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2010年10月

2010年10月31日 (日)

世界同時不況の季節調整への影響(4)

直接季節調整をかけている系列ではない(帰属家賃と分けてかけている)ので、あくまで参考なのですが、サービスについても。

1_2

2_2

原系列をみると、『10-12月期、1-3月期と落ち込み、4-6月期で上昇する』という季節性かと思いきや、08年の4-6月期の時点で『上昇する』はずが落ち込んでおり、もはや季節性がどうなっているのかも良く分かりません。09年の1-3月期は、原系列で見て確かにごくわずかですが低そうといえるかもしれませんが08年の10-12月期は、他の年と比べて極端に低いとも思えません。いずれにしても、はっきりと影響が出ていると言い切るのは難しそうです。

続いて、民間企業設備を見てみましょう。

3_2

4_2

これは、原系列を見ると、ものすごく季節性がはっきりしていて『1-3月期で大きく上昇し、4-6月期で大きく下げ、7-9月期で少し上げ、10-12月期で少し下げる』という季節性のようです。ただ、08年の10-12月は確かにやや下げすぎという感じもしますが、それ以上に091-3月期の『大きく上昇』のはずが上昇幅が小さすぎます。これを見ると、確かに、「10-12月期と1-3月期を大きく押し上げているのでは?」と疑ってみたくなりますが、09年の10-12月期の下げ幅はやや小さいですし、101-3月期の上げ幅も例年くらいはあるように見えます(やや上げ幅が小さいかもしれませんが。。。)。ですので、季節指数がいたずらして伸ばしているとまでは言い切れないような気もします。

そう考えると、民間設備投資についても、「2008年末から2009年初にかけての世界同時不況が、季節調整に影響を与えており、GDPの実質成長率についても、0910-12月期、101-3月期が高く出ている可能性がある。」ということについて、『必ずしも単純にそういえるわけでなさそうだ』というような気がします。

世界同時不況の季節調整への影響(3)

消費のそれ以外の項目についても見てみましょう。

1

2

まず、半耐久財です。原系列を見ると、『4-6月期で大きく下がって、7-9月期は横ばい、その後10-12月期で大きく伸びて、1-3月期はやや落ちる』という季節性が良く分かります。これを見ると、0810-12月期の『大きく伸びる』伸び方が小さく、そのため、季節調整系列で大きくマイナスになっているのが分かります。そして、その後の09年の1-3月期ですが、確かに、原系列では下げ幅が大きいように見えますが、ただ、これくらいの下げ幅なら、07年の1-3月にもあります。その後は概ね、例年通りの季節性になっているように見えるので、09年の4-6月期以降は、ほぼなだらかな動きとなっています。

これを見ると、総じてそれほど季節性が異なっているようには見えず、10-12月期はまだしも、特に1-3月期について、09年の影響が強く出ているという感じはしないのではないかと(完全に個人的な感覚ですが。。。)

3

4

非耐久財についても、原系列を見ると『1-3月期に大きく落ちて、4-6月期で少し戻して、7-9月期は横ばい、10-12月期で大きく伸びる』という傾向が良く分かります。そして、0810-12月期については『大きく伸びる』はずの伸び幅が小さく、季節調整系列では大きく落ち込んでいます。一方で、09年の1-3月期は、原系列では例年と比べてそれほど落ち込みが大きくないので、季節調整系列ではプラスになっています。

非耐久財についても、耐久財と同じく、総じてそれほど季節性が異なっているようには見えず、10-12月期はまだしも、1-3月期について、09年の影響が強く出ているという感じはしないのではないかと(これも、完全に個人的な感覚ですが。。。)

ここまでの話で、「2008年末から2009年初にかけての世界同時不況が、季節調整に影響を与えており、GDPの実質成長率についても、0910-12月期、101-3月期が高く出ている可能性がある。」ということについて、『少なくとも、全ての系列についてそういうことがいえるわけでなさそうだ』、ということはお分かりいただけたのではないかと。。。

2010年10月30日 (土)

世界同時不況の季節調整への影響(2)

まずは、GDPの6割を占める、民間最終消費支出です。これは、耐久財、半耐久財、非耐久財、サービス(除:帰属家賃)、帰属家賃で季節調整をかけているのですが、このうち、耐久財、半耐久財、非耐久財、サービス(含:帰属家賃)の系列が公表されています。

