« 2010年12月 | トップページ | 2011年2月 »

2011年1月

2011年1月29日 (土)

純借入(+)/純貸出(-)(4)

最後に、貯蓄(S)のところで、実際のSNAの概念とは異なる説明をしてしまったので、その点だけの補足と、公表資料での確認をしてみたいと思います。

今までの説明では、Sを、「国内総所得(GDI)」からスタートして消費支出を控除していました。実際のSNAでは、この所得のスタートは、可処分所得になります。可処分所得とGDIで何が違うかというと、財産所得の受取・支払があるのと、各種の移転(経常と資本があります。厳密には、税金も移転の一種です)の受取・支払が調整されている点になります。

ですので、前回までで書いてきたSは、SNAで公表している貯蓄とはわずかですが異なりますのでご注意ください。

(ただ、海外部門とのやり取りも含めて考えると、結局のところ、一国全体(海外取引を含む)では、この合計は一致するので、公表している「純借入(+)/純貸出(-)」では、先ほどの恒等関係は成り立ちます。)

そして、我が国の国民経済計算年報では、「純借入(+)/純貸出(-)」の制度部門別表があります。具体的には付表19になります。

http://www.esri.cao.go.jp/jp/sna/h21-kaku/23annual-report-j.html

これを見ていただければ、一般政府と海外部門とそれ以外(すなわち民間部門)の「純借入(+)/純貸出(-)」の合計がゼロになるのがお分かりいただけるかと思います。

(技術的な話ですが、統計上の不突合も合計しないとゼロになりません。これは、先ほどのSを求める際のGDPが生産側を用いており、一方でIを求める際のGDPは支出側を用いているためで、そのため、生産側と支出側のズレが出てしまうことが原因です。不突合というのは、こんなところにも影響してしまいます。。。)

2011年1月27日 (木)

純借入(+)/純貸出(-)(3)

では、よく言われている、

(S I) = (G - T) (Ex - Im) …*

と、前回導出した、

(SPIP)= (SGIG) (ImEx) …③

はどういう関係にあるのでしょうか。

そこで、ある2つの仮定を置いてみます。

一つ目は、仮定というより用語の定義なのですが、SIはすべて民間のものだけで、政府の消費や公的の総資本形成は入らないと考えます。その代り、政府の消費と総資本形成はすべてGに入っていると考えます。

二つ目は、政府の消費支出とT(恐らく税金という仮定だと思うのですが)が等しいと仮定してみます。つまり、政府の経常経費は、その年の税金で完全に賄われている、ということです。ただし、総資本形成については、まったく税金が使われていないと考えるということです。

二つ目の仮定は実は重要で、CGTであることと同時に、この場合、政府の貯蓄であるSG=0になると言っていることになります。また、一つ目の仮定から、GCGIGですから、これらをすべて、*の式に入れてみます。

すると、

(SI) = (CGIGCGSG) (EX - IM)=‐(SGIG) (ImEx)

となりますから、③の式と同じになります。

つまり、*の式は、③の式に一定の仮定をおいた時のものということができるかと思います。

2011年1月26日 (水)

純借入(+)/純貸出(-)(2)

まず、一国全体のGDP(支出側)は、以下のようになります。

GDP=民間最終消費支出+民間住宅投資+民間企業設備+民間在庫品増加

 +政府最終消費支出+公的固定資本形成+公的在庫品増加

+輸出-輸入

ここで、簡便的に、支出項目を、消費支出と総資本形成(固定資本形成と在庫品増加)だけに分けて考えてみますと、

GDP=民間最終消費支出(CP)+民間総資本形成(IP)

   +政府最終消費支出(CG)+公的総資本形成(IG)

+輸出(Ex)-輸入(Im) …①

となります。アルファベットのところは、総資本形成のところはちょっと違うのですが、まあ、わかりやすくIPIGとしておきます。

ここで、所得の概念から考えていきたいのですが、とりあえず、国内総所得(GDI)を考えてみます。ちなみに、名目の場合、これはGDPと等しくなります。

所得は、一国全体でみれば、消費支出に使われ、余ったものは貯蓄となります。ここで、民間と政府の貯蓄をそれぞれSPSGとしておきます。

(この貯蓄も、本来の貯蓄とは異なるのですが、説明をわかりやすくするために、ざっくりと言っていますので、公表している『貯蓄』とは異なることにご注意ください。)

