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2010年9月

2010年9月29日 (水)

GNPとGNI(2)

まず、例によって、GNIのわが国のSNAでの用語解説から。

国民総所得 (Gross National IncomeGNI)

国民総所得(GNI)とは、一国全体を所得の面から捉えたものであり、概念的には、各制度部門別の「第1次所得の配分勘定」のバランス項目である「第1次所得バランス(総)」を合計したものである(日本では、GNIを支出面からの推計値をもとに推計しているため、統計上の不突合分だけの違いが生じている)。
数値的には、従来の国民総生産(GNP)に相当するものである。なお、名目GNIを実質化する場合は、輸出入価格の差によって生じる所得の実質額も考慮するため、交易利得も加えている。

またまた、ちょっと不親切というか、前提とする知識を必要とする解説です。。。

それに、これでは、今回の冒頭で書いた、「国民」と「国内」の違いも書いてないのですが、SNAの「国民」と「国内」の違いは、非常に神学論争に近くなってしまいます。ですので、あまりうまくは説明できないかもしれませんが、先にこちらの方から見てみましょう。

国内(Domestic)概念と国民(National)概念

国内領土とは、ある国の領土から当該国に所在する外国政府又は国際機関の公館及び軍隊を除いたものに、領土外に所在する当該国の公館及び軍隊を加えたものである。国内という概念はその国内領土に居住する経済主体を対象とするという概念であり、主として生産活動に関連した概念である。例えば外国企業の在日子会社は、わが国の国内領土において生産活動を行っているので、わが国の居住者たる生産者として国内に含まれ、逆にわが国企業の海外支店は含まれない。国内総生産は、居住者たる生産者による国内生産活動の結果生み出された付加価値の総額である。
一方、国民という概念は、当該国の居住者主体を対象とする概念であり、外国為替及び外国貿易管理法(外為法)の通達「外国為替管理法令の解釈及び運用について」の居住者の要件を満たす企業、一般政府、対家計民間非営利団体及び個人をさす。例えば、居住者たる個人とは、主として当該領土内に6ヶ月以上の期間居住しているすべての個人をいい、国籍のいかんを問わない。また、一般に、国外に2年以上居住する個人は非居住者とされる。
国民総所得は当該国の居住者主体によって受け取られた所得の総額を示すもので、国内総生産に海外からの所得(雇用者報酬、投資収益などの財産所得・企業所得)の純受取を加えたものであり、分配面からの接近によって把握されるものである。

順番にいきましょう。まず、「国内」からです。国内という概念はその国内領土に居住する経済主体を対象とするという概念ということですから、国内総生産(GDP)という場合は、日本の国内で作ったものの付加価値の合計という意味になります。同時に「国民」については、「当該国の居住者主体を対象とする概念」ということです。ですので、国民総生産(GNP)という場合は、日本の国内で作ったものでありながら、日本の居住者でない人が作ったものや、日本の居住者が海外で作ったものについての付加価値を調整したもの、ということになります。

ですので、分かりやすくいうと、

① 国内総生産というのは、一国の領土内で作られた、財・サービスの付加価値の合計

② ①には、その国内の人以外の人、例えば、海外からの出稼ぎの労働者による生産活動や、海外の投資家が国内の生産活動に投資(例えば日本企業の株式を保有など)による生産活動に関する付加価値も含まれている

③ 同じく①には、逆に、その国内の人が、海外へ出稼ぎに行った場合の生産活動等が含まれていない

④ そこで、①から②を引き、③を足してやったものが、国民総生産となる

ということになります。

なんで、生産概念のところで「国民」の概念が消えたかというと、生産はあくまでどこの領土内で行われたかということしか実は意味がないし、また、実際にも、生産面だけで『どの部分が「国民」に関するものによる付加価値か』ということは、直接は捉えられないからだと思います。

ただ、生産された付加価値について、結果としてのその付加価値が所得として誰に配分されているかという点で見ると、海外で出稼ぎ等で稼いできた雇用者報酬や、投資をしたことに対する財産所得などのやり取りは「国民」概念に調整することができそうです。

なので、分配面だけで国民総所得(GNI)が存在するわけで、理屈から考えても、恐らく、この取り扱いの方が正しいのだと思います。

2010年9月25日 (土)

