« 2010年10月 | トップページ | 2010年12月 »

2010年11月

2010年11月28日 (日)

海外勘定(4)

続いて金融取引です。

ここは、現金・預金、貸出、借入、株式などの金融資産と負債の増減が記録されます。これは、まず上欄に金融資産の増減が記録され、合計として「資産の変動」が分かります。そして、下欄には負債の変動が出てくるのですが、ここで、バランス項目である「純貸出(+)/純借入(-)(資金過不足)」というものが出てきます。

これは何かと言うと、一国全体での、金融資産の増減額と金融負債の増減額の差です。具体的には、「金融資産の増減額-金融負債の増減額」で求められますので、一国全体で、金融資産がネットでどれだけ動いたのか、というものだと考えていただければ良いと思います。

ここで、前回更新した際の記述を思い出していただきたいのですが、

さて、本題に戻りますと、資本取引では、こういった資本移転の受取と支払が計上されるのですが、まずスタートが、経常取引のバランス項目だった「経常対外収支」でして、これに、受け取った資本移転を加え、支払った資本移転を控除します。こうして求められたのが、「経常対外収支・資本移転による正味試算の変動」でして、これが資本取引のバランス項目になります。

このバランス項目は、名前は長いですが、要は、金融取引以外の取引の結果、一国の(実物)資産がどれだけ動いたのか、ということを表しています。

と記述しました。

海外勘定の経常取引と資本取引のバランス項目は、一国内で実物資産がどれだけ変動したかを表しており、我が国の場合は輸出が多いので、実物資産は減少しています。一方で、その対価として、現金などの金融資産が増えているはずなのですが、それが金融勘定のバランス項目の「純貸出(+)/純借入(-)(資金過不足)」になります。ですので、この両者は一致することとなります。

※実際には、実物取引では、「輸入-輸出」がバランス項目で、金融取引は「資産(輸入?)-負債(輸出?)」がバランス項目なので、符号が逆になっていますので一致するのですが、むしろ、いずれも、「輸入-輸出」で考えたときに、実物資産の変動と金融資産の変動は合計するとゼロだと考えたほうが分かりやすいかも知れません。

そして、良く知られているように、国内の各制度のISバランス(純借入(+)/純貸出(-))を合計すると、経常対外収支(正確には「経常対外収支・資本移転による正味試算の変動」)と一致しますので、一国全体のISバランスの合計は「純貸出(+)/純借入(-)(資金過不足)」とも一致することとなります。

2010年11月27日 (土)

海外勘定(3)

前回は「経常対外収支」は、経常取引の「受取(輸入)-支払(輸入)」で求められるバランス項目であることまで書きました。

で、つぎは、資本取引のところになります。資本取引は、資本移転の受取と支払を記録します。

前回も移転の話はさらっと流してしまったのですが、移転とは、「財貨、サービスまたは資産の見返りなしに財貨、サービスまたは資産を供給する取引」のことでして、ここで「財貨、サービスまたは資産の見返りなし」というところがポイントです。

93SNAの記述では

 8.27.移転は、ある制度単位が、対応物としてその見返りにいかなる財貨、サービスまたは資産をも受け取ることなしに、財貨、サービスまたは資産を他の単位に対して供給する取引として定義される。現金移転は、ある単位が他の単位に対していかなる対応物もなしに行なう通貨または通貨性預金の支払いからなる。現物移転は、やはりいかなる対応物もなしに行なう、現金以外の財貨または資産の所有権の移転か、あるいはサービスの供給からなる。

とされています。

この定義でお分かりいただけますとおり、税金や補助金などは、移転の一類型となります。ただ、ここでは、とりあえず、「経常移転」と「資本移転」の区別がつけばと思うのですが、大雑排に言って、「資産そのものの移転」または「資産の取得(または処分)とリンクがある現金の移転」が資本移転で、それ以外は経常移転になります。(ただ、税とか社会給付などは別項目なので、「その他の経常移転」という項目になっています。)

さて、本題に戻りますと、資本取引では、こういった資本移転の受取と支払が計上されるのですが、まずスタートが、経常取引のバランス項目だった「経常対外収支」でして、これに、受け取った資本移転を加え、支払った資本移転を控除します。こうして求められたのが、「経常対外収支・資本移転による正味試算の変動」でして、これが資本取引のバランス項目になります。

このバランス項目は、名前は長いですが、要は、金融取引以外の取引の結果、一国の(実物)資産がどれだけ動いたのか、ということを表しています。

2010年11月24日 (水)

