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2010年5月

2010年5月31日 (月)

GDPデフレーター(3)

インプリシット・デフレーターまで書きましたが、いよいよ、何でGDPデフレーターが注目される理由についてなんですけど、よく言われるのが、ホームメイド・インフレの指標になるから、ということです。どういうことかと言うと、ここがGDPデフレーターの面白いところなのですが、「輸入品の物価が上がる(インフレになる)と、GDPデフレーターは下がる」という特徴があります。

「GDPデフレーターが上がる」と間違えているのではないかと思うかも知れませんが、そうではなく、「下がる」んです。親鸞聖人の「善人なもて往生をとぐ、いんや悪人をや。」ではないですが、決して逆ではないんです。

そのことをこれから説明してみます。(十分できないかもしれませんが。。。)

繰り返しますが、GDPデフレーターはインプリシット・デフレーターです。

ということは、

 GDPデフレーター = (名目GDP) / (実質GDP)

ということになります。

GDPを支出側(だから、正確にはGDEですが)でみると、

 GDP = 国内需要(民間最終消費支出とか) + 輸出 - 輸入

です。ということは、GDPデフレーターは、

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となります。ここで、輸入品の価格が上がると、名目輸入が増えて、実質輸入は増えません。そうすると、輸入は前にマイナスがついていますから、分子は小さくなり、分母は変わりません。ということは、GDPデフレーターは小さくなります。

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ただ、ここで、輸入品があがるとGDPデフレーターが下がるというのは、短絡的過ぎるところがあり、我が国は石油などの資源は輸入に頼っていますから、その価格が上がったら、当然、国内の商品についても価格が転嫁されて上がるはずです。そこで、輸入品の価格と同じだけ、国内需要についての価格が上がったとすると、GDPデフレーターはどうなるでしょうか?

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輸入価格が上がることで、名目輸入は増えますが、同じだけ名目国内需要も増えます。国内需要は前にプラスがついており、輸入は前にマイナスですから、分子は変わらないことになります。つまり、「輸入品が全部、国内に価格転嫁されれば、GDPデフレーターは変化しない」、ということがわかります。ですので、先ほどの言い方は、もっと正確に言うと、「輸入品があがり、国内に価格転嫁がされなければ、GDPデフレーターが下がる」ということになります。

以上で、GDPデフレーターについて、2つの特徴が明らかになると思います。

①価格転嫁されれば、輸入品の価格上昇はGDPデフレーターに変化を及ぼさない。つまり、輸入品の価格上昇以外の要因で国内で価格が上がったときに、GDPデフレーターは上昇する。

②輸入品が上がっているときに、GDPデフレーターが下がっている場合は、国内で価格転嫁ができていない可能性がある。

これが、GDPデフレーターがホームメードインフレ(すなわち、輸入品価格主導ではない)の指標になる、という理由なんです。

2010年5月29日 (土)

GDPデフレーター(2)

デフレーターには、パーシェとラスパイレスと言うのがあるんですが、これは、むしろ消費者物価指数などの物価指数のHPでしっかり解説が書いてあるので、ここで書くのは省略しておきます。(私も、これについて細かくかけるほど、知らないですし(汗;)

で、GDPデフレーターについて書いていきます。

SNAで表彰されるGDPデフレーターなどのデフレーターは、インプリシット・デフレーターと言います。これはどういうことかというと、インプリシット(implicit)を検索してみると、「暗黙」と出ました。暗黙のデフレーターという意味ですと、わけが分かりませんね。

実際の計算手順の話をすると、インプリシット・デフレーターは、(名目値)/(各構成項目の実質値の合計)という形で求めています。何を言っているか分かりにくいと思うので、GDPデフレーターを例にして書くと、

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と言うことです。

かえって分かりにくいでしょうか。。。

要は、名目のGDPを作って、GDPのデフレーターを作って、それから実質のGDPを出すと言うわけでなく、名目のGDPと実質のGDPを作った後、それを割って、デフレーターを逆算するということです。逆算で、事後的に出てくるものなので、インプリシットというんでしょうね、きっと。

2010年5月28日 (金)

GDPデフレーター

QEの公表のときに、GDPデフレーターも公表されます。しかも、結構大々的に記事に書かれたりします。そこで、GDPデフレーターとはどういうもので、何で、大々的に記事に書かれたりするのか、少し書いてみようと思います。

まず、何でデフレーターなどと言うものが必要なのかです。

一応、HPの用語解説(http://www.esri.cao.go.jp/jp/sna/term.html)を見てみると、

デフレーター(Deflator

名目価額から実質価額を算出するために用いられる価格指数をデフレーターといい、デフレーターで名目価額を除して実質価額を求めることをデフレーションと呼ぶ。

価格指数には基準時の名目ウェイトを用いるラスパイレス型指数と、比較時の名目ウェイトを用いるパーシェ型指数がある。

わが国の国民経済計算では、デフレーターはパーシェ型指数を採用している(ラスパイレス型指数の例としては消費者物価指数や企業物価指数が挙げられる)。その計算のためには生産、消費、投資の各時点の品目別のウェイトが必要となる。国民経済計算は、コモディティー・フロー法で毎年品目別に供給と需要の推計を行っているので、これをウェイトとすることにより精緻なパーシェ型デフレーターの作成が可能になっている。

ということです。2パラ以降はマニアックすぎるので、まず、1パラだけ見てみると、「名目価額から実質価額を産出するための価格指数がデフレーター」と書いてあります。こうなってくると「名目価額」と「実質価額」の説明をしてくれないとわけが分かりませんが、「名目価額」というのは、この時点で実際に出回っている値段での評価、って考えていただけるといいと思います。だから、たとえば消しゴムを100円で買ったとしたら、名目価額では100円となります。ただ、この100円で買ったと言っても、たとえば50年前に100円で買っていたとしたら、それはずいぶんイメージが違っているのではないでしょうか?と言うのは、50年前と今とでは、もらう給料も違うし、消しゴムの値段もずいぶん違っていたでしょう。

