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2011年2月

2011年2月27日 (日)

直接購入(2)

前回の続きです。

前回は、直接購入(海外旅行中の購入)について、輸出入となることを書きました。その考え方について考えるため、93SNAを見てみたいのですが、その前に、そもそも、直接購入とは何のことをかが分かりにくいと思うので、まず、わが国の国民経済計算の用語解説から、「家計最終消費支出」についてみてみます。

家計最終消費支出(Final Consumption Expenditure of Households

 (略)
 家計最終消費支出には、国内・国民二つの概念があり、前者(国内市場における最終消費支出)は、ある国の国内領土における居住者たる家計及び非居住者たる家計の最終消費支出である。他方、後者(居住者たる家計の最終消費支出)は、前者に居住者たる家計の海外での直接購入を加え、非居住者たる家計の国内市場での購入を差し引いたものである。統合勘定、所得支出勘定には後者の概念で計上される。

 (略)

ということです。これだけじゃ分かりにくいですね、相変わらず。。。

ということで自分なりに解釈しながら書いてみると、まず、家計最終消費支出については、「国内」概念と「国民」概念があると書いてあります。

「国内」概念と「国民」概念は、非常に『深い』問題のようでして、実は私自身、その概念を理解できているという自信すらないのですが、大雑把に考えると、

「国内」 ⇒ ある国の領土内における活動

「国民」 ⇒ ある国の領土内にいる『居住者』の活動

ということかと思います。というか、私自身、この程度の理解しかしておりません。(もう少し勉強して、この件をもっと深く語れるようになりましたら、またこのHPで書いてみます。)

で、これだけじゃ分かりにくいと思いますので、具体的に、家計最終消費支出について考えると、

①「国内家計最終消費支出」は、ある国の領土内において行われた、「家計」の消費支出がすべて含まれる。ここで言う「家計」はその国の居住者であるか否かは関係ない。

②「(国民)家計最終消費支出」は、ある国の領土内に「居住している家計」の消費支出が含まれる。この「居住している家計」がどこの国で行った消費支出かは関係ない。

ということになります。なお、何もつけずに「家計最終消費支出」と書くと、これは「国民家計最終消費支出」ということになります。

 ※普通、支出側の項目は「国内」概念が多いのですが、「家計最終消費支出」だけは、珍しく「国民」概念なのです。

ここでまた「居住者」という概念が出てきました。これについては少し長くなるので、次回にご説明したいと思います。

2011年2月26日 (土)

直接購入

このページでは、いつも、思いつくままに、SNAのことを中心に書いているんですけど、さすがに、ネタがなくてつらいときもあります。

不思議なもので、書きたいと思うネタがあるときは、いくつも書ききれないくらい思いついたり、面白い質問が相次ぐのですが、一旦尽きると、面白い質問までも来なくなるもので、書くネタを考えるのに苦労します。

ここしばらくネタがなくて苦しんでいたんですが、先輩から良いネタをいただきまして、今回はそれについて考えてみようと思っています。

その内容は、

○最近、中国からの観光客が増えていて、しかも、その観光客は日本でたくさん日用品を買っているけど、これって、民間最終消費支出を増やすんでしょうか?

というものです。これは、時事ネタでありながら、しかも、SNAの居住者概念にも触れる、ものすごく面白そうなテーマだと思います。ですので、いろいろと脱線しながらも、このあたりについて考えてみたいと思います。

まず、こういった海外旅行における買い物はタイトルにもなっている「直接購入」というのですが、この直接購入は、実は輸出や輸入に入るのです。

丁寧に説明すると、日本人(「居住者」の話につながってくるので、この言葉も厳密には微妙なんですけど、とりあえず分かりやすさのため『日本人』としておきます)が海外旅行に行って、現地で財やサービスを買った場合は日本のGDPにおいては「輸入」に、外国人(これも然りです)が 日本に海外旅行に来て、日本で財やサービスを買った場合は日本のGDPの「輸出」に入ります。