GNPとGNI

現在のSNAは、1993年に国連から勧告された基準なので、「93SNA」といいます。

わが国の現在のSNAは、基本的にこの基準に沿って作られています。

(ちなみに、その後2008年にも新しいものが勧告されていて、それは「08SNA」と呼ばれ、日本を含め多くの国が導入に向け作業をしているところです。(一部の国では導入済みではありますが。。。))

93年の前は68年に出されたものだったので、68SNAというのですが、実は、この68SNAの段階から、実はGNPという概念は存在しなかったのです。そして、我が国においては、1990年から参考系列としてGDPを公表、91年からGNPとGDPを並列的に記述、93年からはGDPを本系列とし、GNPは参考系列となりました。

そして、93SNAでは、引き続きGDP(国内総生産)がメインなのですが、では、かつてのGNPは完全になくなってしまったかというと、そういうわけでもありません。

GDPのPはproductです。ですから、生産面の概念であることはお分かりいただけると思います。生産面の概念からは(そして、実は支出面の概念からも)、GNPという概念がなくなったのですが、もうひとつの分配面の概念として残っています。それを、GNI(国民総所得)と言います。

ここでは、そのGNIと、そのGNIについて考えるときに避けて通れない「交易利得」について書いてみたいと思います。

(注)この部分の説明及び過去の経緯については、「ゼミナール SNA統計 見方・使い方」【東洋経済:白川一郎氏、井野靖久氏】を参考にさせていただきました。

2010年9月22日 (水)

グロスと修正グロス(4)

最後に、やや細かい話です。

今までの話は、すべての設備投資をする事業者が、消費税を「納付」しているという前提になります。ただ、例えば国の一般会計とかについては、少なくとも消費税は「納付」はしていません。

同じように、消費税の「納付」が免除されている事業者もいます。その事業者については消費税を控除するにも支払っている消費税がないのでできません。

そういった事業者についてどのように取り扱っているかというと、大雑把にいうと、民間企業は課税事業者の比率を考慮した比率を用いて消費税控除額を求め、政府については基本的に消費税は「納付」していないわけですから、消費税控除額はゼロ(すなわちグロス表示)としています。

政府についてはグロス表示、とされている理由がはじめは良く分からなかったのですが、結局のところ、こういう理由だったのです。。。

それにしても、「グロス」とか「ネット」という言葉が悪いですよねぇ。。。(笑)

「グロス」って、総額というような意味で、「ネット」は「純」という意味ですから、例えば、減耗を含むかどうかという意味の「純」(ネット)と「総」(グロス)にも出てくるのです。そういう一般名詞なのに、消費税のところでも「修正グロス」などという形で固有名詞的に使われてもなぁ、なんて少し考えてしまいました。

グロスと修正グロス(3)

さて、もう少し話を進めまして、「課税仕入」というものがどういうものか見てみましょう。

課税仕入高というのは、企業がものを作るときにかかった経費です。ですから、事業用の設備を購入したときにかかった費用も入ってきます。すなわち、SNAでは「固定資本形成」として計上されるものなのですが、これについては、税法上は「課税仕入」にはいり、最終消費財ではなくなります。

一方、SNAを考えて見ますと、GDP(支出側)を考えて見ますと、最終需要は、

 最終消費支出 + 総資本形成 + 輸出 - 輸入

ですから、税法上と違って、総資本形成の中に「事業用の設備の購入」も入ってきています。

そうすると、「総資本形成」も消費税額を含んでグロス表示としてしまうと、一国全体の課税額よりも多くの消費税額が、一国のGDPに含まれてしまうことになります。そこで、これを控除してあげる必要が出てきます。つまり、こうしてこの「総資本形成」に関しての消費税額を控除したものが、「修正グロス表示」というものなのです。

なお、わが国の付加価値(GDP)の基準となるコモディティーフロー法では、すべて税込、すなわちグロスで推計していますので、「総資本形成」についての消費税額が過大となっています。そこで、「総資本形成に係る消費税」という控除項目を設けて、修正グロス表示にそろえています。

2010年9月19日 (日)

グロスと修正グロス(2)

