物価指数のバイアス【補足】
コメントいただきありがとうございました。
ありがとうございます!連鎖指数と固定指数との比較でイメージがかなりはっきりと掴めました。と同時に、CPIの上方バイアスを考慮する時には常に基準年を考える繊細な注意が必要なことも分かりました。
生活扶助cpiも、2010年基準で2008-2010の伸びを計算すると、2008年の指数を実態より高く算出してしまっているので、実際より物価下落を大きく見てしまうという問題が確かにありますね(かといって2005年基準が正しいわけでもないので難しい)。東洋経済の記事では、厚労省はこれをパーシェと説明したそうですが。
私も今になって、ご指摘の東洋経済の記事を拝見しました。コメントでいただきましたとおり、この記事では「ラスパイレス方式とパーシェ方式の混合」と書いてありますが、その点は誤りのように思えます。実際には「2010年基準のラスパイレス方式」で統一しただけのように見えます。なぜなら「パーシェ方式」を作るためには、すべての年において、その年の購入数ウェートで計算する必要がありますが、この記事で書いてある計算では常に2010年のウェートで作成しているように見えるためです。
ですので、今回の話は、「ラスパイレス方式とパーシェ方式の混合」という話ではなく、「2010年基準のラスパイレス指数でみた2008-10年の指数」と、「2005年基準のラスパイレス指数でみた2008-10年の指数」の比較ということになります。そして、前述のとおり2005年基準で見た2008-10年は基準年より後ですので伸び率が連鎖よりも高く、2010年基準で見た2008-10年は基準年より前ですので伸び率が連鎖よりも低くなります。そして、どちらが正しいということではなく、統計上はどちらも正しい数値ですので、どちらを採用するかという決めの問題となるような気がします。(なお、2005年基準の指数を採用するのであれば、2011年も2005年基準で作成するべきという意見もあると思います。)
連鎖方式を採用していれば、伸び率については基準年を何年にしても影響は出ないですから、このようなバイアスの議論をする必要もないのですが。。。
(注)以下はさらに補足です。この厚生労働省が言ったと記事に書いてある「パーシェ方式」の話ですが、私個人としては以下のような意味なのかなと思いました。
まず、準備として、2005年基準で見た2008年、2010年のラスパイレス指数はそれぞれ、
、
となります。
つづいて、パーシェ指数は、
、
となります。
また、2010年基準で見た2008年のラスパイレス指数、パーシェ指数はそれぞれ、
、
となります。
ちなみに、2010年基準で見た2010年の指数は当然ラスパイレス、パーシェともに1です。
ここで、2005年基準でみたラスパイレス指数の2008年~2010年の伸び率を見ると、
となり、また、2010年基準でみたパーシェ指数の2008年~2010年の伸び率を見ると、
となり、伸び率でも一致するようには思えません。
ただし、これが基準年同士、すなわち2005年から2010年の伸び率になると、いずれもとなり一致します。
ラスパイレス方式とパーシェ方式の混同という話は、この基準年についての話をいっているだけのように思えるのですがいかがでしょうか?