このあたり、SNAの考え方と、実際の推計方法も絡めて、次回以降もう少し丁寧に説明できたらと思っています。

2011年2月25日 (金)

ゲタと年度間成長率

最近、某経済雑誌で、ゲタについて書いている記事を見かけました。

非常にゲタについて丁寧に書いていただいていて、とても分かりやすい解説でした。

SNAに何年間もかかわっておられるようないわゆる「玄人」の人たちだけでなく、普通の方(といっても経済雑誌を読む方なので、経済にご興味のある方になるとは思いますが)に、このようなマニアックな話を解説していただけるなんて、なかなかない機会ですから、個人的には非常にうれしいです。

私も以前ゲタについては書いたのですが、確かに、2008年度⇒2009年度、2009年度⇒2010年度と2年続けて四半期では大きな動きをしていますので、逆説的には、ゲタについて説明するには非常に良い年度でもあるともいえるわけです(笑)

(過去の記事はこちらです。)

http://taro-sna.cocolog-nifty.com/blog/2010/05/post-bd73.html

なお、実際に知り合いからも、「今回のリーマンショックとその反動があるまで、ゲタなんて何なのかまじめに考えたこともなかったけど、今回のことで良くわかった」という話を聞いたことがあります。

それはその通りで、2009年度は、各四半期値はほとんどがプラス成長だったのに、ゲタの影響で年度はマイナスとなったという、あまりに典型的すぎる事例となりましたので、ゲタについて無視できない状態になっています。

(今後、教科書とかは、ゲタの例としてこの年度があげられるようになるかもしれませんね(笑))

以前書いた記事では、まだ2009年確報が出る前でしたから、一応、確報を反映した直近QEの季節調整値でみてみましょう。

赤線が2008年度の年度値で、青線が2009年度の年度値です。2009年度においてはQ3以外はプラスなのに、年度値ではマイナスになっており、わかりやすくマイナスのゲタ(つまり赤線と2009Q1の差)が出ていることが分かります。

最後に、この記事で「年度間成長率」という言葉が出ており、日本のGDP統計もこれを作成するべき、というような言葉が出ていました。ただ、年度間成長率って、前年度の最終四半期(つまり前年度の1-3月期)から当年度の最終四半期(つまり今年度の1-3月期)の変化率ってことですから、QEでは、それぞれの実額が出ているんですから、それを割ればいいだけですし、そもそも、QEにおける1-3月期の前年同期比を見ればいいだけなのでは?って思ってしまいました。

2

2011年2月24日 (木)

10-12月期1次QE(6)

さて、最後に2010(平成22)暦年の数字が入りましたので、その話と、ある意味、今回の四半期値よりも注目を集めた中国との比較です。

2010暦年については、実質は3.9%、名目は1.8%でして、いずれも3暦年ぶりのプラスです。リーマンショックを抜けてみたら、結構なプラスだったということでしょうか。

実質のプラス寄与項目は、輸出と民間最終消費支出でした。振り返ってみると、このいずれもが、10-12月期にマイナスになったのですが、それまではリーマンショック以降ずっとプラスで、日本経済をけん引してくれていたともいえるのではないでしょうか。それが、ついにマイナス突入ということで、リーマンショック後の回復期も、一つの区切りを迎えたのかななどとと、なんとなく感慨深いものもあります(笑)

※本当に、私が担当してからのQEは、このリーマンショックの影響に振り回され続けてきたという印象です。

続いて中国との比較です。

2010暦年の日本の名目GDPのドル換算は、5兆4742億ドルでした。一方、中国は、中国の国家統計局が公表した39兆7983億円をドル換算した5兆8786億ドルとなります。ですので、中国の方が、約4000億ドルほど上になりました。

一年前から、今か今かと言われ続けてきましたが、ついに、ちゃんと数字で比較することができました。これも長かったです。QEの公表のたびに言われ続け、一年経ちましたが、ようやくこの中国比較の質問からも解放されます(笑)