まず、SNAでは、「市場価格」で表示するのが原則です。でも、どうしても市場価格が存在しないとか、把握することができないという場合があります。典型的なのは、政府サービスや非営利サービスに対しての価格なのですが、これらはどうしようもないのでコスト積み上げでやっています。

これとは別に、消費税の取り扱いが問題となります。普通に、お店でものを買うときは、消費税込みの価格で取引がなされています。つまり、価格は105円となっていて、そのうち5円が消費税分ということです。そうすると、この場合105円が市場価格ということになります。(法律上、非課税となっている品目(医療費、介護費、火葬代などは非課税です)は除きます。)

それだったら、すべて税込価格、すなわちグロス表示にしてしまえば良いじゃないかと思うのではないでしょうか?私も、はじめはそう思っていました。

そうすると、何が問題になるかというと、消費税の場合は「仕入税額の控除」という制度があるからなのです。どういうことかというと、実際の企業の「納付税額」(課税額ではありません!)は、

課税期間中の課税売上高 - 課税期間中の課税仕入高) × 税率

となります。

これが何をいっているかというと、『途中でかかったコストについて課税された消費税については、既に払っているから、この事業者の「納付」は必要ないです』といっているということです。

ただ、それでトータルの納税額がどうなるかというと、事業者が仕入れとして買ったものでなくて、最終財として買ったものに税率をかけた金額が一国全体の消費税額になってきます。それを、どの段階で「納付」しているか、と考えると、それぞれの事業者が「課税売上-課税仕入」に税率をかけた金額だけ「納付」している、ということが分かると思います。

ここまでのことで重要なのは、「一国全体の消費税額は、事業者の仕入れとして買ったものでなく(消費者等が)最終財として買ったものに税率をかけた分だけとなる。」ということです。

2010年9月18日 (土)

グロスと修正グロス

最近、いろいろなところからの問い合わせで、わが国のSNAにおける消費税の取り扱いについてよく聞かれます。

確かに、分かりにくいところが多いので、一度、自分でも考え方を整理してみたいと思っていました。QEもあけて、少し丁寧に書く機会もあるので、スペースをいただいて、(自分の頭の中も整理しながら)まとめてみようと思います。

わが国のSNAでは、消費税の取り扱いについて修正グロス方式を採用しています。ただ、修正グロスといわれても、何を言っているのか分かりにくいと思います。

ちょっと長くなりますが、実際の推計手順の解説書(「SNA推計手法解説書(平成19年改訂版)」http://www.esri.cao.go.jp/jp/sna/071011/suikei.html)を引用してみます。

 5.消費税の取扱い

 (1)修正グロス方式

平成元年4 月から税制改革に伴い、新たに「消費税」が導入された。「消費税」は、その性格上、商品の取引に直接関係するため、国民経済計算体系の中でどのように取扱うか検討された。その結果、最終的に「修正グロス方式」を採用した。ちなみに、消費税推計のアプローチには幾つかの方法が考えられるが基本的なものは以下の4 つになる。

  a.ネット・アプローチ

全ての財貨、サービスの流れについて、消費税を含まないネット価格で記録する。

  b.混合アプローチ

全ての課税対象売上について、購入者が前段階課税分の控除権限を有しない場合は、消費税を含むグロス価格で、それを有する場合には、ネット価格で記録する。混合アプローチは、グロス価格もネット価格も市場価格である点で評価できるが、現行の統計調査からは推計不可能である。

  c.グロス・アプローチ

全ての課税対象売上について統一的にグロス価格で記録する。

  d.修正グロス・アプローチ

グロス・アプローチにおける投資の過大評価(設備投資、在庫投資について、前段階課税分の控除が認められている)を修正し、結果的には投資についてネット価格で記録する。

コモ法は、財貨・サービスの一年間の流れを推計、記録するものである。消費税は、その流れの中で、企業または事業所の取扱いいかんによって同一商品であっても消費税の含まれるものと含まれないものが統計上混在してしまい、本来の商品価格と消費税の分離が困難である。

そのため、消費税法上の非課税商品を除いて、消費税を含んだ実際の価格のまま推計を行うこととした。

基本的には、全ての商品(例外品目を除く)は、消費税を含んで出荷されるものとし、供給側、需用側ともに消費税を計上した価格で流通経路に沿って推計を行っている。

(以下略)