サービスについては一部季節調整をかけている系列とは異なってしまいますが、帰属家賃は、世界同時不況の影響を受けるようなものではないので、参考までにサービスについてもこのまま見てみましょう。

まずは耐久財について、原系列と季節調整系列を見てみましょう。(以下、全て実質で見ています。)

1

2

原系列をみると、『4-6月期で下がって、その後、翌年の1-3月期にかけて、徐々に増えていく』という季節性があるのが良く分かります。これから見ると、08年の10-12月は、本来延びるべきところが伸びてない、09年の1-3は延びるべきところが逆にマイナスになっている、という形で、明らかに過去と季節性が異なっています。ですので、季節調整系列でみると、その時期については大きなマイナスになっています。

一方で、09年の4-6月期は原系列で見ると、いつもよりも下げ幅が小さいので、季節調整系列ではプラスになっています。

そうすると、確かに、10-12月期、1-3月期は季節調整系列が押し上げられ、逆に4-6月期は押し下げられるように見えます。ただ、原系列で09年の7-9月期からの3期については、例年通り増えているのですが、101-3月期の伸び率はやや低いように見えます。それでも、季節調整系列で大きく下げられているという感じはしません。

また、同年4-6月期については、原系列で大きく下げていますが、季節調整系列ではその下げ幅が小さくなるよう、押し上げています。そして、その押し上げ幅が、それほど小さくなっているかどうかは、それほど明確ではないような気がします。

というわけで、耐久財を見る限りは、「指摘される可能性はあるかもしれないけど、そこまでその影響が『明らか』とまではいえない」というような気がします。

なお、X12-ARIMAで、異常値については検索できるのですが、昨年末時点では、この部分は引っかかってきませんでした。ただ、昨年末時点では、この部分は端っこだったので、検出できなかった可能性はあります。ですので、今後、系列が長くなると、検出される可能性はあるかもしれません。

(X12-ARIMAは、単純に言うと、移動平均(前後数年間の平均を取る)ですので、端っこについては、その平均がうまく取れなくて、どうしてもうまく異常値の検出などができない面があります。)

2010年10月28日 (木)

世界同時不況の季節調整への影響

1018日の日経新聞夕刊に面白い記事が出ていました。

内容は、よく言われている、「2008年末から2009年初にかけての世界同時不況が、季節調整に影響を与えており、GDPの実質成長率についても、0910-12月期、101-3月期が高く出ている可能性がある。」というものでした。

これについては、「官庁の経済統計の季節調整に影響が出ている」という民間エコノミストの方が結構いらっしゃるようです。そこで、GDPについて、それが本当かどうか、少し考えてみたいと思います。

まず、前提として考えなければいけないのは、GDPについては、直接季節調整をかけているわけではなく、間接的に季節調整をかけています。これはどういうことかというと、GDPという系列に直接季節調整をかけているわけでなく、その構成項目である、消費の中の耐久財とか、輸出とかそういった系列ごとに季節調整をかけているということです。

ですので、季節調整に影響が出ているかどうか見るためには、個別の系列で見る必要があります。幸いなことに、リーマンショックの影響が大きかった、民需の主な項目と、外需については、個別の項目ごとに数字が公表されていますので、その原数値を見てみようと思います。

2010年10月24日 (日)

PFI(7)―証券化―

更に番外編です。

PFIの場合、資金調達の手法として、証券化スキームを用いることがあります。

そこで、ここでは、証券化スキームがどのようにSNA上計上されるか考えてみたいと思います。

実は、これについてはそのものずばりの記述が93SNAにあります。

11.75. 貸付、モーゲージ、クレジットカード債務またはその他の資産(受取債権を含む)のような既存資産によって裏付けられた新規の譲渡可能な証券がしばしば発行される。この資産の再編成は、しばしば証券化と呼ばれる。新規資産の創出は金融勘定の記入を伴い、新規資産は株式以外の証券として分類されるべきである。(後略)

ということです。

したがって、あくまで証券化スキームは、資金調達の手法の一つであり、証券化により発生した資産、負債については、貸借対照表及び資本調達勘定の金融取引のうち「株式以外の証券」の中に入ることになります。

すなわち、政府がある建物を建てて、その建物について、証券化して、その証券を民間部門に売却した場合は、政府に負債として「株式以外の証券」が、民間の家計又は企業の資産として「株式以外の証券」が計上されることになります。