あとは、ゲタと季節調整についても少しだけ。

ゲタは実質で1.9%、名目で1.5%と、前回からほとんど変わっていません。ただ、季節調整の結果、10-12月期が押し上げられる代わりに、7-9月期や4-6月期が押し下げられ、過去の期については、10-12月期以外は大体が下方改定になっています。季節調整も相変わらず悩ましいです。

ということで、盛りだくさんでしたが、今回のQEはこんなところです。

2011年2月20日 (日)

10-12月期1次QE(5)

次は公需です。

政府最終消費支出は実質前期比0.2%のプラスでした。一方、公的固定資本形成は▲5.8%のマイナスでした。実際に建設総合統計でも大きく落ちてきており、このマイナスが大きかったので、公需は▲0.7%、寄与度で▲0.2%でした。

民需と公需を合計すると、内需は実質前期比寄与度で▲0.2%でした。

つづいて外需です。

これは、実質前期比寄与度が▲0.1%とついにマイナスになりました。輸出は徐々に鈍化気味でしたが、▲0.7%とマイナスとなりましたが、一方で、輸入も▲0.1%と同じくマイナスでした。ただ、輸出のマイナスの方が大きく、外需寄与度としてはマイナスとなってしまいました。

輸出のマイナスの要因は、船舶や自動車、電子通信機器(集積回路)などになります。一方で、輸入については、非鉄金属の精錬やたばこなどがマイナスとなっています。通関統計を見ると、輸出は、特にヨーロッパ向けが落ち込んでおり、輸入については、全般的に落ち込んでいるようです。

引き続きデフレーターについてです。

GDPデフレーターは、季節調整済系列の前期比では▲0.4%でした。一方で、原系列の前年同期比では▲1.6%で、7-9月期の▲2.1%よりも下げ幅を縮小していますので、その点は注意が必要かもしれません。

2011年2月18日 (金)

10-12月期1次QE(4)

引き続き内需ですが、次は民間企業設備です。

実質前期比で0.9%でした。5期連続のプラスです。

いつも書いてますが、2次QEで四半期別法人企業統計調査が入るので、最終的にどうなるか分かりません。法人企業統計がそれほどぶれないことを祈っているのですが。。。

なお、一点触れておいた方がよいと思うのは、1次QEでは、供給側の統計のみで作られるということは、よく言われているのでご存知かと思うのですが、その供給側の統計から作られる推計値は「総固定資本形成」でして公的固定資本形成も含むものです。今季は、この「総固定資本形成」自体は▲0.2%とマイナスでした。ただ、公的固定資本形成が▲5.8%と大きくマイナスでしたので、その残差である民間企業設備は0.9%とプラスでした。

続いて在庫品増加です。

実質0.2%でした。ご存知のとおり、1次QEでは、原材料在庫と仕掛品在庫が時系列モデルによる予測値です。前回の2次QEでお知らせしていた原材料在庫と仕掛品在庫の予測値が▲0.1%でして、今回でもこの部分は実はほとんど事前のアナウンスと変わっておりませんで、残りの2つの部分でプラスになったという感じです。

ただ、これだけ民間最終消費支出がマイナスなのですから、在庫が積み増される、又は、取り崩しのスピードが落ちる、というのは違和感はないのではないかと思うのですがいかがでしょうか???

民間住宅投資は、3.0%と大きくプラスになってきました。建築着工統計も回復していましたので、それが進捗ベースで出てきた感じです。

あれやこれやで、結構プラス項目もあったのですが、民間最終消費支出の▲0.7%が大きく、民需はトントンの0.0%でした。

2011年2月17日 (木)

10-12月期1次QE(3)

引き続き消費です。

形態別に見てみますと、

(実質季節調整済前期比)

耐久財     3.1%

半耐久財 ▲0.4%

非耐久財 ▲3.6%

サービス ▲0.2%

という形です。一目見て、非耐久財の下落が大きいことがわかります。比較のために名目の形態別も見てみますと、

(名目季節調整済前期比)