これをみて、何を言っているか分かる人がいるでしょうか?(笑)正直、私も最近まで、この点はわけが分かりませんでした。

というわけで、はじめにも書きましたけど、自分の整理もかねて、少しまとめてみたいと思います。

2010年9月17日 (金)

パーシェデフレーターのバイアス【訂正】

79日の記事について、解説が間違ってるのではないかというコメントをいただきました。

http://taro-sna.cocolog-nifty.com/blog/2010/07/post-eb60.html

多分、私の説明が間違っていたと思います。

そこで訂正します。

当時の記事はこうなっていました。

ただ、ここで考えてよく考えてみると、

1

すなわち、「基準年の価格で、t年の数量を測ったもの」というのは、本当に、価格の変化の影響をすべて反映しているといえるでしょうか?というのは、ある財の価格が下がったら、一国全体ではみんなその財を購入しようとするのではないでしょうか?でも、このパーシェ型デフレーターの分母は、数量についてはt年の数量ですから、多く購入した数量とまだ価格が高かった基準年の価格を乗じています。つまり、この値は、「価格の変化によって発生する数量の変化」は入っていないといえそうです。

それでは、「価格の変化によって発生する数量の変化」も反映した場合の分母はどうなるかというと、価格が下がった財の数量は増え、価格が上がった財の数量は 減るでしょう。そうすると、パーシェ型デフレーターの分母は、数量の変化が反映されない分、「過大」となっていることが分かります。

確かにあっている、いないの問題の前に、何を言っているか意味が分かりにくい表現でした。(ですので、反省しています。。。)

このとき言いたかったことはどういうことだったかと思い出しながら考えてみると、固定のパーシェ型デフレーターの分母は、固定の実質値になります。で、その分母は

2

です。

一方、t年の名目値は、

3

です。ここで、t年における名目値が何を表しているか、ちょっとしたミクロ経済学の考え方を使ってみて見ます。(以下の説明は、「SNA統計入門」(著:中村洋一先生、出版社:日本経済新聞社)によっています。ご興味のある方は本書をご参照ください。)

ミクロ経済学では、無差別曲線というものがあります。これを簡単にいうと、その曲線上では効用(=満足度と考えていただいてよいかと思います。)が同じになるというもので、通常、この曲線は図のように原点に対して凸で書きます。

4

これを使って、qが2つ、すなわち2つの商品しかないときの名目値を考えて見ましょう。このとき、名目値は

5

とすると、右下がりの曲線になります。で、Rは実際に使う対価ということになります。

普通は、満足度が同じであれば、一番安くなるqの組合せを選ぶと思います。それは、明らかに、曲線と接するところになります。

つまり、t年におけるqの組合せは、下図の『●』のようになっているはずです。

6

では、このとき、実質値である、

7

はどのように表されるかというと、0年からt年の間で価格が下がっているという話をしていましたので、0年では、8 の価格(すなわち9 )が下がると考えて、なおかつ、『●』は通るわけですから、点線のように表現されるわけです。

10

でも、このときは、明らかに、無差別曲線と接していないです。で、この同じ効用(=満足度)の無差別曲線と接する、11 の価格のときは、『○』で示されるところになります。

12

このときの直線は、明らかに点線よりも原点に近いところにあります。ということは、

13

のRよりも小さいことになります。

つまり、本当は、価格の変化によってqの割合が変化するはずなんですけど、その変化分を十分反映していない点であり、「満足度が同じであるはずの『○』よりも過大な」固定の実質値が、分母になっているのがパーシェ型デフレーターであるといえると思います。

ですので、「価格の変化によって発生する数量の変化」という表現はやはり誤りで、正確には、「(絶対価格でなく相対価格の変化によって発生する数量(の構成比)の変化」とはじめから言っていればより分かりやすかったのではないかと反省しているところです。

長くなりましたが、説明したかったことはこんなところです。

参考文献:「SNA統計入門」(著:中村洋一先生、出版社:日本経済新聞社)

2010年9月14日 (火)

4-6月期2次QE(4)

最後に外需ですが、0.3でほとんど変わらずです(わずかに上方修正)。

これで全体として、0.4%、年率で1.5%でした。

そしてデフレーターについては、前期比は▲1.0%で、1次とほとんど変わりませんでした。内需デフレーターは、▲0.6%で1次の▲0.7%からわずかに上方改定になりました。