海外勘定(2)

まず、海外勘定とは何かということからです。

海外勘定は、我が国の居住者と非居住者の間で行われた取引、この取引には、実際の財やサービスの取引や、利子、配当などの財産取引、資本取引、金融取引もあると思うのですが、こういったものを全て捉えて記録する勘定です。

※居住者と非居住者の解説については、こちらを。。。

http://taro-sna.cocolog-nifty.com/blog/2010/08/post-442f.html

この、財やサービスの取引など、資本取引と金融取引以外の取引を経常取引と言い、これは、前述の「国際収支統計」を組み替えて推計しています。

というのも、「国際収支統計」は、IMFがそのマニュアルを作成しており、そのマニュアルに準拠して作られているのですが、このマニュアルは基本的にはSNAと概念が一致していますので、組み換えといっても小幅な組み替えをするだけですみます。

経常取引は、SNAでいうと付表20に出てくるのですが、これを見ると、財やサービス、そして海外で働いた雇用者報酬や、利子、配当、そして、経常移転のやり取りもここに入っていることが分かります。

※経常移転については、また別の機会に書ければと思いますが、ここでは、「設備投資とかに関係しない、お金などの富を一方的に渡す(もしくは受け取る)こと」と考えていただければ。。。

そして、海外との関係で「経常収支」ということばがよく出てきますが、これは、経常取引の輸出と輸入の差になるのですが、SNAでは「経常対外収支」という項目で出てきます。これは、経常取引の受取(輸入)と支払(輸出)のバランス項目でして、つまり、「受取(輸入)-支払(輸出)」で求められます。

日本の場合は、輸出の方が多いので、だいたいいつもマイナスになっています。

2010年11月21日 (日)

海外勘定

また、外部からの問い合わせネタです。

(こういうのは、実は非常に勉強になります。)

内容は、

「海外との取引で、デリバティブ(金融派生商品)は、どこに計上されているのか?」

というものでした。

この答えだけであれば、すぐに終わってしまうのですが、それに関連して、海外取引がSNAではどのよう計上されているのか考えてみたいと思います。

これを通じて、複式記入がどのようになされていて、指標としてよく使われる「経常海外収支」とはどういうものかなどが分かると良いなと。。。

まずは、質問の、デリバティブが海外との取引のどこに含まれるかということの答えですが、現在は、金融取引として計上されています。ですので、年報の付表20の一番下の勘定である、「(3)金融取引」というところになります。

これだけだと、なんで、デリバティブについて質問があったのかまったく分からないと思います。これについては、実は、SNAの海外勘定の基礎統計である、「国際収支統計」(日本銀行が作成)とも関係する話となりますので、追ってということで。。。

2010年11月19日 (金)

7-9月期1次QE(4)

さて、最後に年度の話です。21年度は、▲1.8%と▲1.9%から1%程度上方改定になりました。これは、名目値はほとんど変わっていませんが、デフレーターが結構変わったので、それで実質が上方改定になっています。

項目としては輸入でして、IPI(輸入物価指数)が遡及改定をしています。主に、天然ガスなどの資源価格のようなのですが、これが21年度中については上方改定しており、そのため輸入の実質が下方改定となりました。輸入は控除項目ですから、GDPは上方改定ということになります。

年度の改定に関連したこととして、もうひとつ付け加えると、22年1-3月期が上方改定となったため、ゲタも1.3%から1.6%へと上方改定になりました。

最後に、12月9日の2次QEですが、例年、このときは前年の確報を反映させており、今回も同じく反映させる予定です。

そして、今までは、2次QEの大体一週間前に、確報の支出側だけ(つまり、今回で言うと22年の1-3月期までのみ)を公表していたのですが、今回からは、同時に公表します。

これは、民間エコノミストの方から「確報で当年の1-3月期までは出ているのに、その後の4-6、7-9が存在しない期間が一週間でも存在してしまうのは困る。タイミング的に、法季が出るまで2次を出せないのは分かるが、それなら、2次QEと一緒に出した方が良い。」とのご意見を踏まえたものです。

2010年11月18日 (木)

7-9月期1次QE(3)

引き続き内需ですが、次は民間企業設備投資です。

実質前期比で0.8%でした。4期連続のプラスです。なお、名目は0.1%ですから、またまたデフレに逆戻りです。1-3月期はプラスだったのですが。。。

そして、いつも言うことですが、2次QEで四半期別法人企業統計調査が入るので、最終的にどうなるか分かりません。さらに、今回は、21年度確報を反映させますので、その動きも想像がつきません。

