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2010年6月

2010年6月29日 (火)

支出側?生産側?

この前、面白い質問がありました。

「生産側のGDPでは、産出から中間投入を控除して求めてると思うのですが、支出側のGDPでは、ちゃんと控除されてるのですか?」

というものでした。非常に興味深いというか、どう応えたらいいか悩ましい質問です(笑)

答えは、多分「はい。」なのですが(笑)、それだけではわけが分からないので、私も自信は無いのですが、少し考えながら、この質問についての答えを書いてみようと思います。

まず、一言で言ってしまえば、GDP(支出側)は、

GDP(支出側)= 最終消費支出 + 総資本形成 + 輸出 - 輸入

ですから、当然、中間消費はここには出てきません。あくまで、最終消費支出(民間と政府)ですので、中間消費ではありません。だから、控除されていると言うより、「中間消費は入っていません」というのが、紋切り型ですが正しい答えです。ただ、これではやはり、ちょっと誤解というか、中途半端な理解になってしまうような気がします。

その点を少しでも分かりやすくするため、次の質問について考えてみたいと思います。

「中間投入が増えたら、GDPは増加しますか?」

当然増えません。

では、もう一ひねりして、以下の質問です。

 「ある産業が生産する財は、すべて他の財・サービスの生産のための中間投入のために使われることとします。その場合、その産業の生産する財はGDPに含まれるのでしょうか?」

こういう理詰めな質問をされると、答えるときも理詰めで考えていかないと分かりませんね(笑)

2010年6月28日 (月)

ストック編(続き)

昨日少し書いた、政府についての「純資産」の意味づけについて少し書きながら考えてみたいと思います。

昨日は、SNAでも制度部門ごとの貸借対照表があり、当然その中で「資産」-「負債」で定義される「正味資産」の項目があると書きました。ただ、その内訳は、企業会計のように、株主資本などに細かく分けているわけではなく、その点は、むしろ公会計と同じ書き方になっているというようなことでした。

で、公会計でも、この部分を「資産・負債差額」として一括計上しかしていないのは何でなのだろうかと考えてみました。昨日も書いたみたいに、政府に対する資本って何かわからない上に、資本の取引が存在しないから、あえて、取引可能な株主資本と未現実利益に分ける必要性がない、ってことなのかなと思いました。調べてみても、HPとかでは、あまりはっきり書いてあるのが無いのですが。。。

さて、内訳の意味は相変わらず分からないのですが、この「資産・負債差額」にあたる「正味資産」の意味は何なのか少し考えて見ます。「資産」=「負債」+「正味資産」ですから、ある制度部門が持っている資産について、見合いで、「負債」と「正味資産」に分けられるということですが、このうち、「負債」は返さなきゃいけない債務ですから、『資産の見合いのうち、まだ払っていない部分』、と見れるでしょうか?そうすると逆に「正味資産」は、『資産のうち既に払った部分』、と考えられるような気がします。

なお、H20暦年末の一般政府の「正味資産」は約11.8兆円で、プラスですが、過去から徐々に減ってきてはいます。

長期債務残高の話をするときに、「資産」と「負債」を見合いで考える必要がある、という意見がありますが、こうやって考えてみると、「正味資産」がプラスだから、まだ借金できるという問題でも無いような気がします。というのは、今の話のとおりだとすると、これ以上負債が増えるということは、「正味資産よりも負債の比率が高くなり、それは、まだ払っていない部分、言い換えると将来世代が払わなければいけない部分が増える」という言い方ができます。別のもっと厳しい言い方をすると、これって、将来世代への付け回しともいえますよね。

ただ、「負債」といってもその使い方に違いがあって、経常経費に使ってしまえば何も残りませんが、設備投資に使えば、(減耗はありますが)「資産」として残る部分があり、右側と左側が両建てで増えるので、「正味資産」には影響しない(はず)です。これが、赤字国債は特別法によらなければいけない一方で、建設国債は財政法に規定があるということにつながると思います。むしろ、「正味資産」については、こういう見方に使ったほうがいいような気もします。

(なお、厳密に、発生主義で減耗等も計測できていたのであれば、実は、正味資産はゼロでも良い、という考え方もあるのではないかと。。。(笑))

ストック編

ストック編についても、少しだけ書いてみたいと思います。以前から書いてみたかったのですが、なかなか書いている機会が無くて。。。

ちょっと話がずれますが、以前どこかで(確かGWの深夜か早朝)、高橋洋一氏が、「財務省は長期債務残高だけを出して、大変だというが、日本には見合いの資産もある。債務だけでなくて資産との見合いで見るべき。」といっていました。そして、その直後、堀江氏が、「何で、政府って、歳入と歳出の予算・決算だけの単式でやっていて、企業みたいに複式にしないんですかね?」っていっていました。

一応、SNAは実は複式で記入しているし、ストック編では、制度部門別の貸借対照表もでてきます。ということは、一応、企業会計でいう資本(新会社法では「純資産」?)にあたるものも、資産、負債とその調整項目という形で出てきます。SNAでは、「正味資産」という項目になります。バランス項目ですから、当然、「資産」=「負債」+「正味資産」です」、これも、企業会計の貸借対照表と同じですよね。

なお、少し違うのが、企業会計だと、純資産は、実現した株主資本と未現実の利益による資産とかに分かれますが、「正味資産」は細かくなっていません。(何でなんでしょうか?もう少し勉強してみます。)ただ、政府部門についていえば、そもそも、政府に対して資本概念を入れる意味はあまりないと思います(そもそも、政府に対する資本って何かわからない上に、取引概念がない)ので、この部分は、「資産と負債を羅列して、その差額を取ったもの」というような意味しかないといえるかもしれません。

そもそも、公会計でも、この部分は「資産・負債差額」として一括計上ですし。。。

ただ、SNAだと実際に出るのが1年遅い(各組織の決算を元に推計するため、どうしても、1年後の年末から2年後の年始というタイミングになってしまう。。。)ことと、国の一般会計とかだけで出てこないので、あまり印象が無いんでしょうね。

2010年6月26日 (土)

ISバランス番外編―基礎的財政収支(プライマリー・バランス)(3)―

体調不良で少し更新をサボっていました。

プライマリー・バランスについては、(2)までで、大体書きたいことは書いていますが、この間一点だけ、蛇足的なことを考えていたので、それについて書いてみたいと思います。