なお、証券化をする前段階として、SPCを設立することが多いと思います。SPCの格付けについては、付属会社として、その親会社とまとめて一つの制度単位と整理されるため、政府が過半数の持分を有していれば政府の付随単位として整理されることになります。

ここまで、PFIについて考えてみましたが、「総固定資本形成」の計上方法から、リース、証券化まで本当に幅広いところまで影響する内容でした。。。

2010年10月22日 (金)

PFI(6)―リースの扱い―

少し番外編として、PFIの事例として、施設を建設した民間事業者が、政府に施設をリースする場合があります。

そこで、少し深入りして、SNA上のリースの取り扱いについて考えて見ます。

リースには、「オペレーティング・リース」と「ファイナンシャル・リース」の2種類があります。そして、この2つは、SNA上の扱いが異なります。

はじめに結論を言ってしまうと、「オペレーティング・リース」はサービスであると取り扱われ、「ファイナンシャル・リース」は設備の購入資金の融資方法の一種類として、貸付などと同列に扱われます。

ですので、「オペレーティング・リース」ではそのリース代金は、サービスへの支払いとして、企業の購入であれば中間消費に入りますが、「ファイナンシャル・リース」は、利子や賃貸料として、所得支出勘定のところで出てくることになります。

「オペレーティング・リース」と「ファイナンシャル・リース」の違いについては、93SNAの記述をそのまま見てみるのがいいと思います。

ちょっと長いですが、まずは、オペレーティング・リースから。

6.115. その機械あるいは設備の全予想耐用年数よりも短い特定期間について、機械や設備を賃貸する活動をオペレーティング・リースという。それは、所有者あるいは賃貸者(レッサー)が使用者あるいは賃借者(レッシー)にあるサービスを提供するという生産の一形態であり、その産出は賃借者が賃貸者に支払う賃貸サービス料によって評価される。(後略)

6.116.  オペレーティング・リースは、次のような特徴によって識別される。

(a) 賃貸者、あるいは、機械や設備の所有者は、使用者による請求があり次第あるいは短い期間の事前通知で貸し出すことができるように設備のストックを良好な作動状態に維持している。

(b) 設備は様々な期間に対して賃貸される。賃借者は期間が満期になると賃貸サービス料を更新し、使用者は何回かにわたって同じ種類の設備を賃借することができる。しかし、使用者は、その設備の予想耐用年数の全体にわたってその設備を賃借しようとはしない。

(c) 賃貸者は彼が賃借者に提供するサービスの一部としてしばしば設備の維持と修理の責任を負う。賃貸者は一般にその設備の操作の専門家でなければならず、このような要素はコンピュータのような極めて複雑な設備の場合には重要である。このような場合には、賃借者やその雇用者はその設備を自らで適切に保守していくために必要な専門的知識や手段をもっていない。賃貸者は重大なあるいは長期の故障の際には設備を全面的に入れ替える責任を負っている場合もある。

続いて、ファイナンシャル・リースについてです。

6.118.  オペレーティング・リースに対して、ファイナンシャル・リースはそれ自身としては生産過程ではない。それは機械や設備の購入の融資方法として、貸付に代わる1つの方法である。(中略)賃借者は賃貸者が契約期間を通じて利子を含むその費用のすべてあるいは事実上すべてをカバーすることができるような賃借料(レンタル)を支払う。ファイナンシャル・リースは、所有のリスクと報酬とがその財貨の法的所有者、すなわち、賃貸者からその財貨の使用者、すなわち、賃借者に事実上すべて移転されるという点で識別することができるであろう。そのような取り決めの経済的現実を捉えるためには、法的にはリースの対象となる財貨は賃貸者の財産でありつづけるわけではあるが、少なくとも、リース期間の終了時点(通常、法的所有権が賃借者へ移動する)まで、賃貸者から賃借者へ所有権の移転があったとみなす。賃貸者は賃借者に対する貸付を行っているように取り扱い、賃借者はそれによって当該設備をファイナンスすることができるものとみなす。そして、賃貸借料は借入金の返済と利払いをカバーするものとして扱う。

ここで書いてあるとおり、「所有のリスクと報酬」が誰に帰属するかという点で、いずれのリースに分類されるかが決まります。難しい言い方をしていますが、誤解を恐れず簡単にいうと、そのリース資産を「誰が保有しているか」が重要で、貸し手が保有していれば「オペレーティング・リース」、借り手が保有していれば「ファイナンシャル・リース」と言うことになります。

