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2010年9月17日 (金)

パーシェデフレーターのバイアス【訂正】

79日の記事について、解説が間違ってるのではないかというコメントをいただきました。

http://taro-sna.cocolog-nifty.com/blog/2010/07/post-eb60.html

多分、私の説明が間違っていたと思います。

そこで訂正します。

当時の記事はこうなっていました。

ただ、ここで考えてよく考えてみると、

1

すなわち、「基準年の価格で、t年の数量を測ったもの」というのは、本当に、価格の変化の影響をすべて反映しているといえるでしょうか?というのは、ある財の価格が下がったら、一国全体ではみんなその財を購入しようとするのではないでしょうか?でも、このパーシェ型デフレーターの分母は、数量についてはt年の数量ですから、多く購入した数量とまだ価格が高かった基準年の価格を乗じています。つまり、この値は、「価格の変化によって発生する数量の変化」は入っていないといえそうです。

それでは、「価格の変化によって発生する数量の変化」も反映した場合の分母はどうなるかというと、価格が下がった財の数量は増え、価格が上がった財の数量は 減るでしょう。そうすると、パーシェ型デフレーターの分母は、数量の変化が反映されない分、「過大」となっていることが分かります。

確かにあっている、いないの問題の前に、何を言っているか意味が分かりにくい表現でした。(ですので、反省しています。。。)

このとき言いたかったことはどういうことだったかと思い出しながら考えてみると、固定のパーシェ型デフレーターの分母は、固定の実質値になります。で、その分母は

2

です。

一方、t年の名目値は、

3

です。ここで、t年における名目値が何を表しているか、ちょっとしたミクロ経済学の考え方を使ってみて見ます。(以下の説明は、「SNA統計入門」(著:中村洋一先生、出版社:日本経済新聞社)によっています。ご興味のある方は本書をご参照ください。)

ミクロ経済学では、無差別曲線というものがあります。これを簡単にいうと、その曲線上では効用(=満足度と考えていただいてよいかと思います。)が同じになるというもので、通常、この曲線は図のように原点に対して凸で書きます。

4

これを使って、qが2つ、すなわち2つの商品しかないときの名目値を考えて見ましょう。このとき、名目値は

5

とすると、右下がりの曲線になります。で、Rは実際に使う対価ということになります。

普通は、満足度が同じであれば、一番安くなるqの組合せを選ぶと思います。それは、明らかに、曲線と接するところになります。

つまり、t年におけるqの組合せは、下図の『●』のようになっているはずです。

6

では、このとき、実質値である、

7

はどのように表されるかというと、0年からt年の間で価格が下がっているという話をしていましたので、0年では、8 の価格(すなわち9 )が下がると考えて、なおかつ、『●』は通るわけですから、点線のように表現されるわけです。

10

でも、このときは、明らかに、無差別曲線と接していないです。で、この同じ効用(=満足度)の無差別曲線と接する、11 の価格のときは、『○』で示されるところになります。

12

このときの直線は、明らかに点線よりも原点に近いところにあります。ということは、

13

のRよりも小さいことになります。

つまり、本当は、価格の変化によってqの割合が変化するはずなんですけど、その変化分を十分反映していない点であり、「満足度が同じであるはずの『○』よりも過大な」固定の実質値が、分母になっているのがパーシェ型デフレーターであるといえると思います。

ですので、「価格の変化によって発生する数量の変化」という表現はやはり誤りで、正確には、「(絶対価格でなく相対価格の変化によって発生する数量(の構成比)の変化」とはじめから言っていればより分かりやすかったのではないかと反省しているところです。

長くなりましたが、説明したかったことはこんなところです。

参考文献:「SNA統計入門」(著:中村洋一先生、出版社:日本経済新聞社)

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コメント

早速のご対応、有難うございます!しかもこんなに丁寧に・・・。

ラスパイレス式は、「価格下落したモノの数量は増えるのに、それを増やさずに計算するために実勢よりも上方バイアスがかかる」というのは直感的に理解できたのですが、その逆がどうしてもしっくりこなかったので、厚かましくも質問をさせていただいた次第です。素人の私が「間違いの指摘」など大それたことをできるはずもなく、ただ自分の理解不足を埋めたくてお願いしたつもりだったので大変恐縮です。

今回のエントリで理解ができました。中村先生の本は会社の書庫にあったので、さらに理解を深めたいと思います。本当にありがとうございました。

また、これからの書き込みも楽しみにしています。

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