耐久財   ▲3.2%

半耐久財 ▲0.7%

非耐久財 ▲2.3%

サービス ▲0.1%

となります。

これだけでもいくつか面白いことが見て取れます。注目の1点目は、耐久財の名実が逆転しているということです。これはご想像のとおり、テレビなどの価格が常に低下している品目の影響です。今季は、耐久財の中でもそれほど価格低下がない自動車はマイナス要因でしたが、一方で価格が常に低下しているテレビがプラス要因でしたので、実質の伸びがかなり強く出ています。これは、ヘドニックを採用している以上仕方がないのかなとも思ってしまいますが、CPIもSNAも基準年から相当離れてしまっていることも影響しているのかもしれません。

なお、ヘドニックについては、こちらをご参照ください。(総務省統計局のHP)

http://www.stat.go.jp/data/cpi/4-1.htm#Q19

少し触れてしまいましたが、耐久財については、自動車はマイナス要因でしたが、一方でテレビはプラスでした。エコポイントの発行ポイント数半減や、対象商品の縮小などが予定されていたことから、駆け込み需要があったのではないかと言われているようです。QEの推計ではそういうところまで細かくはわかりませんが、実際そうだったのかもしれません。

そして、注目の2点目は、非耐久財の名目の落ち幅が小さいことです。これは、想像のとおり、たばこの価格改定(たばこ税の増税)の影響だと考えられます。10月から、たばこ一本当たり約3.5円上がったと報道されていますが、名目でもマイナス要因なのに、これだけ価格要因が上昇してしまうと、実質ではより低くなってしまいます。

あとは、サービスはマイナスなのですが、レクレーション及びスポーツサービス(ゴルフ場やスポーツジムなど)、飲食サービス、宿泊施設サービスなどはプラス要因でした。こういった娯楽関係のサービスがプラスだったというのは、今年のクリスマスは結構、みんな遊んでいたということなのだろうか?などと考えてしまいます(笑)

2011年2月16日 (水)

10-12月期1次QE(2)

もう少し個別に見ていきます。

まずは内需です。

民間最終消費支出については、季節調整済前期比は実質で▲0.7%でした。民間消費はウェートが大きいので、これだけマイナスになると、寄与度でも▲0.4%も行ってしまいます。

マイナスは、4-6月期以来の3四半期ぶりなんですが、4-6月期は▲0.0%と微妙なところですから、その前のマイナスを見るとこれまた2009年の1-3月期の▲1.9%以来です。そう考えると、民間消費は、リーマンショック以降は、本当に順調回復してたんだなと思います。

ところで、ご記憶の良い方は、「4-6月期って、民間消費はマイナスだったっけ?」と疑問に思われたかもしれませんが、7-9月期2次QEまでは、確かにプラスでした。それも0.3%という結構大きなプラスでした。今季▲0.0%とマイナスになったのは、主に季節調整が原因です。10-12月期が低くなったため、季節調整では10-12月期を高くしようという力が働き、その分他の期である7-9月期などが押し下げられたという形です。

形態別でいうと、非耐久財(後程触れますが、「たばこ」が含まれます)の10-12月期の落ち幅が大きい分、7-9月期の改定幅も大きくなっています。

はじめにマイナス要因となった主な品目を上げると、たばこ、自動車といったところです。一方で、テレビはプラス要因となりました。

これについてはいろいろと言われているようですが、形態別の話も含めて、次回もまた民間最終消費支出について書いてみます。

2011年2月15日 (火)

10-12月期1次QE(1)

本日1次QEを公表しました。

http://www.esri.cao.go.jp/jp/sna/toukei.html#qe

10-12月期の実質季節調整済前期比は▲0.3%と5四半期ぶりのマイナスになりました。

たばこや自動車の駆け込み需要の反動があると言われ続けていたので、マイナスになること自体は、あまり驚きはなかったようです。実際に、報道などでも、数字そのものよりも、中国との比較の方が、大きく取り上げられていた印象があります。