ですので、オペレーショナル・リースの場合は、貸し手が保有しているわけですから「予想耐用年数の全体にわたってその設備を賃借しようとはしない」ということになります。ずっと借りているのであれば、それはもはや借り手が保有しているのと変わりませんから。。。

そして、重要なのが、「少なくとも、リース期間の終了時点(通常、法的所有権が賃借者へ移動する)まで、賃貸者から賃借者へ所有権の移転があったとみなす」の部分です。つまり、法的に所有権が賃貸者にあったとしても、SNA上では、賃借者に所有権が移ったかのように擬制して、固定資本の所有権の移転を計上するのです。つまり、ここでも、以前ご説明した「マイナスの総固定資本形成」が登場するわけです。

最後に、「賃貸者は賃借者に対する貸付を行っているように取り扱い」とあるように、完全に金融業として、お金を貸しているというように扱うわけです。

2010年10月19日 (火)

PFI(5)

引き続き、「サービスの生産及び消費支出」の段階です。

BTO、BOOについても、

   BTO(Build Transfer Operate) 

民間事業者が施設等を建設し、施設完成直後に公共施設等の管理者等に所有権を移転し、民間事業者が維持・管理及び運営を行う事業方式。

BOO(Build Own Operate

民間事業者が施設等を建設し、維持・管理及び運営し、事業終了時点で民間事業者が施設を解体・撤去する等の事業方式。

出典: 内閣府 民間資金等活用事業推進室(PFI推進室)PFI事業導入の手引き』

と、民間事業者が「維持・管理及び運営」を行うということですので、本質的にはBOTと変わりません。ただ、BTOについては、施設の所有者である政府が、その施設の維持・管理及び運営を民間事業者に委託しているわけですから、その委託に関する支出は政府の「中間投入」となり、そのまま「政府最終消費支出」の構成要素として、GDP(支出側)に計上されることになり、民間の消費支出にはならなさそうです。

BOOについては、BTOと同じと考えていいかと思います。

ROについても、

RO(Rehabilitate Operate

施設を改修し、管理・運営する事業方式。所有権の移転はなく、地方公共団体が所有者となる方式。

出典: 内閣府 民間資金等活用事業推進室(PFI推進室)PFI事業導入の手引き』

ですから、これはBTOと同じく、政府の「中間投入」となり、そのまま「政府最終消費支出」の構成要素として、GDP(支出側)に計上されることになりそうです。

2010年10月16日 (土)

PFI(4)

続いて、「サービスの生産及び消費支出」の段階に行きましょう。

 BOT(Build Operate Transfer) 

民間事業者が施設等を建設し、維持・管理及び運営し、事業終了後に公共施設等の管理者等に施設所有権を移転する事業方式。

出典: 内閣府 民間資金等活用事業推進室(PFI推進室)PFI事業導入の手引き』

については、「民間事業者が施設の管理や運営」するわけですから、施設の管理や運営サービス、というものを民間事業者が生産していることになります。

生産面で見ると、これだけで「サービス業」の生産が増えており、ここから「中間投入」を控除した分だけ、付加価値が増えていることになります。

一方、支出面から見るためには、このサービスを『誰が』、『何のために』購入するかがポイントとなってきます。

まず、民間が「消費支出」する場合を考えて見ます。

民間事業者の場合は「中間投入」に回すことになり、それを用いて新たな生産をすることになります。具体的には、コンサートツアーの提供事業者が公共のホールを借りる場合のようなものです。このコンサートツアー・サービスについては、新たな最終消費支出につながり、それがGDP(支出側)に計上されます。

一方で、民間の家計が買う場合は、「最終消費支出」になります。ですので、そのままGDP(支出側)に計上されます。

最後に、政府が買う場合は、政府の「中間投入」になります。ただ、政府の場合は、コスト積上げになるので、この金額がそのまま「政府最終消費支出」の構成要素として、GDP(支出側)に計上されます。

なお、「政府最終消費支出」についての詳細は、5月12日のこちらをご参照ください。

http://taro-sna.cocolog-nifty.com/blog/2010/05/post-f801.html

2010年10月14日 (木)

PFI(3)