50年前、1960年は、岸内閣が所得倍増計画を作ったとしだと言うことです。初任給は1万5千円位でしょうか?そんな時代に消しゴム一個100円と言ったら、どんな高級消しゴムだと言う感じがしますよね。じゃ、50年前と今とで、物の値段がずいぶん上がっているから、比較できないのだから、それを比較するために、なんらかの処理をしましょう、ってことで処理をしたものが、実質価額です。丁寧に言うと、名目値に含まれている価格上昇(低下)部分を取り除いたもの、ってことです。

そうすれば、時代が違っていても、それぞれ比較することができるようになります。

では、どうやってやるのか、というと、これは、総務省統計局や日本銀行などで、それぞれの品目の価格を過去からずっと調べて、どれくらい上がったか指数化して公表しています。それが、良く聞く「消費者物価指数(CPI)」や「企業物価指数(CGPI)」などです。そういった価格指数がありますので、それを、個別品目に対応するように当てて、それで実質値を作っています。

どういうことかというと、ある基準時点を考えて、その基準時点から名目値で100円⇒200円になったとします。ただ、その期間に、デフレーターが100⇒200になっていたとしたら、価格が倍になって、名目も倍になっただけだから、価格が動いた部分を除くと、結局変わっていない、つまり、100円のままだったということになります。

これを計算すると、

(名目値)200円 ÷ (デフレーター)200 = (実質値)100円

ということで、つまり、名目値をデフレーターで割ると、実質値になります。これが、1パラ目の意味になります。

ゲタ(2)

ゲタの続きです。

2008年度から2009年度の実際の数字で見てみましょう。

2

2008年度の年度の実質GDPは、約541兆円です。(赤い線)一方、季節調整済の2009年1-3月期の実質GDPは、約517兆円です。(2009年Q1の棒グラフ)

すると、2008年度から2009年度には、赤い線と2009年QEの棒グラフの間だけ、ゲタがあったことになります。

実際には、ゲタは▲4.5%でした。

(=(517-541)/541)※兆単位なので少し端数がずれます。

ところが、2009年Q1からみると、2010年Q1まで、ずっと一貫して延びています。それなのに、2009年度がマイナスになったのは、ひとえにゲタが理由です。

逆に、2010年度へのゲタはどうなりそうでしょうか?

2009年度の年度の実質GDPは、約531兆円です。(青い線)一方、季節調整済2010年1-3月期の実質GDPは、約539兆円です。(2010年Q1の棒グラフ)

すると、青い線と2010年Q1の棒グラフでは、棒グラフの方が上にありますので、プラスのゲタとなっていると分かります。

実際には、ゲタは1,5%でした。

(=(539-531)/531)※こちらはなぜかぴったりです!

そうすると、2010年度は、この後の成長率がゼロ、つまり、2011年1-3月期のGDPが、約539兆円であったとしても、1.5%成長と言うことになります。これが、新聞等で書いてあった、「仮に1年間ゼロ成長が続いたとしても10年度はプラス1.5%の成長を確保できる。」の意味です。

2010年5月27日 (木)

ゲタ

年度計数がでたことで、『ゲタ』という言葉が良く聞かれます。

新聞解説などでも結構かかれています。

日経のネットの記事を引用してみます。(もし、著作権に反するということがあったら、削除しますので、教えてください。)

10年度の成長率の「ゲタ」、プラス1.5%

2010/5/20 8:53|日本経済新聞 電子版

 

 内閣府によると、2010年度の「成長率のゲタ」は1.5%となった。20日朝発表した1~3月期の実質国内総生(GDP)の速報値が09年度の平均を上回った結果、4~6月期以降、仮に1年間ゼロ成長が続いたとしても10年度はプラス1.5%の成長を確保できる。

  成長率のゲタは、各四半期のGDPを平均した年度のGDPと、1~3月期のGDPの乖離(かいり)から生まれる統計上の効果。1~3月期が年度平均より伸びた場合は、翌年度の成長率の「発射台」が引き上げられる。〔NQN〕

非常に分かりやすく書いてはあるのですが、それでも、やっぱり腑に落ちないかもしれません。記事だと文字数に限りがあるので難しいと思いますが、ここなら、どれだけ長く書いても良いので、少し冗長に意味を書いてみようと思います。

一枚図を入れてみました。

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Tというのが年、Qというのが四半期と考えてください。Q1が1~3月、Q2が4~6月、Q3が7~9月、Q4が10~12月です。我が国の年度は、4月~3月までですので、T年のQ2~T+1年のQ1までがT年度になります。

ここで、単純化のために、T年Q2に1だったGDPが、T+1年Q1まで1だけ増えていくと考えます。そして、T+1年Q2から後は、まったく増えないものとします。それを示した図が先ほどの図です。

これをみると、T年度のGDPは、赤い線が引いてある2になります。一方で、T+1年度のGDPは青い線が引いている4になります。したがって、年度の成長率は、100×(4-2)/2=100%となります。

ところが、T+1年Q2からT+2年Q4までの間である、T+1年度においては、まったくGDPは増えていませんよね?それなのに、年度の成長率でみると、100%も延びています。これはどういうことでしょうか?

考えてみると、T年度のGDPである赤い線から、T年度最後の四半期であるT+1年Q1との間に、2と結構な差がありますよね。これが、ちょうど年度平均から年度末までの間に増えた額になります。前年度の年度末の時点で、前年度平均から増えていれば、翌年度内ではまったく増えていなくても、前年度と翌年度の比較では増えていますよね?