財務省が政府予算案の説明資料として、毎年出している資料なのですが、この「予算のポイント」という資料の中で「一般会計プライマリー・バランス」というものが出てきます。

http://www.mof.go.jp/seifuan22/yosan001.pdf

これの、定義として、

(注3)一般会計プライマリー・バランスは、「国債費-公債金」として簡便的に計算したものであり、SNAベースの中央政府のプライマリー・バランスとは異なる。

と書いてあります。『簡便的』と書いてある上に、SNAベースとも異なると書いてあるので、何かが異なるはずです。では、そこで、どこが異なるのか、少し考えてみたいと思います。(あくまで、「ちょっと考えてみる」という程度の軽い考えです。)

まず、一般会計だけと、特別会計や独立行政法人を含むという違いがあるのですが、これはとりあえずおいておいて、「国債費-公債金」の意味を考えて見ましょう。

『国債費』は歳出側の概念で、国の一般会計歳出の中で、借金(国債や借入金)の元本償還、利子支払い等に充てるための費用です。

『公債』は、国が、歳出の財源を得るために発行する債券のことですので、公債金となると歳入側の概念で、公債によって得た財源という意味で考えたら良いでしょうか。。。

では、プライマリー・バランスとはなんだったかもう一度考えてみると、

プライマリー・バランス(PB)とは、その時点で必要とされる政策的経費を、その時点の税収等でどれだけ賄えているかを示す指標です。

ということでした。歳入面で、「歳入全体-公債金」と考えてみると、これはまさしく「その時点の税収等」ということになります。歳出面で、「歳出全体-国債費」と考えてみると、「国債費」は債務償還費と利払い費等ですから、「政策的経費」といって良いような気がします。ただ、この「等」が気になります。恐らくですが、国債発行に関する事務費でしょう。事務費を「政策的経費」と言うかどうかはなんとなく微妙な感じがしますが、多分、国債発行に当たっての通信費とか印刷費とか、広報費あたりなのでしょうから、一般行政経費として政策的経費に含むのが正しいような気はします。ただ、公債発行額全体から見たら微々たるものなので、大勢に影響は無いでしょう。そうすると、歳出面で、「歳出全体-国債費」とは、「政策的経費-公債発行の事務費」という感じでしょうか。

以上より、

 公債金 = 歳入全体 - その時点の税収等

 国債費 = 歳出全体 - その時点の政策的経費 + 公債発行の事務費

ですから、

 国債費-公債金 = 「歳出全体-その時点の政策的経費+公債発行の事務費」

                      -「歳入全体-その時点の税収等」

 = その時点の税収等 - その時点の政策的経費 + 公債発行の事務費

 

となります。ここで、その時点の税収等の中には、当然のことながら、政府が保有している資産に対する利子収入もありますので、以下のように変形できると思います。

 = その時点の税収等(除:利子収入) - その時点の政策的経費

   + 利子収入 + 公債発行の事務費

では、SNAにおけるプライマリー・バランスの定義と比較してみると、

「プライマリー・バランス」=「純貸出()/純借入()」+「支払利子」-「受取利子」

ですから、「利子収入」と「公債発行の事務費」の部分が異なっています。

つまり、簡便的な計算方法では、以下の点が異なってきそうです。

 ①利子収入が含まれてしまっている

 ②公債発行の事務費等が含まれてしまっている

(なお、より本質的に、③SNAは特別会計、独立行政法人などの一部を含んでいる、というのもありますので。。。)

という点が異なる主な理由だと考えられます。

なお、①については、HPの「日本の財政関係資料」のP16にも書いてるので、結構有名な話なのかもしれません。

http://www.mof.go.jp/jouhou/syukei/sy014_21.pdf

2010年6月23日 (水)

ISバランス番外編―基礎的財政収支(プライマリー・バランス)(2)―

では、プライマリー・バランスがゼロかというのはどういう状況なんでしょうか?

先ほどの定義からすると、歳入のうち国債収入以外の部分と歳出のうち国債償還費と利払い費以外の部分の大きさが同じということになります。つまり、税収等の収入で、国債の支払いと利払い以外の政策経費を払いきれているという状況になります。

このときに一国の国債残高が一定となっているかというと、決してそうではなくて、利払い費の部分が問題になります。つまり、払っているのは、過去の国債費とその金利ですから、その支払い分として、その金利部分は新たに借金をしていることになります。だから、利払い費分、実は、国債残高は増えていることになります。

ただ、ここで考えなければいけないのは、国債残高は対GDP比で見ている点です。プライマリー・バランスゼロのときに、債務残高対GDP比がどうなるかというと、

 ・金利 > 成長率 ⇒ 債務残高対GDP比は増加

 ・金利 = 成長率 ⇒ 債務残高対GDP比は一定

 ・金利 < 成長率 ⇒ 債務残高対GDP比は減少

となります。ということは、逆に言うと、対GDP比で国債残高が一定又は減るためには、成長率より金利が低ければよいわけです。

この点が表面化して議論されたのが、2006年の小泉内閣のときの歳出歳入一体改革の議論です。あの時は、竹中平蔵氏が総務大臣となり、経済財政政策担当大臣だった与謝野議員と大バトルになりました。あの時は、竹中元総務大臣が、「金利は成長率と同じか低く見積もるべき」、という立場で、与謝野元経済財政政策担当大臣が、「これは、財政再建の目標なのだから、前提は堅めに見積もるべきであり、金利>成長率とするべき」という立場でした。

私は、このとき、直接ではなかったものの、隣の課におり横目で見ていたのですが、この話だけで3ヶ月は無駄にしたという印象でした。本当に不毛な議論だと感じていました。当時は、マスコミなどからも神学論争と揶揄されていた気がします。

当時の議論は、日本経済の将来予測ということ以上に、国民負担増(もっと安直に言うと、消費税の問題にも関わる)に関わる政治闘争の意味合いまでもっていたような感じもしたので、私がこれについて判断できるだけの情報も無いのですが、純粋に事務方として意見を言えといわれると、「目標値なんだから、前提は固め」という方が自然だろうな、とは思います。どうも、各国でも、少し厳しめの前提で計画を立てないと、財政再建というものは成功しないみたいですし。。。(ちなみに、竹中元総務大臣は、『成長率>金利』を主張するとき、G.Mankiwの論文を根拠としていましたけど、この論文って、そもそも、"The Deficit Gamble"というタイトルでして、直訳すると、「(財政)赤字のギャンブル」とでもいう意味でしょうか???実は、私はまだ原典を読んでませんが、結論としては、「こういうギャンブルはするべきではない」となっているということです。)

参考:"The Deficit Gamble", Journal of Money, Credit and Banking, Vol. 30 (November 1998): 699-720.