内訳を見てみると、内需が▲0.2%、外需が▲0.1%となっており、内外需ともマイナスです。これは2009年の1-3月期、つまり、リーマンショックの真っただ中のとき以来です。ただ、その時とはマイナス幅がまったく違いますが。。。

内需の内訳をみてみますと、マイナスの項目は実は項目数としては少なくて、民間最終消費支出が▲0.7%、公的固定資本形成が▲5.8%、純輸出が寄与度▲0.1%です。輸出も輸入もマイナスだったのですが、輸出のマイナスの方が強くて、純輸出の寄与度がマイナスになっています。

それ以外はすべてプラスですが、大所の民間最終消費支出が大きなマイナスですし、公的固定資本形成のマイナス幅も大きいので、全体ではマイナスとなっています。一応、プラスの項目も見てみると、民間在庫品増加が寄与度0.2%、民間企業設備が0.9%、民間住宅が3.0%、政府最終消費支出が0.2%というところです。

名目は、季節調整済前期比で▲0.6%でした。ですので、相変わらず名実逆転でして、GDPデフレーター(季節調整系列)の前期比は▲0.4%で、3四半期連続のマイナスです。ただ、あとで触れようと思っていますが、GDPデフレーター(原系列)では、7-9月期の前年同期比が▲2.1%だったのに対し、10-12月期は▲1.6%と下げ幅を縮小していることからも、単純にデフレーターが下落傾向にあると言い切っていいのかは要注意かという気もします。デフレーター(季節調整系列)の前期比は非常にブレるので。。。

個別の話は追々と思っていますが、民間最終消費支出のマイナスの要因は、たばこと自動車です。10-12月期に、どちらも駆け込み需要があったのでは?と言われていましたが、その反動の影響が出ているのかもしれません。

1-3月期は再び回復するなどという予測が多く出ているようですが、実際はどうなるのでしょうか???予測についてのコメント、例によって差し控えさせていただくこととして、次回以降に、個別の中身についても触れようと思います。

2011年2月12日 (土)

CPIと家計消費支出デフレーター

GDPデフレーターとCPIの違いについてはよく聞かれますし、これについては、以前もご説明したとおり、総務省統計局のHPでちゃんとした解説が書かれています。

http://www.stat.go.jp/data/cpi/4-1.htm#Q07

ここでは、GDPデフレーターについては、輸出入や設備投資などのデフレーターも影響してくるので異なるが、家計消費支出デフレーターとCPIであれば同じような動きをする、と書いてあります。

ただ、この2つは確かに動きは近いんですが、前年同期比の水準そのものに結構ズレがあります。この原因はなんだろうか?というのが、今回のテーマです。

いろいろと考えたのですが、見ていると、CPIよりもSNAの家計消費支出デフレーターの方が低いようなのです。

(実際に、上記のURLのページでも、CPIよりもSNAの家計消費支出デフレーターの前年同期比の方が下になっています。)

そうすると、やはりパーシェとラスパイレスの違いなのでは?というような気がしてきます。つまり、CPIは基準年でウェートを固定(厳密には中間年で一部変えてますが)しているので、価格が下がっているもののウェートが増えないため、上方バイアスがある、つまり高めに出る。一方、SNAはパーシェですから、直近のウェートで比較するため、下方バイアスがある、ということです。

それを証明するために何かいい方法はないかと考えたのですが、CPIで、参考系列として連鎖指数を出していますので、それと比較してみましょう。

ご存じのとおり、連鎖方式では、ウェートを常に前年にするため、この上方バイアスが少し解消されることになります。

この前公表された12月分のCPIでみてみましょう。

帰属計算である帰属家賃を除くため、「帰属家賃及び生鮮食品除く」の系列で比較すると、

 固定 10月 -0.6

    11月 -0.5

    12月 -0.5

 連鎖 10月 -1.1

    11月 -1.0

    12月 -0.9

でした。

(実際の数値は、総務省統計局のHPをご覧ください。http://www.stat.go.jp/data/cpi/)