この、「年度平均から年度末までの間に増えた」というのが、いわゆるゲタの説明になります。まとめると、『年度平均から年度末までの成長率』がゲタです。つまり、今回の場合は、T年度平均が2、T+1年Q1が4ですから、100×(4-2)/2=100%が「T+1年度へのゲタ」となります。

そうすると、ゲタが100%で、T+1年度の成長率も100%ですから、年度内ではまったく増えていないということと整合的です。

2010年5月25日 (火)

1-3月期1次QE(5)

今回は、1-3月期が入り、21年度が出ていますので、年度についても。

実質で21年度は▲1.9%でした。名目年度は▲3.7%でしたから、年度のGDPデフレーターは▲1.8%ということになります。

この実質▲1.9%、名目▲3.7%というのは、いずれも過去2番目の下げ幅で、過去最低はいずれも20年度でした。21年4-6月期~22年度1-3月期までは、今のところ(笑)4四半期連続のプラスになっているのに、21年度で▲1.9%なのは、21年度のゲタのせいです。ゲタだけで、▲4.5%になっていましたので。。。

そう考えると、20年10-12月~21年1-3月って、本当に歴史的な時期だったんだと、改めて感じます。私は、リーマンショックの後に着任したので、残念ながら、歴史的瞬間に直に立ち会ったとは言いがたいのですが、振り返ってみると、大変な年だったというのが分かります。

さて、21年度の内訳を見てみると、民間企業設備が実質▲15.1%と過去最低の下落になっています。名目でも▲18.2%でした。名目も過去最低の下落です。やはり、あれだけ大きく輸出や消費が減ると、翌年の企業設備投資は落ちるんだなというのが実感できます。設備投資だけのゲタを、試みに手計算で計算してみると、▲11.3%ということでしたから、相当ですね。さらに、設備投資の回復は10-12月まで遅れてますから、過去最低というのもうなづけます。

民間住宅投資も実質▲18.5%で過去最低でした。住宅は確かに伸びてなかったですからね。

公的固定資本形成は、8.7%のプラスで、本当に久しぶりにプラスになってます。名目でもプラスです。久しぶりに公共事業を増やしましたから、それが数字に表れているようです。

年度デフレーターを見てみると、▲1.8%で、相当低いです。これも、「輸入の影響です」と言えてしまえば楽ですが、輸入は▲15.0%で相当プラスに寄与してますから、それを差し引いてもマイナスだったということで、相当なデフレだったんですね。

ちょっと順番は逆転しますが、実質の内外需を見てみると、外需はプラスなんですね。ただ、数字を見る限り、輸出が増えたというよりは、輸入が減ったということですね。そして内需は▲2.4%です。ただ、これも内需のゲタを単純に計算してみたら▲2.5%でしたから、やっぱりゲタの影響が大きかったことが分かります。

結論として、何だかんだいって、20年10-12月期、21年1-3月期の大きな落ち込みの影響を思いっきり受けた年度だったといえるのではないでしょうか。そして、その影響を除くと、実は、結構高い成長だったといえるかもしれません。

ただ、これは、大きく落ちたから、その分、反動で伸びただけということかもしれませんが。。。

2010年5月23日 (日)

1-3月期1次QE(4)

外需です。

これは、実質前期比寄与度が0.7%のプラスとなっています。内需が0.6%ですから、まだ、輸出が牽引という形に見えますね。

外需の内訳を見てみると、輸出は実質前期比で6.9%、名目前期比で8.1%でした。輸入は、実質前期比で2.3%、名目前期比で6.8%でした。輸入の名目前期比が高いですね。これは、資源価格の影響です。具体的には石油や非鉄金属などです。

輸出についても、名目が高めなのですが輸入ほどではありません。輸出の影響は、基礎科学製品や非鉄金属の精錬・精製などです。基礎科学製品は石油の加工品ですから、原油価格の上昇の影響でしょう。非鉄金属については、中国などアジア向けに、リサイクルの非鉄製品や鉄くずなどの輸出が増えているようなのですが、その資源価格が上がったことが原因でしょう。いずれにしても、ひと加工入っているので、原材料そのものの輸入ほどはデフレーターはあがっていません。これが、実質の外需寄与度が高くなった原因といえるかもしれません。

なお、22年度へのゲタ1.5%でした。政府見通しが1.4%ですから、新聞にも書いてあるとおり、まだ22年度は始まってないのですが、発射台の時点で1.5%高いということになります。

2010年5月22日 (土)

1-3月期1次QE(3)

引き続き内需ですが、次は民間企業設備投資です。

実質前期比で1.0%でした。2期連続のプラスです。

ただ、これは、2次QEで四半期別法人企業統計調査が入るので、まだどうなるか分かりません。

ここで、住宅投資と民間企業設備投資の2つの固定資本形成関係について、住宅は実質0.3、名目0.9、民間企業設備は実質1.0、名目1.3といずれも名目の方が高くなっています。これは、建設の資材価格の上昇を反映しているようです。少し先走りますが、公的固定資本形成についても、同じ傾向が出ています。

続いて在庫品増加です。

在庫は前期比寄与度で見るのですが、実質0.2、名目0.5でした。名目が相当高くなっています。これは、主に石油製品の価格が上がったことで、名目が高くなりました。今期、GDPデフレーターの前期比が0.0になったことに、これも大きく影響しています。なお、在庫も、2次QEで四半期別法人企業統計調査が入るのでどうなるか分かりません。

次は公需です。

政府最終消費支出は実質前期比0.5%のプラス、一方、公的固定資本形成は1.7%のマイナスでした。合わせてトントンというところで、公需は寄与度0.0でした。

このうち、公的固定資本形成については、建設総合統計の当期の進捗率の計算方法の変更の影響が出ていたので、それを調整しています。

調整率の変更自体は正しい方向なのですが、それでもって、一年前と大きな断層を作ってしまうのは、2次統計作成者としてはちょっと困ってしまいます。

なお、公的固定資本形成も実質▲1.7%、名目▲1.0%と名目の方が高くなっています。そして、公的固定資本形成は、10-12月期からこの傾向が出ていました。

すべて合計すると、内需は実質前期比寄与度で0.6%でした。

1-3月期1次QE(2)

もう少し個別に見ていきましょう。

まずは内需です。

消費については、季節調整済前期比は実質で0.3でした。これをもって、高いと見るか、意外に低いと見るかは意見が割れるかもしれませんが、マニアックなところに注目すると、名目の前期比は0.1で、10-12月期の名目前期比0.0よりも高くなっています。10-12月期の実質前期比は0.7ですから、10-12月はデフレ圧力がある中での、実質消費の伸びということだったのに対し、1-3は、価格押し下げ圧力が弱まっているなかでも、実質前期比では0.3伸びたといえるのかもしれません。