さて、話をもとに戻すと、プライマリー・バランスがゼロとなると、必要な政策経費は『新しい』借金に頼らず賄われていて、金利とGDP成長率にも依存するものの、債務残高のGDP比は安定的になる、と言えるかと思います。

というわけで、こういう理由から、プライマリー・バランスが注目されているのです。

なお、以前に引用させていただいた、財務省のHPの資料(「日本の財政関係資料」)のP15にこんな記述がありました。

http://www.mof.go.jp/jouhou/syukei/sy014_21.pdf

 ○財政収支

  PBが均衡したとしても利払い費分だけ債務残高の実額は増加してしまいます。これを止めるためには、利払い費を含む財政収支を均衡させる必要があります。この財政収支の均衡とは、新たに借金する額と過去の借金を返す額が同額である状態を言います(以下略)。

もうお分かりかと思いますが、これって、正しく「純貸出()/純借入()」のことですよね(笑)

2010年6月21日 (月)

ISバランス番外編―基礎的財政収支(プライマリー・バランス)(1)―

ちょっと前に、ISバランス(正確には『純貸出(+)/純借入(-)』)の話を書きましたが、そのときに派生で少し書いた、プライマリー・バランスについてもう少し書いてみます。

日本語で言うと、基礎的財政収支です。これは、小泉内閣のときに、よく出てきた言葉(今も当然出てきますが)ですので、ご存知の方も多いと思いますが、まずは、その定義と言うか計算方法から書いてみます。これは、国民経済計算年報の付表6に出てくるのですが、

 「プライマリー・バランス」=「純貸出()/純借入()」+「支払利子」-「受取利子」

と書いてあります。つまり、この前書いたISバランス、正確には「純貸出()/純借入()」から、ネットで受け取った利子を引いたもの、ということになります。

ここで、プライマリー・バランスの政府の財政面での意味を見てみましょう。

財務省のHPに良い資料がありました。(「日本の財政関係資料」)

http://www.mof.go.jp/jouhou/syukei/sy014_21.pdf

これのP1517枚目)に、プライマリー・バランスについての説明が書いてあります。引用させていただくと、

 ○プライマリー・バランス

  プライマリー・バランス(PB)とは、その時点で必要とされる政策的経費を、その時点の税収等でどれだけ賄えているかを示す指標です。我が国の現状は、政策的経費が税収等を上回り、PBは赤字となっています(以下略)

ということです。つまり、歳入のうち国債収入以外の部分と歳出のうち国債償還費と利払い費以外の部分のどちらが大きいか、ということです。(正確には、国も資産を持っているので、その利子収入も引きます。)

今まで、「純貸出()/純借入()」とは何か、と書いてきましたが、それを大雑把に書くと、

①まず、一部門が生み出した付加価値に「財産所得」とかの移転の調整をして、可処分所得となる。

②その可処分所得から、消費(政府最終消費支出)を引いたものが貯蓄になる。

③その貯蓄と総固定資本形成の差が「純貸出()/純借入()」となる。

ということです。なので、政府が使えるお金(正確には、借金をしないで使えるお金)と、実際に、消費(行政サービスのための消費と考えてください。(512日の記述を参照))と総固定資本形成(主に公共事業などのお金ですが)の合計のどちらが大きいか、を示しているわけですから、正しく、「その時点で必要とされる政策的経費を、その時点の税収等でどれだけ賄えているかを示す指標」というのとぴったりですね。ただ、「純貸出()/純借入()」には、財産所得の調整のところで、国債などの利払い費などが含まれてしまうので、それを差っ引いてあげたものが、プライマリー・バランスになります。

そうすると、定義どおり、

 「プライマリー・バランス」=「純貸出()/純借入()」+「支払利子」-「受取利子」

ということになります。

2010年6月20日 (日)

GDP統計の時系列分析の活用

本当は当日書きたかったのですが、ちょっと前(2次QE公表日)に、統計学、特に時系列分析の専門家の先生に、QEの推計方法についての意見をいただく機会がありました。

(実名を挙げてしまっていいのか迷うので、言わないでおきますが、その分野では超著名な先生です。)

いろいろなことを時系列分析の観点から見ていただいて、アドバイスをいただいたのですが、特に、こちらからお願いしたのは、次の2点でした。

 ①1次QEのときの、民間企業設備の需要側推計の伸ばし方

 ②1次QEのときの、仕掛品在庫と原材料在庫の予測の仕方(現在は、ARIMAモデルで予測)

内容については、先生の成果ですし、いずれ正式にアウトプットを公表する機会があると思うので、細かくは書きません。

(項目を見ただけでも、分かる方は、夏までになることになっている、QE推計の見直しの関係だとお分かりだと思います。ですので、そこまでお待ちください。)

ただ、面白かったのは、QE推計を詳細に見ると、結構細かく複雑なことをやっていて、統計学の先生方が普段取り扱っている分野『ではない』話が出てくる、非常にマニアックな内容になる、ということ。それと、在庫の系列自体が安定していなくて(具体的には、TC系列自体が。。。)、新しい期の推計値を加えるたびに、モデルが変わってしまうとか、在庫は不規則変動(I系列)がかなり大きくて、予測しろということになると、その不規則変動を予測するということになり、かなり難しいとか、そんなことが興味深かったです。

(後半の、不規則変動を予測するって、不規則変動は不規則なんですから、予測なんて無理なんですよね、って私は思ってしまいます(笑))

ただ、在庫のTC系列自体が安定していなくて、新しい期の推計値を加えるたびに、モデルが変わってしまうというのは、季節調整をかけなおすと、過去にさかのぼって改定されるということについての、本質的な問題なんですよね。やっぱり時系列の専門家の先生に見てもらってもそうなるか、って、思いました。この点は、悩みが深いです。

いずれにしても、こんな感じで、事務方としても、一生懸命QEをより良くしようと努力はしています。先生も、SNAの推計には興味を持っていただいているようでしたので、今後も、いろいろとお知恵をいただいて、QE推計を改善していきたいと思っています。

2010年6月18日 (金)

1-3月期2次QE(6)

2次QEの話に戻って、最後に、一応21年度についても。

21年度は、実質が、1次QEの▲1.9%から▲2.0%に下方改定でした。

一方で、1-3月の名目、実質ともに上方改定でしたから、この前少し書きましたゲタは上方改定になります。もう少し細かく見ると、

       1次    2次

21年  

4-6月期  1.8% ⇒  1.7% (下方改定)

7-9月期   0.1% ⇒  0.1

1012月期  1.0%  ⇒  1.1% (上方改定)