全体としてみると、0.3%の上方改定でしたが、民間在庫と民間設備投資が上方改定で、民間最終消費支出は0.0%という横ばいのままでしたので、全体としての見方は大きく変わらないのではないかと思います。

今回は、特出することもあまりないのでこれくらいで。。。

4-6月期2次QE(3)

民需の続きですが、次は民間最終消費支出です。

これは、0.0%と1次QEからほとんど変わっていないのですが、実はわずかに下方改定になっています。

そして、これについては改定幅よりは、下方改定になった品目の方が注目で、1次の段階でもマイナス寄与だった「テレビ」とか、「冷蔵庫」、「エアコン」あたりが下方改定になりました。実際に影響があったのかは分かりませんが、エコポイント対象の商品ばかりずらりと並んだので、以前から言われていた「対象商品の切り替えの影響」という声が、より強くなりそうです。

ただ、全体では横ばいということは変わりがありません。

民間住宅投資については、▲1.3%でほとんど変わりませんでした。実際にはわずかに下方改定なのですが、これはデフレーターの影響です。

民需はこれくらいにして、続いて公需です。

政府最終消費支出は、0.3%と1次の0.2%から見た目上は0.1%上方改定になりました。ただ、これは、下2桁をいうと、

1次:0.24%  ⇒  2次:0.27

ですから、実際にはそれほど大きな影響はありませんし、寄与度ではコンマ二桁でも影響はありませんでした。

理由としては、「地方公共団体消費状況等調査」を反映したことが原因です。具体的には、商品・非商品販売が下方改定になったので、商品・非商品販売は控除項目ですから、政府最終消費支出が上方改定になってしまいました、といっても、実際は微々たる影響です。

そして、公的固定資本形成は、▲2.7%と、1次の▲3.4%から上方改定になりました。これは、建設総合統計の3ヶ月目が出たのでそれを使った影響です。

2010年9月12日 (日)

4-6月期2次QE(2)

引き続き、個別需要項目別に見てみます。

まずは、内需ですが、0.0%と、1次の▲0.2%からプラスに改定になりました。この要因は、主に民間企業設備と民間在庫品増加の上方改定でして、いずれも法人企業統計が入ったことによります。

具体的には、民間企業設備から。

法人企業統計では、設備投資の季節調整済前期比は6.4%でした。ただ、法季は回答企業の違いなどで断層が生じることがあり、しかも、今回はサンプル替えのある4-6月期ですので、その影響を受けている可能性があります。実際に、断層を修正したところ、ここまでの伸び率ではないようでして、それでも、1次QEのときよりは高かったので、上方改定となりました。

なお、前回の1次QEから、需要側の仮置方法を変更していますが、その結果はどうだったかというと、従来の方法よりも高めになっていました。ですので、改定幅は従来よりは小さくなっていたということになります。

ただ、それでも、やっぱり需要側の数字が高かったので、1.0%の上方改定となりました。GDPへの寄与度でいうと0.1になります。

次に、民間在庫品増加ですが、これも、法人企業統計が入って再推計となります。といっても、すべてではなくて、民間在庫は、「製品在庫」、「流通在庫」、「仕掛品在庫」、「原材料在庫」の4形態に分かれるのですが、「仕掛品在庫」と「原材料在庫」について、法季を使います。1次の段階ではARIAMモデルによる時系列予測です。

これが2次で法季を使って再推計したところ上方改定になりました。全体で前期比寄与度0.1だけ上方改定となり、全体で前期比寄与度▲0.1となりました。

この点は、1次QEのときにもいろいろ批判を受けたのですが、ARIMAモデルによる推計値は▲0.2でした。これは、実は1-3月期の2次QEの時点で公表しているのですが、4-61次QEになって、「▲0.2は低いのではないか」というコメントが結構ありました。

この点も、時系列モデルでやっていることに加え、事前に情報がないと、民間のエコノミストの人たちも予想のやりようがないのでやむを得ないのですが、この部分でこういう批判を受けるのは結構つらいものがありました。。。

何かいい方法がないか、引き続き考えてみたいとは思います。

今回の2次QEで、比較的大きく改定があったのはこんなところです。

2010年9月10日 (金)