法人企業統計がそれほどぶれないことを祈っているのですが。。。

続いて在庫品増加です。

実質0.1%でした。ご存知のとおり、1次QEでは、製品在庫と仕掛品在庫が時系列モデルによる予測値なのですが、前回の2次QEでお知らせしていたその予測値が0.1%でして、そのままの数字となりました。

民間住宅投資は、再びプラスとなり、1.3%といったところです。原系列を見てみると、ようやく季節性が復活してきたみたいな印象もありますが、まだまだ先は良く分かりません。

あれやこれやで、これらをすべて合計して、民需は0.9%でした。

次は公需です。

政府最終消費支出は実質前期比0.1%のプラス、一方、公的固定資本形成は▲0.6%のマイナスでした。この2つが打ち消しあいながらも、結果としてはややマイナスがかって、公需は▲0.0%でした。

民需と公需を合計すると、内需は実質前期比寄与度で0.9%でした。

つづいて外需です。

これは、実質前期比寄与度が0.0%とほぼゼロ近傍まできました。輸出も2.4%と伸びが鈍化していますが、輸入も2.7%と同じく鈍化しているので、外需寄与度としては何とかプラスを保ったという形です。

輸出のプラスの影響は、建設機械やモーターなどです。輸入については、原油、天然ガスとテレビやエアコンなどです。通関統計を見ると、アメリカ向け輸出が増えているのですが、アメリカってそんなにこの時期景気が良かったでしたっけ???

なお、名目では、輸出、輸入ともに前期比マイナスになっています。(輸出、輸入ともに▲1.1%)

実質はプラスですから、どちらもデフレーターが下がったということなのですが、これには、円高の影響もあるのだと思います。確か、この時期に80円台の前半に入ったはずですので。。。

2010年11月17日 (水)

7-9月期1次QE(2)

もう少し個別に見ていきます。

まずは内需です。

消費については、季節調整済前期比は実質で1.1%でした。いつ以来の伸びかと言うと、1996年10-12月期に1.2%というのがありますので、それ以来になります。1996年と言うと、ウェキペディアで見てみると、アトランタオリンピックがあった年で、橋本総理大臣のときです。そのときになんでこんなに消費が伸びたのかは分からないのですが、10月に新宿高島屋がオープンしたとあり、また、野球も巨人が11.5ゲーム差をひっくり返したということで、この優勝セールとかそんなことも影響しているんでしょうか???(正直まったく分かりません。。。)

さて、消費の内訳ですが、

耐久財    11.1%

半耐久財 ▲0.5%

非耐久財   0.6%

サービス ▲0.0%

という形です。

一目瞭然ですが、耐久財が圧倒的に伸びています。耐久財で伸びている品目は、自動車、テレビ、エアコンなどです。自動車は、補助金に期限が9月中という想像がつきますし、エアコンは猛暑でしたから想像がつきます。ただ、テレビが伸びているのは、あまり理由が想像はつきません。エコポイントの効果が持続しているのでしょうか???

なお、これらの品目は、価格低下が激しいので、名目で見ると、もう少し低くて、耐久財は6.0%です。(それでも十分高いといわれるかもしれませんが(笑))

これ以外に、非耐久財も伸びています。これに効いている品目は、たばこです。10月の値上げを控えてということでしょうか?これもなんとなく想像がつきます。

一方でサービスは弱くて、ガスとか宿泊サービス、航空旅客サービスなんかがマイナスに寄与しています。

そうはいっても、やはり、耐久財が牽引しているのが大きく、結果として、消費全体でもプラスという印象でしょうか。。。

2010年11月16日 (火)

7-9月期1次QE(1)

本日1次QEを公表しました。

http://www.esri.cao.go.jp/jp/sna/toukei.html#qe

7-9月期の実質季節調整済前期比は0.9%とプラスになりました。これで、4四半期連続のプラスです。

内訳を見てみると、外需が0.0%とプラスではありますが、ほぼゼロ近くにまでなっており、一方で、内需で0.9%となっています。

内需の内訳としては、民間最終消費支出が1.1%と強く、寄与度で見ると0.7ですから、内需のほとんどが民間最終消費支出であると分かります。それ以外には、民間在庫品増加が寄与度で0.1%、民間企業設備が0.8%、民間住宅投資が1.3%、政府最終消費支出が0.1%、とほとんどの項目がプラス項目です。