22年

1-3月期  1.2% ⇒  1.2

となっています。年度の前半が下方改定で、年度の後半が上方改定ですから、ゲタは上方改定になることが良く分かると思います。見た目は、1次QEの1.5%と変わりませんが、わずかに上方改定です。

名目は、1次QEの▲3.7%から見た目は変わらず、▲3.7%でした。実際は、端数でわずかに上方改定でした。細かくみると、

       1次    2次

21年  

4-6月期  0.2% ⇒  0.2

7-9月期 ▲0.3% ⇒ ▲0.3

1012月期  0.3%  ⇒  0.3

22年

1-3月期  1.2% ⇒  1.3% (上方改定)

ということで、年度後半が上がっているので、ゲタが上方改定になります。こちらは、1次QEの1.0%から1.1%に上方改定となっています。

1-3月期の2次QEについてはこんなところです。

2010年6月17日 (木)

1-3月期2次QE〔番外編〕-民間企業設備1次QE-(3)

この状態で、Q2の1次QEのことを考えて見ましょう。

Q2の供給側が121となったとします。Q1のときと同じく、簡単に計算するために、供給側、需要側、統合値すべてについて季節指数が変わらないとします。すると、Q2の供給側の季節指数は100ですから、季節調整済の供給側推計値は121となります。すなわち、Q2も前期比10%となります。

供給側推計値Q2

原系列 121

季節指数 100

季節調整系列 121

ここで、需要側を考えると、

需要側推計値Q2

季節調整系列 110

季節指数 110

原系列 121

となります。ここで、統合すると、

統合値Q2

原系列 121

季節調整指数 105.8

季節調整系列 114.37

となります。統合値のQ1の季節調整系列は、104.91でしたから、季節調整済前期比は、Q2は、9%ということになります。供給側と需要側の季節調整済前期比をともに10%にしたのに、統合値はそれと異なっていることがお分かりいただけると思います。

このとき、需要側の原系列の前年同期比は、たまたま10%です。一方で、統合値の原系列前年同期比は約14.4%となります。

では、ここで、Q2の2次QEで、需要側が統合値と同じ前年同期比である14.4%となったとします。具体的には、需要側の原系列が、125.8くらいになります。

この場合、

需要側原系列 125.8

供給側原系列 121.0

統合値原系列 123.8

統合値季節調整値 117.0

となります。統合値のQ1の季節調整系列は、104.91で変わりませんから、季節調整済前期比は11.5%と、約2.5%の上方改定となります。

つまり、2次QEの需要側の前年同期比が、1次QEで統合値の前年同期比と同じくらいだったといって、それで改定がないというわけではないということが分かります。今回の場合、1次QEでは、需要側の前年同期比が10%だったわけで、そうすると、2次ではこの10%より上か下がで、改定方向が決まってくるわけです。なんだか、こういうことがあまり知られていないような気がします。。。

というわけで、長々と、推計マニュアルを解説してみました。

なお、今回は、簡潔に話すために、

①2次QEでは、供給側も改定される

②季節調整は毎回かけなおすため、季節指数も毎回変わる

③ソフトウェアはこの統合値とはまた別に外付けされている

という点は考慮していませんので、実際はもう少し複雑になります。ただ、季節パターンが異なるので、需要側、供給側と統合値は結構異なってくるということが少しでも伝わればと。。。

2010年6月16日 (水)

1-3月期2次QE〔番外編〕-民間企業設備1次QE-(2)

昨日の続きです、まず、以下のような系列で考えてみましょう。

供給側

Q1 120

Q2 100

Q3 100

Q4  80

需要側

Q1  90

Q2 110

Q3  90

Q4 110

この季節パターンで、過去からずっと続いていたとします。すると、季節調整後の数字は、需要側、供給側ともに、100で、季節調整済成長率はずっと0%であるということはお分かりいただけると思います。(季節調整はそんなものだと思ってください。)

そうすると、季節指数は、

供給側

Q1 120

Q2 100

Q3 100

Q4  80

需要側

Q1  90

Q2 110

Q3  90

Q4 110

となります。で、統合比率は、供給側0.42、需要側0.58ですから、

統合値

Q1 102.6

Q2 105.8

Q3  94.2

Q4  97.4

となります。この暦年平均も100ですから、季節指数も、

統合値

Q1 102.6

Q2 105.8

Q3  94.2

Q4  97.4

となります。ここで、Q1の供給側が132となったとします。ここで、簡単に計算するために、供給側、需要側、統合値すべてについて季節指数が変わらないとします。

(本当は、そのようなことは無いと思いますが、まあ、長い間ずっとこのパターンで続いていたとしたら、1期だけ数字が変わったとしても、季節指数はそれほど大きく変わらないと考えて良いのではないでしょうか。。。)

すると、Q1の供給側の季節指数は120ですから、季節調整済の供給側推計値は110となります。すなわち、前期比10%となります。

供給側推計値Q1

原系列 132

季節指数 120

季節調整系列 110

ここで、需要側を考えると、

需要側推計値Q1

季節調整系列 110

季節指数 90

原系列 99

となります。ここで、統合すると、

統合値Q1

原系列 112.89

季節調整指数 102.6

季節調整系列 110

となり、季節調整済前期比10%となります。供給側、需要側、統合値すべての季節調整済前期比が同じになりました。

では、ここで、2次QEに法季等の数字がはいり、需要側の2次QEの値が、実際は過去のパターンと同じく、原系列で90だったとします。この場合、

需要側原系列  90

供給側原系列 132

統合値原系列 107.64

統合値季節調整値 104.91

となり、統合での前期比は、1次QEの10%から2次QEの4.9%へと下方改定になったということになります。これは、供給側の季節調整値10%と需要側の季節調整値0%を供給側0.42、需要側0.58の統合比率で求めたもの(大体、4.2%でしょうか?)とは異なることが分かります。

2010年6月15日 (火)

1-3月期2次QE〔番外編〕-民間企業設備1次QE-(1)

民間企業設備は、1次QEでは、供給側の統計(すなわち生産動態統計等)のみで推計していると言われています。この言い方は、間違いではないのですが、厳密に正確かというと、少し誤解を招く言い方かなという気がします。