消費の増加に寄与した品目は、新聞でも出ていますが、テレビなどです。エコポイントの発行数がこの時期すごいので、政策効果はあったんだろうと推測されます。一方、自動車やパソコンについては、増加の寄与した品目には出てきませんでした。考えられるのは、10-12月期に自動車とパソコンはものすごい伸びを示していたので、1-3も伸びているものの、例年よりは伸び率が低く見えてしまった、ということではないかと。そのほかにも、個人の海外旅行も伸びていました。今年の正月は、海外旅行に行った人が多かったような記憶があるの、なんとなく実感にもあっています。

消費に関して注目すべきは、昨日も書きましたが、非耐久財の名目の伸びが高くなっていることです。この要因も何度も書きますが、野菜と燃料(ガソリンなど)です。

次は住宅です。

実質前期比で0.3%と5期ぶりにプラスになりました。

これは、建設着工統計の着工を出来高に進捗転換しています。要は、着工してから●●四半期後だとこれだけできてる、と計算するので、着工を後方に均すような形になります。

建設着工統計をみると、着工は7-9月期から下げ幅を減少させ、10-12月期でプラスになっていましたので、それを反映して、プラスに転じたという形です。

一部の新聞では「住宅ローン減税の拡充が効いたとみられる」と書いてあって、なるほどなと思ったのですが、去年の4月から開始された減税なので、確かに、7-9や10-12月期の着工に出ていてもおかしくない気がします。

2010年5月21日 (金)

1-3月期1次QE(1)

本日、1次QEを公表しました。

http://www.esri.cao.go.jp/jp/sna/toukei.html#qe

いつものことなのですが、時間との戦いというところがあり、公表後に本当にどっと疲れが出ます。。。

1-3月は、2次までの間が短いので、ホッとしている暇もなく、すぐに次の準備にとりかからなければという状況です。

さて、今回のQEの内容についてのTweetsです。

まず、実質GDP(季節調整済前期比)ですが、1.2%でした。そして、名目GDP(季節調整済前期比)も1.2%でした。

ですので、GDPデフレーター(季節調整系列)の前期比は0.0%とマイナスでなくなりました。名実逆転ではなかったということです。

参考までに、10-12月期のGDP前期比を見てみると、実質が1.0%で名目が0.3%ですから、デフレの中での成長だったと言えそうです。それにくらべて、1-3月期はずいぶん違いますね。

今回は、まず、デフレーターの内訳を個別に見てみましょう。

GDP  0.0

民間消費 -0.3

民間住宅 0.6

民間設備  0.3

政府消費 0.7

公的資本 0.7

輸出   1.1

輸入    3.9

これを見ると、ほとんどの項目が前期比でプラスになっています。これは、新聞やニュース等でも言っていますが、「野菜や資源の値上がりの影響が大きい。」ということで、正しくそのとおりです。資源価格の関係で、設備投資関係(住宅、民間設備、公的資本)のデフレーターはプラスになっています。なお、公的資本については、10-12月期から実はプラスになっていて、設備関係は以前からその傾向が出ていたと言えるのかもしれません。

野菜価格はもろに民間消費に効いています。民間消費だけだと分からないのですが、これを耐久財、半耐久財、非耐久財、サービスに個別に見てみると、非耐久財(野菜とかガソリンとかが入ります)が前期比で実質0.2%、名目0.9%となっています。単純に引いてみると、0.7%くらいデフレーターが上がっているということが分かります。民間消費は、耐久財(テレビとかパソコンとか)が、常に価格が下がっているので、全般的にデフレ傾向になるのですが、それをかなり押し上げていると言えそうです。

確かに、1-3月は野菜も高かったし、ガソリンも上がった気がしますので、私としては実感にあっているなと思います。

一方、原油価格が上がっているので、輸入のデフレーターが相当上がっています。GDPデフレーターに対しては、輸入価格の上昇は押し下げ要因となるので、かなり引き下げています。ただ、それでも、一部価格転嫁はしているようで、それでプラスとなっています。上がっているのは、輸出とか設備関係、あと、非耐久財(日用品が多い)ですから、まあ、転嫁しやすいところは反映しているということなのかもしれません。

ただ、野菜価格の上昇は、一時要因でしょうから、デフレかどうか判断する、というようなときは注意が必要でしょう

なお、予想よりも外需が高いという言い方もされていますが、その原因は、恐らく、輸入価格の上昇が大きかったため、実質の輸入が低くなったからでしょう。輸入などは原材料そのままですから、価格は直に上がりそうですが、輸出になると、それを加工してという一段階が入るので、輸入ほどは価格転嫁できなかったということなのかもしれません。

あと、皆さんが気にされている消費ですが、これが高いか低いかは、専門家の方に判断を任せたほうが良いと思いますが、事実としていっておくと、やはり10-12月があまりに耐久財が高く出たので、10-12月からの前期比の伸びで見ると、例年よりも低く見えてしまったため、季節調整で思ったほど高く行かなかったという面もあるような気はします。テレビなどは相当売れているようですし、自動車も、10-12月の高い伸びから見ると、そこからさらに伸びている以上、低かったとまではなかなか言いにくいところです。

2010年5月20日 (木)

幼稚園と保育園

昨日のストックの話の続きの前に、ひとつ面白い問い合わせがあったので、その話です。

「幼稚園、保育園については、民間最終消費支出、政府最終消費支出のどちらに入るのでしょうか?」

あまり考えたことも無かったテーマです(笑)