もう一つ、「総固定資本形成」の段階で、『SNA的には』面白い形態が出てきます。

RO(Rehabilitate Operate

施設を改修し、管理・運営する事業方式。所有権の移転はなく、地方公共団体が所有者となる方式。

出典: 内閣府 民間資金等活用事業推進室(PFI推進室)PFI事業導入の手引き』

というものです。

移転も何もないのに、何が面白いかと言うと、「施設を改修し」の部分です。以前もどこかで書きましたが、固定資本の「改修」については、SNA上非常に悩ましい問題があります。すなわち、以前も少し書いたことがあるのですが、その改修は「総固定資本形成」になるのか、「中間投入」になるのか、という点です。

この点について、93SNAマニュアルではどのように書かれているか見てみましょう。

6.159. 維持および修理と総固定資本形成との区別は明確なものではない。生産に使用されている固定資産の通常の、定期的な維持と修理は、中間消費である。欠陥部品の取替えを含む、通常の維持及び修理は、典型的な付随的活動であるが、そうしたサービスは、同じ企業内部の別の事業所によって提供されることも、あるいは、他の企業から購入されることもある。

6.160. 実際上問題となるのは、固定資産を単に良好な稼動状態に維持するために必要とされるものを大きく超えて行われる大修繕、改造あるいは拡張と通常の維持や修理とを区別することである、既存の固定資産の大修繕、改造あるいは拡張は、その効率や能力を高め、あるいは、その予想耐用年数を延長する。それらは存在する固定資本ストックを増加させるので、総固定資本形成として扱われなければならない。

ということです。

すなわち、「大修繕、改造あるいは拡張」に該当する施設の改修は、総固定資本形成に入りますが、そうでない「維持や修理」については、中間消費に入ることになります。

ですので、「施設を改修」の場合、「改修」の内容によって、「総固定資本形成」と「中間消費」のいずれもありえるということになります。

2010年10月13日 (水)

PFI(2)

まずは、「総固定資本形成」の段階からです。

総固定資本形成の計上方法の原則をまずここで書いてみます。93SNAのマニュアルでは、

10.33. 総固定資本形成(gross fixed capital formation)は、生産者による会計期間中の固定資産の取得マイナス処分の合計額に制度単位の生産活動により実現した非生産資産の価値へのある種の追加を加えたものによって測定される。(略)

と書いてあります。つまり、「新しい固定資産を取得したものから、処分したものを引く」ということがここで書いてあることの主要な内容になります。そして、重要なポイントとしては、「処分したものを引く」というところです。

「処分」には他人に売却したことも当然含まれますから、総固定資本形成では、売却した場合は、マイナスで計上されるということになります。

これを念頭において、PFIを見てみましょう。

PFIにもいろいろあるのですが、まず、PFIの解説において一番初めに出てくる『BOT』というものからです。

これは、

 BOT(Build Operate Transfer) 

民間事業者が施設等を建設し、維持・管理及び運営し、事業終了後に公共施設等の管理者等に施設所有権を移転する事業方式。

出典: 内閣府 民間資金等活用事業推進室(PFI推進室)PFI事業導入の手引き』

ということです。ですので、民間事業者が施設を建設した時点で、「民間企業設備」にプラスの計上がなされます。そして、事業終了後に、それが公共施設等の管理者、ここでは政府と考えますと、政府に所有権の移転が行われます。

このとき、移転分だけ、マイナスの「民間企業設備」が計上され、同じだけプラスの「公的固定資本形成」が計上されることとなります。ですので、一国全体での「総固定資本形成」には影響はないことになります。(注)

 (注)細かいので書きませんでしたが、所有権移転の費用については、移転先の固定資本形成に載せられますので、実際にはマイナス分とプラス分で異なってくることがあります。

次に、『BTO』というものです。

BTO(Build Transfer Operate) 

民間事業者が施設等を建設し、施設完成直後に公共施設等の管理者等に所有権を移転し、民間事業者が維持・管理及び運営を行う事業方式。

出典: 内閣府 民間資金等活用事業推進室(PFI推進室)PFI事業導入の手引き』

ということですので、これもBOTと同じで、所有権の移転の時点が異なるだけです。

最後に『BOO』です。

BOO(Build Own Operate

民間事業者が施設等を建設し、維持・管理及び運営し、事業終了時点で民間事業者が施設を解体・撤去する等の事業方式。

出典: 内閣府 民間資金等活用事業推進室(PFI推進室)PFI事業導入の手引き』

というものです。この場合、民間事業者が施設を建設した時点で、「民間企業設備」にプラスの計上がなされるのは同じです。ただし、事業終了後に、それについての所有権の移転が行われず、解体されてしまうということですので、ただ単にマイナスの固定資本形成が計上されるだけになります。