4-6月期2次QE(1)

本日2次QEを公表しました。

http://www.esri.cao.go.jp/jp/sna/toukei.html#qe

今回の2次QEは、法季の影響がもろに出た感じです。

実質季節調整済前期比で、0.4%と1次QEの0.1%から上方改定です。小数点2桁までみると、1次:0.10%⇒2次:0.37%でしたので、0.27%の改定でした。

年率で見ると、1.5%でした。(1次QEは、0.4%)

内訳を見てみると、

GDP 0.4% (1次 0.1%)

民間最終消費支出 0.0% (1次 0.0%)

民間住宅 ▲1.3% (1次 ▲1.3%)

民間企業設備 1.5% (1次 0.5%)

民間在庫品増加(寄与度) (0.1) (1次 (0.2)

政府最終消費支出 0.3% (1次 0.2%)

公的固定資本形成 ▲2.7% (1次 ▲3.4%)

公的在庫品増加(寄与度) (0.0) (1次 (0.0)

輸出 5.9% (1次 5.9%)

輸入 4.1% (1次 4.3%)

という感じです。

これを見ると、民間企業設備、民間在庫品増加、公的固定資本形成が主な上方改定要因であることが分かります。

一方で、数字では出てきませんが、民間最終消費支出は少しだけ下方改定でした。

今回のQEの概略を言うと、民間企業設備、民間在庫品増加は「四半期別法人企業統計調査」を反映して、公的固定資本形成は、「建設総合統計」の3月分を反映して、それぞれ上方改定になりました。

今回は、法人企業統計の影響がそのままでたという感じです。

1次のときに、「低すぎるのではないか?」ということをよく言われたのですが、結果上方改定になってしまいました。。。

でも、そんなこと言われても、法人企業統計が出てみないと、高いのか低いのかも分からないので、なんともやりようがありません・・・

改定幅はできるだけ小さいほうが、世の中を惑わせずにすむのですから、できるだけ改定しなければ良いとは思っているのですが、法季の結果次第になってしまうので、推計担当者としても非常につらいところです。

2010年9月 9日 (木)

無償化Q&A

ちょっと前の話になりますが、民間エコノミストの方が、この前公表した「授業料無償化」のQ&A(http://www.esri.cao.go.jp/jp/sna/faq.html#15)も参考にしていただき、いろいろと解説レポートを書いてくれていました。

内容は、CPIのウェイトの話ではあったのですが、その中でSNAGDP?)における取り扱いも書いていただいており、少しは参考にしていただいたような雰囲気がありました。

正直、こういう感じで少しでも役に立ったのであれば、やったかいがあったと非常にうれしく思います。(役に立ったように見えるだけかもしれませんが(笑))

本当は、もう少しいろいろなことについてのQ&Aとかを書きたいのですが、なかなかやっている余裕もなくてできていません。

『統計ユーザー』の方の作業に、『統計メーカー』のリリースが少しでも役に立つのであれば、これこそ正しく私がやりたいと思っていることですから、力不足ながら、これからも、こういうことをどんどん進めて行きたいと思っています。

(なお、本件については、一部誤解を生みやすい書き振りがあって、その誤解に基づいた質問が結構きてしまい、その誤解を解くのに苦労しました(笑)。(しかも内部から!)

コメントを書いていただいた民間エコノミストの人は、良く分かって書いていただいているのですが、やっぱり、世間一般(というか内部も?)からすると、SNAって、なかなか理解しにくいんでしょうね。)

2010年9月 7日 (火)

公務員住宅産業(2)

前回は、比較を可能とするため、公務員住宅についても「産業化」している、ということをご説明しました。そうすると、具体的に、公務員住宅を「産業化」するということは、どういう取り扱いになるのだろうか?と疑問が出てくると思います。

それについて、簡単に説明すると、公務員住宅についても、帰属家賃と同様に、「借りている公務員から公務員住宅産業に家賃を支払っている扱いにしている」、ということなのです。

それが、「差額家賃」というもので、考え方としては、近辺の住宅賃貸料と比較して、公務員住宅が安い分は、政府から雇用者たる公務員(制度別には「家計」)への家賃補助が支払われたと擬制します。この「差額家賃」は雇用者報酬に入ってきます。あとは想像が付くかと思いますが、この「差額家賃」分は、家計から「公務員住宅産業」に支払われたものとされます。