この点について、よく、1次QEは、単純に供給側の統計の伸び率だけで、公表値が延長推計されているというような言い方をされます。これは完全に誤解です。

では、具体的にどのような推計手順になっているのか、少し細かく書いてみようと思います。

QE推計マニュアルに、具体的な推計方法が書いてありますから見てみましょう。

http://www.esri.cao.go.jp/jp/sna/qe_manu/060712/suikeiho-kaitei.html

(P47です。

マニュアルでは、

  1次QEと2次QEで基礎統計の利用範囲が異なる民間企業設備については、両者の原系列の季節パターンが異なる可能性がある。このため、1次QE時に、新しい推計値を、前期までの2次QEに単純に接続して季節調整を行うと、季節パターンの差が季節調整値の動きを歪める恐れがある。

  そのため、1次QEでは、需要側推計値は作成できないが、その季節調整済前期比増減率が供給側推計値の季節調整済前期比増減率と同じであると仮定して需要側推計値を作り、需要側推計値の予定季節指数で割り戻した原数値も作成する。その上で、2次QEと同様の方式で需要側推計値と供給側推計値を統合する

と書いてあります。つまり、需要側推計値とと供給側推計値の季節パターンが異なることから、『統合値』を単純に供給側の伸び率で伸ばすのではなく、需要側推計値の季節調整済前期比を、供給側推計値の季節調整済前期比と同じとして延長して、その後、季節指数で割り戻して需要側の原系列を求め、それを統合する、というやり方をしています。

意味が分かりにくいかと思いますが、

× 供給側の統計の伸び率だけで、公表値を延長推計

○ 供給側の統計の情報を用いて、供給側推計の季節調整済前期比と需要側推計の季節調整済み前期比を等しくして、求めた供給側推計と需要側推計を統合

という違いがあります。これでも意味が分かりにくいかと思います(笑)推計値が結果としてどのように変わるのかも分からないと思います。ですので、もう少し細かく、実際に数字を入れて書いてみようと思います。

2010年6月14日 (月)

1-3月期2次QE(5)

名目については、1次QEの1.2%から上方改定して1.3%になりました。

内訳としても実質とほぼ同じ傾向です。

ひとつだけコメントすると、輸入のデフレーターが21年1-3月期から結構激しく変わっているので、輸入の実質は過去に遡って改定して、名目は改定しないという感じになっています。これは、日銀が公表している輸入物価指数の遡及改定の影響です。石炭関係の価格の計測方法を変えたようで、その遡及改定がありました。

なお、実質は、1次QEの1.2%から1.2%ですから、デフレーターの前期比は上方改定ということになりました。名目と実質の動きが異なっていたのは、民間在庫品増加で、実質では寄与度で▲0.1%の下方改定だったところ、名目は1次QEの0.5%と同じだったので、結果としてデフレーターが上方改定になりました。

とはいっても、1次と同じく、「野菜や資源の値上がりの影響が大きい。」という状況は変わっていませんので、「デフレかどうか判断する、というようなときは注意が必要でしょう。」と書いた1次QEのときと状況はあまり変わらないと考えたほうが良いでしょう。

1-3月期について書きたいことはこれくらいです。

明日以降、可能であれば、民間企業設備の1次の推計方法について、誤解されてるんじゃないかと思う部分を書こうと思っています。

2010年6月13日 (日)

1-3月期2次QE(4)

続いて、公需です。

政府最終消費支出は、1次QEの0.5%から0.4%に下方改定になりました。これは、1次QEでは間に合わない「基金統計月報」の3月分が入ったことで、社会保障給付が下方改定になったことと、「地方公共団体消費状況調査」を反映して、中間消費が下方改定になったことを反映しています。

公的固定資本形成は、1次QEの▲1.7%から▲0.5%に上方改定になりました。公的固定資本形成は、「建設総合統計」を使っているのですが、これの3月分が思いのほか高くて、その結果、上方改定になりました。これももう少し正確に言うと、「公的住宅」は3月分が低くて下方改定に、「それ以外」は思ったよりも3月分が高くて上方改定、という形でした。「公的住宅」の割合は小さいので、全体では上方改定という感じです。

公的在庫品増加は、1次QEの0.0%から変わらずでした。

外需も、1次QEの0.7%から変わりませんでした。外需は、1次と2次では、デフレーターしか改定要因が無いので、あまり変わることはないです。

そんなこんなで、トータルで、1次QEの1.2%からわずかに上方改定(といってもほとんど変わらず)という感じでした。

1-3月期2次QE(3)

民間企業設備は、1次QEの1.0%から2次QEでは0.6%に下方改定されました。これは、主に、「法人企業統計調査」を反映させた影響です。

ただ、(2)で、民間最終消費支出の供給側の推計が上方改定になったということを書いていますが、じゃあ、民間企業設備はどうなのかというと、こちらも、供給側の推計値は上方改定になっています。なので、供給側は上方改定ながら、需要側が下方改定でして、需要側の下方の方が強くて下方改定になったという形です。

それと、正確には、需要側の推計、供給側の推計の外付けとなるソフトウェアが下方改定でしたので、これも効いています。ソフトウェアの推計は、「特定サービス産業動態統計調査」が基礎統計で、1次QEでは3月分が入っていませんでしたので、それが入ったことで下方改定になりました。

民間企業設備は下方改定と入っても、プラスです。これで、10-12月から2期連続してプラスです。後でふれますが、民間住宅投資も本当に久しぶりにプラスになりましたから、まあ、数字上は回復基調になっている、という感じもします。といっても、推計担当者が判断する話ではないので、専門家のご意見を聞きたいところですが。。。

で、今ふれました、民間住宅投資は、1次QEの0.3%から0.4%に上方改定されました。民間住宅投資は、一国全体の住宅投資を求めた後、公的住宅投資を引いて求めるのですが、今回は、一国全体の住宅投資は変わらなかったのですが、公的住宅投資が下方改定になったので、民間住宅投資は上方改定になりました。久々のプラスです。

そして、民間在庫品増加は、一部は1次QEはARIMAモデルで予測しているのですが、2次QEは「法人企業統計調査」を用いて推計します。で、予測値よりも少し低めに出たため、下方改定となりました。1次QEは寄与度0.2%でしたが、0.1%となりました。ARIMAモデルで予測しているのは、仕掛品在庫と原材料在庫ですが、この予測部分が下方改定となりました。1次から数字が入っている、残りの製品在庫と流通在庫はあまり変わらず、寄与度の変化には影響を与えませんでした。

2010年6月12日 (土)

1-3月期2次QE(2)

引き続き、個別需要項目別につらつらと。。。

まず、民間最終消費支出です。1次の0.3%から0.4%で上方改定となりました。2次QEというと、「法人企業統計」という印象が強いのか、民間設備投資が注目されるのですが、それはそれで事実ではあるのですが、実は、供給側の推計値も改定されるんです。