すると、

GDICPSPCGSG …②

になります。ここで、名目の場合はGDPGDIはイコールですから、①と②より、

CPSPCGSG= CPIPCGIGExIm

(SPIP)= (SGIG) (ImEx) …③

となります。

ここで、あえて、概念が違うと言いながらISを使っていた理由がお分かりいただけるかと思うのですが、ISバランスを部門別にみると、政府のISバランスの符号を逆にしたものと、外需の符号を逆にしたものの合計が、民間部門のISバランスになるということがわかります。

これが私なりに考えた、ISバランスの式になります。

2011年1月24日 (月)

純借入(+)/純貸出(-)

マクロ経済学では、民間部門のISバランス(SNAでいうと「純貸出(+)/純借入(-)」になります。)

と、政府部門、海外部門のISバランスの関係式が成立するとされています。(実は、私は、マクロはあまりやったことがなかったので、聞いたことはありましたけど、あまり真剣に考えたこともありませんでした。)

最近、これについて質問をいただきまして、その時に勉強したのですが、これについて、通常は、以下のような説明をしているようです。

*************

GDP=消費+投資+政府+輸出-輸入

より

Y C + I + G + EX - IM

所得=消費+税金+貯蓄

より

Y = C + T + S

なので、

(S I) = (G - T) (Ex - Im)

となる。これは、左辺が民間、右辺の第1項が政府、第2項が海外

*************

ということのようです。

これをみて、何を意味しているのか、私も真剣に悩んでしまい、解読するまでに時間がかかりました。

ですので、私なりに、この件についての考え方を書いてみたいと思います。

2011年1月21日 (金)

ODA(2)

続いて、本題の、二国間協力についてです。

前回書きました通り、二国間協力は、無償資金協力、技術協力、有償資金協力に分かれます。この類型ごとに、扱いを考えてみたいと思います。

まず、無償資金協力です。

無償資金協力は、内容として、返してもらう必要がないお金を、相手国に渡すものです。渡し切りで、対価を伴いませんから、まさしく移転経費です。

そして、ここは2つに分かれるのですが、その用途が経常的経費に使われるものであれば、経常移転に、資本形成に使われるものであれば資本移転になります。

国際収支統計の中に、経常移転収支の公的のものの中に「無償資金協力」という項目、そして、資本移転の公的のものの中に同じく「無償資金協力」という項目がありますので、これらが当てはまります。

次に有償資金協力です。

これは、返してもらうお金を、低利(または無利子)で貸し付けるものですから、単純に、海外に対する貸出になりますから、金融取引の中で「貸出」が増えるということになります。

最後に、技術協力ですが、これも、いろいろあるようですが、人を派遣したりして、現地でいろいろ作業をしたりすることなどだと考えて、これも、経常移転に入ります。

2011年1月20日 (木)

ODA

またまた、マニアックでニッチなところについての話です。

政府開発援助について、SNAでどのように記述されるのか、という質問を、複数の人から質問を受けました。

なかなかマニアックな話で、しかも、海外への移転の話になると、国際収支統計との関連も出てくる込み入った話なのですが、少し簡潔にまとめてみます。

まず、はじめに書いておくこととして、海外とのやり取りは、基本的に国際収支統計を用いています。この点は、以前に

http://taro-sna.cocolog-nifty.com/blog/2010/11/post-c4ed.html

でも書きましたが、国際収支統計は、基本的にSNAの体系と整合性をとって作成されていますので、SNAに利用するにも微修正ですみます。

この前提のうえで、具体的な中身に入りますと、ODAといってもいろいろな種類があるようなのですが、以下は外務省のHPでして、

http://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/oda/nyumon/oda/05.html

これを見るといくつかの類型に分かれるみたいです。

まず、開発途上国に対して直接援助を実施する二国間援助と国際機関を通じた多国間援助があるそうで、国際機関を通じたということですので、これは国際機関に対する拠出金などいうイメージでしょうか。そして、これ以外に、二国間援助には、無償資金協力、技術協力、有償資金協力があるということですので、これらの類型別に考えてみます。

まず、国際機関への拠出ですが、海外に対する経常移転になります。具体的には、国際収支統計で、経常移転収支のうち公的のものがあるのですが、この中に、「国際機関分担金等」という項目があり、これが当てはまります。

そして、この金額がそのまま、海外への経常移転ということになりますので、はじめの、国際機関への拠出は、「経常移転(支払)」ということになります。

2011年1月17日 (月)