2010年10月11日 (月)

PFI

過去、どういうわけかPFIについてのSNAの計上方法について、複数回聞かれました。なぜPFIなのかは分からないのですが、PFIは、公共施設の建設や運営などについて、政府と民間の役割が入り組んだ形で出来上がっているので、分かりにくい、ということなのだろうと思います。

そこで、今回は、この「政府と民間の入り組んだ関係」を例にとって、SNAの計上方法について、いろいろと考えてみたいと思います。

まず、PFIとは何かというところからです。

ウェキペディアでは、

PFIPrivate Finance Initiative)とは公共サービスの提供に際して公共施設が必要な場合に、従来のように公共が直接施設を整備せずに民間資金を利用して民間に施設整備と公共サービスの提供をゆだねる手法である。

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

ということです。

簡単に言うと、設備投資を公共(この場合政府と勝手に考えます)が行わず、民間が行い、その施設提供サービスも提供させてしまう、ということのようです。(本当は、もう少し複雑みたいですけど、とりあえずバクッと。。。)

これを考えると、施設の整備という「総固定資本形成」の段階の話と施設を利用したサービスの提供、という「サービスの生産及び消費支出」という段階の2つの面で影響してきそうです。

そこで、今回は、この2つの面からどのように取り扱われるのか考えてみます。

2010年10月 8日 (金)

GNPとGNI(6)

ここまでで、国民総所得(GNI)を求める流れを一通り書いてみました。

それを受けて、私が個人的に思ったことを少しだけ書かせていただければと。。。

思ったのは、やっぱり、GNIは、所得の概念として整理している93SNAの考え方は正しそうだなぁ、ということなのです。

というのは、GNPを求めようとしても、出稼ぎの人や海外投資分からの生産活動により発生した付加価値を捉えるだとか、逆に、国内の生産活動による付加価値の中から、海外からの出稼ぎの人や、海外の投資からの付加価値を除くだといったことなどできると思えないのです。

ですので、やり方としては、おそらく、一旦、国内の生産活動による付加価値、すなわちGDPを作ったうえで、出稼ぎの人の分として雇用者報酬、投資の分として財産所得のやり取りを調整するという形で作らざるを得ないと思います。でも、これは、あくまで所得のやり取り、すなわち分配面の話であって、この時点で「生産」の概念ではないんですよね。

「生産」と「分配」は一致するはずということを言われるかと思います。それはそのとおりです。ただ、もうお分かりいただけるかと思いますが、この所得のやり取りは、生産の時点と同時である保証はありません。特に、海外とのやり取りであればタイムラグはより発生するかもしれません。すなわち、「配当」などに典型的ですが、ある程度生産がすんで、それに対する所得という形になる可能性があります。

そう考えると、やはり、「国民」という概念については、生産ではなく、所得面で見るべきものなのではないか、という気がするわけです。

2010年10月 7日 (木)

GNPとGNI(5)-交易利得-

ようやくこれで、交易利得を説明する準備が整いました。

交易利得は、

1

但し、Pはニュメレール・デフレーターのことで、

2

となります。また、

3 :名目輸出   4 :名目輸入

5 :輸出価格指数 6 :輸入価格指数

7_3 :実質輸出   8_2 :実質輸入

です。

このとき、交易条件とは何を意味しているのでしょうか。。。

わが国のSNAの解説では、

第1項の分子(X-M)は、海外との貿易を通じて得られる名目所得を表している。これは、次の3つの要因によって規定される。

 (1)輸出入数量

 (2)輸出入価格の全般的水準

 (3)輸出入の相対価格(いわゆる交易条件)

ここで、要因(2)について若干の説明が必要であろう。輸出入数量(要因(1))や交易条件(要因(3))が不変であっても、貿易を通じて得られる名目所得は変化し得る。例えば、輸出入される財貨・サービスの価格が全般的に2倍に上昇すれば、名目所得も2倍になる。要因(2)は、このような輸出入価格の全般的な動きを捉えるものであり、(a)式においてはP(ニュメレール・デフレーター)で表されている。ニュメレール・デフレーターの選択については議論が分かれるところだが、わが国の国民経済計算では輸出入価格の加重平均を採用している。