明らかに、連鎖の方が下方に行きます。つまり、CPIが高めに出ることの一要因として、ラスパイレス方式であることを挙げることができるのではないかと思います。

2011年2月 9日 (水)

和訳

国内『純』生産の質問をいただいたときに、合わせてまた面白いことを聞かれたのですが、

Gross(総) Domestic(国内) Products(生産)

なのに、なぜ「国内--生産」の順で和訳されているのか?という非常に面白い質問を受けました。

正直、この訳語が、あまりに過去からすぎてわからないというのが本当のところです。

以前、ここでも書きましたが、昔はGDPではなくGNPGross National Products)がメインで使われていたのですが、このときも、

Gross(総) National(国民) Products(生産)

なのに「国民--生産」でした。

ご質問に対する回答としては、あまり不確かなことをお答えすることもできないので、正直に、「あまりに昔からすぎて、わかりません」とお答えしました。

ただ、このブログであれば、少しくらい想像をたくましくして書いても許されるかなと思って、私の想像を書いてみますと、恐らく「総国民生産」だと、「『総国民』の生産」というよう切られて、『生産』が『総』(つまり、減耗を除いていない)なのだということが分かりにくくなるからじゃないかと思ってしまいました。

もしかしたら、「国内総生産」であれば、「総国内生産」といっても、『総国内』って意味が分かりにくいから、英語の順だったかもしれませんけど、「国民総生産」だと『総国民』って別の意味になってしまうような懸念があります。

そして、「GDP」のときも「GNP」の伝統として、「国内--生産」の順になったのではないかと。。。

最後に、訳語関係で私が逆に教えてほしいことがあります。それは、現在は「純借入(+)/純貸出(-)」となっている、「ISバランス」についてなのですが、過去「貯蓄投資差額」と言っていました。なんで、「I(投資)S(貯蓄)バランス」なのに、「貯蓄投資差額」だったのか、どれだけ考えてもまったく分からないのです(笑)

でも、過去から使われている訳語には、こういうものがまだ結構あるのではないかと思います。

日々、その言葉に慣れてしまうと、当たり前と思ってしまうのですが、こうやって改めて聞かれてみると分からないことってたくさんあるんだなぁと。。。

2011年2月 7日 (月)

国内「純」生産

SNAでは、「総(gross)」概念と「純(net)」の概念があります。これの違いは、「固定資本減耗」を含むかどうかです。

この前、一般に「国内純生産(NDP)」ではなく、「国内総生産(GDP)」を使うのはなぜかという質問を受けました。

今まで、まじめに考えたこともなかったので、相当、戸惑いましたが、直感的には「固定資本減耗」の比較可能性が信用されていないということなのだろうなと思いました。

念のため、93SNAを調べてみたところ、次のような記述になっていました。

2176.観念的には、付加価値概念は、固定資本減耗に対応するものを排除するべきである。実際、後者は新しく創出された価値ではなく、それ以前に作られた固定資産が生産プロセスにおいて使用された場合の、その資産価値の減少である。したがって理論的には、付加価値は純概念である。

2177.この結論は国内生産物に対しても当てはまる。理論上は、国内生産物は純概念であるべきである。しかしながら、GDPが様々な理由で広く使われている。企業会計で計上される固定資産の減価償却は、一般的にはSNA概念の要求には合わない。固定資本減耗の計算は、統計担当者が固定資産ストックの現在価値、様々なタイプの資産の寿命、減価償却のパターン、等を推計することを必要とする。すべての国がそのような計算をするわけではないし、もしそうする場合でも、方式の違いがあり得る(ある国は、不適切でも企業データを使用する、等)。したがって、総額値の方が利用可能なことが多いか、あるいは純額値よりも早く利用可能であり、一般的には、各国間の比較可能性がより大きいと考えられている。ゆえに、GDPは、たとえ概念的には国内純生産よりも適切性が劣るとはいえ、広く利用されるのである。(略)