刺激

最近、私のいる部に、民間企業や某中央銀行から、出向で来ていただいている方(しかも、QEの分析や予測をしていた人!)が増えてきていて、その方々と話す機会も多くなり、非常に刺激を受けています。

やっぱり、こういう内向きな仕事をする組織で、閉じこもってばかりだとだめだなぁと、日々反省しています。

それで、いろいろとお話をさせていただき、やはり感じるのが、ユーザーや予想する立場とメーカーの立場では、考えることや重視することが微妙に違うんだろうな、ということと、そうは言っても、実際に同じようなことをやっているので、ものすごくマニアックな話で共感できたりとか、非常に面白いです。

民間のエコノミスト(だけではないのですが、以下ではとりあえずそう称することとします)の人たちは、やっぱり、分析のスキルとか、季節調整のノウハウとかは、ものすごく高くて、私のいる部よりもずっとそちらの面では能力が高いと思います。ただ、官庁のように、人的リソースや時間をかけて、丁寧にはできるはずもないので、違いはその部分だけのような気がしています。

あと、一番違っているな、と思うのは、やっぱり、民間のエコノミストの人たちは、景気判断のために使っているため、支出系列、それもQEしか気にしていないんだなということです。

一方で、メーカーの側としては、支出系列だけではなく、所得支出勘定(可処分所得、貯蓄など)や資本調達勘定(設備投資、ISバランスなど)も重視せざるを得ず(というのは、こちらはこちらで、分析材料として使いたがる学者さんもいるので)、さらに、一般政府のISバランスやPBなどは、これはこれでまた需要があり(こちらも、一部の学者さんや官庁内でもヘビーユーザーがいます(笑))、『支出系列だけやってるわけじゃない』という感じなのです。

現状では、メーカー側は、この2つの性質の違う(それでいてどちらも注目されて、どちらも重要な)ものを同じ担当が見ているので、民間エコノミストの方々と比べると、やっぱり、軽重のおき方がちょっと違うなぁと思ってしまうのです。さらに、景気判断や分析はしていないので、そちらがメインの民間エコノミストの方々とは、この面でも意識にズレがあるような気がしました。

昔に比べて、特に一般政府関係のデータの注目度が高まっているということがあるのかもしれませんが、そうだとしたら、今の体制で、一人で両方見ているというのは、そろそろ無理が来ているのかもしれないなぁ、という気もしています。

私は、SNAは、各国比較できる膨大な勘定体系であり、大切な「公共財」だと思っていますから、いろいろな面で利用してもらえるというのはうれしいことですし、むしろ、まだまだ宝は埋まっているので、もっと利用していただきたいと思っているくらいです。ただ、メーカー側も、ユーザーのニーズに合わせて、体制をあわせていく必要があるんだろうなぁ、と考えさせられました。

いずれにしても、私は、この大切な「公共財」を、役人生活の中の短い期間とはいえ「お預かりしている」立場だと思っていますので、せめて自分が「お預かりしている」期間は、この「公共財」の価値を損なうことなく、むしろ可能であれば、少しでも高めることができれば良いなぁと考えて、日々精進している(つもり)ですので、民間エコノミストの方々も、いろいろウザイことをお伺いするかもしれませんが、お邪魔でない範囲で、お付き合いください。

2011年1月15日 (土)

不突合(3)

前回までで、コモディティー・フロー法と付加価値法についての説明をしました。これを元にして、なんでズレが出るのかについて考えてみたいと思います。

まず、コモディティー・フロー法では、国内総供給を個別の需要項目に配分します。

産出から在庫品増加を控除すると出荷となり、出荷に輸出入を調整すると、国内総供給となりますから、すなわち、

 産出 - 在庫品増加 + 輸入 - 輸出 = 国内総供給

となります。で、国内総供給を各需要項目にばら撒くのが、コモディティー・フロー法ですから、

 産出 - 在庫品増加 + 輸入 - 輸出

= 中間消費 + 最終消費支出 +総固定資本形成

となります。

※これは、マージンや在庫品増加の扱いが厳密には一部違うのですが、分かりやすさを重視して簡便的に書いていますので、ご注意ください。

一方、付加価値法は、

 産出 - 中間投入 = 付加価値(GDP(生産側))

でした。

ここで、産出はコモディティー・フロー法、付加価値法ともに同じですので、

 産出 

 = 中間消費 +最終消費支出 +総固定資本形成 +在庫品増加 +輸出 -輸入

〔支出側〕

 = 中間投入 +付加価値(GDP(生産側))             〔生産側〕

となります。ちなみに、一国全体では、中間消費と中間投入は等しくなりますから、

 産出 -中間消費(=中間投入) = 付加価値(GDP(支出側))