一方、マイナス項目としては、公的固定資本形成が▲0.6%、公的在庫品増加が▲0.0%でした。

内需は、4四半期ぶりのプラスとなり、内需主導のプラスということはいえると思います。

そして、名目は季節調整済前期比で0.7%でしたので、GDPデフレーター(季節調整系列)の前期比は、▲0.2%と2期連続のマイナスです。

詳細はまた説明しますが、大きく伸びた民間最終消費支出のプラス要因としては、自動車、たばこ、テレビ・ラジオ受信機及びビデオ機器、家庭用器具といったところです。この家庭用器具というのは、エアコンなどです。

いわれているとおり、自動車補助金の期限切れの時期でしたし、また、10月からたばこが値上がりしますので、その影響があったのかもしれません。それに、猛暑の影響もあったのでしょうか???

この結果を受けて、先行きについていろいろ言われているようですが、相変わらずですが、先行きの見通しについては統計メーカーの仕事ではないので、なにも言わないでおきます。。。

2010年11月12日 (金)

帰属家賃

この前、

「各国で帰属家賃はあるんでしょうか?」

という質問を受けました。

答えは「あります。」ということになります。

確かに、日本は持家が多いので、帰属家賃のウェートも大きいため、帰属家賃というと、なんだか、日本特有のもののように思われてしまうんでしょうか?でも、日本だけでそんな特別なことをやっているわけではないので、以前も帰属計算については書きましたが、改めて書いてみたいと思います。

まず、93SNAマニュアルでは、

6.29.持家居住者による自己最終消費のための住宅サービスの生産は常に国民経済計算における生産の境界の中に含まれてきたが、そのことは自己勘定サービス生産を一般的に除外することの例外となっている。賃貸住宅に対する持家住宅の比率は各国間で、さらにひとつの国の中でも短期間についてさえ大きく異なることがあり、したがって、住宅サービスの生産と消費の国際比較及び時間比較は、自己勘定住宅サービスの価額について帰属が行われないならば、歪められたものとなる。このような生産によって生ずる所得の帰属価額には一部の国では課税が行われている。

とあります。自己勘定サービス生産とは、自分で財、サービスを作って自分で使うということだと考えていただいて良いかと思いますが、それについては一般的にSNAでは生産に含めない(つまり、生産されたことになっていない)ということが前段であり、持家住宅についてはその例外だと書いてあります。つまり、日本特有の話ではなく、各国共通で、「持家住宅に対する賃貸料は、帰属家賃として計上する」ということが決められているわけです。

なんで、このような取り扱いをするかというと、「賃貸住宅に対する持家住宅の比率は各国間で、さらにひとつの国の中でも短期間についてさえ大きく異なることがあり、したがって、住宅サービスの生産と消費の国際比較及び時間比較は、自己勘定住宅サービスの価額について帰属が行われないならば、歪められたものとなる。」と書いてある通り、各国比較、経年比較を可能とするために行っているということなのです。

帰属家賃が例外、ということは、一般論として、自己生産、自己消費はどうなるのか?という話が続きそうですが、これについては「生産の境界」という、また議論の尽きないテーマの中の重要な論点となっているのです。

自己生産、自己消費や「生産の境界」については、また別の機会に考えれればと思っています。

2010年11月11日 (木)

統計メーカー

このブログでは、聞きなれない『統計メーカー』ということばを、そのタイトルに使っています。何の説明も無く、こんなわけの分からないことばを使われても。。。という声もあるかと思いますが、それなりに思いがあって、このことばを使っています。

今まで、一切そういうことは書いてきませんでしたが、ここで、少しだけ、『統計メーカー』ということばにかけた思いを書いてみます。

『統計メーカー』ということばはそのとおり、統計の作成者のことです。そして、統計『ユーザー』ということばを意識して、あえて『メーカー』ということばを使っています。

どのような統計であっても、統計の「利用者」と「作成者」では、その統計に対する思い、理想について、違いがあるはずです。その上で、加工統計、2次統計という性格を持つSNAについては、そのギャップがより一層大きいのではないかと思います。

ひとつの例を挙げてみると、「利用者」としては、「できるだけ早期に推計値を公表し、そして、その推計値を頻繁に改定しないで欲しい」と考えるのではないかと思います。一方、「作成者」としては、利用者の気持ちはわかるのですが、「早期に推計値を公表した場合、追加のデータが入った際に『より正確な推計値』とするため、改定をした方がよい。そして、改定を恐れて、公表を遅くしたら、他の誰かが予測値を出すだろうから、それと公表値がずれたら、結局世の中に悪影響を及ぼすので、その時点で公表できるできるだけ正確な公表値を、徐々に改定していく方がよい。」という考えも持ってしまうのです。