まず、幼稚園から。

学校教育法を見てみると、

第一条 この法律で、学校とは、幼稚園、小学校、中学校、高等学校、中等教育学校、特別支援学校、大学及び高等専門学校とする。

第二条 学校は、国()、地方公共団体()及び私立学校法第三条に規定する学校法人(以下学校法人と称する。)のみが、これを設置することができる。

② この法律で、国立学校とは、国の設置する学校を、公立学校とは、地方公共団体の設置する学校を、私立学校とは、学校法人の設置する学校をいう。

ということです。要するに

幼稚園は学校。

学校は、国、地方公共団体(=政府)か、学校法人しか設立できない。

私立学校とは、学校法人が設立する学校。

ということのようです。

そうすると、高等学校の場合とまったく同じで、国立学校、公立学校は、授業料等を除いた分は政府最終消費支出に、私立学校は、同じく授業料等を除いた分は民間非営利団体最終消費支出に入ることになりそうです

次に、保育園です。

幼稚園との並びだと、児童福祉法を引っ張ってきたいところですが、厚労省の法律は、入り組みすぎていて見ても意味が分かりません(笑)

ウェキペディアでみてもちょっと分からなかったので、これを見てみました。

http://100.yahoo.co.jp/detail/%E4%BF%9D%E8%82%B2%E6%89%80/

2. 設置・運営

保育所を設置・運営するものは、知事の認可を得なければならない。このためには、設置者が地方公共団体もしくは社会福祉法人であることが原則であるが、企業なども設置することができる。いずれも施設整備、職員組織などは国の定めた基準以上のものとなっていな ければならない。2009年(平成21)4 月現在、全国の認可保育所の数は2万2925か所(公立1万1008か所、私立1万1917か所)、入所児童数は204万0974人(公立90万 1141人、私立113万9833人)となっている。

保育所という名称は、法律などによって、認可を得ていないものが用いてはならないと禁止されているわけではなく、 無認可で類似の事業をしているものも、保育所、保育園などの名称を用いている。

これをみると、保育所は、

地方公共団体が設置している

社会福祉法人が設置している

企業などが設置している

無認可の保育所もある

と4つあるみたいです。設置と運営の違いは気になりますが、それはまた考えるとして、ここは、設置者と運営者が同じと考えてみます。

は公立高校と同じになりそうです。②の社会福祉法人は民間非営利団体なので、私立高校と同じになりそうです。問題は③と④です。③は、企業ということなので、株式会社と考えると、株式会社は営利法人ですので、その保育料は、その営利法人が生み出した保育サービスの付加価値の市場評価額ですから、それがそのまま民間最終消費支出に入ることになりそうです。の株式会社の運営のためにかかった経費は、保育サービス産出のための投入ですので、付加価値には入りません。保育サービスに払われた代金、すなわち保育料が民間最終消費支出として付加価値(=GDP)に計上されることになりそうです。④もそう考えると③と同じです。

ところが、②、③と④には違いがあって、②や③は、国や地方公共団体から運営費などの補助があります。(厳密には④の中の一部は、自治体が独自に補助をしています。東京都の認証保育所などです。)

この補助の扱いはどうなるのでしょうか?

その補助によって、保育料は明らかに下がっています。と考えると、補助金と考えるのが適切でしょうか?ただし、保育料金は、所得に応じてという形のところが多い(ほとんど?)なので、それとも、経常移転になるのでしょうか?施設費の補助部分は資本移転でしょうか?いずれにしても、政府から民間への移転として捉えることが適切なようです。

すると、保育所の生み出す保育サービスの計上方法は、以下の4つに分けられそうです。

地方公共団体設立 ⇒かかった費用-家計からの保育料金を政府最終消費支出に計上

           家計からの保育料金を民間最終消費支出に計上

社会福祉法人設立 ⇒かかった費用-政府からの移転-家計からの保育料金を、対計民間非営利団体消費支出に計上

           ・家計からの保育料金を民間最終消費支出に計上

企業等による設立 ⇒家計からの保育料金を民間最終消費支出に計上

無認可保育所   ⇒家計からの保育料金を民間最終消費支出に計上

なお、以上の話は支出面だけ見ていますので、分配面や生産面で動きは書いていません言いたかったことは、、④については、旅行に行ってホテルに泊まったというのと同じく、民間産業がサービスを生み出した場合と同じ取り扱いになるということです。(というか、民間産業ですから同じなのは当たり前といわれそうですが。。。)

2010年5月19日 (水)

宝さがしの続き

昨日は途中で力尽きてしまったので、その続きです。

フロー編の宝物の中には、ISバランスというものがあります。これは、昔、貯蓄投資差額と書かれていたのですが、今は、「純貸出(+)/純借入(-)」という項目になっています。

これは、一国全体で見ると貯蓄は全部投資に回るので、一国全体では0となるのですが(海外を考えない大雑把な話をしてます)、政府とか、金融企業とか部門で見ると当然異なります。これをみると、どの部門がいっぱいお金を他部門から集めて投資をしているか、どの部門がいっぱい他の部門にお金を回しているか、ということが分かり、裏面から見ると、部門ごとに資金超過か資金不足かが分かるというものです。

(厳密には資本移転を含みますが、細かいことは省いてます。)

これから金利の支払いを除いたものが、昔、小泉改革のときに話題になったプライマリー・バランスになります。これは、政府の財政の持続性を判断するための指標として使われています。こんなものもSNAでは出てきます。

ここまでの話はすべてフロー編なのですが、更に、SNAにはストック編もあります。

ここにもお宝がいっぱい埋まっています。

2010年5月18日 (火)

SNAは宝の山

SNAって、一国のいろんな情報が詰め込まれています。

SNAというとGDPって感じで、そればかり注目されてしまいますが、実は、まだまだいっぱい見るべきものがあります。

そもそも、SNAは、フロー編とストック編に分かれています。GDPはフロー編の計数なのですが、フロー編の公表のときには、GDPしか注目されません。でも、フロー編の中にも、他に面白い情報がいっぱいあるんです。

GDPとともに、民間最終消費支出とか民間企業設備とか輸出、輸入などという項目が取り上げられますが、これは支出面からみたものになります。こちらが一番注目されます、というか、ほとんどここしか注目されません。