= 最終消費支出 +総固定資本形成 +在庫品増加 +輸出 -輸入

というよく見る式になります。

ここで、生産側と支出側を比べてみると、

 付加価値(GDP(生産側)) = 産出 -中間投入

 付加価値(GDP(支出側)) = 産出 -中間消費

ですから、この2つの間でズレがあるとしたら、その原因はどこになるのでしょうか?産出は同じものを用いているので、原因としては、中間投入と中間消費に統計上のズレが出ているということになります。

中間消費、中間投入の配分は、品目ごと、産業ごとに細かくやっているので、その品目ごとの細かい積み上げが、どうしても全体でズレを生じさせてしまうというのが、不突合の主な原因となっているのです。

2011年1月14日 (金)

不突合(2)

前回の続きで、「統計上の不突合」を考える前提として、2つの推計方法を考えてみたいと思います。

前回引用した用語解説では、「支出系列を推計する際のコモディティー・フロー法」という言葉が出てきます。コモディティー・フロー法は、支出系列を求める方法になっているのですが、簡単な考え方は、

○まず、一国内で、供給される財、サービスを捉えよう。(国内総供給)

○その国内総供給は、家計の最終消費なり、企業の生産のための中間消費なり、誰かの設備投資に使われるはずだ。

○それであれば、その配分の割合がわかれば、それを用いて、「国内総供給」を求めてしまえば、民間最終消費や中間消費、設備投資が求められる。

というものです。つまり、一国内における「総供給」を、各需要項目にばら撒くことで、GDPを求めてしまおうということです。

そして、「国内総供給」を求めるためには、一国全体の「出荷」を求め、それに、「輸入」を加え、「輸出」を控除してやる必要があります。ただ、「出荷」については、相当多くの事業所に調査を行っている「工業統計」等から求めることができ、「輸入」と「輸出」については、日本銀行がやっている「国際収支統計」で、全て捉えられますから、実は、この部分は暦年ベースでは求めることができます。

そして、配分の比率については、5年に1回、「産業連関表」が作られており、その比率を用いることができます。

こうして、コモディティー・フロー法で、GDPを求めることができます。

※厳密には、在庫とマージンがありますので、正確ではありませんが、大まかにいってしまうとこういうことになります。

一方で、「生産系列及び分配系列を推計する際の付加価値法」という方を考えて見ます。こちらは、生産系列の推計方法なのですが、簡単な考え方は、

○まず、一国全体で行われる生産を捉えよう。(産出)

○その産出から、産出のために使われた「中間投入」を控除すれば、それは、「国内総生産(GDP)」になるはずだ。

というものです。ちなみに、「産出」‐「中間投入」=「国内総生産(GDP)」というのは、実は、GDPの定義そのままなので、「何でそうなるんだ?」と聞かれても困ります。

なお、このことからも、国内総生産は生産側の概念であるということがお分かりいただけると思います。

さて、「産出」ですが、これは、「出荷」に「在庫品増加」を加えたものですので、こちらも簡単に求めることができます。そして、産出に対する中間投入の比率については、これも、5年に1回、「産業連関表」が作られており、その比率を用いることができます。

こうして、付加価値法で、GDPを求めることができます。

2011年1月13日 (木)

不突合

今回は、少し技術的でマニアックな話をしてみます。

それは、「統計上の不突合」というものについてです。

この点は、実は、統計メーカーとしては、あまり話したくないので、あえて避けてきた面もあるのです。というのは、やむをえないものであるとはいえ、やはり不突合は、突合してないわけですから、説明しずらいわけです。

それでも、SNAの理解のためには非常によい材料ですので、避けずに説明してみようと思います。

統計上の不突合とは、簡単に言ってしまうと、支出系列と生産系列の差のことです。

三面等価の原則から、支出系列と生産系列は「概念上」一致するはずなのですが、「実際」に、基礎統計を用いて推計していくと、どうしてもズレが出てきてしまうのです。それは、支出系列と生産系列で推計方法が異なることに起因するのですが、これのことを「統計上の不突合」といいます。

※なお、分配系列は、生産系列と同一の数字を用いているため、分配系列と生産系列ではズレはなく、支出系列と生産系列の間だけにズレがでます。

順序が逆転しますが、まずは、我が国のSNAの解説を見てみましょう。

統計上の不突合(Statistical Discrepancies

国内総生産のように、概念上一致すべきものであっても、支出系列と生産系列では推計上の接近方法が異なっているため、推計値に食い違いが生じることがある。この食い違いを統計上の不突合といい、勘定体系のバランスを図るために表章される。