もうご存知の人も多いかと思うのですが、一応丁寧に説明すると、民間最終消費支出と民間企業設備については、「生産動態統計」等の供給側の基礎統計から求めた推計値と、需要側の基礎統計(消費だと「家計調査」等、投資だと「法人企業統計調査」等)から求めた推計値を、統合するという形で推計しています。そして、この需要側の基礎統計が1次QEでは使えないという印象があると思うのですが、それだけではなく、「供給側の基礎統計も、1次QEでは3ヶ月目が使えないため、2次QEでそれが加わって改定される」のです。

ということで、民間最終消費支出について簡単にいうと、

1次QE 供給側 「生産動態統計」(3月分は補外)等に基づき推計

     需要側 「家計調査」、「家計消費状況調査」(3月分は速報)等に基づき推計

2次QE 供給側 「生産動態統計」(3月分を含む)等に基づき推計

     需要側 「家計調査」、「家計消費状況調査」(3月分も確報)等に基づき推計

という違いがあります。

なお、これは、逆に言うと、民間企業設備も、供給側の推計値が改定されるということですから、実は、「法人企業統計」だけが改定要因ではないのです。ただ、実際には、法人企業統計調査だけをみて、いろいろ言われるので、その誤解を説明するのも結構大変なんです(笑)

さて、消費に戻ると、今回の場合、供給側の推計値が、1次よりも高かったので、上方改定になりました。品目で言うと、「たばこ」、「道路輸送サービス」、「自動車」などになります。「道路輸送サービス」というのは、バスとかタクシーなんかです。これらの品目は、「生産動態統計」ではなく、他の統計を使っているのですが、これもやっぱり一部は補外という形になっていて、1次の補外とずれると改定されることになります。

今回は、こういった要因で消費は上方改定となりました。ただ、供給側の「推計値が上方改定」したため、ということだと、民間企業設備はどうなのか?と思うかもしれませんが、実際に想像通りのことになってます。

2010年6月11日 (金)

1-3月期2次QE(1)

本日2次QEを公表しました。

http://www.esri.cao.go.jp/jp/sna/toukei.html#qe

2次QEは1次QEからの改定がメインになるのですが、実質季節調整済前期比で、1.2%と1次QEからそれほど変わりませんでした。小数点2桁までみると、1次:1.21%⇒2次:1.23%でしたので、わずかな上方修正という形です。

年率で見ると、5.0%でした。(1次QEは、4.9%)

内訳を見てみると、

GDP 1.2% (1次 1.2%)

民間最終消費支出 0.4% (1次 0.3%)

民間住宅 0.4% (1次 0.3%)

民間企業設備 0.6% (1次 1.0%)

民間在庫品増加(寄与度) (0.1) (1次 (0.2)

政府最終消費支出 0.4% (1次 0.5%)

公的固定資本形成 ▲0.5% (1次 ▲1.7%)

公的在庫品増加(寄与度) (0.0) (1次 (0.0)

輸出 6.9% (1次 6.9%)

輸入 2.3% (1次 2.3%)

という感じです。

これを見ると、民間最終消費支出、公的固定資本形成が上方改定し、民間企業設備、民間在庫品増加、政府最終消費支出が下方改定して、合わせて、わずかに上方改定、という形なのが分かります。

概略を言うと、民間企業設備、民間在庫品増加は「四半期別法人企業統計調査」を反映した結果、それが影響して下方改定に、民間最終消費支出は、供給側の統計である「生産動態統計」等の3月分の値が影響して、上方改定に、また、公的固定資本形成は、「建設総合統計」の3月分が影響して、上方改定になりました。

トータルの数字もあまり変わらず、また、個別品目もそれほど大きく動いてないので、1次QEのときと、全体的な感覚は変わらないと思いますが、敢えて言うと、1次QEのとき思ったほど高く行かなかったということも言われた民間最終消費支出が上方改定になりました。これは、主に、供給側の統計の3月分が入った影響です。

概略は以上なのですが、公表後、記者さんに、「民間予測とこんなに違うのははじめてだった。」と感想を言われ、ちょっと衝撃を受けました(笑)

まあ、どんな結果であっても、誰かからは批判をされる仕事と割り切って、淡々と正しく推計していきたいと思ってます。

2010年6月10日 (木)

過去の訂正。。。

以前、高校授業料無償化について書きました。

そのとき、

商品・非商品デフレーターですが(授業料はサービスなので、正確には「非商品デフレーター」です。)、それは、負担した人が家計から政府に変わった、というだけなので、デフレーターに動きが出てしまってはおかしいことになります。」

と書きました。

これは間違いなく正しいのですが、私自身が理解を間違っていたことに気づきましたので、少し補足訂正します。

実は、一部の人には、「商品・非商品デフレーター、すなわちPの部分には影響は出ません。ただ、家計最終消費支出、政府最終消費支出等のQの部分は変わるので、トータルでは影響が出るかもしれません」といってしまっており、私自身もそう信じて疑わなかったのですが、これは完全に間違いです。私自身が完全に誤解していました。

この部分の処理ですが、

政府最終消費支出 

   中間投入+雇用者報酬+固定資本減耗+生産・輸入品に課される税+現物社会給付等

    -商品・非商品販売

家計最終消費支出 

   家計の財・サービスに対する支出(除:商品・非商品販売)+商品・非商品販売

であり、名目でも実質でも、政府最終消費支出から引いた同額を、家計最終消費支出に加えているので、GDPは変わらないし、GDPデフレーターも変わりません。私が、完全に誤解していました。

そう考えると、授業料無償化は、家計負担を減らして、その負担が減った分のお金がどこに回るかというところだけにしか影響は出てきません。(QEでその影響を分析するのは、ほとんど不可能なのですけど。。。)

それと、もうひとつ訂正をしなければいけないことがあって、以前、住宅修理、リフォームについて書いたときに、そこを意味を混同して書いている部分があります。例えば、

それであれば、持家のリフォームも貸し家のリフォームも中間消費になり、GDPにはカウントされない。

とか書いています。これは、「リフォーム」という言葉を定義せずに使っていたので分からなくなってしまっていたのですが、ここでいっていたことは、住宅の「維持・補修」という意味で書いていて、大規模な改修や増改築なんかは設備投資ですから、まったく扱いは違います。

その点、ただ、「リフォーム」と書くと、設備投資に入るような大改修も入っているように見えてしまうので、その点正確性を欠いていたと思いますので、この部分の文章は、「住宅の維持・補修」について欠いているものとご理解ください。

なお、明日、2次QEです。。。

2010年6月 8日 (火)

ISバランス(6)

ようやく本題の、「純貸出()/純借入()」まできました。

この「純貸出()/純借入()」は何を意味しているのでしょうか?