また、「利用者」としては、「できるだけ過去からの長期系列を公表して欲しい」という思いがあるのではないでしょうか?一方で、「作成者」には「できるだけ過去まで遡りたいのだが、『原データ』が過去に遡って存在しないので、過去に遡れば遡るほど、『一定の仮定をおいた推計』の要素が大きくなってしまい、公表に耐えられるものになるのだろうか?」という不安も浮かんでしまうのです。

これらは、SNAが、加工統計、2次統計であることも、その要因のひとつなのかもしれません。

『統計ユーザー』と『統計メーカー』では、圧倒的に『統計ユーザー』の人数が多いですし、SNAの場合『統計メーカー』が公務員であることから、その思いを表立って言うことを憚る雰囲気があることから、『統計メーカー』の思いが、世の中にあまり伝わってないのではないかと思うのです。

そして、これは、『統計メーカー』だけでなく、『統計ユーザー』にとっても不幸なことなのだと思うのです。というのは、『統計メーカー』の思いの中には、

 ○気持ち的には分かるんだけど、技術的、原データーの制約からできないんだよなぁ。ただ、それだったら、こういうやり方で補完できるんだけど。。。

 ○その考え方は、前提となるある事実を誤解しているからなんだけど、その考えを主張している『統計ユーザー』は、この前提は知ってるのだろうか?

とかそういう気持ちもあったりするんです。

以前、「連鎖の開差」について書かせていただいたのも、こういった思いのひとつになります。

この、『統計メーカー』でなければ分かりにくいこと、考え付かないことについて、『統計ユーザー』も知っていれば、もっと、いいアイディアが生み出され、不毛な議論・作業が減るんじゃないかと思うのです。

このブログで、あえて『統計メーカー』ということばを使っているのは、こういう気持ちがあるからなのです。

2010年11月 7日 (日)

準法人企業(4)

さて、話は特別会計、事業会計でしたから、その話に戻ると、これは、

a)政府単位に所有され、市場生産に従事し、公的に所有される法人企業と類似の方式で運営される非法人企業

の話であることは明確だと思います。

特別会計、事業会計については、独立行政法人化された会計も結構ありますし、確かに「類似の方式」(この定義も曖昧なのですが(笑))のような気がしますね。

あとは、これらの法人が市場生産に従事しているかどうかなのですが、確かに、特に地方の事業会計なんかでは、地方公営企業なんて、市場生産に近いことをやっていますよね。ですので、個別に、「市場生産に従事しているかどうか」を判断して、やっていれば、政府ではなく「準法人企業」として整理する、ということなのです。

逆に言うと、そうでなければ、「準法人企業」ではないので、特別会計は中央政府に支配され、事業会計は地方政府に支配されていますから、それぞれ、中央政府、地方政府に含まれることになります。

そして、市場生産に従事しているかどうかの判断なのですが、我が国のSNAでは、次のような基準を使っています。

内閣府HPより、「我が国の国民経済計算における政府諸機関の分類(格付け)基準」

http://www.esri.cao.go.jp/jp/sna/070927/shiryou3.pdf

これの「1.2)」のところを見て欲しいのですが(「2.1)」については、公的セクターか民間セクターかの判断部分ですので、「政府の会計」については、民間との判断の余地はありませんので、ここは飛ばされます)、まず、金融機関かどうかを判断し、その後、非金融法人か判断します。

金融機関かどうかの判断は、「金融資産が50%以上あるかどうか」です。

そして、非金融法人かどうかの判断は、次の①~③で2つ以上該当するかどうかです。

①民間事業所に同種の活動がある。…民間との間で競争が行われている可能性がある。

②価格あるいは料金が供給する量・質に比例している。…供給活動について外部から

の制約を受けない。

③自由意思による購入ができる。…消費活動について外部から制約を受けない。

そして、前述のとおり、どちらにも当てはまらなければ、「準法人企業」ではないので、中央政府または地方政府に入ることになります。

(注)社会保障基金に格付けされるかどうかはまた別の議論があるのですが、ここでは省略しています。

2010年11月 6日 (土)

準法人企業(3)

実は、前回までの話では、半分くらまでしか真相に迫れていなくて、『何で、法人格を持っていないのにも関わらず、そのような自らの貯蓄、資産、負債等を完結して保有している非法人企業を、法人企業のように扱うのか』ということについてはまったく説明していません。