ただ、SNAには、GDPをどのように分配するか、という面からの推計もあり、その中のうち働いている労働者にどれだけ分配されたか、という指標が雇用者報酬になります。そして、大雑排に言って企業にどれだけ配分されたか、という指標が営業余剰になります。(SNAでは個人企業という概念があるので、厳密には異なりますが、大雑把に言ってます。)これなども、非常に興味深い数字だと思います。

分配面の中には、可処分所得という概念もでてきます。これは、上で出てきた雇用者報酬と営業余剰に、税金のうち間接税(「生産・輸入品に課される税」と言います)を加え、贈与などの移転(「経常移転」といいます)などのnetの受取などを加えていった概念です。要は、「どれだけ使うことができるお金があるか」ってことと考えていいと思います。働いている人に配分された額や企業に配分された額に、贈与などが加わったのであれば、正しく、「使える額」ですよね。

さらに、こうして求めた可処分所得から、実際に消費した額を引いたものが貯蓄になります。一昔前、「日本はアメリカに比べて貯蓄が高い。これが成長の源泉だ。」などといわれていましたが、その貯蓄はこのことを言っています。高齢化が進むと貯蓄が減る、とよく言われますが、事実、日本のSNAでは、長い期間で見てみると、貯蓄率が徐々に低下しているのが分かります。

2010年5月16日 (日)

住宅リフォーム(3)

更に昨日の続きです。

またまた、こんな突っ込みが入りました。

持家の帰属家賃の計算について、無理に市場価格と比較して計算するからおかしいのであって、「政府最終消費支出」みたいに、『いくらかかりましたか?』って形で評価すれば、持家のリフォームについても、GDPにカウントされるのでは?

なんだか、何が何でも、持家のリフォームをGDPにカウントさせたくて仕方が無いみたいですね。

(誤解の無いようにくどいくらいに言っておくと、大規模なリフォームや、新築の持家建設は、民間住宅投資という形で、GDPにカウントされますよ。)

結論から言って、そのようなコスト積上げ形の推計方法をすれば、多分、リフォーム代はすべて帰属家賃の増加につながり、GDPにカウントされます。

ただし、昨日もちょっと言ったように、持家については、「似たような住宅賃貸業があるから、それっぽい市場価格を推定することができる」ということが、例外的にこのような帰属計算を行う大きな理由なわけですから、コスト積み上げで計算する、という話なら、そもそも、「帰属家賃などなくしてしまえば良い」、という議論になりそうな気がします。

ちなみに、帰属家賃が無くなれば、整理上、住宅リフォームは家計最終消費支出に含まれることになると思います。

この点で、もうひとつ、面白い提案がありました。

今、日本のGDPでは、家計消費支出に「帰属家賃を除く」系列を公表している。概念として、帰属家賃を含まない家計消費支出なら、そこに、持ち家の住宅リフォームを含む、というのがあってもいいんじゃないか?

これは、理屈から言っても、やってみてもおかしくないような気がしました。ただ、住宅リフォームだけの消費の水準をどうやって求めるかという問題は残りますが。。。

2010年5月15日 (土)

住宅リフォーム(2)

昨日の住宅リフォームの話について、こんな意見がありました。

  持家について、帰属家賃を計上するのは良いけど、持家の修理は家計最終消費支出に、貸し家の修理は中間消費と整理すれば良いではないか。

この考え方も、整理のひとつではあると思います。ただ、これで全部すっきり整理できてるかというとそれは疑問で、この場合は、「持家が多い国、多い時期の方が、家計最終消費支出を多くカウントしてしまい、比較可能性が失われる」という欠点が指摘されそうです。

なお、参考までに、昨日の議論は、帰属家賃を家計最終消費支出に入れない場合を議論していて、その場合は、「貸家の多い国、多い時期の方が、家計最終消費支出を多くカウントしてしまい、比較可能性が失われる」ということでしたから、まったく逆の歪みがでることになってしまいます。

結局のところ、持家を産業として、サービスを生産していると捉えていることがすべての問題の出発点なのですが。。。

逆に言うと、こういう問題点が発生する可能性があることも、“Do it yourself”(日曜大工的な活動)を生産に含めない理由のひとつになっているのではないかと考えたくなります。

なお、SNAでは、この点の議論については、「生産の境界」といって、過去からさまざまな議論がなされています。93SNAでは、この理由については、

6.22.したがって、国民経済計算作成者が家計内での家事および個人サービスの生産と消費に伴う産出、所得および支出に価額を帰属することを渋る理由は、様々な要因の組合せ、すなわち、このような活動が市場から分離して独立して行われること、このような価額について経済的に意味のある推計値を得ることの非常な困難さ、政策目的および市場と市場不均衡の分析――インフレーション、失業等の分析――に対して諸勘定がもつ有用性への良からぬ影響、等によって説明される。それは労働力統計や雇用統計に対しても容認し難い影響を及ぼす。国際労働機関(ILO)のガイドラインによると、経済活動人口とは、「体系」の生産の境界に含まれる生産に従事している人々である。この境界を自己勘定家計サービスの生産を含めるように拡大するならば、事実上、全成人人口が経済的に活動していることになり、失業はなくなってしまう。実際的にも、意味のある雇用統計を得ることだけでも、「体系」における既存の生産の境界に戻ることが必要である。

としています。また分かりにくい文章ですが、大きな理由としては、「“Do it yourself”については、まともな市場価格が付けられない」ということが挙げられていることは確かなようです。

ここで、持家については、「似たような住宅賃貸業があるから、それっぽい市場価格を推定することができる」ということも、帰属家賃の例外的取り扱いの理由のひとつに上げることができるかもしれません。

参考までに。。。

6.89.家計が居住する住宅を所有するその家計の世帯主は、形式的には、同じ家計によって消費される住宅サービスを生産する非法人企業の所有者として扱われる。よく組織化された賃貸住宅市場がほとんどの国において存在するので、自己勘定住宅サービスの産出は、自己勘定において生産される財貨やサービスについて採用される一般評価原則に沿って、市場で販売される同じ種類のサービスの価格を用いて評価することができる。換言すれば、持家居住者によって生産される住宅サービスの産出は、住宅それ自体の規模や質とともに、所在地、近隣の快適さ等のような要素をも考慮して、同じ居住施設に賃貸する場合に支払うと考えられる推定家賃によって評価する。同じ計数を家計最終消費支出の下に記録する。