久しぶりに、SNAの用語解説(http://www.esri.cao.go.jp/jp/sna/term.html)を見てみます。

純貸出(+)/純借入(-)Net Lending / Net Borrowing

実物面において、投資と貯蓄は経済全体をとれば一致するが、部門別に見ると一致しないのが普通である(例えば、家計は貯蓄超過主体である等)。このような投資と貯蓄の差は、一般にISバランスと呼ばれる。これに資本移転の受払を加えたものが「純貸出(+)/純借入(-)」であり、資本蓄積の原資と非金融資産の取得とのバランスを表している。

(後略)

例によって難しい言い方になっていますが、(5)で書いたとおり、「貯蓄」と「総固定資本形成及び意図していない投資である在庫品増加の合計」は一国全体では一致するということがまず書いてます。そして、部門別(政府とか民間企業とかです。)には、偶然でもない限り一致しないでしょう。その一致しない差額が「純貸出()/純借入()」だと言っているのです。ですから、(1)から(5)までで書いてきたことを簡潔に書いてくれているだけですね。(あまり簡潔に書かれると、分かったように見えてまったく分からなくなるんですが。。。)

そして、「純貸出()/純借入()」がプラスということは、貯蓄よりも投資が少ないということで、いわば、お金が余っているということになります。余ったお金はどこか他の部門に貸しているということになるのでしょうが、いずれにしても、資金超過と言えそうです。

つまり、「純貸出()/純借入()」をみると、一国内で、どの部門の余ったお金が、どの部門に回っているのか、そして、さらに言うと、一国全体では、余ったお金を海外に回しているのか、それとも、海外からお金を集めて固定資本形成に回しているのか、ということが分かるわけです。

誤解を恐れず簡潔に言うと、部門ごと、一国ごとの、資金の過不足が一目でわかるのです。だから、「純貸出()/純借入()」が注目されるわけです。

更に、政府部門では、もうひとつの有名な項目としてプライマリー・バランスがあります。

2010年6月 6日 (日)

ISバランス(5)

(4)ではISバランスの『S』すなわち『貯蓄』までたどりつきました。

さて、この貯蓄が何に使われるかと考えると、何かしらの金融資本又は実物資本の形で蓄積されるはずです。これが蓄積勘定、実際には資本調達勘定といいます。

さて、この蓄積活動の原資は、当然貯蓄です。そこに、手元に残ってないとして所得支出勘定の時に除いた固定資本減耗を加えます。これは、ISバランスの『I』にあたる総固定資本形成を、磨耗する前の『粗(gross)』で表示しているから、それと合わせるために貯蓄も『粗』にしているのです。分かりにくければ、固定資本形成から固定資本減耗を差し引いて、『I』の方が、磨り減った分を差し引いた額(すなわち『純(net)』)になっていると考えてもよいのですが、一応、国際標準的には、『粗』で表示しているので、そちらに慣れた方がよいかと思います。(ただの慣れの問題のような気はします。)

さて、本当は、ここに、「資本移転」が入ってくるのですが、これは、例えば道路を作るための地方公共団体への交付金なんかがこれに入ってきます。というのは、こういったものも資本の蓄積のための原資になりますので。あと、部門別には土地の購入というものもありますが、これは一国全体では増えませんから、一国で見ると差し引きゼロになります。でも、個別部門ごとにみると、これも、資本の蓄積のための原資になりますので、それをネットで加えていきます。

で、こうして求められた「資本移転」、「土地の購入」が調整された『貯蓄』は、基本的には総固定資本形成なり、意図していない投資である在庫品増加に回されているはずです、一国全体では。。。

ただ、部門別に見ると、ばらつきがあるでしょう。この「貯蓄」と「投資(意図していない投資である在庫を含む)」の差額が、今回の説明の本題である「純貸出()/純借入()」になります。

ISバランス(4)

所得支出勘定の続きです。

(3)において、生み出された付加価値を配分しましたが、固定資本減耗については、もともと持っていた設備が磨耗してしまったんですから、手元には残りませんが、それ以外は手元に残っているはずです。なので、残りの、「雇用者報酬」、「営業余剰」、「生産・輸入品に課される税」が手元にあることになります。

この他に、利子収入や土地の賃貸料などの財産収入などが入ってきますし、また、逆にそれらの賃貸料などを支払っているかもしれません。それらを「財産所得」といい、その受取を足して支払を引くと1次所得バランスというものになります。

これは、大雑把に言って、ある制度部門が使えるお金と考えて良いと思いますが、これをすべて使って良いかと考えるとちょっと違いそうです。

例えば、この所得の中から、所得にかかる税金(所得税、住民税など)が取られるはずです。これを「所得・富に課される経常税」といいます。さらに社会保障負担として、いろいろな保険料が取られているはずです。逆に給付も受けていますのでこれを調整する必要があります。これが「社会負担」、「社会給付」です。これ以外にも、何かしらの形で他の部門に移転が行われるでしょうから「その他の経常移転」というものが入ってきます。これを調整したものが、実際に使える金額のはずです。多分一度くらいは聞いたことがあると思うのですが「可処分所得」になります。

ようやく所得まで来ました。

この「可処分所得」について、実際に消費に使ったものの残りは、余ったお金、もしくはマイナスになったら誰かから借りているお金、ということになります。これが、貯蓄になります。「貯蓄」は、「可処分所得」-「最終消費支出」です。

ここまでが所得支出勘定になります。

2010年6月 5日 (土)

ISバランス(3)

続いて、次の勘定である、所得支出勘定に行きます。

生産によって生み出された付加価値は、誰かに配分されているはずです。その面から考えていくときに、この生み出されたものの価値には、生産に当たって課されている税込みの価格となっているはずです。例えば、消費税とか、お酒などでは酒税などいろいろな税金がかかっています。主に間接税と考えていいのですが、そういうものも付加価値の中には入っています。これを「生産・輸入品に課される税」といいます。逆に補助金は、この税金と逆の効果になりますから、補助金はマイナスで出てきます。この2つをまとめると、「生産・輸入品に課される税」-「補助金」が最初の分配項目になります。

次に、生産のためにもともと持っていた設備の一部は陳腐化しているはず、と考えます。これが固定資本減耗といいますが、企業会計では減価償却というほうが分かりやすいかと思いますが、これも分配側の項目のひとつになります。馴染みにくい場合は、分配面にはそういったものが入っているというくらいの理解で良いと思います。

