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2010年5月14日 (金)

住宅の修理

最近、住宅リフォームについて、結構、問い合わせが来ています。

住宅の修理について、93SNAではこう書かれています。

9.59.(前略)その住居の装飾、維持および修理に関して所有者――居住者が負担する支出は、家計の最終消費支出としてではなく、住宅サービスの生産に要する中間消費として取り扱うべきである。これらの支出は、専門的な建築業者又は装飾業者によって提供されるサービスへの支払い、あるいは“日曜大工仕事”による修理および装飾のための材料の購入からなるであろう。後者の場合、所有者や借家人が行なうある種の簡単で、ごく普通の修理および室内装飾は、生産境界の外に落ちるものとして取り扱ってもよい。その場合、そのような修理および装飾に用いる材料の購入は、最終消費支出として取り扱うべきである。

9.60.住宅についての大規模改良――すなわち、改築、改造または増築――に関する支出は、修理および維持としては分類されない。これらは家計の消費支出から除外され、その住宅の所有者の側の総固定資本形成として取り扱われる。

例によって分かりにくいですが、住宅の維持および修理に関しては、原則として中間消費に入るということです。つまり、直接的に付加価値すなわちGDPには入らないということが書いてあります。

(ただし、大規模改良については、民間住宅投資としてカウントされるとも書いてあります。)

持家についてもSNAは、また独自な考え方をします。持家については、自分が大家さんになって、自分自身に家を貸している、と考えます。だから、当然、自分から自分に家賃を払っていることになります。この額を「帰属家賃」といいますが、一度くらい聞いたことがあるのではないでしょうか?

SNAでは、“Do it yourself”、すなわち日曜大工的な活動は、生産に入りません。生産に入らないと言うことは、付加価値すなわちGDPは増えません。ただ、この「帰属家賃」は、自分のための生産は含めない、ということの例外となっています。例外ですから、帰属家賃は、家計消費の一部として、付加価値すなわちGDPにカウントされます。

なぜ、このように考えるのでしょうか?

また、93SNAを見てみましょう。

6.29.持家居住者による自己最終消費のための住宅サービスの生産は常に国民経済計算における生産の境界の中に含まれてきたが、そのことは自己勘定サービス生産を一般的に除外することの例外となっている。賃貸住宅に対する持家住宅の比率は各国間で、さらにひとつの国の中でも短期間についてさえ大きく異なることがあり、したがって、住宅サービスの生産と消費の国際比較および時間比較は、自己勘定住宅サービスの価額について帰属が行われないならば、ゆがめられたものとなる。このような生産によって生ずる所得の帰属価額には一部の国では課税が行われている。

ポイントは2つです。

①国によっては、みんなアパートにすんでいるような国と、日本のように一軒家を持ちたがる国とがあります。

②また、同じ国でも、時代によって、みんながアパートに住んでいる時期と、一軒家を持っているような時期と異なる場合があります。

いずれの場合でも、アパートの家賃支払いは家計消費にいれるものの、持家については何も計算しないという取り扱いにしてしまうと、アパート住人が多い場合の方が、家計消費が増えてしまいます。そうしてしまうと、①の場合の国際比較が、②の場合の経年比較がまともにできなくなってしまいますよね。

そこで、持家についても、同じ住居の同じ地域の家賃と同額を、「自らが自らに支払っていると『擬制』」して、比較ができるようにしているのです。これは、繰り返すようですが、比較をできるようにするための「例外」です。

そうすると、自宅について、家賃を支払っている相手方の『自分』は、大家さんということになります。一般に、大家さんが、商品である「マンション」、「アパート」を修理するのは、住宅賃貸業という業の生産活動の一環ですから、修理費は中間消費にカウントされます。それであれば、自宅のリフォームについても中間消費ということになってしまうのです。これが、冒頭に書いてあることなのです。

これはこれで違和感があるのもよく分かり、「住宅リフォームがGDPにカウントされないのはおかしい」という批判がでるのも、気持ちとしてはよく分かります。

ただ、これは、

(1)国際比較、経年比較のために、持ち家については、自分が大家さんだと「擬制」しよう。

(2)「擬制」した以上、本当の賃貸住宅の大家さんと扱いをそろえないと、一貫した整理にならない。なお、賃貸住宅のリフォームは中間消費になり、GDPにカウントされない。

(3)それであれば、持家のリフォームも貸し家のリフォームも中間消費になり、GDPにはカウントされない。

という流れから引き起こされたものなので、すべてのもやもやをすっきりと解決させるよう整合的体系を作るのは多分不可能だと思います。

現在は、比較可能性を重視しているため、93SNA上このように決めているということです。だから、SNAの改訂の議論の際に、「住宅のリフォームが付加価値を増やしていないという考えはおかしい」という意見国連などに発信して、比較可能性は犠牲にしてでもこの整理を考え直すよう議題を提起するということはあって良いことだと思いま

(結果としてどうなるのかは、はなはだ想定しにくいですが。。。)

ただ、現状で、日本だけ、93SNAのこの整理を守らずに、勝手に住宅リフォームを付加価値のいずれかにカウントするというのは、ちょっと無理があるように思います。

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