2010年5月14日 (金)

住宅の修理

最近、住宅リフォームについて、結構、問い合わせが来ています。

住宅の修理について、93SNAではこう書かれています。

9.59.(前略)その住居の装飾、維持および修理に関して所有者――居住者が負担する支出は、家計の最終消費支出としてではなく、住宅サービスの生産に要する中間消費として取り扱うべきである。これらの支出は、専門的な建築業者又は装飾業者によって提供されるサービスへの支払い、あるいは“日曜大工仕事”による修理および装飾のための材料の購入からなるであろう。後者の場合、所有者や借家人が行なうある種の簡単で、ごく普通の修理および室内装飾は、生産境界の外に落ちるものとして取り扱ってもよい。その場合、そのような修理および装飾に用いる材料の購入は、最終消費支出として取り扱うべきである。

9.60.住宅についての大規模改良――すなわち、改築、改造または増築――に関する支出は、修理および維持としては分類されない。これらは家計の消費支出から除外され、その住宅の所有者の側の総固定資本形成として取り扱われる。

例によって分かりにくいですが、住宅の維持および修理に関しては、原則として中間消費に入るということです。つまり、直接的に付加価値すなわちGDPには入らないということが書いてあります。

(ただし、大規模改良については、民間住宅投資としてカウントされるとも書いてあります。)

持家についてもSNAは、また独自な考え方をします。持家については、自分が大家さんになって、自分自身に家を貸している、と考えます。だから、当然、自分から自分に家賃を払っていることになります。この額を「帰属家賃」といいますが、一度くらい聞いたことがあるのではないでしょうか?

SNAでは、“Do it yourself”、すなわち日曜大工的な活動は、生産に入りません。生産に入らないと言うことは、付加価値すなわちGDPは増えません。ただ、この「帰属家賃」は、自分のための生産は含めない、ということの例外となっています。例外ですから、帰属家賃は、家計消費の一部として、付加価値すなわちGDPにカウントされます。

なぜ、このように考えるのでしょうか?

また、93SNAを見てみましょう。

6.29.持家居住者による自己最終消費のための住宅サービスの生産は常に国民経済計算における生産の境界の中に含まれてきたが、そのことは自己勘定サービス生産を一般的に除外することの例外となっている。賃貸住宅に対する持家住宅の比率は各国間で、さらにひとつの国の中でも短期間についてさえ大きく異なることがあり、したがって、住宅サービスの生産と消費の国際比較および時間比較は、自己勘定住宅サービスの価額について帰属が行われないならば、ゆがめられたものとなる。このような生産によって生ずる所得の帰属価額には一部の国では課税が行われている。

ポイントは2つです。

①国によっては、みんなアパートにすんでいるような国と、日本のように一軒家を持ちたがる国とがあります。

②また、同じ国でも、時代によって、みんながアパートに住んでいる時期と、一軒家を持っているような時期と異なる場合があります。

いずれの場合でも、アパートの家賃支払いは家計消費にいれるものの、持家については何も計算しないという取り扱いにしてしまうと、アパート住人が多い場合の方が、家計消費が増えてしまいます。そうしてしまうと、①の場合の国際比較が、②の場合の経年比較がまともにできなくなってしまいますよね。

そこで、持家についても、同じ住居の同じ地域の家賃と同額を、「自らが自らに支払っていると『擬制』」して、比較ができるようにしているのです。これは、繰り返すようですが、比較をできるようにするための「例外」です。

そうすると、自宅について、家賃を支払っている相手方の『自分』は、大家さんということになります。一般に、大家さんが、商品である「マンション」、「アパート」を修理するのは、住宅賃貸業という業の生産活動の一環ですから、修理費は中間消費にカウントされます。それであれば、自宅のリフォームについても中間消費ということになってしまうのです。これが、冒頭に書いてあることなのです。

これはこれで違和感があるのもよく分かり、「住宅リフォームがGDPにカウントされないのはおかしい」という批判がでるのも、気持ちとしてはよく分かります。

ただ、これは、

(1)国際比較、経年比較のために、持ち家については、自分が大家さんだと「擬制」しよう。

(2)「擬制」した以上、本当の賃貸住宅の大家さんと扱いをそろえないと、一貫した整理にならない。なお、賃貸住宅のリフォームは中間消費になり、GDPにカウントされない。

(3)それであれば、持家のリフォームも貸し家のリフォームも中間消費になり、GDPにはカウントされない。

という流れから引き起こされたものなので、すべてのもやもやをすっきりと解決させるよう整合的体系を作るのは多分不可能だと思います。

現在は、比較可能性を重視しているため、93SNA上このように決めているということです。だから、SNAの改訂の議論の際に、「住宅のリフォームが付加価値を増やしていないという考えはおかしい」という意見国連などに発信して、比較可能性は犠牲にしてでもこの整理を考え直すよう議題を提起するということはあって良いことだと思いま

(結果としてどうなるのかは、はなはだ想定しにくいですが。。。)

ただ、現状で、日本だけ、93SNAのこの整理を守らずに、勝手に住宅リフォームを付加価値のいずれかにカウントするというのは、ちょっと無理があるように思います。

2010年5月12日 (水)

政府最終消費支出

昨日の続きです。

先日、K省の職員から、次のような問い合わせを受けました。

 K省職員:20年度の政府最終消費支出はHPのどこに載ってますか?政府のグリーン購入の促進を担当しているんですけど、政府の消費に占めるグリーン購入の割合を出そうとしているんです。

私:そういう意図だったら、分母は政府最終消費支出ではないと思いますけど。。。

最終消費支出という名前がつくものについて、「民間最終消費支出」と「政府最終消費支出」の2つがあります。この2つ、どちらも「最終消費支出」なんですけど、概念を細かく考えてみると、結構異なるものなんです。