残りの、配分先を考えると、一部は働いている雇用者に配分されているでしょう。あとは、企業に回るはずでしょう。雇用者に配分されているものが、雇用者報酬です。そして、残りが営業余剰になります。(正確には、『営業余剰・混合所得』と言いますが、これは個人企業があるからなのですが、内容が細かくなるので、説明は飛ばします。)

なお、この雇用者報酬と営業余剰を合計したものを、要素所得と呼んでいます。

2010年6月 4日 (金)

ISバランス(2)

まず、一国の経済活動を生産面から見ていきます。

蛇足ながら、わが国の場合、どういうわけか、昔からGDPを支出面、すなわち、どこの部門が支出したか(民間最終消費支出とか、政府最終消費支出とかいうやつです。)という形で見る傾向が強くて、なかなか生産面からの見方に馴染みが無いんですけど、多くの国では生産面からみることが多いようです。

これは、わが国の場合、家計調査とか法人企業統計調査などの、支出面の基礎統計が充実していたことから、支出面からの推計が十分以上にできたからなんだと思います。ただ、多くの国は、生産面から推計していますし、そのため、SNAの考え方も、生産面からスタートして考えたほうが分かりやすく書かれています。ですので、あまり馴染みは無いかもしれませんが、少しお付き合いください。

まず、何かしらの生産活動を通じて、財やサービスが生み出されます。これが産出になります。この産出された財やサービスは、一部は、他の財やサービスの産出のために回されているはずです。これが中間投入になります。生み出された産出から、他の財、サービスの産出のために使われた中間投入を引いたものが、付加価値になります。付加価値、すなわちGDPです。

こう考えると、付加価値というのは、産出から中間投入、すなわち原材料といって良いかと思うんですが、それをを引いたものですから、中間投入にどれだけ『価値』を『付』け『加』えたかを図るもの、ということができるでしょうか。

ここまでの処理がなされるのが、生産勘定になります。

2010年6月 2日 (水)

ISバランス

SNAでは、いわゆる『ISバランス』という項目があります。そして、これが結構注目されます。ただ、この項目がどういうもので、なんで注目されるのかについては、意外に知られていないような気がします。

そこで、その点について、自分なりに整理しながら書いてみようと思います。

まず、今は、『ISバランス』という表章項目はありません、というと、昔はあったみたいですが、実は昔もありません。昔は、『貯蓄投資差額』という表章項目名でした。『貯蓄投資差額』っていうと、貯蓄はSaving、投資はInvestmentですから、『SIバランス』だと思うのですが、なぜか、『ISバランス』というのが通例になっています。

今は、『純貸出()/純借入()』という表章項目になっています。

HPでも載っていますが、93SNAを導入したときに、表章名を変更したそうです。(なお、変わったのは名前だけで、内容はまったく変わっていません。)

http://www.esri.cao.go.jp/jp/sna/060125/shiryou2.pdf

ちなみに、何で名称変更したかというと、そもそも、93SNAの本体には、『貯蓄投資差額』という用語も、同じ意味ですが『ISバランス』という用語も出てこないんです。本体には、『net lending(+)/net borrowing(-)』と書いてあって、『ISバランス』というものは書いてません。それなら直訳の『純貸出()/純借入()』にしましょう、っていうこともあったのだと思います。それと、重要なことは、『ISバランス』というと、資本移転の純受取が入らない(資本移転については後で書こうと思います)イメージがあるのに、『net lending(+)/net borrowing(-)』は、それを含みます。そこで、より適切な名称として、『純貸出()/純借入()』にしたみたいです。

※この点は、93SNA導入をされた皆さんにいろいろと教えていただきました。ご教示いただきました皆さんに、この場でお礼を申し上げます。

さて、その『純貸出()/純借入()』ですが、そもそも何を意味しているのかは、なかなか説明がしにくいところもありますので、生産から順を追って書いてみようと思います。

(きっと、少しばかり長くなると思います。)

2010年6月 1日 (火)

2次QE。。。

ここまで、1-3月期の1次QE関係の話を書いてきました。

そろそろ、2次QEも近づいてきたので、1次の話は大体のことは書きましたし、これくらいにします。で、2次QEなんですが、財務省が公表する、四半期別法人企業統計調査の結果が反映されることになります。これは、民間設備投資と民間在庫品増加に反映されます。

この点はご存知の皆さんが多いと思うのですが、これ以外にも、実は、2次QEは、1次QEでは使えていなかった、3ヶ月目(今回で言うと3月分)の数字が入ってきます。例えば、民間最終消費支出に使っている、家計消費状況調査(総務省)の3月分は、1次では速報しか使えませんが、2次では確報が使えます。また、生産側推計に使っている、生産動態統計なども、3月分が入ります。

大きいのは、やっぱり法人企業統計調査なんですけど、実は、それ以外にも、変わっている部分があるってことは、あんまり認識されてないのかな、なんて思ってしまいます。

昨年末の7-9月期2次QEで、改定幅が大きかったといって、大騒ぎになり、推計担当者も相当叩かれたのですが、2次QEから入ってくる基礎統計がある以上、改定される可能性は常にあるんです。ただ、改定を恐れて、すべての基礎統計が入るまで公表しない、というのでは、あまりに公表が遅くなりすぎて不便です。

ですので、SNAの基本的な考え方は、徐々に新たな情報(基礎統計)を追加して、徐々に改定値を公表していくほうがよい、という考え方なんです。というのは、あまりに、統計作成機関による公表が遅すぎたら、きっと、他の機関が独自に推計して、先に出すだろう。そして、その独自の推計と、統計作成機関による公表値がずれていたら、それはそれでまた混乱のもとになるわけです。それだったら、やはり、後々改定される可能性があっても、正式な系列の公表者が、徐々に、改定値を出していくというほうが望ましい、ということなんだと思っています。

確か、この考え方は、OECDのマニュアルか何かに出ていたんだと記憶していますが(何だったかは、後で調べて分かったらまた書きます)、推計担当者としては、しっくりくる考え方です。

とはいえ、大きく改定されるのは、世の中を惑わすという意見も分かり、また、一方で、新しい情報が取り込めるのであれば、当然取り込むべきという考えもあり、この狭間で、何とかしたいと日々悩んでいる、というのが、推計担当者の実態というのは、ぜひ分かってほしいところです。

そろそろ2次QEで忙しくなってきますが、どこかで余裕があったら、1次QEと2次QEの推計方法の違いについて、誤解されてるんじゃないかと思われることを書いてみたいと思っています。

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