さて、(a)式の第1項は、(X-M)をPで除して要因(2)の影響を取り除いたものであり、貿易を通じて得られる実質所得を表す。一方、(a)式の第2項は、輸出入の数量差であり、要因(1)によって規定される実質所得を表している(なお、これはすでに実質GDPに反映されている)。したがって、(a)式の第1項から第2項を控除した結果は、要因(3)(交易条件)の変化に伴う実質所得の変化を捉えるものであり、また、貿易を通じて得られる実質所得のうち実質GDPには反映されていない部分を表している。

と書いてあります。

簡単に言ってしまうと

① 貿易によって得られた名目の所得を【X-Mの部分】

② 貿易財の『絶対』価格の変化分を除き【ニュメレール・デフレーターPの部分】

③ 実質GDPに反映されている、輸出入の数量差を引く【9 の部分

ということになります。

このうち、②の部分については、前回少し説明しましたが、交易条件の変化とは『絶対』価格ではなく『相対』価格の変化によるものであると説明しました。ここは、その『絶対』価格の変化の部分を取り除くという作業になります。

(ニュメレール・デフレーターの選択が適切かという議論はありそうですが、理論的にはそういうことになります。)

そして、③の部分は、要は実質の輸出-実質の輸入ですから、純輸出として入っている部分を引いているというだけのことです。

というわけで、これが交易利得です。

2010年10月 5日 (火)

GNPとGNI(4)

GNIの名目まで見てきました。では、GNIの実質についてはどうかというと、もう一つ新しい概念が出てきます。

それが「交易利得」という概念です。

実質のGNIは、名目のGNIをデフレーターで割る(というか、実際はインプリシットなので、個別の構成項目の実質値から求めるということですが)だけでなく、それに「交易利得」というものを加えます。

国際経済学の中で「交易条件」というものがあるのですが、これは、ものすごく単純に言うと、A財を輸出している国にとっては、A財の価格が上がれば、貿易によって得る利益、というか所得は増えるはずです。この場合「交易条件」が改善したといいますが、この得ている所得のことを「交易利得」といいます。

なぜ、この「交易利得」を加えるかというと、あくまでGNIは所得の概念ですから、輸出している財の価格が上がれば、「実質でみると」当然その国の所得は増えているはずです。その増えた分を調整する概念が「交易利得」であると考えていただいてよいかと思います。

ひとつ注意しなければいけないのは、あくまで「交易条件」の変化というのは、『相対』価格の変化によって発生するものであって、『絶対』価格の変化によるものではありません。もし、『絶対価格』が変化したことによるものなのであれば、それは、ただ単に貿易の絶対量が増えたというだけであって、輸出品の価値が(相対的に)上がったから所得面で何か得をしているというわけではないからです。

この点は、「交易利得」を詳しく見るときにまた出てきます。

2010年10月 3日 (日)

GNPとGNI(3)

そして、GNIとは何かと考えてみます。

国民総所得 (Gross National IncomeGNI)

国民総所得(GNI)とは、一国全体を所得の面から捉えたものであり、概念的には、各制度部門別の「第1次所得の配分勘定」のバランス項目である「第1次所得バランス(総)」を合計したものである(日本では、GNIを支出面からの推計値をもとに推計しているため、統計上の不突合分だけの違いが生じている)。
数値的には、従来の国民総生産(GNP)に相当するものである。なお、名目GNIを実質化する場合は、輸出入価格の差によって生じる所得の実質額も考慮するため、交易利得も加えている。

ですから、「第1次所得バランス(総)」の一国全体の合計値と言うことになります。ただ、「第1次所得バランス(総)」という専門用語自体がわけが分からないですよね。。。

「第1次所得バランス(総)」とは、所得支出勘定のなかの「第1次所得の配分勘定」のバランス項目なのですが、この言い方も分かりにくいです。ですので、できるだけわかりやすく言ってみます。分配面からみた付加価値は、

 雇用者報酬 + 生・輸税 + 固定資本減耗 + 営業余剰

です。念のため言うと、生産面から見た付加価値の合計がGDPです。

「第1次所得バランス(総)」は、この付加価値に「財産所得」の受取を加え、「財産所得」の支払を引いたものです。財産所得とは、利子、配当、賃貸料などですが、ここには海外からのものも含みます。すなわち、前段の「国内」と「国民」の違いはここで調整されています。

そして、これを一国全体で合計したものが、国民総所得となります。名目は、、、

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