(厳密には、「対家計民間非営利団体最終消費支出」もありますが、これは、「政府最終消費支出」と同じようなものと思っていただいて結構です。)

最終消費については、93SNA(System of National Accounts 1993)では、「最終消費は個々の家計あるいはコミュニティーによって彼らの個人的または集合的必要と欲求を満足させるために使い尽くされる財貨・サービスからなる。」と書いてあります。これは、中間消費と対比すると分かりやすいのですが、『何かモノやサービスを作るための消費じゃなくて、自分の欲求を満足させるための消費』っていうことになります。だから、家計調査などで調べている、「あなたの家で、どれだけモノやサービスを買いましたか?」って聞いているものと似たような概念です。

民間最終消費支出については、このようなイメージを持っていただいて良いのですが、政府最終消費支出についても、同じようなイメージで良いのでしょうか?そもそも、政府が「自分の欲求を満足させるための消費」ってなんでしょう?今話題の「天下り」とかそんなことなんでしょうか(笑)

我が国のSNAの用語解説(http://www.esri.cao.go.jp/jp/sna/term.html)を見てみると、

政府最終消費支出(Final Consumption Expenditure of Government)

一般政府の財貨・サービスに対する経常的支出である政府サービス生産者の産出額(中間投入+雇用者報酬+固定資本減耗+生産・輸入品に課される税)から、他部門に販売した額(商品・非商品販売額)を差し引いたものに現物社会給付等(医療保険及び介護保険による給付分等)を加えたものを一般政府の最終消費支出として計上している。

と書いてあります。これだけじゃわけが分かりませんね(笑)

何を言っているか分かりやすく書いて見ます。

政府は、国内の家計とかのために、多くのサービスを生み出しています。具体的には、全国的なものだと警察とか法律を作ったりとか、地域的なものでも街灯を設置したりとか、窓口で住民票を発行したりとか、そんなものです。ただ、政府は儲けようとしていないので、生み出したサービスについて、一部しか料金という形でお金は徴収していません。政府が生み出したサービスから、家計とかに販売した額を引いたものについては、『政府が自分で消費しているものと見なす』ってことが、ここで言っていることなのです。もちろん、その『政府が自分で消費していると見なす』部分については、税金などでまかなわれています。

(正確には、これに医療・介護の保険給付分を足したものになります。これについては、「最終消費支出」と「現実最終消費」の違いにつながってくるので、また別の機会に。)

なお、政府が生み出したこのサービスというのは、お店でも売っていないし、ネット通販でも買えません。経済学的に難しく言うと、市場で販売されていません。だから、家計調査みたいに、「いくら分買いましたか?」と聞くことは難しいんです。なので、政府最終消費の計算では、「そのサービスを生み出すのに、いくらかかりましたか?」というアプローチで計算しています。それが、「政府サービス生産者の産出額(中間投入+雇用者報酬+固定資本減耗+生産・輸入品に課される税)」というところの説明になります。

ここから昨日書いた、授業料などの商品・非商品販売額を引いたものが、政府最終消費支出です。

こうして考えると、民間最終消費支出と政府最終消費支出って、イメージ的にずいぶん異なるものですよね?少なくとも、「グリーン購入の割合を求めるための分母」といわれると、一瞬???と思ってしまうのも、ご理解いただけるかと。

2010年5月11日 (火)

高校授業料無償化

本日、高校授業料無償化の取り扱いについてのQ&Aを掲載しました。

http://www.esri.cao.go.jp/jp/sna/faq.html#15

特段、推計方法について変更を加えるというものではなくて、SNAの考え方からするとこうなりますよ、というものなので、Q&Aのところに載せています。

今までこういうことはあんまりやっていなかったんですが、関心も高そうですし、分かりにくいという声もあるので、これからもこういう公表は積極的にやっていきたいと思ってます。

(といっても、限られた人員(実質私一人(笑))でやっているので、それほど多くはできませんので、過大な期待はしないでください。。。)

内容としては、家計最終消費支出が減って、その分、政府最終消費支出(私立については、対家計民間非営利団体最終消費支出)が増える、ということです。

Q&Aにも書いてあるんですが、高等学校授業サービスについては、そのサービスを生産するためにかかる費用を、家計から徴集する授業料だけでまかなうことができません。そのまかなえなかった分は、政府が自己消費したとみなして、政府最終消費支出にのることとなります。だから、授業料が減額されたとしたら、その分、政府最終消費支出が増えることとなります。

この家計から政府から受け取る授業料みたいなものを、「商品・非商品販売」と言っています。ここで言う『非商品』っていうのは、商品以外、つまりサービスのことですので、経済学っぽく言うと、政府が行う財・サービスの販売ってことです。

そう考えると、高校授業サービスについてのデフレーター、難しく言うと商品・非商品デフレーターですが(授業料はサービスなので、正確には「非商品デフレーター」です。)、それは、負担した人が家計から政府に変わった、というだけなので、デフレーターに動きが出てしまってはおかしいことになります。CPI(消費者物価指数)は、大きく動きが出ているようですが、それは、CPIは「家計が負担した分」しか見ないから、大きく下がったのであって、その点が一番違う点になります。

政府最終消費支出については、『消費支出』ってあるので、家計最終消費支出と同じようなものなんだろうと思ってしまいがちなのですが、これが結構違う概念だったりします。これについては、面白い話があったので、また、続きを明日にでも書きます。

2010年5月 8日 (土)

ブログをはじめてみました。

 こんにちは。

 某中央官庁で、『某経済統計』の推計を担当しています。

 このブログで、推計を担当していて、日々思ったことなんかを書いていきたいと思います。

 今まで、ブログやツイッターとか、見たこともなかったのに、いきなり作る立場になっちゃっているので、いろいろ変なところとかあるかもしれませんが、その点はご容赦を。

 あと、『某経済統計』の公表直前とかは、さすがに書けない事も多いので、更新が遅れがちになると思うのですが、その辺の「大人の事情」も分かった上で見てくれるとうれしいです。

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