国民経済計算においては、国内総生産が、支出系列を推計する際のコモディティー・フロー法、生産系列及び分配系列を推計する際の付加価値法という別個の方法で推計されるため、統計上の不突合を生じさせる。(後略)

冒頭に書いてあることは、はじめに説明したとおり、支出系列と生産系列のズレが「統計上の不突合」であるということです。

つづいて、それが、支出系列、生産系列の推計方法の違いに起因すると書いてあるのですが、具体的に、支出側は「コモディティー・フロー法」、生産側は「付加価値法」から推計すると書かれています。

推計方法の細かい話は、長くなりますし分かりにくいですから、できれば立ち入りたくないのですが、「統計上の不突合」を考えるにはやむを得ないので、少し時間をいただいて、簡潔に見ていたいと思います。

2011年1月11日 (火)

連鎖統合の開差について(5)

前回までで、在庫品増加が入る場合は、「前暦年基準」に変換しただけでは、加法整合性は

成立しないということをご説明しました。

ただ、それだと、在庫品増加を統合する項目については、まったく加法整合性を解消することができないということになってしまいます。

ただ、それも面白くないので、無理やりですが、一つのアイディアを考えてみようと思います。

その方法とは、前々回ででてきた、『理論上』のパーシェ型連鎖デフレーター、

1

を無理やり求めて、統合項目については、インプリシットデフレーターではなく、このデフレーターを用いて統合項目を「前歴年基準」に変換するというものです。

ただ、この方法は、計算手順が格段に増え、そのため、例の小数点一桁までの表章によるズレが、より大きくなります。それでも、私が試算した限りでは、大体10億から100億の単位までの開差で収まるようです。

GDPなどは100兆単位ですから、これくらいのズレに開差が収まるのならば、構成割合を計算する一案として、一考の余地はあるのかもしれません。ただ、以前もご説明したとおり、

○連鎖指数の場合、実額にほとんど意味はない。

わけですから、ここまで無理をして、開差をなくすための計算をするのは、コストパフォーマンスはあまり良さそうではありません。。。

2011年1月 7日 (金)

連鎖統合の開差について(4)

前回の続きで、このインプリシットで求めたデフレーターを用いて、前々回行ったような、「前暦年基準」への変換をしようとすると、統合項目については、

1

となります。

一方で、個別項目を「前暦年基準」に変換しようとすると、在庫品増加以外は、

2

在庫品増加は、

3_2

になります。これらを合計すると、

4

ですから、明らかに、統合項目の「前暦年基準」変換とずれてきます。

加法整合性が成立しないというのは、恐らく、このインプリシットデフレーターを用いて計算したからではないかと思います。

2011年1月 5日 (水)

連鎖統合の開差について(3)

では、問題の在庫品増加です。

まず、在庫品増加の連鎖統合はどのようにしているかということからご説明します。

在庫品増加については、表章されている「名目在庫品増加」÷「実質在庫品増加」でデフレーターが求められているわけではありません。「名目在庫品残高」÷「実質在庫品残高」で求めたデフレーターを用いています。そして、在庫については四半期や年度についてはデフレーターが表章されていませんが、「暦年」だけ表章されています。そのデフレーターはこうして求められているのです。

そして、連鎖統合においても、「暦年」の「残高」デフレーターを用いています。すると、次のようなことになります。

まず、在庫の残高デフレーターを、

 在庫デフレーター: 1   

とします。そして、在庫の実質値は2、在庫の名目値は3です。

このとき、j品目を在庫として考えると、統合項目(例えばGDPなどです)の連鎖統合した実質値は、

4

となります。

また、統合項目の、あくまで『理論上』のパーシェ型連鎖デフレーターは、

5

となるはずです。

ところが、統合項目の名目値は、

6

ですから、インプリシットで、「名目値」÷「実質値」を計算すると

7

となってしまいます。これは、明らかに、『理論上』のパーシェ型連鎖デフレーターと一致しません。

これでは、加法整合性は成立しなくなってしまいます。

2011年1月 3日 (月)

連鎖統合の開差について(2)

