロー図を考えて見ます。

1

政府サービスについての、活動を図にまとめてみました。この図は、大きく分けて、2つの段階に分けることができます。

第1段階は、生産の局面でして、

2

この点線の部分になります。

この局面は、SNAの推計過程における「付加価値法」の部分になります。

そして、付加価値法により推計されるのは、GDP(生産側)でして、しかも、生産側であれば、産業ごとの付加価値(=GDP(生産側))を求めることができます。

定義により、生産側のGDP

 GDP(生産側)= 産出 - 中間投入

ですから、この図で言う、政府サービス生産者の産出から中間投入を引いたものが、『政府サービス生産者の付加価値(=GDP(生産側))』となるわけです。

一方で、もうひとつの局面があります。

4

それは、この点線で囲った部分になります。これは、生産された「政府サービス」が誰によって消費されたか、という局面でして、この局面は、SNAの推計過程における「コモディティー・フロー法」の部分になります。すなわち、GDP(支出側)の推計過程です。

コモディティー・フロー法の考え方は、

産出 - 在庫品増加 + 輸入 - 輸出 = 国内総供給

= 中間消費 + 最終消費支出 +総固定資本形成

というものです。ここで、政府サービスについて、在庫や設備投資、輸出入は関係ないですから、

産出 = 中間消費 + 最終消費支出

とすることができます。ここで、中間消費はGDP(支出側)の構成項目ではありませんから、

産出 - 中間消費 = 最終消費支出

となります。すなわち、政府サービス生産者が生産したもののうち、GDP(支出側)の構成項目として乗ってくるのは、産出から中間消費を引いたものになります。

2011年4月 2日 (土)

生産側と支出側(政府サービス生産者)

また、質問ネタなのですが、内部の方から、

 ○政府最終消費支出は、雇用者報酬、中間投入などのコスト積み上げで計算されている。一方で、GDP(=付加価値)は「産出-中間投入」なのに、なぜ政府最終消費支出だけ中間投入が含まれるのか?二重計上ではないか?

という質問をいただきました。

実は、コスト積み上げもの(政府と非営利)についての、「二重計上では?」という質問はよくあり、推計担当者の立場として答えていても、確かにとっつきにくいだろうな、と思うことがあります。

この原因は、このページで何度も書いているように、「日本ではGDP(支出側)がメインでありすぎる」ということだと私は考えているのですが、これは、生産側と支出側を分かりやすく整理するためにも、非常によいテーマだと思いますので、また、少し細かく考えてみようと思います。

まず、政府最終消費支出とは何か、というところからです。詳細は以前に書いているので、こちら(http://taro-sna.cocolog-nifty.com/blog/2010/05/post-f801.html)をご覧いただきたいのですが、概略を書くと、

 ①政府は、財・サービスの消費者としてだけでなく、「生産者」としても活動しています。この側面からみた政府を「政府サービス生産者」とい言います。

 ②「政府サービス生産者」が生産したものは「政府サービス」といい、警察、消防、自衛隊の活動や学校教育などが代表例です。

 ③警察などのサービスについては、通常、利用者が十分対価を支払っているわけではありませんので、当然、そのコストはまかなえていません。そこで、そのコストをまかなえなかった部分は、『政府が自ら消費しているもの』として擬制しています。その擬制を「政府最終消費支出」といいます。

 ④そして、その擬制については、「いくら?」という価格が存在しないので、雇用者報酬とか中間投入などを足して、コスト積み上げで計算しています。

ということになります。

 (注)現物社会給付は複雑になるので省略しています。

これを踏まえて、次回は、政府サービス生産者の活動について、細かく考えてみようと思います。

2011年4月 1日 (金)

再開

まだ、計画停電も完全に避けられたわけではないですし、何より復興も緒につき始めたばかりという状況だと思うのですが、新年度に入った本日から、あまり迷惑のかからないように、電力利用の少ない夜にでもこっそりと更新を再開しようと思います。

一番初めに何から書いたらいいかというのは悩むのですが、一部のコアなユーザーからは、今回の震災の影響がSNAでどのように出るのかという質問があるのではないかと思います。その点は、追々、整理して何かの機会にご説明できればと考えておりますが、まず、はじめに、総論的な話として、次のような質問があるのではないかと考えております。

○なんで、震災であれだけ被害が出ているのに、『復興需要』とかで、GDPが上向くなどという民間予測が出ているんでしょうか?災害があった方が、GDPにプラスだなんて、何かおかしいのではないでしょうか?

これについては、なかなか分かりにくい話もあると思いますので、少し例を挙げながらご説明してみようと思います。

このブログでは何度か書いているのですが、SNAは、フローとストックの双方から一国全体の活動をとらえています。このうち、GDPはフローの係数なのですが、これが何を意味しているのかということから考えてみます。

イメージとして、お風呂に水をためている様子を想像してみてください。絵で描くと、こんな感じでしょうか?

1

下手な絵ですが、

①矢印が蛇口から流れ出ている水(の水量)

②下のシャドーがかかった部分がたまった水

(のつもり)です。

この時、①がフローの係数で、具体的にはGDPだと思ってください。一方で、②がストックの係数で、資産、それも正味資産と思ってください。なお、一国全体での正味資産のことを『国富』と言います。

(注)上記の説明は、イメージをつかみやすくするために、思いっきりはしょって書いていますので、正確性はまったくありません。まず、GDPから正味資産につながるまでには、生み出した付加価値(=GDP)を移転取引などで再分配し、更に、そのうち最終消費支出に当たるものは除き、残った貯蓄部分が固定資本などの実物資産や金融資産に積みあがります。それに、逆にその期間に追った負債もありますので、資産から負債を控除したものが正味資産です。

  企業会計でいうと、フローがP/L、ストックがB/S。GDPは営業利益で、正味資産は純資産に当たるという感じでしょうか?

では、災害が起こったときに、何が起こるかというと、②の水がこぼれてしまって、その分、水量が減ってしまいます。下の図でいうと、点線の部分からシャドーの部分まで水が減ってしまっています。つまり、正味資産(=国富)が減ってしまったということです。

一方で、これだけ水が減ってしまったら、また水をもとに戻そうとして、①の蛇口の水をたくさん出そうとするのではないでしょうか?下の図では、蛇口の部分が広がって、水の流れが多くなっています。つまり、GDPが増えているということです。

2

「災害で、GDPが増えるのはおかしいのではないか?」ということについての解説は、大体これで尽きると思うのですが、

○一国全体の富の減少は、ストックの正味資産(=国富)の減として捉えられる。

○一方で、その減った富を回復させるために、生産活動が増えるので、蛇口の水の流れであるGDPは増える。

ということになります。そう考えると、正味資産を『国富』というのは、非常に分かりやすい的を得た表現のような気がしています。また、GDPについても、何度も繰り返すようですが「生産」の概念ですから、このように生産から見てみると分かりやすいのではないかという気がします。

« 2011年3月 | トップページ | 2011年5月 »

無料ブログはココログ
2016年8月
  1 2 3 4 5 6
7 8 9 10 11 12 13
14 15 16 17 18 19 20
21 22 23 24 25 26 27
28 29 30 31