これを見ると、

①固定資本減耗は、財務諸表に計上される原価償却とは異なり、いろいろな手順を加えて推計する必要がある。

②そのため、固定資本減耗は、各国で推計方法や概念が異なる可能性が高く、比較可能性が低い。

③そのような、固定資本減耗を控除した「国内純生産」よりも「国内総生産」の方が、まだ比較可能性が高いと考えられている。

ということから、『純』は使われていないということになります。

2011年2月 4日 (金)

CPIとGDPデフレーター(2)

引き続き、

http://www.stat.go.jp/data/cpi/4-1.htm#Q07

を参考にして。

「消費者物価指数はラスパイレス算式、GDPデフレーターはパーシェ算式を採用しています。」ということですが、算式が違うのも大きな違いです。

この2つの違いについては、以前書いたことがあるかと思いますが、ラスパイレスは上方バイアスがあり、パーシェは下方バイアスがあります。

http://taro-sna.cocolog-nifty.com/blog/2010/07/post-eb60.html

この違いのほかに、「GDPデフレーターはできるだけ指数算出に伴うバイアスを軽減することができるように基準年を更新する連鎖方式により作成されています。」とありますように、GDPデフレーターは連鎖方式を導入しています。CPIも連鎖を参考系列で出していますが、本系列は連鎖ではないです。

連鎖ですと、毎年基準年を変えていることになりますから、当然これも異なる要因になります。

最後に感想的な話なのですが、こうやって考えてみると、もともと目的が違うんだから、方法も異なって当然なのではないか、というように、統計メーカーからすると考えてしまうわけです。

2011年2月 2日 (水)

CPIとGDPデフレーター

これもまたよく聞かれることとして、GDPデフレーターとCPIは何が違うのか、という質問があります。

何が違うんだ、と言われても、そもそもやってることが違うんだから、説明しがたいのですが、ここでは大きな特徴をいくつか書いて見れればと思っております。

まず、前提として、よいHPがあったので、それをリンクします。

http://www.stat.go.jp/data/cpi/4-1.htm#Q07

総務省のCPIのQ&Aなのですが、ほとんどのトピックを網羅しています。

まず、「消費者物価指数は家計消費に対象を限定している一方で、GDPデフレーターは家計消費の他に設備投資なども対象となっています。」とあります。その通りで、GDPデフレーターは、設備投資どころか、政府最終消費支出、民間在庫品増加などの影響も受けますから、CPIとは当然動きが異なってきます。

そして、GDPデフレーターでは、当然のことながら輸出入も入ってきますので、その影響もあります。それに関する部分が、「石油製品などの輸入品価格が上昇している中では、消費者物価指数はその分上昇するのに対し、GDPデフレーターでは製品価格にすべて転嫁されない限り、下落に働くため、両者の乖離幅は大きくなります。」というところになります。

何をいっているのかわかりにくいかもしれません。ただ、これは、以前も一度書いたことがあるのですが、『輸入デフレーターの上昇は、GDPデフレーターの下落に影響する』ということを書いているわけです。詳しくは以下のURLをご参照ください。

http://taro-sna.cocolog-nifty.com/blog/2010/05/post-1023.html

ここまでが、Q&Aに出ている、範囲の違いの話なのですが、これに加えて、CPIとGDPデフレーターでは、家計消費の中でも、品目の構成に違いがあるという点もあると思います。また、GDPデフレーターは、毎四半期ごとに実際の品目の構成が変わってしまいますが、CPIは、構成項目は変わりません。

ただそれは、CPIは「消費者物価指数は物価そのものの変動を測定することを目的とするため、世帯の生活様式や嗜好の変化などに起因する購入商品の種類、品質又は数量の変化に伴う生活費の変動を測定するものではない」わけですから、それは当然だと思います。

単純に水準がどのように動いているかを比較するものですから、そんなに頻繁に構成項目を変えるのは正しいとは言えません。

一方で、GDPデフレーターは、各四半期の消費実態を反映したGDPを求め、それからインプリシットに求められるものですから、それは変わって当然だと思います。

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