実際に、93SNAでも、

  準法人企業という概念の意図しているものはかなり明確である。すなわち、十分な自己完結性と独立性をもち、法人企業と同様に振る舞う非法人企業をその所有者から切り放すということである。

としか書いていなくて、『何で切り放すのか?』ということは明確ではありません。ただ、想像するに、『十分な自己完結性と独立性をもち』と『法人企業と同様に振る舞う』という言葉から想像するに、一部門がその所有主体(準法人企業と言うことは所有者がいます)と別な行動を行う可能性があるなら、それは別の主体として記録することが正しいでしょう!と考えているからなのではないかと想像します。

実際に、同じく93SNAでは次のような記述があります。

 「体系」(作成者注:93SNA「体系」のことです。)内にはおもに3種類の準法人企業が存在する。

 (a)政府単位に所有され、市場生産に従事し、公的に所有される法人企業と類似の方式で運営される非法人企業

 (b)家計に所有され、民間の法人企業のように経済活動を行なっている、非法人パートナーシップを含む非法人企業

 (c)外国に居住する制度単位に属する非法人企業、これらは、恒久的支店、外国の法人企業または非法人企業の事務所、もしくは長期間または期限を定めずにその経済領域内において顕著な量の生産に携わっている外国企業に属する生産単位から構成される。たとえば、橋、ダムまたは大規模構築物の建設に従事する単位である。

これを見ると、(a)については、政府が保有していながら、市場生産に従事していて、しかも、「十分な自己完結性と独立性を持っている」というものは、もはや「政府」ではなく、別の扱いにしましょうということだと思います。

b)については、恐らく、法人格を持っていない個人企業のことでしょう。でも、これを、家計としての活動と切り放すのは困難で、実際に93SNAでも別の部分の記述でそれは認めています。

c)は、外国法人が、国内で法人格を持たない事業所を置いている場合も、国内の活動主体としてみ認めたい、という趣旨だと思います。これをやらないと、たとえば、アメリカの法人の東京事業所が行った活動(消費でも何でも良いですが)が、日本国内の支出としては捉えられなくなってしまいます。

2010年11月 4日 (木)

準法人企業(2)

93SNAでは、「準法人企業」については、次のように書かれています。

 居住者である制度単位により所有されているが、あたかも別個の法人であるかのように運営されている非法人企業で、その所有者との事実上の関係は法人とその株主との関係に類似しているものである。もちろん、そのような企業は、完全な勘定の組に記録を保持していなければならない。

もしくは非居住者である制度単位により所有され、長期または期限なしに当該経済領域内において経済活動に従事しているために居住者と見なされている非法人企業を指す。

これで、いくつか特徴が明らかになりました。まず、当然のことながら「非法人企業」であるということ。そして、居住者であれ非居住者であれ、「誰かに所有されているが、あたかも別個の法人であるかのように運営されている」ということです。これははなはだ曖昧ですね。

そして次は、もっと明確な特徴として、「完全な勘定の組に記録を保持していなければならない」とされています。つまり、その非法人企業は、法人格が無いにも関わらず、個別に貸借対照表などの財務諸表が存在する必要がある、ということになります。これは、分かりやすい特徴です。

これは、逆に言うと、その非法人企業は、記録するだけの、貯蓄、資産、負債等を自ら完結して保有していなければならない、ということになるのではないかと思います。そして、そういう非法人企業であれば、「93SNA上は法人企業のように扱う」ということなのです。

2010年11月 2日 (火)

準法人企業

例によって、外部からの問い合わせで、一つ面白いネタを思いつきました。

その質問は、

「何で、国の特別会計と地方の事業会計は、それぞれ会計ごとに、政府と公的企業に区別されているのか?」

というものでした。

これについて考えるためには、SNA特有の概念である、「準法人企業」というものを考える必要があります。

「準法人企業」とは名前の通り、法人企業ではないのですが、「あたかも別個の法人であるかのように運営されている非法人企業」のことです。そして、SNAでは、部門分割等のためには、これらの「準法人企業」を「法人企業」のように扱うのです。

そこで、少しお時間をいただいて、「準法人企業」とはなにか、そして、なぜ、そのような扱いをSNAではしているのか(これについては、実は、明確に93SNAで書かれているわけではないので、その理由を想像してみるということになるかと思います)、考えてみたいと思います。

« 2010年10月 | トップページ | 2010年12月 »

無料ブログはココログ
2016年8月
  1 2 3 4 5 6
7 8 9 10 11 12 13
14 15 16 17 18 19 20
21 22 23 24 25 26 27
28 29 30 31