まず、在庫品増加が入ると話がややこしくなるので、在庫品増加が関係ない、「総固定資本形成」の連鎖統合についてみてみましょう。

「総固定資本形成」は、「民間住宅」、「民間企業設備」、「公的固定資本形成」を合計したものですので、公表値を用いて、この3つの統合値に開差が出ないことを確認してみましょう。

まず、以前から申し上げている通り、

1

すなわち、前暦年価格のパーシェ連鎖デフレーターと当暦年の連鎖実質値の積について、加法整合性が成り立つということになります。

では、まず、前暦年価格のパーシェ連鎖デフレーターを求めましょう。というか公表されているのですが、それだと小数点一桁までなので、今回は、公表されている名目値を実質値で割ってみましょう。

すると、2008暦年のパーシェ型デフレーターは、

民間住宅 1.06963205382288

民間企業設備 0.933728157167308

公的固定資本形成 1.06360771107225

総固定資本形成 0.97993111258062

となります。そして、2009暦年の連鎖実質値は、公表値どおり

民間住宅 13193.2

民間企業設備 71685.7

公的固定資本形成 20462.4

総固定資本形成 104916.4

です。

では、これら2つの積を求めれば良いことになりますが、それを求めると、

民間住宅 14111.8696124961

民間企業設備 66934.9565562485

公的固定資本形成 21763.9664270449

総固定資本形成 102810.844579953

となります。

細かいですが、上の3つ(民間住宅、民間企業設備、公的固定資本形成)を合計すると、

14111.869612496166934.956556248521763.9664270449102810.792595789

となります。総固定資本形成は、102810.844579953で、3項目の合計は102810.792595789ですから、ほぼ一致しますが、微妙に約0.05、つまり5千万円くらいズレがあります。

完全に開差がゼロにならないのは、実際の計算は、小数点3桁(すなわち100万円単位)までで計算して、それを小数点2桁目を四捨五入していることによるもの(のはず)です。

というわけで、(端数処理分だけ、厳密にはわずかに一致しませんが)在庫が無い部分については、加法整合性が成立したことがお分かりいただけたかと思います。

なお、今回は、デフレーターについて、名目÷実質で作りましたが、表章されているデフレーターを用いると、そちらはデフレーターで小数点一桁までしかありませんから、もう少しズレが出ると思います。

2011年1月 1日 (土)

連鎖統合の開差について(1)

以前、連鎖について書いたときに、前年基準に加工してしまえば、加法整合性が成り立つと書きました。

http://taro-sna.cocolog-nifty.com/blog/2010/08/post-98ed.html

その際、実際に公表値で加工してみたら、開差がなくならなかったというコメントをいただきました。

この点については、私の説明が足りない部分も多数あり、また、私自身が誤解していた部分もありました。そこで、少し補足してご説明させていたらければと考えています。

まず、私の説明が足りない部分ですが、この加法整合性の成立については、「暦年値」についてしか成立せず、「年度値」、「四半期値」については成り立ちません。というのは、四半期計数については、Q4と翌年のQ1の間で、基準年が異なることにより、断層が生じてしまうことを避けるため、第4四半期で重複させて断層がないようにつなげているのですが、そうすると、暦年と四半期の合計が一致しなくなるため、比例デントン法を用いて四半期値を作っています。ですので、四半期値については、もはや、この前年基準に加工するということができません。そして、その四半期値を一期ずらして合計している年度値も一致してきません。

ですので、まず、加法整合性の確認は、暦年でないと意味がありません。

(とはいっても、四半期でも年度でも、この方法でやれば相当程度開差は小さくなります。)

もう一つは、私自身が誤解していた部分なのですが、在庫については、残高による暦年平均デフレーターを使っています。つまり、「在庫品増加」の名目÷実質ではなく、「在庫品残高」の名目÷実質なので、在庫品増加の名目と実質を計算しても、デフレーターが一致しないわけです。

そして、ここからが本格的な誤解なのですが、在庫品増加のデフレーターがインプリシットに出せない以上、実は、その上位統合項目(GDPや国内需要など)については、インプリシットに出したデフレーターを用いて、前暦年価格に基準を加工しても、加法整合性は成り立たなくなります。

言葉だけで書いていても分かりにくいと思うので、つい最近公表されたばかりの、21年度確報の21暦年の数字を用いて考えてみたいと思います。

« 2010年12月 | トップページ | 2011年2月 »

無料ブログはココログ
2016年8月
  1 2 3 4 5 6
7 8 9 10 11 12 13
14 15 16 17 18 19 20
21 22 23 24 25 26 27
28 29 30 31