これは、帰属家賃と比べてみると良く分かるのですが、結局、「家賃が安い分(又は持ち家の場合は無料)については、近辺の賃貸住宅の賃貸料から擬制して「想像上の」家賃を推計し、それを支払っているものとみなす」ということなので、まったく帰属家賃とこの差額家賃は同じなのです。

普段はあまり疑問に思わないことでも、良く考えてみると、「意外に深い話が潜んでいる」

という良い例だなぁ、と思った一件でした。

2010年9月 5日 (日)

公務員住宅産業

また、某中央銀行の担当者からの面白い質問です。

(ちなみに、皆さんこういうとN本銀行だと思うかと思いますが、海外の中央銀行からの問い合わせという可能性もありますので、その点は早合点しないで下ください。(実際に、海外の中央銀行などからの問い合わせもあります。)一応、書いている本人は、名前を伏せているつもりなので(笑))

さて、内容は

 なぜ、「公務員住宅」は、「一般政府」でなく、「公的非金融産業」に格付けされているのか?公務員住宅は、賃貸料も安いので、市場性はないと思うが。。。

というものでした。

これは、答えるのに深刻に悩んでしまいました。見てみると、かなり過去から(今のSNAは93SNAなのですが、その前の基準の68SNAの時から)ずっとそうだったようで、調べても、何でこうなっているのか分かりませんでした。

そこで、頭の中を白紙にして考えてみたところ、恐らく、こういうことだろうという考え方が浮かんできました。当時の経緯は分からないのですが、考え方としては、恐らくこの考えで間違ってないだろうと思います。

まず、SNAでは、住宅についての特殊な取り扱いをしているということを思い出していただきたいのです。具体的には「帰属家賃」という概念のことです。

これについては、以前、この場でもご説明したことがあるのですが、一言で言ってしまうと「住宅産業については、国によって、また同じくにでも、持ち家の比率に大きく違いがあって、その比率が違う国、時代とでは比較ができなくなってしまうので、持ち家については、『持ち主自らが自らに住居を貸している』とみなして、「産業化」し、比較可能性を確保している」ということです。

そのため、民間最終消費支出の中に、「帰属家賃」が含まれているのですが、実は、公務員住宅についても(民間の社宅もです)同じようなことが言えることがお分かりいただけるのではないでしょうか?

というのは、公務員住宅が多い、少ないということの違いで、住宅産業の経済規模が異なってしまうことになってしまう可能性がある、ということです。公務員の規模は小さいですけど、これは、民間の企業でも、社宅を安く(又は無料で)貸していたとしたら、結構影響は大きそうです。しかも、国によって、会社が社宅を貸すことが普通の国もあれば、そのようなことは一切しない国もあるでしょうから、比較するとき後者の国がSNAが大きくなってしまいます。

そういったわけで、恐らく住宅については、比較可能性のために、徹底して「産業化」している、ということが実態なのだと思います。

2010年9月 2日 (木)

政府最終消費支出の減耗(3)

一番最初に、「日本のSNAは支出側がメインでありすぎる」と書きました。これがどういう意味かというと、それは、GDP(分配側)を見れば分かると思います。

つまり、

 GDP(分配側) = 雇用者報酬 + 生・輸税 + 固定資本減耗 + 営業余剰

となります。

分配側のGDPには、もともと固定資本減耗は入っているんです。なので、政府最終消費支出の「価値」を測るときに、分配側の見方を使っているだけ(何度も言うように、市場価格が存在しないので。。。)、ということなのに、それが2重計上に見えるというというのは、やっぱり、支出側しか注目されないからなんだろうな、と思ってしまうのです。

ちなみに、諸外国ではやはり生産側がメインのところが多く、その場合、

 生産 - 中間投入 = GDP(生産側)

を求め、こちらを正しいものとみなして、これを、

 GDP(生産側) = GDP(分配側)

   = 雇用者報酬 + 生・輸税 + 固定資本減耗 + 営業余剰

とやっています。日本のように、支出側が正しいとみなしている国は少数派みたいです。

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